言語障害(失語症・構音障害)のリハビリテーションのススメ

失語症

脳卒中(脳梗塞や脳出血)の後遺症や認知症、パーキンソン病では、「言葉がスムーズに出てこない」「発音がおかしい」といった言語障害(失語症や構音障害)が現れることがあります。

  • 脳卒中で倒れ手術後、急に言葉がスムーズに出てこず途方に暮れている・・・
  • 失語症や構音障害は、もう一生治らないのかな・・・

こうした悩みをお持ちの方は、少なくないでしょう。実は、言語障害(失語症や構音障害)は、リハビリにより言語機能の回復を期待できることを知っていますか?

では一体、”言語障害のリハビリにはどういった訓練があるのでしょうか”、また”どのようにしてリハビリは進められるのでしょうか”。この記事では、そうした悩みをお持ちの方の為に言語障害のタイプ別(構音障害・失語症)にリハビリの方法やその進め方についてご紹介していきます。是非介護や治療の参考にして下さい。

言語障害(失語症や構音障害)のリハビリはみんなで実施

リハビリは言語聴覚士(ST)を中心に行われる

言語聴覚士

言語機能のリハビリは「言語聴覚訓練」と呼ばれ、言語聴覚士(ST)という言語聴覚専門のリハビリスタッフが中心となって進められます。

早い場合は急性期に、ベッド上で、口の動きの練習や簡単な言葉かけから始めることもあります。本人の症状が安定してくる回復期には、周囲を気にすることなく言葉を発するリハビリが出来るように、言語療法室などへ移動してリハビリが行われます。

失語症の治療は、脳卒中の発症後2週間の間に最も明らかな改善がみられるという報告もあり、出来る限り早期に開始した方が効果が高いと考えられています。

一般に失語症の回復は発症から時間が経過するほど回復が見込めなくなり、1年後には症状が固定化することも多いです。したがって、病院では、早い段階からほぼ毎日30分~1時間ほど集中的に言語障害のリハビリを行います。

また、脳卒中の場合は、「言語障害」だけでなく「嚥下障害(食べ物の飲み込み)」といった後遺症を併発していることが多いです。嚥下障害は、口や舌、のどがスムーズに動かなくなる障害なので、言語障害と深い関係にあります。その為、言語障害のリハビリと並行し、嚥下障害のリハビリも言語聴覚士(ST)により行われます。

食事介助を上手にする方法|嚥下障害や胃ろうの人でも諦めないで脳梗塞や脳出血の麻痺はリハビリでどこまで回復するのか

家族や友人との会話も言語障害のリハビリには大切

失語症コミュニケーション

先程もご説明した通り、言語障害のリハビリは、言語聴覚士(ST)を中心に行われます。しかし、全てを言語聴覚士(ST)の方に任せきりにしては、リハビリの効果を十分に発揮することは出来ません。

家族や友人、病棟の看護師などの理解や協力もリハビリの効果を高める為には大切です。例えば、家族が見舞いに行ったときは、次の様な点に気を付けて積極的に会話してみて下さい。

  • 短い言葉でゆっくり話す
  • ジェスチャーや文字を使う
  • 間違ったことをいちいち訂正しすぎない
  • 「YES」「NO」で答えられる質問にする
  • 話題を急に変えない

他にも、言語障害(失語症や構音障害)の方とのコミュニケーションのコツは色々あります。

言語障害(失語症・構音障害)の方との正しいコミュニケーションのコツ3選

言語療法室の中だけでなく、病院やご家庭、デイサービスなど様々な場所で、日常的に会話することが言語障害の良いリハビリになります。

言語障害の症状に合わせたリハビリを実施

言語障害は、”失語症”か”構音障害”かという『言語障害のタイプ』と『重症度』を、「標準失語症検査(SLTA)」 などにより詳しく調べます。そして、詳しく検査した上で、”治療”と”リハビリの方針”を決定し、具体的な治療やリハビリを実施します。なお、失語症検査は一度きりではなく定期的に実施し、再評価を行い、本人の症状に合わせたリハビリ計画の練り直し、実施するというサイクルを繰り返し回します。

”失語症”や”構音障害”といった『言語障害のタイプ』や『重症度』の大まかな確認方法については「言語障害とは?構音障害と失語症の症状と原因」でご紹介しています。

運動障害性構音障害のリハビリ

構音障害リハビリ

話すこと(発話)は、呼吸や発声、共鳴(響き方)、構音(正しい発音)等が総合された行為です。運動障害性構音障害は、これらのうち、1つまたは複数項目が思うように出来ない障害です。

構音障害の言語聴覚訓練では、それぞれ丁寧に時間をかけて練習していきます。必要に応じて言語聴覚士がお手本となる発音・発語をして見せたり、ビデオやCD等を使って正しい発音を聞かせるリハビリもあります。

訓練の順序は、主に次のようになります。

呼吸のリハビリ
姿勢を良くして呼吸をゆっくりと時間をかけて行い、呼吸運動の正常化を目指します。吸気(吸った息)を保存し、呼気(吐く息)をゆっくりと出すようにします。
発声のリハビリ
声の出しやすい姿勢を取り、声を出したい時に、出したい大きさ・長さで出せるように練習します。
共鳴のリハビリ
話す時に必要な鼻咽腔びいんくうの閉鎖ができるように練習します。必要以上に鼻声にならないことを目指します。
構音のリハビリ
口の開閉、唇の動き、舌の動き、頬の動きなどを訓練し、話したい言葉をはっきり話せることを目指します。

これらを段階的に練習し、最終的には自由に会話して、話し方の速度や調子・韻律がスムーズになるよう訓練します。不明慮な発音があれば言語聴覚士などがアドバイスし、最終的には、本人が自分で気づいて修正出来るようにしていきます。

失語症のリハビリ

teeth

医師や言語聴覚士により、本人の言葉の問題点を標準失語症検査(SLTA)などに基づいて検討し、言語聴覚療法が進められます。

言語障害のリハビリには様々な方法があります。主なリハビリは次の通りです。

発話訓練
名前を言う、挨拶する、会話する、電話をするなど、レベルに応じて行います。
復唱訓練
言語聴覚士が言った言葉を復唱してもらいます。
音読訓練
短い文章を声に出して読んでもらいます。
聴覚的理解力訓練
聞いて理解する能力の改善を目指す訓練です。単語や短文を聞いて適当な絵を当ててもらいます。言語障害が軽度の場合は、文章やニュースの聞き取りを行います。
呼称訓練
カードに書かれた絵の名前を言ってもらいます。
読解訓練
簡単な文字カードを読み、絵カード中から対応するものを選んでもらいます。障害が中等度の場合は、文章を読んで要約する練習も行われます。
書字訓練
自身や家族の名前、日常の物品名を書く練習をします。障害が中等度あるいは軽度の場合は、単語や短文、簡単な日記を書くリハビリを行います。
実用的コミュニケーション訓練
「はい」「いいえ」の伝え方を探ったり、ジェスチャーや絵等を併用してコミュニケ―ションを図かり方法を探ります。伝えたい事をジェスチャーや手話で表現する訓練も行われます。

失語症はその人のレベルに合ったリハビリをする

失語症は、”言語障害の為にどれほどコミュニケーションに問題をがあるのか”によって、「軽度」「中等度」「重度」の3段階に大別されます。症状には個人差があるため、リハビリの内容は個人の症状に合わせ行います。しかし、おおよそ以下の点を目安に、コミュニケーションの改善を目指した失語症のリハビリが進められます。

軽度の失語症のリハビリ

コミュニケーションの問題は軽く、リハビリは日常レベルで可能な場合は、軽度の失語症のリハビリが行われます。

  • 長文の書字訓練、日記
  • 長文の音読訓練
  • 事物の説明練習
  • 聞いた話の要約(聴覚的理解力訓練)
  • 討論(ディベート)
  • 計算

中等度の失語症のリハビリ

コミュニケーションにやや問題があり、時折、意思疎通が不十分な事がある場合は、中等度の失語症のリハビリを行います。読む・書く・話すことのうち、最もよくできる機能をコミュニケーション手段の軸として強化しながら、他の機能のリハビリを行います。

  • 短文の書字訓練、日記
  • 短文の音読訓練
  • 物の名前を当てや説明
  • 読み書きの理解
  • 計算

重度の失語症のリハビリ

言語障害が重く、補助も必要なほどコミュニケーションに大きな支障を来している場合は、重度の失語症のリハビリを行います。主に、言語刺激を与えるリハビリが中心になります。

  • 実物や絵カード、写真等を見ながら言葉の復唱
  • ジェスチャーや絵を描くことでコミュニケーションを図る

言語障害のリハビリでは身近な物を使用し興味を持ってもらう

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失語症のリハビリテーションは、その重症度に関係なく、すべての場合で身近な題材がよく使用されます。リハビリ意欲を高める為、特に本人の興味のありそうな物が選ばれることもよくあります。

また、失語症のリハビリは、周囲の理解と協力を得ながら多くの人々とコミュニケーションを図りながら進められます。例えば、リハビリが進んだ段階では、言語聴覚士が中心となってニュースや身近な出来事について話し合うグループ療法が行われることもあります。

まとめ

言語障害があると、日常生活はもちろん、社会生活においてもスムーズなコミュニケーションを取ることが出来ずに、社会から孤立することになりかねません。

言語能力を改善することがリハビリの大きな目的ではあります。しかし、残念ながら完全に回復することが難しい場合もあります。したがって、言葉で話すことが難しければ、ジェスチャーや文字盤、筆談、音声パソコンなどを使い残された機能を生かしたコミュニケーション方法を探ることも大切なことです。

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