アートセラピー(臨床美術・芸術療法)で認知症を予防・改善する為のコツ
「アートセラピー」というものをご存知でしょうか?
この記事では、「アートセラピーって何?」ということから「アートセラピーの進め方は?」「アートセラピーの効果は?」ということに至るまで詳しく解説しております。
アートセラピーとは
アートセラピーとは、絵を描く、塗り絵を塗るといった芸術活動を通じて創作意欲や五感の働きを引き出し、脳を活性化させるリハビリテーションの1つです。アートセラピーは、芸術療法や美術療法、臨床美術などとも呼ばれています。
アートセラピーの参加者
認知症やMCI(軽度認知障害)
「アートセラピー」は、主に、認知症や認知症予備軍であるMCI(軽度認知障害)の方を対象に実施される非薬物療法の1つです。認知症やMCIの方だけではなく、発達障害の人、うつ病を患っている人などにも用いられます。
臨床美術士
アートセラピーは、臨床美術士(クリニカル・アーティスト)の指導の元で、対象を見ながら絵を描くことによって脳の活性化を図るリハビリテーションです。
臨床美術士とは、誰もが苦手意識を持つことのないように工夫されたアートプログラムを通じて参加者の完成を引き出し、生きる意欲の創出に繋げていく専門家です。
とはいっても、アートセラピーは、臨床美術士といった専門家でない、ご家族や介護士の方でも気軽に取り込むことが出来る認知症のリハビリテーションです。
アートセラピーの進め方
認知症を発症すると物の形や空間を認識することが困難になっていきます。
そこでアートセラピーによって、「絵を描く」「何かを作る」という行為、つまり対象を認識し、色や形や存在感を感じ取り、「紙という平面に描き出す」「物体として築き上げる」というプロセスそのものが脳にとって良い刺激となります。
アートセラピーの創作物
アートセラピー(芸術療法)では、次のようなものを創作します。
- 絵画
- 塗り絵
- 陶芸
- はがき絵
- ペーパークラフト、折り紙
五感を刺激することが大切
アートセラピー(芸術療法)は、ただ絵を描く、物を作れば良いというものではありません。
アートセラピー(芸術療法)の効果を最大限に高めるには、五感を刺激し脳をフル活用させることが大切です。
例えば、食べ物を絵に描く場合は、次のようにして五感全てを使ってアートセラピーに取り組んでもらいます。
触覚 | 対象物を手で触り肌触りを感じる |
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嗅覚 | 対象物の匂いを嗅ぐ |
味覚 | 食べて味を確かめる |
聴覚 | その物に関わる思い出を語り合ったりしながら、制作に対するイメージや意欲を引き出す |
視覚 | 色選びや対象物を実際に描く |
このように、五感をフル活用することで脳を活性化し「アートセラピー(芸術療法)」の効果が最大限に高まります。
陶芸をする際なども、ただ創作してもらうのではなく、土の感触や香りを感じてもらうことが大切です。
アートセラピーを実施する上での注意点
ただし、「アートセラピー(芸術療法)」に取り組んでもらう際、いくつかの注意点がございます。
高齢者は、色や線を真剣に選びながら描き上げた作品に思い入れを持ちます(適度なストレスが脳にもプラスに働きます)。そして、作品の良さを周囲に受け入れてもらうことで喜びを感じ、心の安定や気分の活性化が促されます。
アートセラピー(芸術療法)は、作品の「良し悪し」を判断するものではありません。
- 「感性への刺激」
- 「その人らしい表現の追及」
- 「誰でも無理なく制作できる」
主に以上の3点に注意してアートプログラムを作ります。絵を描くことによって、その人らしさを受け入れることが芸術療法の目的です。
「アートセラピーに取り組む際の注意点」を以下に列挙しておりますのでご確認ください。
誰でも無理なく制作に取り組める(その人のレベルに合うものを制作してもらう)
重度の認知症の方に、いきなり油絵を描いてもらっても上手くいきません。まずは、簡単にできる塗り絵などから取り組んでもらいましょう。
作業的にならない、強要しない「自分の創りたいものを作る」「描きたいものを描く」ことが大切
芸術療法の1番の目的は、制作を通じて、意欲や喜びを感じてもらうことです。したがって、本人が嫌がっているのにもかかわらず、無理やりアートセラピーに取り込ませることは、意欲や喜びが得られないばかりか、ストレスとなり逆効果となりますので注意が必要です。
コミュニケーションも大切
アートセラピーでは、作品それ自体の良し悪しではなく、制作や作品を通じて、コミュニケーションを図ることも大切です。他人に認められたリ、作品について語りあったりすることで喜びや意欲を駆り立てましょう。また、他人に受け入れられることで人間は喜びを感じますので、作品に対しては、けなしたりせずに褒めるようにしましょう。
アートセラピーの効果
認知症に対しての芸術療法の効果としては、次のようなことが期待できます。
- 認知症の進行を遅らせる
- MCI(軽度認知障害)の認知症への移行を予防する
アートセラピー(芸術療法)で期待できる具体的効果
精神状態が落ち着く
五感をフルに使ってイメージを膨らませる創作活動は、自分の思い通りに絵を描く活動です。自分思いを表に出しそれを完成させることは、人間活動において最も高等な欲求である「自己実現の欲求」を満たすものなので完成すると満足感が得られ、心が穏やかになります。
認知症予防・認知症の進行抑制
アートセラピーに取り組んだ高齢者を対象に、認知症の進行を調査したところ認知症の進行を遅らせる効果があります。
発想力や意欲、集中力が高まる
自らの手で作品を完成させるという制作プロセスを通じて、意欲、集中力が高まります。
コミュニケーションが増え、活気づく
同じテーマや同じ空間で美術療法に取り組んだ高齢者同士の共通の話題となりコミュニケーションが活発になります。そして、作品に対する感想などを語りあうことで、活気づいたり、友達が増えることが期待できます。
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