家庭で出来る!維時期のリハビリテーションの進め方
「家に帰ったらリハビリはどうするの?」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。今までは、「病院」が主導でリハビリが進められてきたので問題はありませんでした。退院後はリハビリの主導権は「家族」に移ります。
しかし、どうやってリハビリの進めていけば良いのか分からず、何もしない人がほとんどです。しかし、それではダメです!!退院と同時にリハビリテーションも終了というわけにはいきません。
折角、苦労して大切に育ててきたリハビリテーションという芽を枯らしてしまいかねません。
家庭でのリハビリを続けないと、徐々に機能が低下し、寝たきりや廃用症候群を引き起こすかもしれません。そして、それに伴いきっと介護者の負担も増えてしまうことでしょう。
在宅介護をスムーズに進める為にも、大変重要なのが「家庭でのリハビリテーション」です。この記事では、「家庭でのリハビリテーションの進め方」について解説しておりますので、是非チェックしていただければと思います。
家庭でのリハビリテーションの目的
家庭(維時期)でのリハビリの目的
家庭でのリハビリテーションは、病院で行うような根本的な身体機能を回復させるリハビリテーションというよりも、生活を送るうえで必要な動作を鍛え、これ以上機能が低下しないことを目的に進めます。
なぜなら、リハビリで機能回復が期待できる期間には、限界があるためです。(参考:『脳梗塞や脳出血の麻痺はリハビリでどこまで回復するのか』)。
つまり、家庭でのリハビリテーションは、回復期のリハビリテーションで回復あるいは獲得した身体機能を維持しながら、日常生活の自立と社会復帰を目指します。また、家庭でのリハビリテーションをのことを維時期のリハビリテーションとも呼びます。
したがって、維時期のリハビリテーションは、本人の状態を見ながらその人に合ったリハビリに取り組むことが一番です。家庭でのリハビリテーションは、本人の身の周りのことや家事などに参加してもらい、さりげなく取り入れることを念頭に進めていきます。
- 回復期に取り戻した機能の維持・向上
- 障害のレベルに合わせた新しい生活への適応
- 生きがいを持ち楽しく生活すること
後遺症のレベル別のリハビリの進め方
- 回復期に最大限に身体機能を取り戻した人
- 機能を維持しながら、さらなる新しい活動や社会復帰を目指す
- 機能回復が不自由分なまま維時期に入った人
- 日常生活動作の訓練を主体に行いつつ、身体機能の維持・回復を目指したリハビリを続ける
- 一旦、機能回復したのに、何らかの理由で再び機能が低下した人
- 機能低下の原因を突き止め、それを改めるリハビリを行う
家庭でのリハビリは=自分で出来ることは自分で!
家庭でのリハビリテーションのポイントは、生活に必要な動作のうち「何に介助が必要で、何に介助が必要でないか」という見極めることから始まります。次のようなことを基準に日常生活での動作を分けて下さい。
- 本人が一人で安全にできることは何と何か
- 本人が一人でできるが、目を離してはいけないのは何と何か、
- 1人ではできずに部分的介助あるいは全介助が必要なのは何と何か
日常生活動作を分け「本人が1人で安全にできること」は積極的にしてもらうようにしましょう。また、「本人が一人でできるが、目を離してはいけないこと」は、「手を離さないが、目は離さない」という基本方針で見守ることが重要です。そして、「1人ではできずに部分的介助あるいは全介助が必要なこと」だけ介護者は手を貸すようにしましょう。
しかし、障害が重い場合は日常生活の様々な場面で介助・介護が必要になり、「何に介助が必要で、何に介助が必要でないか」を判断するのが難しい場合があります。そういった場合は、医師や看護師、リハビリ先生などの専門家にアドバイスを求めて下さい。無理をしすぎると、骨折などの原因になります。
維持期のリハビリテーションの効果
根気よく家庭でのリハビリテーションを続けることで、回復期のリハビリテーションで再獲得した能力を出来るだけ長く維持するあるいは機能が低下する速度を遅らせることができます。
また、維時期といえども、積極的に家庭でのリハビリテーションを進めることで機能が回復する可能性があります。退院後も訪問リハビリテーションや通所リハビリテーションを利用し訓練しのもとリハビリをする方法もあります。
病院での回復期には、嚥下ができず胃ろうを付けていたのに、家に戻ってきてから口から食べ物を食べられるようになり、胃ろうを外せる例もございます。(実は、これは著者の実体験でございます。『食事介助を上手にする方法|嚥下障害や胃ろうの人でも諦めないで』の記事で詳しく解説しております。)
逆に、家庭では、甘えもあって家族への依存度が高くなる傾向にあります。また、周囲も「危ないから」「可哀想だから」といってなんでも介護者が手をだしてしまいがちです。
しかし、何でもかんでも手を貸してしまうとマイナスに働いてしまいます。本人が動かないことで、病院ではできた動作が、家庭に帰ってしばらくするとできなくなったり、さらに機能が衰え寝たきりに近い生活になってしまうケースもあります。こうした状態になると、本人の生活の質(QOL)が低下するだけでなく、介護者の負担も大きくなります。
家庭でのリハビリテーションのポイント
食事を工夫する
嚥下障害がある場合は、飲み込みやすくする工夫が必要です。とろみを付けるなど工夫をしましょう。
嚥下障害のある方への食事の作り方は『嚥下に問題がある人に「食べやすい」ごはんの作り方のコツ』で詳しく解説しております。
出来る範囲で役割を持たせる
食事の前にテーブルを拭く、ポストから手紙や新聞を取り出す、古い新聞を紙袋に入れる、洗濯物をたたむ等々どんなことでもよいので本人が出来ることはなるべく手伝ってもらうようにしましょう。家事への参加は、リハビリテーションに繋がるだけでなく、本人の生活意欲を向上させます。「自分が役に立っている」という気持ちを抱けるように工夫しましょう。
社会交流をすすめる
介護が必要な状態になるとついつい家に閉じ込めがちになります。しかし、閉じ込めると前述の通り、ますます機能が低下していく一方です認知症の人が社会参加をした場合、症状が和らいだというケースも多々あります。逆もしかりです、積極的にデイサービスやデイケアを利用したりして同じ障害を持った人たちとの交流の場につれだすなどの社会参加をはかりましょう。
自尊心を尊重する
介護が必要な状況になってもプライドや羞恥心は失わないものです。これは、認知症の人にも言えます。したがって、その人の人格を尊重し、否定しない、命令しない、叱らない、バカにしない対応を心掛けましょう。
家の中を安全にバリアフリー化する
退院後に、無理なく家庭でのリハビリテーションを進めるためには、住環境をバリアフリー化し整備することも必要です。車いすで移動できるように床の段差をなくす。廊下や階段、トイレに手すりを付ける、足元が暗くならないように足下灯をつけるなど介護者も本人にとっても生活しやすいよう住環境をバリアフリー化していきましょう。
階段や廊下、トイレに手すりを付ける
階段は両側に手すりを付けます。健康であればどちらの手でも手すりを握ることが出来ますが片麻痺がある場合は、健康な手でしか手すりを握ることが出来ません。「なら片方だけで・・いいかな・・・」「それダメ―です!!!階段を降りるときは逆側に手すりが必要なことを忘れないでください。必ず両側つけるようにしましょう。また、本人が持ちやすい高さに合わせるようにしましょう。
滑らない工夫をする
骨が弱ってきている高齢者はちょっとこけただけで骨折してしまうこともあります。ワックスがけした廊下や、水をこぼした床などは滑りやすい場所です。しっかりと水分やワックスを拭き取り対策することが大切です。
また、カーペットの端につまずかないよう床に止めたり、床に物を置かないようにしたり、電気の配線などは壁にそって配置するようにしましょう。そして、万一つまずきそうになった時は、タンスやカーテンなどにつかまることもありますので、しっかりと防振マットや壁に固定するなど対策しましょう。
トイレは洋式にリフォームする
手足に麻痺がある場合は、和式よりも洋式のトイレの方が使い勝手が良くなります。立ったり座ったりするときの補助として手すりを付けておくと安心です。
浴室は滑らない工夫をする
浴室はただでさえ滑りやすい環境です。麻痺がある人にとっては尚更です、しっかりとバリアフリー対策をしましょう。タイル性の滑りやすい床には店頭防止マットを敷きましょう。床だけでなく浴槽の中にも転倒防止マットを敷くと滑って溺れることを防げます。
浴室の手すりは、実際に入浴介助を行い必要と考えられる場所に取り付けましょう。浴室のイスも大きめのものを選び、安全に入浴できるように配慮しましょう。
まとめ
最大の家庭でのリハビリテーションは、「自分でできることは自分でやって貰うこと!」です。
家庭での維時期のリハビリテーションは何よりも本人が出来ることを積極的にしてもらうことが大切です。そして、リハビリテーションという芽を鮮やかな花に育てていただければと思います。
また、維時期のリハビリテーションの効果を最大に高め大輪の花を咲かせるためには、家族は安全な環境を提供するとともに、本人のモチベーションアップに努めることが大切です。
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