メトトレキサート(リウマトレックス®)とは

メトトレキサート,リュウマテックス,MTX

メトトレキサート(商品名:リウマトレックス®など 略称:MTX)は、世界中で最もよく使われている抗リウマチ薬です。

なんと、関節リウマチを患者の50%以上が使用しているとも言われています。

しかし、それだけ重要な薬にもかかわらず、メトトレキサートについて分かりやすく説明している本や資料が少ないのが現状です。

そこで、ここでは”メトトレキサートの効果や作用、副作用、服用方法について、分かりやすく説明していきたいと思います。

メトトレキサートとは一般名です。日本で初めて製造販売されたのは「リウマトレックス®(ファイザー株式会社)」です。その後、ジェネリック医薬品(後発医薬品)として、「メトレート®(あゆみ製薬株式会社)」、「トレキサメット®(シオノケミカル株式会社)」などが製造販売されました。
メトトレキサートは、関節リウマチの治療だけでなく、抗がん剤としても使用される薬です。

メトトレキサートとは

メトトレキサートは、関節リウマチの治療薬である”抗リウマチ薬”の1つです。

関節リウマチは、免疫システムを誤作動させ、滑膜を異物と間違い攻撃し炎症(痛みや腫れ)させる病気です。

この免疫システムの異常を改善し、病気を治療する薬をまとめて”抗リウマチ薬”と呼びます。

数ある抗リウマチ薬の中でも、メトトレキサートは治療効果が高く、長期に渡り安定した有効性を発揮する薬として知られています。また、副作用のコントロールが比較的しやすく、薬価が安価というメリットもあります。

本来、免疫はウィルスや細菌等から、私たちの体を守るために必要不可欠なシステムです。また、炎症反応もその過程で起こるものです(風邪の時に熱を出し、外敵をやっつけるなど)

効果

メトトレキサートには多くの効果が期待でき、特別な事情がない限り長期的に使用する薬です。

関節症状の抑制効果

メトトレキサートを飲むことで、関節症状への効果が期待できます。

  • 関節の痛みの抑制効果
  • 関節の腫れの抑制効果

メトトレキサートを飲み始めてから、約2週間~2ヶ月後には関節症状が軽くなったと感じることが多くなります。最終的には、患者さんの約70%で関節症状が軽くなる効果がみられ、約30~40%で寛解(ほぼ完全に痛みや腫れがなくなる)状態になります。

メトトレキサートには抗炎症作用はありませんが、免疫異常を抑制することで炎症を抑える働きがあります。

関節破壊やADL・QOL、寿命の改善にも繋がる

メトトレキサートは、関節破壊の抑制やADL(日常の生活動作)・QOL(生活の質)の改善にも役立ちます。また、寿命の改善効果も証明されています。

  • 関節の軟骨や骨の破壊を抑える効果
  • 関節の働きが回復することで、ADLやQOLの改善効果
  • 寿命を延ばす効果

作用

メトトレキサートには、”葉酸”というビタミン物質の働きを妨げる作用があります。

関節リウマチのさまざまな症状を引き起こすのは、免疫システムの誤作動による、免疫細胞(リンパ球やマクロファージなど)の不必要な増殖や活動です。そして、これら免疫細胞の増殖に関わっているのが葉酸です。

リンパ球やマクロファージといった免疫細胞は、サイトカインという炎症を促すタンパク質を放出することから炎症細胞とも呼ばれています。

したがって、メトトレキサートを服用することで、葉酸の働きが抑えられ、免疫細胞が減少し活動も落ち着いていくと考えられています。

副作用

薬には、副作用がつきものであり、メトトレキサートもその例外ではありません。

既にメトトレキサートは、葉酸の働きを抑え、自己免疫による炎症を抑える薬ということは説明しました。その時に、炎症に関わる細胞だけでなく、他の細胞にも強く影響する結果、免疫力が低下し副作用が生じることがあります。

メトトレキサートの副作用

骨髄抑制こつずいよくせい(汎血球減少、無顆粒球症、白血球減少、血小板減少、貧血等)
血液中の白血球や赤血球、血小板が減少すること。メトトレキサートの副作用としては、白血球減少と血小板減少が多い。白血球が減少すると、免疫力が低下し、口内にただれが出現したり、感染症(肺炎、尿路感染症など)にかかりやすくなる。血小板が減少すると、出血した血液を止める役割が低下し、手足に紫色の斑点(皮下出血、あざ)や、歯を磨くと出血する等の症状が出現しやすくなる。
間質性肺炎かんしつせいはいえん(MTX肺炎)
肺胞はいほうという肺の中の小さな部屋(ブドウの房のような形)の壁に炎症が生じる病気。メトトレキサートを原因とすることから、MTX肺炎とも呼ばれる。発熱、空咳、息切れ、呼吸困難等の症状が出現する。
消化器障害
口内炎、吐気、下痢、腹痛、食欲不振。少しの症状なら、メトトレキサートを継続しても問題がない場合もある。服用方法の工夫や葉酸製剤を飲むことで、良くなる場合がある。
感染症
肺炎(細菌性肺炎、ニューモシスチス肺炎、ウイルス性肺炎など)、敗血症、尿路感染症(膀胱炎や腎盂炎)、皮膚や関節の感染症など急性の感染症が起きることがある。帯状疱疹たいじょうほうしんなどの重篤な感染症(日和見感染症を含む)結核、非結核性抗酸菌症、真菌症が出現することもある。肺炎では、発熱や全身の強いだるさ、息苦しさ等を感じる。
リンパ節腫脹
首や脇の下などのリンパ節の腫れやしこりが現れる病気。急に首や脇の下のリンパ節が腫れ、同時に、熱がでたり痩せてくる場合は注意が必要。ただし、リンパ節が腫れたからといって悪性とは限らず、薬剤の中止で治ることが多い。
肝機能障害
軽度の肝機能障害の時は、自覚症状が少ないので、定期検査で早期発見することが重要。メトトレキサート自身の肝障害は重篤になることはないが、だるさが強いときは肝機能障害が生じている場合もある。

重篤な副作用(①骨髄抑制②間質性肺炎③重度感染症)に注意

メトトレキサートの重篤な副作用として、要注意なのが次の3つです。

  1. 骨髄抑制
  2. 間質性肺炎(MTX肺炎)
  3. 重度感染症

いずれの副作用も、0.1~5%未満の確率で出現するとされています。

副作用を早期発見しよう

副作用の中には、注意しながら飲み続けても良いものもありますが、放っておくと重篤になるものもあるので注意が必要です。

通常と異なる症状や気になる症状がある時には、主治医に相談しましょう。

症状 疑われる副作用
38℃以上の高熱 急性の感染症、間質性肺炎
以前にはなかった咳や息苦しさ 肺炎、間質性肺炎
軽い咳や痰が良くなったり悪くなったりを繰り返し、微熱が持続する 慢性の呼吸器感染症(結核、非結核性抗酸菌症、真菌症)
食事がとれないほどの口内のただれ 血球減少症の併発
からだ中に青あざができるなど出血しやすい傾向がある 血球減少症
原因がはっきりしない皮膚の症状や首のまわりや脇の下のしこり 感染症、リンパ腫

また、副作用を早期に発見するには、定期的な診察と検査を受けることも大切です。

関節リウマチの検査と診断

妊娠中や授乳中の服用は避ける

メトトレキサートは、流産や催奇形性の危険性を高める薬です。

なので、妊婦や妊娠している可能性のある方やその計画のある方、授乳中の方はメトトレキサートの服用は避けて下さい。少なくとも内服中や内服中止後少なくとも1月経周期(月経開始~次の月経までの期間。約28日)が終了するまでは注意する必要があります。また、女性だけでなく男性も服用を避けましょう。

もし、妊娠出産を希望されている方は、主治医とよく相談しましょう。

禁忌

次のような方には、メトトレキサートを投与してはいけません。

  1. 妊婦又は妊娠している可能性がある方、授乳中の方[催奇形性を疑う症例・報告がある]
  2. 同じ薬を服用して副作用が起こったことがある方(本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある方)
  3. 重症感染症がある方(活動性結核の方)[症状を悪化させる恐れがある。]
  4. 骨髄抑制がある方[骨髄抑制を増悪させる恐れがある]
  5. 肝障害がある方(B型・C型肝炎など)[副作用が強くあらわれる恐れがある]
  6. 高度な腎障害がある方[副作用が強くあらわれる恐れがある。]
  7. 胸水、腹水がある方[毒性が増強されることがある]
  8. 高度な呼吸器障害がある方[症状を悪化させる恐れがある]

用量・用法

<出典:関節リウマチ治療における メトトレキサート(MTX) 診療ガイドライン 2016年改訂版【簡易版】,pp6-7図1及び図2

メトトレキサートは、毎日欠かさず飲むような薬ではありません。理由は、服用により免疫力が低下し、感染症などの副作用にかかりやすくなる為です。

次は、メトトレキサートの基本的な服用方法と服薬時の注意点になります。

  1. 最初は、6~8mg/週で経口投与開始します。
  2. ただし、副作用危険因子(高齢者、低体重、腎機能・肝機能障害、アルコール常飲者など)を持つ方は低用量での治療が勧められる。
  3. メトトレキサートの投与開始後、しばらくしても治療目標に達しない場合は、副作用や疾患活動性を考慮しながら増量する(最大16mgまで)。
  4. 1週間あたりの投与量を1回または2~4回に分け、12時間間隔(朝夕など)で1~2日間かけて服用し、残りの日は休薬する。1週間あたりの投与量を1度に飲むことも可能だが、8mg/週を超える場合、分けて飲むことが望ましい。
  5. 主治医の指示に従い服用法を守る。飲み忘れた場合も、主治医に相談する。

【正しい薬の飲み方】食前・食後・食間の違い&服薬管理法薬の飲み忘れ・飲み過ぎを防止対策法

葉酸製剤について

副作用を予防する目的で葉酸を服用

メトトレキサートの服用量は、最大16mgまで増やすことができ、その分だけ効果が期待できます。一方で、服用量が増えれば増えるほど、その分副作用も現れる可能性が高まります。

先ほど確認したように、メトトレキサートは葉酸の働きをブロックする為、免疫力の低下を招きます。しかし、免疫力が低下することは体にはよくありません。

そこで葉酸製剤を、副作用の予防や治療目的で、併せて飲み葉酸を補給し免疫機能を調整することがあります。葉酸製剤を投与することで、肝機能障害、消化器障害などを防ぐのに有効です。

葉酸はメトトレキサートの服用量が多い時や、副作用が出やすい時

次は、葉酸製剤の基本的な服用方法と服薬時の注意点になります。

  1. 一般的に、メトトレキサートの服用量が、8mg/週以上を超える時は、葉酸製剤を服用する。
  2. 8mg/週以下でも、副作用が出やすい人(高齢者、低体重の方、腎機能・肝機能障害など)は葉酸製剤を医師の指示で服用する。
  3. 通常は、葉酸製剤である「フォリアミン®」を使用する。白血球減少などの重篤な副作用が現れた時は、活性型葉酸製剤である「ホリナートカルシウム(ロイコポリンカルシウム)」を使用する。
  4. 2つの薬を同時に服用すると互いの効果を邪魔してしまう恐れがある為、服用する日をずらします(MTXの最終投与後24~48時間後)。
  5. 主治医の指示に従い服用法を守る。飲み忘れた場合も、主治医に相談する。
  6. 勝手な判断で葉酸を多く含むサプリメントや栄養補助食品などを服用しない。
  7. 葉酸を多く含む食品(ほうれん草、枝豆、グリーンアスパラ、レバーなど)は、サプリメントよりも過量でないので、制限の必要はない。

メトトレキサートを使用できない場合は、他の抗リウマチ薬を試すことも

もし、メトトレキサートを服用しても、十分な効果が得られない場合は、他の抗リウマチ薬や生物学的製剤を組み合わせることがあります。

また、合併症や副作用の関係からメトトレキサートを使用できない場合には、他の抗リウマチ薬に変更されるケースもあります。

<参考文献>

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