脳卒中(脳梗塞・脳出血)の再発予防に必要な2本柱

脳卒中再発予防

脳卒中(脳出血や脳梗塞)は再発を起こしやすい病気です。特に、脳梗塞はその典型です。なんと、脳梗塞を発症した人の3人に1人は5年以内に再発しているというデータもあります。

脳卒中が再発する場所は、一度起こした部位とは別の部位であることがほとんどです。また、脳卒中により一度破壊された脳神経細胞を生き返らせることは現代医学をもってしても未だ不可能です。その為、再発を繰り返す度に、新たな後遺症が現れ、さらなる症状の悪化を招く可能性があります。

したがって、厳しいリハビリに耐え、一度失った機能を取り戻し回復してきたのにもかかわらず、脳卒中を再発しリハビリ前の状態に逆戻りするだけでなく、前以上に状態が悪化する可能性もあります。

これでは折角の苦労も水の泡です。

後遺症の数が多くなれば多くなるほど、自身だけでなく家族にも多大な影響が及びます。したがって、是非この記事を参考に「脳卒中(脳出血や脳梗塞)の再発予防」に努めていただければと思います。

脳卒中再発の危険因子

脳卒中危険因子

脳卒中(脳出血や脳梗塞)の再発を予防するためには、脳卒中の発症率を高める危険因子を知り、1つでもその危険因子を減らす努力をしましょう。例えば、脳卒中の危険因子は次のようなものです。

  • 肥満
  • お酒
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • たばこ
  • 年齢
  • 性別
  • 脳卒中の家族歴

赤色の危険因子は減らすことはできませんが、黒色の危険因子は確実に個人の努力で減らすことが出来ます。つまり、黒色の脳卒中の危険因子を減らすことが、結果的に脳卒中(脳出血や脳梗塞)の再発予防に繋がるのです。

脳卒中の再発予防は2本柱

それでは一体、どのようにして脳卒中の危険因子を減らし再発予防に努めればよいのでしょうか?その答えは、「薬物療法」と「非薬物療法」の2本柱を基本として、脳卒中の再発予防に努めることです。

薬物療法 脳卒中の再発を防ぐための薬を服用する治療法
非薬物療法  食生活や運動、禁煙、休養などのライフスタイルの見直し改善する治療法

脳卒中は、生活習慣(ライフスタイル)の乱れが原因で発症することが多い病気です。その為、いくら毎日きっちり処方された薬を飲み「薬物療法」に真摯に取り組んだとしても、暴飲暴食や運動不足といった生活習慣を改めなければ、脳卒中の再発リスクを最低限にとどめることはできません。

したがって、脳卒中の再発予防は、薬による「薬物療法」だけに頼るのではなく、生活習慣を見直す「非薬物療法」も並行して行うことが望ましいです。

肥満

肥満

肥満は、脳卒中だけでなく、数多くの生活習慣病の温床です。脳出血、脳梗塞、糖尿病、高血圧、脂質異常症を引き起こす最大の原因となっています。

まずは、自身の肥満度をBMIと体脂肪率を参考にし、把握することが大切です。もし、適正体重よりも重かったり、体脂肪率が高かった場合は、ダイエットに努めましょう。

肥満の解消・BMI・体脂肪率についてはリンク先の記事をご覧ください。

肥満は病気のもと!無理のないダイエット方法で成功せよ

お酒

お酒

お酒は適量を守って飲む分には、むしろ健康によいものと考えられています。

  • 血液の循環が良くなる
  • リラックス効果
  • ストレスの解消
  • 食欲の増進

しかし、お酒を飲み過ぎると肥満、動脈硬化、高血圧、糖尿病といった脳卒中の危険因子を後押する原因となります。したがって、脳卒中の再発予防の為には、お酒と上手に付き合っていくことが大切です。

ビールは太る?高血圧のもと?お酒と上手に付き合うコツ

高血圧|血圧コントロールを行う

高血圧

脳梗塞の再発に関係する最も大きなリスクは高血圧です。日本の研究では血圧と脳梗塞の相関関係に関する次のような報告があります。

  • 収縮期血圧(最高血圧)160㎜Hg以上では、脳梗塞が発症するリスクは46倍
  • 拡張期血圧(最低血圧)95㎜Hg以上では、脳梗塞が発症するリスクは18倍

そこで、再発を予防するためには、治療開始時(脳梗塞発症の1ヶ月後)の20%減(収縮期血圧150㎜Hg前後)程度に設定し、2~3ヶ月かけて140㎜Hg以下まで下げるのが望ましいとされています。拡張期血圧の降圧目標は90㎜Hg以下です。

高血圧の非薬物療法

高血圧は肥満や塩分の過剰摂取、お酒、タバコ、運動不足といった生活習慣からくることが多いです。これらの生活習慣を見直し脳卒中の再発を防ぎましょう。

高血圧の薬物療法

生活習慣を改善しても、血圧が下がらない場合は降圧薬によって血圧をコントロールして脳卒中の再発を予防します。カルシウム拮抗薬、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬、ARB(アンジオテンシンⅡ受胎拮抗薬)など、効き目が緩やかな降圧薬がよく用いられます。

血圧を下げる方法!高血圧を改善し脳卒中や糖尿病を防ぐ

脂質異常改善を行う

脂質異常症

脂質異常症は動脈硬化を促進させる大きな要素です。体内のコレステロールや中性脂肪が多くなり脂質異常症になると、脳卒中、特に脳梗塞のリスクが高まります。食事療法を行い、必要に応じて薬物療法も行うことで、脂質異常症の改善を図り脳卒中の再発を予防します。

脳卒中(脳梗塞、脳出血)の再発を防ぐためには、次の各項目に対して、横に記載してある値を目標値として管理すると良いでしょう。

  • 総コレステロール200㎎/㎗以下
  • 中性脂肪150㎎/㎗未満
  • LDLコレステロール120㎎/㎗未満
  • HDLコレステロール40㎎/㎗以上

コレステロールを下げる為に知っておくべき事

糖尿病

糖尿病

血糖値が高い状態が続くことも、動脈硬化を促進し、脳梗塞の再発を起こす原因になります。まずは、食生活や運動習慣の改善で血糖値の改善を図ります。もし、生活習慣を見直しても、血糖値が下がらない場合は、経口糖尿病薬やインスリン注射といった薬物療法を行います。

糖尿病や高血糖の改善についてはリンク先の記事で詳しく説明しています。

糖尿病の原因から症状・予防法に至るまで徹底解説!

たばこ

たばこ

たばこは百害あって一利なしの有害物です。タバコを吸う人は2~3.5倍も脳卒中の発症率が高まります。脳卒中の再発予防の為にも禁煙を行いましょう。

絶対禁煙を成功させるための3つの方法

脳梗塞の再発予防

脳梗塞の再発予防の基本は、脳卒中の危険因子を減らす以外に、脳梗塞を引き起こす原因となる血栓ができるのを防ぐ薬物療法が行われます。また、動脈硬化が進んでいて危険な場合は、外科的治療による脳梗塞の発症予防が行われることがあります。

脳梗塞の再発予防|抗血栓療法

抗血栓療法

脳梗塞の再発予防には、血栓が作られるのを防ぐために薬物療法も重要です。

血栓の生成を防ぐための治療には「抗血小板療法」と「抗凝固療法」があります。どちらの療法も、既に生成されてしまった血栓を溶かすことはできませんが、病状の悪化や再発を防ぐことが出来ます。

「抗血小板療法」、「抗凝固療法」のどちらの療法を選択するかは、脳梗塞のタイプによって変化します。

  • アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞の場合は、「抗血小板薬法(アスピリン、クロピドグレル、チクロピジン)」
  • 心原性脳塞栓症の場合は、「抗凝固療法(ワルファリンカリウム、NOAC(新規経口抗凝固薬))」

このように同じ脳梗塞でも、脳梗塞の種類により治療に用いる薬が変化します。

脳梗塞の症状と原因を徹底的に丁寧に解説

脳梗塞の再発予防|血行再建術

動脈硬化が極度に進行している場合は、血管の内腔を広げる為の外科的治療が行われます。脳梗塞の再発予防として行われるのが、頸動脈内膜剥離術(CEA)です。

医師の指示を守り副作用などにも注意

脳卒中そのものの特効薬はありませんが、医師から処方された薬を正しく服用すれば、少しずつ効果が現れてきます。途中で勝手に中断したりせず、きちんと服用しましょう。市販薬を始め、他の病気の薬を飲む場合には、必ず主治医に報告してください。薬によっては、併用を避けた方が良いものがあります。

また、薬の服用後に吐き気や食欲不振、頭痛、下痢、便秘、胃の不快感、発疹、めまい、眠気等が現れた時は副作用が疑われるので、直ぐに服用を中止し医師に相談しましょう。

麻痺や嚥下障害が重い場合は、薬を飲み込むのが困難なこともあります。認知症がある場合は、薬の管理が曖昧になり易いという問題もあります。こういったケースでは家族や周囲の人が薬の管理や介助への協力を積極的に行いましょう。

まとめ

脳梗塞や脳出血を発症した人は、定期的な受診が必要です。家族や周囲の人も協力し、脳卒中の再発予防も含めた健康管理を行っていきましょう。「薬物療法」と「非薬物療法」に2本柱で、しっかりと脳卒中の再発を予防に努めましょう。

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