認知症の種類別薬物治療法|アルツハイマー型,脳血管性,レビー小体型

認知症治療薬

認知症の治療薬といっても、認知症の種類や症状などに応じて様々なものがあり、何が何だか分からず困っている人も多いのではないでしょうか?

しかし、「そのまま分からないままでいいや!」というわけにはいきません。

お薬は便利な反面、副作用や飲み合わせなどの注意点が付き物です。ですので、どの様な、お薬が処方されたのか知っておく必要があるはずです。

この記事では、認知症の治療薬について分かりやすく解説していきますので、是非参考にしていただければと思います。

1.認知症治療薬の基本|症状によって薬を使い分ける

認知症の治療薬で、認知症は治るの?

完治させる治療薬

まず初めにご理解いただきたいのは、認知症のお薬で脳の病変を消したり、神経の障害を元に戻したりすることが出来る治療薬は存在しないという点です。

認知症の治療薬は、あくまでも記憶障害や抑うつ症状といった中核症状や周辺症状をやわらげ、その進行を抑えることを目標として処方されます。

しかし、それでも認知症の症状が軽い段階から、薬物治療を始めることで生活の質を維持・向上させることは可能です。 したがって、こういう症状には、この薬といったことを把握しておくことで、これから起こりうることにも素早く対応できるようになります。

認知症の薬物治療の基礎

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認知症の薬物治療は、本人の現在の状態や経過などを参考に最適なお薬を決めることがポイントです。お薬は、同じ種類・同じ量を使い続けるわけではありません。日々変化する本人の状態に合わせてお薬を増やしたり、止めたりして、周辺症状・中核症状の改善を目指します。

認知症の治療薬はその症状の出方によって、処方内容が変わります。 認知症の周辺症状に対しては、それぞれのタイプに応じて、「興奮系」「抑制系」「中核症状」の3タイプの治療薬を使い分けます。

興奮系 気分の高揚効果のあるお薬 陰性症状(無気力・無言・うつ状態など、元気がなくなって沈んでいる症状)に使用
抑制系 興奮を抑える効果のあるお薬 陽性症状(暴力や暴言・幻覚・徘徊・介護拒否・怒りっぽいなど、興奮状態にあると考えられる症状)に使用
中核症状 興奮系と抑制系の中間 中間症状(陰性症状も陽性症状も存在しない状態)に使用

また、認知症には、アルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型、ピック病(前頭側頭型)、それらを合併してしまう混合型認知症といくつかのタイプが存在します。何種類もある認知症それら全てが同じ処方ではないことは容易に想像できるはずです。つまり、認知症のタイプに応じて、薬の種類や量を使い分けなければいけません。

例えば、認知症の治療薬の中でよく使われる「アリセプト」というお薬の場合、「アルツハイマー型認知症」を発症した方であれば、第一選択薬になります。ところが、「前頭側頭型認知症(ピック病)」の治療薬としては、アリセプトは推奨されていません。

つまり、認知症の治療薬は複数あり、それぞれの症状に合ったものを使うことによって、初めて効果が期待できるのです。したがって、ここからは認知症の代表的なタイプである「脳血管性認知症」「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「混合型認知症」の4つを例に、それぞれに合った薬物治療法を見ていきましょう。

認知症のタイプ別の原因や症状

2.脳血管性認知症は脳卒中を再発させない治療が重要

脳血管性認知症

脳血管性認知症の原因は、脳梗塞や脳出血などのいわゆる脳卒中を発症することで、脳神経細胞が死滅し、その部位の働きが悪くなることです。

脳血管性認知症

脳血管性認知症の多くは、脳卒中の発作が起こる度に段階的に症状が悪化していくという特徴があります。しかし、ラクナ梗塞(小さな脳梗塞)を発症した場合は自覚症状がないことも多く、気づかない内に認知症が進行していたというケースもしばしばです。

しかし、どちらにせよ脳血管性認知症を進行させない為には、脳卒中(脳梗塞や脳出血など)を再発させないことが重要になってきます。その為には、高血圧や動脈硬化を改善・治療することが大切です。

脳血管性認知症は、記憶障害などの症状は比較的軽い一方で、運動障害・感情失禁・夜間せん妄などの症状がよくみられます。

したがって、「ニセルゴリン(商品名:サアミオン等)」といった脳循環改善薬(脳の血流を増加させる薬)、もしくは「シロスタゾール(商品名:プレタール等)」といった抗血小板薬(血液をサラサラにして脳梗塞の再発を予防する薬)が使われます。

3.アルツハイマー型認知症には早期治療が効果的

アルツハイマー型認知症治療薬

アルツハイマー型認知症の原因は、アルツハイマー病による脳の委縮や死滅です。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は発症すると、ドンドン中核症状が顕著となり、それに伴って周辺症状も悪化するため、家族や周囲の人の負担が増加します。なので、アルツハイマー型認知症と診断されたら、なるべく早期に治療を始める必要があります。

治療方針としては、中核症状の進行を食い止め、そこから派生する周辺症状を和らげるものになります。

アルツハイマー病では脳内のアセチルコリンという物質が減少することが解っています。このアセチルコリンの減少を防ぎ、中核症状の進行を食い止める薬として「コリンエステラーゼ阻害薬」が有効です。コリンエステラーゼ阻害薬には、「アリセプト」「レミニール」「リバスタッチパッチ」など数種類の薬が国に認可されています。そこから、本人の状態に合わせて最適な薬を選択します。

しかし、コリンエステラーゼ阻害薬は興奮系の薬なので、陽性症状が強く出る場合は抑制系の薬を併用することがあります。

また同じ陽性症状でも、怒りっぽい時には抗精神病薬の「チアプリド(商品名:グラマリール)」、暴力が出るときは抗精神病薬の「クロルプロマジン(商品名:ウインタミン等)」、抗不安薬の「ジアゼパム(商品名:セルシン)」などが有効とされており、逆に、無気力になった場合は興奮系の薬を使うこともあります。

この様に、実際の症状と照らし合わせて臨機応変に薬を選択することが大切です。

4.レビー小体型認知症は症状に応じた薬をピンポイントで処方

レビー小体型認知症治療薬

レビー小体型認知症の原因は、脳内の神経細胞内に「レビー小体」という特殊なタンパク質が出現することで、脳細胞が死滅することです。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症の症状としては、幻視(幻覚)が現れることが多いです。また、パーキンソン病に似た症状(手足や筋肉の拘縮や震え、動きの鈍さ、小股歩行、転びやすい、無表情など)が現れることもあります。

脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンの減少により認知機能が低下するのが「アルツハイマー型認知症」、ドーパミンの減少で歩行障害をきたしているのが「パーキンソン病」ですが、これら両方が減少しているのが「レビー小体型認知症」です。

したがって、レビー小体型認知症の治療の基本は、これら2つの症状をカバーすることです。

認知症の中核症状の治療薬である「アリセプト」「リバスタッチパッチ」は、脳内のアセチルコリンを増やし、記憶力を高めて知能を上げることができます。また、「メネシット」を使うと、脳内のドーパミンが増加し歩行障害といったパーキンソン症状が改善します。

しかし、アセチルコリンとドーパミンのどちらか一方でも過剰になってしまうと、反対側にある症状が強く現れる可能性も指摘されているので、その時の状態に合わせて「どちらの症状をより改善したいのか」を見極める必要があります。

また、レビー小体型認知症には、他のタイプには見られない「薬剤過敏性(通常の量でも様々な副作用が現れる)」という特徴もあります。

レビー小体型認知症の薬物療法

5.混合型認知症は最も診断・治療が難しい

混合型認知症治療薬

数種類の認知症の原因となる病気を合併することによって認知症のことを「混合型認知症」といいます。この混合型認知症は、診断や治療を困難にします。

例えば、アルツハイマー型認知症はとてもゆっくりと進行していく病気です。しかし、その途中で脳卒中を併発すると、その進行を早めてしまう可能性があるのです。また、認知症のタイプの識別も難しくなります。

今まで説明してきたように、認知症のタイプによって治療に使う薬は異なります。このケースのように混合型認知症の疑いがある場合、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の両方の薬を一緒に服用することになり飲み合わせの問題などが出てきます。また、「画像診断だけで脳血管性認知症と診断され、アルツハイマー型認知症の治療が行われない」、「脳卒中に対する適切な薬が追加されない」といったことも考えられます。これが混合型認知症の診断・治療を難しくしている理由です。

混合型認知症

6.まとめ:認知症のタイプに合わせた治療が大切

認知症には様々なタイプがあり、それぞれのタイプに合わせた薬物治療が必要となります。また、薬によって副作用や飲み合わせもあります。また、この記事で取り扱った治療法はほんの一部であり、日々新たな認知症の治療法や治療薬の開発は進められています。

したがって、ご家族は”本人の日頃の様子”など身近な人だからこそ分かる情報を医師に伝え、治療に役立てようという心構えが必要です。また、薬の副作用や服薬の際の注意点などを、医師や薬剤師からしっかりと聞いておくことも大切です。

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