糖尿病のきほん
「糖尿病って何?どういう病気なの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
糖尿病は21世紀の国民病です。現代の日本社会では、食の欧米化や高度経済成長の進展により、糖尿病患者が増えており、今後も増加し続けることが予想されます。
糖尿病になると、網膜症や腎症、神経症状、動脈硬化症(狭心症、脳梗塞、心筋梗塞)などの合併症を患うことも多く、重篤な状態にも陥る可能性がある恐ろしい病気です。また、糖尿病はアルツハイマー病の発病リスクを高めることでも知られています。
ですが、糖尿病は予防することができます。そのためには、糖尿病の正体や原因について知る必要があります。
この記事では、「糖尿病とは何か」という疑問から「糖尿病の原因や症状、予防・治療法」に至るまで糖尿病について詳しく解説しておりますので、是非参考にしていただければと思います。
1.糖尿病とは?
糖尿病とはインスリンが減少し、高血糖になる病気
糖尿病とは、血糖値(ブドウ糖の濃度)が高い状態、つまり”高血糖”を指す病気です。
私たちは、ご飯やパンなどに含まれる炭水化物、イモ類などに含まれる糖分=ブドウ糖(グルコース)を摂取し、それを血液中に取り込み、エネルギー源として活用することで生きています。
したがって、ブドウ糖は私たちの生命活動を維持するためには必要不可欠な栄養素です。しかし、このブドウ糖が必要以上に多くなってしまうと・・・糖尿病になってしまうのです。
健康な人の場合は、インスリンという膵臓から分泌されるホルモンが血液中のブドウ糖をエネルギー源やタンパク質の合成や細胞の増殖の為に効率的に使い、一定の範囲に収まるよう血糖値を上手にコントロールします。しかし、何らかの原因でこのインスリンの作用が悪かったり、インスリン自体が少なかったりすることでブドウ糖が効率的に使われず高血糖になり糖尿病を発症してしまいます。
1型糖尿病と2型糖尿病の2タイプ
糖尿病は、大きく「1型糖尿病」と「2型糖尿病」の2タイプに分けることができます。どちらでも体内のインスリンの減少がみられますが、その原因や症状、特徴に違いがあります。
- 1型糖尿病
- 1型糖尿病は、主に自己免疫疾患によって、膵臓にあるβ細胞(インスリンを分泌する細胞)を破壊してしまうことが原因で、インスリンの分泌ができなくなり発症します。β細胞が破壊される原因は、ウィルス感染だと言われています。 以下は、1型糖尿病の主な特徴です。
- 発症年齢が若く、主に小児から思春期に発症することが多い。中高年での発症は少数。
- 急激に血糖値が上がる
- 肥満や生活習慣との関係性はない
- 糖尿病患者全体の10%以下
- 1型糖尿病の症状は、口の渇き、多飲、多尿、疲労感、急激な体重減少などがある。
- 初期段階から自覚症状がある
- 直ちにインスリン注射による治療が必要(1型糖尿病はインスリンがほとんど又は全く分泌されなくなる為)
- 2型糖尿病
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2型糖尿病には、インスリンの分泌が少なくなって発症するもの(インスリン分泌不全)と、体内でインスリンが十分作用しなくなって発症するもの(インスリン抵抗性)があります。2型糖尿病の原因は、遺伝的に糖尿病になりやすい体質や、食べ過ぎや運動不足、肥満、ストレス等の生活習慣が関係しています。
以下は、2型糖尿病の特徴は以下の通りです。
- 発症年齢は40歳以上の中高年に多い(若者でも発症します)
- 徐々に血糖値が上がる
- 肥満や生活習慣との関係性がある
- 糖尿病患者全体の90%以上
- 2型糖尿病の症状は、疲労感、皮膚の乾燥、頻尿、目のカスミ、手足の感覚が低下、感染症によくかかる
- 初期段階ではほとんど自覚症状がない
- 治療は食事療法、運動療法、薬物療法(経口血糖降下薬、インスリン療法等)
したがって、みなさんが思い浮かべる”肥満”や”運動不足”、”喫煙”といった生活習慣と関係しているものは『2型糖尿病』です。
2.糖尿病の検査方法と診断基準
”糖尿病かどうかは”を診断するためには、血液検査を実施します。血液検査では、血液中に含まれる”ヘモグロビン”と”血糖値”を測定します。
主に、糖尿病を判定する検査では、「HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)」と「空腹時血糖」の2項目を参考に糖尿病かどうかを診断します。
- Hba1cによる糖尿病検査
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高血糖状態が長期間続くと、血液中の余分なブドウ糖は体内で赤血球の中にあるタンパク質である”ヘモグロビンA1c”と結合します。こうしてブドウ糖とヘモグロビン(Hb)が結合してできたモノがグリコヘモグロビンです。特に、糖尿病と密接に関係をするものをHbA1cと言います。
- Hba1cの量が多いほど余分なブドウ糖が血液中に多く存在していることになります。
- HbA1cの正常値は、5.6~6.0%とされていて、6.5%以上の場合は糖尿病の疑いが高いです。
- 空腹時血糖による糖尿病検査
- 血液の中のブドウ糖の値です。正常値は、110㎎/㎗未満で、一度でも126㎎/㎗以上の値を超えた場合は糖尿病と診断されます。
3.2型糖尿病に中高年は注意!
糖尿病は21世紀の国民病
厚生労働省による調査(平成24年)によると、糖尿病の有病者と予備軍はなんと約2050万人にも達すると推計されています。その内、糖尿病が強く疑われる人(糖尿病有病者)が950万人、可能性が否定できない人(糖尿病予備軍)は、1100万人ともいるとされています。
糖尿病有病者のうち、現在治療を受けている者の割合は、男性65.9%、女性64.3%です。つまり、糖尿病を患っているにもかかわらず、治療を受けていない人が半数以上も存在します。特に、2型糖尿病は初期段階での自覚症状も少なく、知らず知らずのうちに糖尿病が悪化していく危険性があります。
生活習慣が変わらない限り糖尿病の増加傾向は続いていくと予想され、糖尿病は21世紀の国民病として注意しなければいけません。
2型糖尿病の症状
糖尿病が軽症の場合、体に異変が何も起こらないことも多く気づきにくくなっています。しかし、血糖値が高い状態が続くと次のような症状が現れることもあります。
- 著しいのどの渇き
- 大量の尿を排泄する状態
- 体重が減る
- 意識障害、昏睡
糖尿病が原因で”アルツハイマー”や”脳卒中”等の病気のリスクが上昇
また、糖尿病は、他の合併症の原因にもなる病気です。糖尿病で血糖値が高い状態が続くと、脳卒中や心筋梗塞といった合併症を患う可能性が高くなります。
例えば、糖尿病で高血糖であることは動脈硬化症を促進させます。脳内の血管の動脈硬化を促して、脳梗塞を起こす原因にもなります。
糖尿病患者の約40~60%が脳卒中と関係が深い高血圧を併せ持っていると言われています。この数字は糖尿病でない人の約2倍の数に当たります。その理由としては、血液中のブドウ糖が増えることで、酸化LDLコレステロールを作り血管にくっつくためです。他にも糖尿病になると血液が固まりやすく、血栓ができやすくなるので動脈硬化を起こしやすくなります。
また、糖尿病は中高年に多い認知症の引き金となるアルツハイマー病の発病リスクを高める危険因子としても知られています。
このように2型糖尿病では、血糖値が高くても当初は自覚症状が現れないことが多く、合併症が合わさることで重篤な状態になることもあるので注意が必要です。
4.糖尿病の予防・改善法
2型糖尿病の原因は、遺伝的因子と環境的因子(生活習慣)の二つに分けられます。
特に、現代社会では、環境的因子が糖尿病の原因として、大きく影響を及ぼしています。遺伝的因子から糖尿病を予防することは難しいですが、生活習慣を見直し環境的因子を減らすことから糖尿病予防・治療を始めましょう。
現在、空腹時血糖値が126㎎/㎗以上ある場合には糖尿病と診断されます。110~125㎎/㎗は糖尿病予備軍であるとされています。
血糖値が高い場合は、生活習慣の見直しを行います。糖尿予防・治療のポイントとなるのが運動と食事です。
2糖尿病の原因は肥満や食べ過ぎ、運動不足
血液中のブドウ糖を効率よく使う為には、インスリンというすい臓から分泌されるホルモンが必要です。しかし、太っていると脂肪のせいでインスリンが効率的に使えなくなり、血糖値が上がってしまいます(高血糖)、この状態が糖尿病です。痩せて脂肪がなくなれば、インスリンを上手に使えるようになります。
2糖尿病の予防や治療は①食事療法②運動療法を徹底!
食べれば食べるだけ、血糖値が高まります。特に、脂質の過剰摂取が糖尿病の増加に拍車をかけます。脂質を減らしてバランスのいい食事を心掛けましょう。
一日の摂取エネルギー量を少なくするようにします。インスリンの効き方に見合った食事量にすることが大切です。
適度な運動をするとインスリン感受性が高まり、血糖値が下がることが研究により分かっています。さらに、筋肉を動かすことで『AMPキナーゼ』という酵素が活性化し、脂肪や糖の分解が促進され、代謝や血糖値の改善が期待できます。
効果的なのは、ウォーキングやマラソン、サイクリング、水泳などの有酸素運動や筋力トレーニングなどのレジスタンス運動です。なお、短距離走などの無酸素運動は逆に、急激な高血糖や低血糖を招き糖尿病の症状を悪化させてしまう危険性があります。
アメリカの「糖尿病予防プログラム」という発表では、糖尿病予備軍の人が、体重を5%落とし、一日15分の運動を毎日続けることで、糖尿病の発症確率が58%も減少することが分かっています。
5.糖尿病の薬物療法
食事と運動の改善を行っても血糖値が下がらない場合は、薬物療法が必要となってきます。糖尿病の薬物療法には、経口薬とインスリン注射があります。例え少量でもインスリンが分泌されている間は、傾向薬での治療となります。
経口薬が効果を発揮しない場合、あるいは体内でインスリンを作る能力がない場合には、インスリン製剤を1日に数回皮膚注射します。薬が効き始めるまでの時間、あるいは効果の持続時間などによって、超速効型、速効型、時効型などの種類があります。
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