認知症予防は3チャンス
認知症予防には、3回のチャンスがあることを知っていますか?また、その3回のチャンスは「どのタイミングで訪れるのか」また「何をすればよいのか」を知っていますか?
予め「どのタイミング」で「何をすればよいのか」知っておかなければ病気を予防しようにも予防できません。
ここでは、認知症予防のチャンスが「どのタイミングで訪れるのか」、また「何を実践すればよいのか」ということを説明していますので是非参考にして下さい。
予防のタイミング
認知症予防のチャンスは3回です。そして、その3回のチャンスを1次から3次までの三段階に分けて考えます。
1次~3次予防のタイミングは、それぞれ次のようになります。
- 1次予防
- 認知症の発症前:認知症の原因である基礎疾患の予防と生活習慣の改善
- 2次予防
- MCI(軽度認知障害)の段階:認知症へ移行する前のMCIの段階での早期発見と予防
- 3次予防
- 病気の発症後:薬で病気の治療を行いつつ、リハビリや適切なケアで病気の進行を遅くするよう予防
認知症発症後の3次予防が大切な理由
リストからも分かる通り、1~2次予防は病気を発症する前であり、3次予防は病気を発症した後です。
一般的な病気の場合は、1~2次のことを「予防」、3次を「治療」と言います。しかし、認知症の場合は病気を発症後も予防を怠ってはいけません。その理由は2つあります。
- 1つ目の理由は、認知症の多くは、アルツハイマー病に代表されるように、何年もかけて症状が悪化していくのが特徴であり、その間に薬やリハビリテーション、適切なケアを行うことで病気の進行を遅くすることが可能です。したがって、「3次予防をする人」と「何もしない人」では、進行スピードは雲泥の差であり病気の予後に大きな影響を与えます。
- 2つ目は、医師に「認知症です」と診断されて初めて真剣に認知症という病気に向き合う人が多いことも、3次予防が重視される理由の1つです。
それでは、1次予防、2次予防、3次予防それぞれの段階で「何に注意して、何をすればよいのか」確認していきましょう。
1次予防
1次予防とは、事前に認知症のリスクを高める原因を失くすないしは減らすことで、病気を予防することです。例えば、「ガン」や「脳梗塞」を例にすると1次予防とは次のようなものです。
ガン | 禁煙、アルコールの制限など |
---|---|
脳梗塞 | 高血圧や動脈硬化の改善、肥満解消など |
認知症 | ??? |
それでは、認知症のリスクを高める原因とは、何なのでしょうか?
認知症の多くは病気が直接的原因
認知症の直接的な原因の多くは、なんらかの病気です。アルツハイマー型しかり、レビー小体型しかり、脳血管性しかり、認知症といわれる病気の多くは何らかの病気が原因で発症します。
アルツハイマー型認知症 | アルツハイマー病 |
---|---|
レビー小体型認知症 | レビー小体病 |
脳血管性認知症 | 脳卒中(脳梗塞や脳出血) |
その為、1次予防はこれらの認知症のリスクを高める病気を予防することになります。
ところが、認知症を引き起こすと考えられる病気は百種類以上存在し、その中でも多くを占める「アルツハイマー病」や「レビー小体病」といった病気の発症にまで至るプロセスは、未だ完全解明されていないのが現状です。
それでは、私たちはただ指を咥えているだけで、何もなす術はないのでしょうか?いいえ、予防法はあります。
認知症の原因疾患の予防法
アルツハイマー病やレビー小体病や脳梗塞といった認知症の直接的な原因となる病気は、糖尿病や高血圧症、脂質異常症といった生活習慣病が密接に関係していることが近年の研究からも分かっています。
したがって、生活習慣病を治療しつつ、生活習慣を見直し・改善することが1次予防のかなめです。
そのため、1次予防では、食事、運動、睡眠、知的活動や社会交流などの生活のあらゆる場面から予防プログラムを組まれます。こういうと「何か難しそうだな・・・」と考える方も少なくないと思います。
しかし、実は非常にシンプルです。
脳梗塞や糖尿病、高血圧症などの生活習慣病にならない為には、暴飲暴食を止め、たばこを控え、運動をし、良質な睡眠を取ることです。
これら生活習慣の見直し・改善が、認知症のリスクを高める病気の予防には必要不可欠なのです。
3つの生活習慣を見直し、認知症・若年性アルツハイマー病を予防
2次予防
2次予防とは、認知症の疑いがある場合に直ぐに専門医に受診し、MCI(軽度認知障害)の段階で早期発見し、認知症へ移行しないように治療・リハビリすることです。
MCIの段階で早期発見し予防
MCI(軽度認知障害)とは、その名の通り認知症の一歩手前の段階のことであり、最後の予防壁です。(MCIについては『MCIを解明せよ』で詳しく説明しています)。MCIの段階で適切な治療やリハビリを行うことで、認知症へ移行することを防ぐことができます。
その為には、『認知症の初期症状』で記憶力や認知能力が衰えていないか、病気の疑いがあるかどうかをチェックし、少しでも違和感や疑問を感じたら『専門医の探し方&良い医師・悪い医師の見分け方』を参考に専門医を探し受診しましょう。
そして、MCIと診断された場合は、こちらの『MCI(軽度認知障害)を早期発見し、認知症を予防する方法』に載っている予防法を実践することが大切です。
もし、認知症でもMCIでもないと診断された場合でも、気持ちを引き締め一次予防に立ち返り病気の予防に真摯に取り組み継続することが大切です。
3次予防
3次予防とは、認知症の治療そのものを指します。お薬で病気の治療を行いつつ、リハビリや適切なケアで病気の進行を遅らせるよう努めます。
認知症を根本的に治す薬はまだ開発されていないので、病気の進行を予防することに重点が置かれます。
アルツハイマー病やレビー小体型の場合は、病気の進行を遅らせるためのお薬としてアリセプトという治療薬を服用します。
また、「アルツハイマー病」と「脳血管障害」という具合に、認知症の原因である病気を2つ以上あわせ持つ混合型認知症の予防も大切です。混合型認知症になると、一気に病状が悪化することが多く注意が必要です。
混合型認知症は、脳梗塞や脳出血を原因とした「脳血管障害」と「アルツハイマー病かレビー小体病のどちらか」というパターンが多いので、脳梗塞や脳出血を防ぐ為に高血圧や動脈硬化を改善することも大切です。
また、病気の進行とともに歩行や立ち上がりなどの運動能力、記憶力などが低下します。運動能力や記憶力の低下を予防する為にも、リハビリテーションやレクレーションは欠かせません。
そして、介護の仕方や本人と介護者との人間関係、友達との交流といったコミュニケーションも病気の進行スピードに影響します。認知症になっても人生を楽しみ、他者と交流することは脳にとっても非常に良い刺激になり、進行を抑制することが出来ます。
まとめ
1次や2次予防で病気の発症を予防できるに越したことはありません。しかし、認知症は老化とともに発症率が高まる病気です。2012年の厚生労働省の調べでは、なんと65歳以上の4人に1人が認知症とその予備軍であるMCIであるとされています。
したがって、今までご紹介してきた1次・2次予防に努め健康的な生活を送っていても100%認知症を予防できるわけではありません。病気になる時はなってしまうのです。
しかし、発症したことを悲観せずに、本人と介護者がともに手を取り合い3次予防に取り組んでいただき、アットホームな介護生活を送って頂ければと思います。
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