混合型認知症とは?混合型の予防に必要な2つのポイント
皆さんの中には、認知症は1種類しかないと思っている方も多いのではないでしょうか。実は、認知症という病気はいくつかの種類があります。
- アルツハイマー型認知症
- 脳血管性認知症
- レビー小体型認知症
- 前頭側頭型認知症(ピック病)
しかも、これらを合併してしまうケースが多々あります。2つ以上の認知症を合併してしまういわゆる「混合型認知症」です。
混合型認知症を発症すると様々な弊害を引き起こし、それにともない介護負担も重くなります。混合型認知症を発症してから後悔しても、もう後の祭りです。
したがって、混合型認知症を予防するためにも「混合型認知症とはどの様な病気なのか」「どのような弊害があるのか」「混合型認知症の予防方法」を、この記事で確認して下さい。
混合型認知症とは?
それでは早速、「混合型認知症とはどの様な病気なのか」詳しく見ていきましょう。
混合型認知症のは2つ以上の認知症の合併
混合型認知症とはその名の通り、2つ以上の認知症の病変を併せ持っている状態のことです。つまり、「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」のいずれかを合併してしまっている状態です。
※リンク先でそれぞれの詳しい症状や原因について解説しています。
さらにに詳しく掘り下げてみましょう。
ほとんどの高齢者はアルツハイマー病と脳血管性認知症の因子を併せ持っている
混合型認知症を理解する上で、ここでは、認知症で患者数が1番多いアルツハイマー型認知症と2番目に多い脳血管性認知症を例にその原因を確認していきます。
- アルツハイマー型認知症の原因
- アミロイドβの異常蓄積で老人斑の出現による脳の委縮または死滅
- 脳血管性認知症の原因
- 動脈硬化による脳梗塞による脳細胞の死滅
上のリストの様に、それぞれ病気の原因となるものは違います。しかし、そこにはある共通点が存在するのです。
その共通点とは、「アルツハイマー型認知症の原因であるアミロイドβの異常蓄積」も「脳血管性認知症の動脈硬化」も共に老化が引き金となり引き起こされます。したがって、高齢者のほとんどが「アルツハイマー病」と「脳血管性認知症」の病変を大なり小なり併せ持っていると言えます。
それでは、具体的に「高齢者がどれくらいの割合で認知症の病変を持っているのか」その保持率を示した研究報告をご紹介します。
高齢者の認知症の病変の保持率
アメリカで平均84歳の高齢者を対象に行われた病理研究では次のような報告がされました。
- 95%でアルツハイマー病の病変である老人斑や神経原線変化などが確認できた
- 21.6%で脳血管性認知症の病変である脳梗塞が確認できた
- 13.4%でレビー小体型認知症の病変であるレビー小体が確認できた
この研究からも分かる通り、大多数の高齢者は「認知症の病変を何がしか抱えている」と同時に、「さらに複数の因子つまり混合型認知症の危険因子を抱えている」のです。
しかし、混合型認知症を発症しているとどのような危険があるのでしょうか?それでは、混合型にはどのような弊害が現れるのかチェックしていきましょう。
恐ろしい混合型認知症の弊害
混合型認知症は厄介な状態です。ここでは、混合型認知症が及ぼす影響について解説していきます。
混合型認知症の弊害-1|進行スピードの加速
一般的に、半数近くのアルツハイマー型認知症の方の脳には、小さな脳梗塞(ラクナ梗塞)や大脳深部白質のダメージ等、何らかの脳血管性の病変が見つかると言われています。
そして、この脳血管性の病変とアルツハイマー病の病変が混在することで認知症の発症・進行を加速させてしまうのです。
混合型認知症が認知症を加速させるメカニズム
アルツハイマー型認知症はとてもゆっくり進行しますが、その途中で脳血管性の病変ができ、混合型認知症の状態になると急速にアルツハイマー型認知症を悪化させることがあります。
例えば、認知症が10ポイントで発症すると仮定します。アルツハイマー病の病変が8ポイントです。この段階ではまだ認知症は発症していません。しかし、そこに2ポイントの脳血管性認知症の病変ができることで合計10ポイントとなりアルツハイマー型認知症を主とした混合型認知症を発症してしまうのです。
また逆に、脳血管性認知症と診断された場合でも、高齢であればすでにアミロイドβが蓄積しており、ある程度アルツハイマー病の病変により脳がダメージを受けていることがしばしばです。そして、このアルツハイマー病の病変と脳血管性認知症の合併が認知症の症状の進行を加速させてしまうのです。
混合型認知症の弊害-2|混合型認知症は診断や治療が難しい
混合型認知症は、最も診断や治療が困難なタイプです。次のようなことが起こりえます。
- 画像診断だけで脳血管性認知症とだけ診断されアルツハイマー病の治療が行われない
- 脳血管障害を知らない間に合併し、脳血管障害に対する治療が行われない
混合型認知症の弊害-3|治療薬の問題
混合型認知症の治療薬は、アルツハイマー病と脳血管障害のお薬を使うので全く性質の異なるものを併用することになります。
- アルツハイマー病やレビー小体病には、記憶障害や見当識障害といった中核症状の進行を予防するお薬「アリセプト」
- 脳血管障害の再発を予防するには、「シロスタゾール(プレタール)」や「アスピリン(バファリン)」、「クロピドグレル(プラビックス)」などの抗血小板薬
- 怒りっぽいなど興奮症状には抑制系のお薬である「ウインタミン」や「グラマリール」
- 無気力、歩行速度の低下、尿失禁といった虚血症状には脳の血流を増加させ、意欲や自発性を向上させる「サアミオン」
このリストからも分かる通り、混合型認知症はお薬の量が増えてしまいます。飲み合わせや副作用の問題が出てくることもありますので、混合型認知症を予防するにこしたことはありません。しかし、どうやって混合型認知症を予防したらよいのでしょうか?
混合型認知症を予防する2つのポイントとは?
実は、混合型認知症を予防するためのヒントは先ほどの研究により隠されています。それでは、探っていきたいと思いましょう。
認知症の病変があっても発症しない
実は、先の研究ではもう一つ興味深い事実があります。
なんと、この研究に協力した高齢者全員が認知症でもその前段階である軽度認知障害(MCI)でもなく、認知機能が全く正常と判断されたのでした。しかも、被験者の34%が中度のアルツハイマー病、1.5%は重度のアルツハイマー病の病変が確認することができました。
驚きの事実です!認知症の病変が存在しているにもかかわらず、認知機能は正常で認知症を発症していなかったのです。
「認知症の病変があるなら認知症なんじゃないの?」とお考えの方も多いと思いますので、ここで認知症とはどういった状態なのか整理しておきましょう。
認知症とは「認知機能の低下により、独り暮らしが困難なまでに社会的生活力が低下した状態」のことです。
したがって、いくらアルツハイマー病や脳血管性認知症の病変が存在していたとしても、生活に支障が出てない場合、認知症は発症していないとされます。
でも、「なぜ認知症の病変を確認できたのにも関わらず認知症を発症しなかったのでしょうか?」早速チェックしていきましょう。
まだ間に合う!混合型認知症の予防・治療法
高齢になればなるほど、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症やレビー小体型認知症の病変は増えていきます。しかし、認知症発症の原因は、何も認知症の病変だけではありません。しばしば、家族の死や孤独を背景として認知機能を低下させ、認知症発症の誘因となってしまうことがあります。
したがって、混合型認知症を予防するためには次の2点に気を付ける必要があります。
- 認知症の病変を作らない
- 認知症の誘因となるストレスや孤独を回避する
認知症の病変を作らない
重度のアルツハイマー病の病変が確認できたのにも関わらず、認知症を発症していなかったとご説明しましたが、そのようなケースでは脳血管性認知症の病変が一切見つかりませんでした。一方、アルツハイマー病の病変に加えて、脳血管性認知症の病変がある人のほとんどが混合型認知症を発症していました。
よって、脳卒中といった脳血管障害の予防がアルツハイマー病の予防にも欠かせません。アルツハイマー病と脳梗塞や脳出血の予防を並行し、混合型認知症を発症・進行させない方法をオススメします。
「えっ!!並行して行わないといけないの?」と戸惑っている方もおられると思います。
「大丈夫です!!」
アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の予防・治療法は共通していることが多く、主に「糖尿病」「肥満」「動脈硬化」「高血圧」「脂質異常症」を改善するよう生活習慣を見直すことです。
したがって、1つ予防法を実践すると「アルツハイマー型認知症」と「脳血管性認知症」2つの病気の予防でき、ひいては混合型を予防できるのです。
認知症の誘因となるストレスや孤独を回避する
認知症はいくら認知症の病変があっても発症・進行しないことがあります。逆に、いくら生活習慣を見直し、認知症を予防しても、ストレスや孤独が認知症を誘因させることがあります。したがって、高齢者にストレスや孤独を感じさせない事が大切です。
※参考文献bennett THE neuropathology of older person without cognitive impairment from two community-based studies.
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