てんかんの原因となる病気

てんかんの原因疾患

てんかんは、脳の病気です。

しかし悪までも、てんかんという病気は、てんかん発作を繰り返す脳の病気の総称であり、てんかんという1つの病気を指すわけではありません。てんかん発作を引き起こす原因は多く存在します。

一見、てんかんとは関係なさそうな病気(脳梗塞や脳腫瘍、アルツハイマー病など)が、てんかんの原因疾患となることがあります。

ここではそれらてんかんの原因疾患について解説していきます。

てんかんとは

1.脳にてんかんの病変があるタイプは「症候性てんかん」

癲癇の病変の確認

1つにてんかんといっても、その種類は様々です。

とはいってもこれらは、発病の原因から「特発性てんかん」と「症候性てんかん」の2つに分けられます。

特発性てんかん
脳にてんかん発作を引き起こす病変がないタイプ
症候性てんかん
脳にてんかん発作を引き起こす病変があるタイプ

つまり、この2つのうち「症候性てんかん」では、何かしらの疾患がてんかんの発病に関係しているということです。

それでは、「症候性てんかん」の原因となる疾患をいくつかご紹介していきます。

特発性てんかんは、体質や遺伝的素因により発症するタイプですので、この記事では取り上げません。

2.てんかんの原因疾患まとめ

てんかんの原因疾患は、頭部外傷や、脳腫瘍、脳血管障害など様々です。ここでは代表的なものを数種類ピックアップして説明していきます。

症候性てんかんの原因疾患

●頭部外傷

頭部外傷とは、頭部に外的な力が加わって障害の総称です。打撲や骨折、脳挫傷などが挙げられます。

頭を軽くぶつけた程度では、てんかんの原因となることは少ないです。発作が起こっても一時的な急性症候性発作であることが多いです。一方、頭をかなり強くぶつけた場合は、それがてんかんの原因へと繋がることがあります。例えば、意識障害や記憶障害が強い、脳内で出血を起こした、頭蓋骨の陥没骨折を起こしたといった場合などです。頭部に外傷を受けてから、1週間以降に発作が現れる場合は将来てんかんになる割合が高いと言われています。

閉鎖性外傷と比べて、外から脳が見えるほどの開放性外傷は、後にてんかんへと発展する割合は格段に高くなります(閉鎖性外傷は3~5%、開放性外傷は30~50%)。脳の硬膜を破って脳に傷がつくと20~57%の頻度でてんかん発作が現れるという報告もあります。

●脳血管障害(脳出血、脳梗塞など)

脳血管障害(脳卒中)とは、脳出血や脳梗塞、くも膜下出血などの脳の血管に関連した病気の総称です。

脳出血や脳梗塞などの脳血管障害が原因で、5~20%の割合で発作が起こるとされています。ですが脳血管障害の場合も、急性症候性発作であることが多く、てんかんの原因になるのは3~9%と言われています。特に、脳血管障害は50歳以上の発病が多く、高齢者のてんかんの原因の多くを占めています。時には大きな脳血管障害が無くてもてんかん発作を起こす例もあります。

脳血管障害(脳卒中)

●神経変性疾患(認知症やパーキンソン病)

神経変性疾患とは、脳や脊髄にある神経細胞が徐々に障害を受け脱落してしまう病気です。神経変性疾患には、認知症(アルツハイマー病、レビー小体型認知症など)、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症などがあります。

その中でも、アルツハイマー病はてんかん発作を合併する場合が多いと言われています。

認知症

パーキンソン病

●脳腫瘍

脳腫瘍があると発作が起こることが多いです。35~50%の人に発作が起こると言われています。しかし、これも “急性症候性発作“であることが多いです。手術で腫瘍を取り除くと発作が無くなるケースが多く、てんかんの原因に発展するのは、およそ3.5~5%くらいと言われています。

●脳炎

てんかんは脳炎が原因で起こることがあります。脳炎の場合も、急性症候性発作としばらくたって起こる発作の2つを分けて考えることが大切です。脳炎の患者さんの10~20%でてんかん性の発作が現れるという報告があります。

●周産期の障害

周産期(妊娠22週~産後1週間未満)における妊娠高血圧症候群や低体重、早産、酸素欠乏、分娩時の外傷、代謝障害、感染などの周産期障害は、その後のてんかん発作とはあまり関係が無いことが分かっています。

しかし、これら周産期障害の結果、脳性麻痺や精神発作遅滞などの後遺症が起こったケースでは、てんかん発作を起こす割合が高くなることが 知られています。例えば、通常時と比較しててんかん発作を起こす頻度は、精神発達遅滞が生じたケースでは9倍、脳性麻痺では12倍、両方を合併しているケースでは50倍になるという報告もあります。

番外編

熱性けいれん,ひきつけ

症候性てんかんの原因疾患ではありませんが、子供にみられる熱性けいれんもてんかんのリスクを増加させる疾患として知られています。

●熱性けいれん(ひきつけ)

熱性けいれん(ひきつけ)とは、38度以上の発熱にともなっておこる痙攣で、明らかな原因疾患が無いものを言います。熱性けいれんは、6歳未満の子供に多くみられ、日本では7~8%の頻度で起こると言われています。

この熱性けいれんは発熱に誘発されて生じる発作であり、特に誘因がなくても発作を繰り返す「てんかん」とは無関係に起こります。ただし、熱性けいれんを経験した子供が後にてんかんになるリスクは2~8%であるという報告もあります。後にてんかんのリスクを増加させる因子として注意が必要な熱性けいれんは次のようなものです。

  • 熱性けいれんの発症前に、神経学的異常もしくは発達遅滞があった
  • 部分発作や脱力発作がみられる
  • 全身のけいれんが15分以上持続する
  • 24時間以内に発作を繰り返す
  • 両親や兄弟姉妹など家族にてんかんの人がいる

いずれかの項目に当てはまる場合は、てんかんの専門医に受診すると良いでしょう。

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