認知症の基本を学ぼう!3つのタイプに分けて種類別に分かりやすく解説

種類別認知症タイプ

「最近、ウチのおじいちゃんは物忘れが多くなってきたなぁ・・・ボケてしまったのかな?」

そんな心配を口にする家族さんは少なくないでしょう。

この「ボケた」という言葉の定義が曖昧で、「認知症の物忘れ」なのか、単なる「老化の物忘れ」なのかハッキリ分からないなんて話もよく耳にします。しかし、認知症という病気と老化を同一視して判断してしまうことは、病気の発見を遅らせ治療を困難にさせる原因となります。

もし「認知症」の場合、そのまま放っておくと、気が付かない間に症状が進行してしまい「真冬の寒い中、半袖半ズボンで一人徘徊する」「振り込め詐欺に合う」といった取り返しの付かない事態を引き起こしてしまうかもしれません。

一方で、認知症は早い段階で発見し治療を行うことで、その進行を遅らせることが可能な病気です。

したがって、取り返しのつかない事態に陥らない為にも「認知症とはどういった病気なのか」3つのタイプに分けて種類別に分かりやすく説明していますので、是非参考にして頂ければと思います。

1.認知症がどんな病気なのか全体像を学ぼう

認知症と老化による物忘れの違い

もの忘れ

認知症とは「脳や体の病気を原因として、記憶・判断力などの障害が起こり、普通の社会生活が送れなくなった状態」と定義されています。

しかし、これだけの説明では病気の全体像が分からない人も少なくないでしょう。そういう場合は、まず「認知症の物忘れ」と「老化の物忘れ」の違いを学ぶことで、病気の全体像が見えてきます。

認知症の物忘れ 年齢以上の記憶障害
老化による物忘れ 年相応の記憶障害

いかがですか、その違いがわかりましたか?

そうです!「老化の物忘れ」は人間が年を取ると誰にでも起きる自然現象であるのに対して、「認知症の物忘れ」は明らかな病気であり年齢以上に症状が重く、日常生活に悪影響を与えるレベルなのです。また、進行性の病気なので時間の経過とともに徐々に症状が悪化していきます。

次は、具体例も交えて「認知症の物忘れ」と「老化の物忘れ」にはどういった違いがあるのか確認していきましょう。

同じ物忘れでも全く別物

「老化による物忘れ」では、些細なことは忘れていても経験や体験したこと自体はシッカリと覚えています。ヒントを与えると忘れていたことを思い出すます。一方で、「認知症の物忘れ」の場合は、記憶が全て抜け落ち経験や体験したこと自体を忘れています。ヒントが与えても思い出せず、忘れたという自覚すらないこともしばしばです。

食事をした直後なのに、食事をしたこと自体を忘れてしまうのが「認知症」です。一方で、「老化の物忘れ」は、昨晩食事をしたことは覚えているがメニューが思い出せない、久しぶりに会った友達の顔は覚えているが名前が出てこないといった物忘れであり、単なる老化現象です。

今までのことをまとめると「認知症の物忘れ」を見抜くポイントは次の2つです。

  • 経験した事を覚えているか(忘れている自覚があるかどうか)
  • ヒントを貰えれば思い出せるかどうか

物忘れだけじゃない!判断力や精神症状も症状の1つ

今まで、物忘れいわゆる記憶障害をもとに認知症と老化の違いを確認してきました。

しかし、何も認知症の症状は記憶障害だけではありません。判断力や思考力、見当識といった能力にも障害が現れる病気です。

例えば、「トイレの場所が分からない」、「計算ができなくない」、「言葉が出てこない上手くしゃべれない」、「包丁の使い方が分からない」といった今までに当たり前にできていた行為が困難になり出来なくなります。

確かに、記憶障害は認知症の代表的な症状ですが、それ以外にも様々な症状が現れることを覚えておいて下さい。

記憶障害の症状

見当識障害の症状

2.3つの認知症|種類によって原因や症状が変化する

認知症の種類と原因疾患

1つに認知症と言っても、原因疾患によって数十種類にもタイプが分かれ、原因とされる病気や障害を数えると100種類にも及ぶことを知っていますか?

認知症は、人間活動をコントロールしている脳が萎縮したり、死滅したりすることで発症する病気です。その結果、記憶障害や見当識障害、判断力障害といった症状が病的に現れます。

認知症の原因になる主な病気
脳の変性 アルツハイマー病、レビー小体病、前頭側頭葉変性症(ピック病)、ハンチントン病、大脳皮質基底核変性症
脳血管障害 脳梗塞、脳出血、ビンスワンガー病
内分泌・代謝性 甲状腺機能低下症、ビタミンB欠乏症、透析脳症、低酸素症
中毒性 アルコール依存症、薬物中毒、有機化合物中毒
感染症 脳炎、髄膜炎、脳梅毒、エイズ、クロイツフェルト・ヤコブ病
腫瘍 脳腫瘍、転移性腫瘍
外傷性 頭部外傷、慢性硬膜下血腫、慢性外傷性脳症(ボクサー脳症)
その他 正常圧水頭症、多発性硬化症

つまり、脳にダメージを及ぼす原因は沢山あるということです。例えば、アルツハイマー病やレビー小病、脳梗塞、脳出血、ピック病などなど認知症の原因となる疾患は沢山あり、その原因疾患に応じて病名が変化するのです。

ここからは、多種ある認知症の中でも3大認知症と呼ばれる「アルツハイマー型認知症」、「レビー小体型認知症」、「脳血管性認知症」について、それぞれ分かりやすく解説していきたいと思います。

認知症全体に占める割合は、アルツハイマー型は約50%、レビー小体型は約20%、脳血管性は約15%と推計されています。

1.アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型

アルツハイマー型の原因

原因となる疾患は「アルツハイマー病」です。アルツハイマー病により、脳が病的に委縮することで発症します。脳の委縮の直接的原因とされているのが「βアミロイド」です。脳内にβアミロイドと呼ばれるタンパク質が蓄積することで、健康な脳神経細胞が変化・死滅し脳の萎縮を進行させると言われています。

アルツハイマー型の症状

初期の段階で、まず物忘れが現れます。そして、アルツハイマー型認知症の進行していくと、つい最近の出来事だけでなく過去のことも忘れてしまう程の「記憶障害」や自分の年齢や現在の場所なども分からなくなる「見当識障害」が現れてきます。また、性格が変わり、判断力が著しく低下し、家庭での介護が困難になります。

まれに50~60歳からでも発症する若年性アルツハイマー病の方もいますが、多くは80歳以上の高齢者の方に見られます。

アルツハイマー型認知症

2.レビー小体型認知症

レビー小体型

レビー小体型の原因

原因となる疾患は、「レビー小体病」です。脳内の神経細胞に「レビー小体」という特殊なタンパク質の異常蓄積による脳細胞がダメージを受けてしまうことで発症します。

レビー小体型の症状

初期の段階で「幻視」という幻覚症状が高い確率で現れるのが特徴です。例えば、「ネズミや虫が部屋の中を這っている」など実際には存在しないモノが見えます。それに伴い、「妄想」や「異常な行動」が現れることもあります。

他にも、次のような症状が現れます。

抑うつ症状 気持ちの落ち込み
パーキンソン症状 筋肉の強ばりや小刻み歩行
自律神経症状 便秘や頻尿
レム睡眠行動障害 睡眠時の異常行動

アルツハイマー型認知症に代表される「認知障害」は初期の段階では現れないことがあります。また、認知機能が良い時や悪い時がある「認知の変動」もレビー小体型認知症の特徴です。

レビー小体型認知症

3.脳血管性認知症

脳血管性

脳血管性の原因

原因となる疾患は、脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたり(脳出血)といった脳血管障害です。脳血管障害により神経細胞が死んでしまい、その部分の脳の働きが悪くなることで発症します。

特に、小さな脳梗塞を何度も起こす「多発性脳梗塞」にが原因で発症することが多く、自覚症状や目に見える異変が現れないこともあり知らず知らずの内に悪化してしまったというケースも多いです。

脳血管性の症状

脳血管性認知症の症状は、脳のどの部位の神経細胞がダメージを受けたかによって変化します。例えば、運動をコントロールする脳の部位がダメージを受けるとまた、「手足のしびれ」や「マヒ」などの運動障害が現れます。その為、「記憶障害は酷くなっても、計算能力や判断力は保たれている」などある能力は低下しても、別の能力は影響がない「まだらボケ」という現象も見られます。

物忘れは比較的軽く、判断力や見当識は比較的保たれていることが多いです。その為、「物忘れが増えたな」と自覚する人も多いです。また、些細な事で泣き出したり、怒り出すなど感情のコントロールできない「感情障害」がよく現れます。

脳血管性認知症

4.種類別まとめ

  アルツハイマー型認知症 レビー小体型認知症 脳血管性認知症
原因 βアミロイドの蓄積による老人斑や神経原線維変化 レビー小体という特殊なタンパク質 脳卒中(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血など)
初期の症状 物忘れ 幻視、抑うつ、パーキンソン症状 軽い物忘れ
特徴的な症状 もの忘れ、認知障害、徘徊、性格の変化 幻視・妄想、うつ症状、パーキンソン症状、レム睡眠障害、自律神経障害、認知の変動、薬剤過敏性 運動障害、もの忘れ、感情障害、まだらボケ
男女比 女性が多い 男性がやや多い 男性が多い
進行の具合 緩やかに進行していく 緩やかに進行していくが、早い場合もある 脳卒中の発作の反復に伴って階段的に症状が悪化

3.日常生活に潜む原因

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前述のように認知症の直接的な原因は、脳細胞の死滅や脳の委縮といった脳の病気です。

認知症の大きな要因は「加齢」です。なんと、「認知症の発病率は、年齢が5歳上がるごとにおよそ2倍になる」と言われています。

  • 65歳以上の約10人に1人
  • 85歳以上の約4人に1人

したがって、誰でも認知症を発症する可能性があるということを覚えて置いて下さい

だたし、それだけではありません。認知症の原因は、日常生活の中にも潜んでいるのです。

その原因とは、「精神的要因」「身体的要因」「環境的要因」です。このような日常生活の中に潜む間接的な原因が認知症の症状の現れ方に大きく関係してきます。それでは、具体的にはどのようなものがあるのか確認していきましょう。

精神的要因 自分の老いを認められず、つねに「こんなはずでは無い」「自分なんてどうせ一人きりだ」と考えるようになる 孤立・孤独
抑うつ
不安
身体的要因 病気やケガがきっかけで、これまでのように身体が動かなくなり、刺激が減って行動範囲が狭くなる 病気・ケガ
寝たきり
聴力や視力の低下
栄養不足・脱水症状
環境的要因 配偶者の死や引っ越しなど急激な環境の変化が原因で、新しい環境に馴染めず、他人とのかかわり合い減ってしまい、一人いる時間が多くなる 引っ越し
親しい人との分かれ・死別
退職・隠居生活

4.認知症の7つの法則

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認知症の症状の出方にはいくつかの法則があります。家族などの身近な人ほど症状が強く出たり、正常な時と認知症が交互に現れたり、認知症の人は1つのことにこだわる傾向があったりします。介護者はそうした法則があることを理解した上で、接することが大事です。ただし、人によって症状の出方は様々なので、マニュアル通りにはいかないことをよく理解しておきましょう。

1.記憶に障害が出る(記憶障害に関する法則)
「新しいことが覚えられない」「体験したこと自体忘れてしまう」「自分が高齢者・老人ということを忘れている」「昔のことばかり話す」等記憶に障害が出る。
2.身近な相手ほど症状が出やすい(症状の出現強度の法則)
本人の子供で主に介護を担っている介護者など日常接する機会が多く安心できる人に対して、強い症状が出やすい。たまに訪問する人には、症状が出にくいので、前もって認知症であることを聞かされている症状よりも軽く感じることが多く、介護者が誤解されることがある。
3.いつも自分が正しい(自己有利の法則)
自分に不利なことは認めたがらない。財布をどこかに置き忘れても、誰かがとったに違いないと考える傾向がある。嘘やでたらめではなく本人は本気でそう思っていることがある。
4.正常と認知症が交互に現れる(まだらボケの法則)
正常な時と、認知症の症状が出ている時が交互にやってくる。態度が急に急変してしまうので、周囲は戸惑ってしまうことがある。特に、認知症の初期段階では、他人の前できちんとしており{先の身近な相手ほど症状が出る(症状の出現強度の法則)}お医者でも判断が難しいことがある。
5.1つのことにこだわる(こだわりの法則)
1つのことが気になるとなかなかそこから抜け出せない。失禁した時など、いつまでのそのことを気に病んでいることがある。
6.事実は忘れ感情だけが残る(感情残像の法則)
事実はすぐに忘れてしまうが、その時抱いた感情は残像として残る。失敗を咎められたこと等をいつまでも引きずり、不信感を募らせる。
7.出方は一定ではない(十人十色の法則)
症状の出方は一定ではなく、その人の人生を反映した行動があらわれる。マニュアル通りにいかない。

5.セルフチェックシート

セルフチェック

認知症は早期発見し、適切に対応することで進行を遅らせることができる病気です。ですので、病気の初期にはどういった症状が現れるのかを知っておくことが早期発見のポイントです。

認知症の初期症状として、よく見られる症状は次のようなものがございます。

  • 物忘れが多く、同じことを何度も繰り返す
  • 会話がかみ合わない
  • 人やものの名前が思い出せない
  • 今までできたことができなくなった
  • 時間や場所が分からなくなった
  • 「振り返り兆候」がある。

振り返り兆候とは、医師からの質問などに対して、同行者の方を振り向き確認を求める行動です(話が分からない・自分の記憶に自信がないといった時に助けてほしくて起きます。

セルフチャックシートを実施してみて1つでも当てはまる人は、下の『長谷川式簡易知能評価スケール 』で認知症の疑いがあるかどうかが更に詳しくテストできますので是非お試しください。

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