高齢者や認知症の方に運転をスッキリ止めてもらう5つのコツ

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「最近、お父さん運転の腕が鈍ってきたかな・・・今信号を無視した・・・」このようなこと身に覚えはありませんか。

先日も、認知症を発症している高齢者が、車で歩道を走行し多くの人が亡くなったというニュースが報じられました。また、2014 年に起きた高速道路の逆走の件数のおよそ70%が65歳以上の高齢者によるものであり、中でも認知症やMCI(軽度認知障害)の方が12.1%と報告されています(警察庁)。

近年、高齢者による交通事故が増加しています。人間は年を重ねるにつれ、運動神経や反射神経、判断能力が衰えていきます。悲しいことですが、これは誰も逆らうことができない定めです。

確かに、バスや電車等の交通インフラが整っていない場所では、自動車は大変重要な交通手段です。しかしもし、あなたやご家族が”交通事故の加害者となり、誰かの人生を狂わせてしまった”としたらどうでしょうか?きっと誰もが後悔することでしょう。

したがって、時には自身やご家族、他人の命を守る為にも”運転をやめる、やめてもらう”という決断を下すことが必要です。しかし、なかなか「お父さん、運転を止めて」という一言が切り出せない方も多いのではないでしょうか?そこでこの記事では、『高齢者や認知症の方に運転をスッキリ止めてもらうコツ』をご紹介していくので、是非参考にして下さい。

高齢者や認知症の方は運転に注意

まず高齢者の交通事故がどれほど増加しているのか警察庁のデータをもとに確認していきましょう。

高齢者の交通事故は増えている

高齢者の運転事故件数

交通事故の件数自体は、年々減少傾向にあります。しかし、上のグラフからも分かる通り、高齢者が関係する死亡事故の割合は、年々増加傾向にあります。この割合は、自動車運転者(加害者・被害者)としても歩行者(被害者)としても増え続けています。

<引用:高齢運転者に係る交通事故の現状と対策 警察庁 平成29年1月16日>

また、最新の警察庁の報告でも、75歳以上の高齢運転者が関わる交通事故は増加傾向で、それと同じく運転免許の保有者数も年々増加しています。このような高齢者が係る事故が増加している背景は、我が国の少子高齢化問題と大きく関係していると言えるでしょう。

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特に、認知症の方は交通事故に注意

運転事故

問題は、単なる老化だけではありません。認知症の場合は更に運転に注意が必要です。人は誰でも年を取ると運動神経や反射神経が衰えてきます。しかし、認知症の方は、老化だけではなく「記憶力や判断力」にも問題が生じてくるので、”走行中に運転操作を思い出せなくなる”、”交通標識が認識できなくなる”といった事態が起こる可能性があります。

高齢運転者の交通事故の違反内容を見てみると、交差点等での事故が多く、その中には、赤信号を見落とし、交差点に進入し、あるいは、信号停止中の車両に衝突するといった事故が発生しており、事故後に認知症と診断される場合も少なくありません

<引用:交通事故の死者数及び65歳以上が占める割合の推移(平成15年~24年) 警察庁>

認知症免許取り消し・停止処分件数

<引用:高齢運転者に係る交通事故の現状と対策 警察庁 平成29年1月16日>

上の資料を見ても、認知症による運転免許の取り消し・停止処分件数は年々増加していることがわかります。

認知症の方が運転を止めず、事故を起こしてしまい加害者になってしまったら、責任の所在が家族に向けられる可能性もあります。事故を未然に防ぐ為にも、認知症の疑いがある場合は早めに認知症の専門機関に受診しに行きましょう。

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交通事故に気を付けるべき認知症のタイプ

認知症のタイプ

認知症が原因で起こる交通事故は、認知症のタイプによって特徴があります。アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症、前頭側頭型認知症の方の起こす事故には、それぞれ大まかな特徴があります。

  事故と認知症の特徴 事故の具体例
アルツハイマー型認知症 記憶障害や見当識障害から起こす事故が多い 運転中に行先を忘れる遠出して戻れなくなる(行方不明捜索)。高速道路を逆走してしまう。ブレーキとアクセルを踏み間違える。
脳血管性認知症 運動障害や記憶障害から起こす事故が多い 手足の麻痺によりブレーキやハンドル操作が遅くなる。まだらボケにより道路の逆走やブレーキとアクセルを踏み間違える。
前頭側頭型認知症(ピック病) 反社会的な行動や逸脱行為から起こす事故が多い 気性が荒くなり、信号無視などの交通ルールを守らない。車間距離を詰めるなどの理性的な行動がとれなくなる。

こんな兆候が現れたら運転の止め時

また、次のような運転が目立ってきたら運転の止め時です。ですが、本人は気づき難いので、同乗者であるご家族がしっかりと免許を返納するよう説得しましょう。

  • 急ブレーキが多くなる
  • センターラインを踏み越える
  • 信号無視や道路標識の見落としが増える
  • 車庫入れに失敗する
  • 車間距離がキープできない
  • カーブをスムーズに曲がり切れない

高齢者や認知症の方の為の道路交通法(改正道路交通法)

高齢者の免許更新の手続き

国も高齢者の交通事故の増加から制度改革を進めています。それでは、高齢者や認知症の方の事故を未然に予防するために、道路交通法がどのように改正されてきたのか、その中身を確認してきましょう。

70歳以上は、高齢者講習の受講が必須

2009年の道路交通法の改正ともに、70歳以上の運転免許更新の方式が変更されました。更新期間が満了する日における年齢が70歳以上の免許保有者が免許更新を行う時は、更新時講習の代わりに高齢者講習を受講しなければいけません。

75歳以上は認知症の検査(講習予備検査)が必須

更に、75歳以上の人は、認知症の検査である「講習予備検査(認知機能検査)」を受け、その結果に基づいた高齢者講習を受講しなければいけません。

講習予備検査(認知機能検査)の内容

clock

認知機能検査は、主に記憶や見当識といった認知機能を確認する検査です。

時間の見当識 検査時における年月日、曜日及び時間を回答
手がかり再生 一定のイラストを記憶し、採点には関係しない課題を行った後、記憶しているイラストをヒントなしに回答し、さらにヒントをもとに回答
時計描画 時計の文字盤を描き、さらに、その文字盤に指定された時刻を表す針を描く

講習予備検査の問題点

しかし、この講習予備検査(認知機能検査)には、いくつかの問題があります。

  • 1つ目は、たとえテストにより「記憶力や判断力が低下」が見られても信号無視や一時不停止などの違反がない限り、免許が更新できる仕組みになっています。
  • 2つ目は、75歳の免許更新時からという遅さや、現状の検査内容が記憶障害や見当識障害をテストするものであり、アルツハイマー型認知症以外の前頭側頭型認知症などの認知症を見抜けるのかという問題があります。

改正道路交通法

<引用:警察庁>

これまでの道路交通法では、認知症やMCI(軽度認知障害)であっても違反が無い限り、運転免許を更新することが可能でした。

しかし、冒頭の事件など高齢者の交通事故が大きな社会問題として浮き彫りになってきました。そこで、平成29年度に新たに改正される道路交通法で、より高齢運転者対策が推進されます。

それでは、主な改正道路交通法のポイントをみていきましょう。

  • 75歳以上のドライバーに、3年ごとの免許更新時に、講習予備検査(認知機能検査)を実施
  • 認知機能が低下した場合に行われやすい一定の違反行為(信号無視 、通行区分違反、 一時不停止 等)を行い、リスクが発現した人は臨時に認知機能検査を受けてもらう
  • 交通違反の有無に関わらず「認知症の疑いあり」と判断された人全員に、医師の診断(臨時適性検査)を受け、または、命令に従い医師等の診断書の提出しなければならない義務
  • 認知症の疑いがある、または認知症を発症している場合は、免許を停止することが出来る

2015年6月11日に改正道路交通法が成立し、2017年3月12日(平成29年)に完全施行されます。

しかし、この改正道路交通法でも事故を完全に防ぐことは難しいとされています。それではこれ以外で何か”高齢者や認知症の方の事故を未然に防ぐ良い方法”はないのでしょうか?

方法はあります。その方法とは「ご家族の説得により免許を自主返納してもらう」ことです。

相手を傷つけずに運転を止めてもらう方法

相手を傷つける言い方はダメ

高齢者傷つく

現在の道路交通法では、自動車運転の年齢制限は設けられておりません。また、改正道路交通法でも、75歳以下の認知機能検査にかからない高齢者や認知症の方は運転を行うことが出来ます。

ですが、「もう、お父さんは、年だから運転は止めてもらいたい・・・」と心配することはあると思います。ですが、ただ闇雲に説得してもダメです。

例えば、次のような説得は逆効果と言えるでしょう。

  • 「ボケてきたから運転を止めて!」などの強い態度で相手を怒らせるような言い方
  • 無断で車を売ってしまったり、免許や車のカギを隠してしまったりする

ましてや、認知症の方の多くは頑固なので、免許証や車を取り上げるのは大変です。

このように、”叱りつけられたり、バカにされたり、自分の衰えを指摘されたりする”と、誰でも意固地になったり、怒ってしまったりするものです。これでは、ますます運転免許を返納してもらうことが困難になります。

したがって、”高齢者や認知症の方に、後腐れなく運転を止めてもらえるような、上手な説得の仕方”を学ぶことが大切です。なるべく免許は取り上げるのではなく、自主返納してもらうのが一番です。

運転を止めてもらう5つの説得方法

運転免許返納

それでは、どのように説得したら良いのでしょうか?次の「高齢者や認知症の方に運転をスッキリ止めてもらう5つのコツ」を参考にしていただければと思います。本人の性格や反応を見ながらトライしてみて下さい。

1.本人の為に免許を自主返納してもらう

あくまでも本人の為であり、交通事故の加害者になって欲しくないことを真摯に伝えましょう。

2.医師から運転を制限してもらう

家族が言ってもダメなことを医師などの権威がある人が言ってもらうと納得しやすいものです。かかりつけ医などに頼んで、運転を制限したり、止めてもらうよう説得してもらいましょう。

3.決まった人が送り迎えをする

病院や買い物の為に運転するしかないという方には、家族が本人の足となり送迎を行う約束をすることで止めてもらいましょう。

4.車に代わる交通手段を提案する

自動車は大変便利ですが、交通事故の被害は甚大になるケースが多いです。したがって、三輪自転車や電車、電動カートなどの安全性が高い乗り物を勧めてみましょう。

5.運転経歴証明書を発行してもらう

運転免許は身分証明書にもなるので、手放すことを躊躇する人もいます。そういう方には、「運転経歴証明書」という運転免許を返納した人が申請できる証明書を発行してもらいましょう。

「運転経歴証明書」は、警察署や運転免許センターで発行してもらえ、身分証明書としても使えます。多くの自治体では、「運転経歴証明書」を見せることで、バスやタクシー料金の割引などの特典も設けています。

運転経歴証明書

まとめ

交通事故は、被害者だけでなく、加害者や加害者家族の人生も滅茶苦茶にしてしまいます。したがって、「車の運転を止める・止めてもらう」という勇気は社会の為だけでなく、自分自身の為にもなります。

また、昨今のニュースで取り上げられている通り、「自動運転システム」を搭載した車の開発・実用化が世界中で進められています。高齢者でも安全・安心に乗れる「自動運転システム」が搭載された車が、町を行きかう・・・そんな未来もすぐ側まで来ているのではないでしょうか。

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