良い認知症ケアと悪いケア

認知症ケア

認知症ケアとは、認知症の方への介護や看護のことです。

「単に身の周りのお世話をするだけ」という介護や看護は、「良い認知症ケア」とは言えません。「ただ、お世話をしておけばそれで良い」といういい加減な考えでケアすると、徘徊や暴力、抑うつ等の認知症の症状の悪化を招く原因になります。

なぜなら、認知症の徘徊や暴力といった周辺症状の現れ方は、生活環境や人間関係が大きく影響されるからです。

それでは、「良い認知症ケア」とはどのようなものなのでしょうか?

それはズバリ、認知症の人の人生や暮らしを出来るだけ豊かにし、生きることに幸せを感じてもらうようサポートすることです。

したがって、認知症の人をケアする家族やヘルパー等の介護関係者は、本人の生活の質を高めるような関わり方を心掛けることが大切です。是非、ここで「良いケア」と「悪いケア」の違いを学び、その違いから理想的な認知症ケアとは何なのか確認していただければと思います。

良いケアは人格尊重とオリジナルを追求

しかし、「認知症の方の生活の質を高め、幸せを感じてもらうにはどのようにケアしたら良いのでしょうか?」

その答えは、「人格を尊重するケア」と「本人に合わせたオリジナルなケア」を追求することです。しかし一体「人格を尊重するケア」と「本人に合わせたオリジナルなケア」とは、どのようなものなのでしょうか?

まずは、徘徊や暴力などの周辺症状(BPSD)を例に確認していきましょう。

ケア事例①

徘徊

認知症の人の徘徊暴力などの厄介な行動は、皆さん頭を抱える問題だと思います。厄介な症状を防ぐ為に、無理やり部屋に閉じ込めたり、身体拘束をしたりしていませんか?これらは本人の人格を無視した悪いケアです。徘徊や暴力は無理やり押させつけることで、無くなります。

しかし、その代償として人格の崩壊を招き、抑うつや介護拒否、幻覚などの症状が現れたり、さらに認知症が悪化し寝たきりになることでしょう。

一方、良い認知症ケアとは「本人の人格を尊重し、好きなように自由に過ごしてもらい、その上で、危険がある場合に備える」ことが大切です。

徘徊もポジティブに考えれば、足腰のリハビリや適度な疲れで夜間に起こされることが少なくなったり、暴力が収まるなどのメリットがあります。介護者は、本人にそっと寄り添うよう見守ることが大切です。

また、暴力症状に対しては、「○○さんは、なぜこのような行動を取るのか?」という原因や背景を探り、それを解消するように努めることが大切です。

徘徊行動には『徘徊の原因と対策法』、暴力行動には『認知症や脳卒中の方の暴力・暴言への対応』でさらに踏み込んだケア方法を紹介しています。

ケア事例②

良いケア

カラオケなどの音楽療法は、認知症のリハビリとしてデイサービスなどの介護施設で広く取り入れられその効果も証明されています。

しかし、人前で歌う事が嫌いな人にとっては、その時間が苦痛以外の何物でもありません。認知症の予防・改善効果があるからといって、誰にでもマイクを持つことを強要することは、逆に抑うつや介護拒否などを招く原因となってしまいます。

一方、良い認知症ケアとは「認知症の人全員に当てはまるケア」を追い求めるのではなく、「本人の個性や性格、人生を尊重したオリジナルなケア」を追求することが重要なのです。

欧米では、認知症の方1人1人に合わせて、音楽療法の他にも、学習療法園芸療法アートセラピーアニマルセラピーなどの多数のリハビリプログラムを取り揃え、その中から、本人に合うベストなプログラムを選択・実践するようになってきています。

本人が興味を持ち、熱心に楽しんで取り組んでこそ高いリハビリの効果が期待できるのです。

悪いケアから学ぼう

悪い介護

「人間は失敗から学び、悪いことの方が頭に残りやすい生き物です。」したがって、ここでは、イギリスの心理学者トム・キッドウッドの「認知症の介護の為に知っておきたいこと パーソンセンタードケア入門」から「10の悪いケア」からいくつかをピックアップしているので、ぜひ参考にして下さい。

相手の事を知ろうとしない 相手をただの介護の対象として捉え、事務的なケアでコミュニケーションを取らない
ごまかしたり、嘘をつくこと 「どうせ忘れるだろう」と相手と向き合わずに1人の人間として接していない
特別であるように扱う 認知症の人を問題がある人、異常な人として扱う
何でもスタッフがやってしまう 「どうせできない」と決めつけ、本人が能力を発揮する場や努力する場を与えない
説明をせず、承諾を得ない 説明や同意を得ないまま、ケアをする

いかがですか?みなさん心当たりはございませんか?

確かに、認知症の人は記憶が定かではなくなり、今さっきのことを忘れてしまいますが、自我はしっかりと保たれています。

自分が入院して、オムツになった時を想像して見て下さい。看護師さんに、何の声かけもせずに、事務的にズボンを下ろされオムツを交換されたらどう思いますか?きっと、良い気持ちはしないことでしょう。

認知症ケアもこれと同じです。常に「自分自身がどのようにケアされたら気持ちが良いのか」を考え、人格や人権に配慮したケアを行うことで、きっと良好な関係が築けるはずです。

心理学的接近法

プラスの関係

良い認知症のケアでは、要介護者と介護者との「良好な関係の築き方」が重要です。近年、「良好な関係の築き方」として注目されているのが、「心理学的接近法」です。

心理学的接近法の中の「バリデーション」や「パーソンセンタードアケア」は共に心理学者が提唱した認知症ケアの手法です。両方に共通することは、人と人の繋がり、人の感情に触れることをが大切とされています。その為には、何よりも関係性が重視されています。

良好な関係を気づくためには、ケアされる人が生きる上に置いてプラスの関係になることが求められています。したがって介護者は認知症の方にプラスの存在になるようにケアしましょう。次の4つのポイントがプラスの存在になる為に必要なスキルです。

  • 認知症や介護ケアの知識
  • 優しさ
  • 柔軟で臨機応変な対応
  • その人らしさを見抜く分析力

認知症ケアを学ぶ上で、『認知症の上手な対応~接し方1つで症状が良くも悪くもなる~』『これで安心!レビー小体型認知症の方へのケアのコツ6選』の記事もおすすめです。

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