褥瘡(床ずれ)の全知識まとめ

褥瘡

「寝ている間、体位変換や寝返りをさせていますか?」

もし、長時間同じ体勢のまま放置しておくと「褥瘡じょくそう」になってしまいまうかもしれません。褥瘡になった部分が腐ってきて敗血症を起こし最悪死に至るケースもあります。

褥瘡は大変怖い症状ですので、この記事を参考に「褥瘡」について学んでいただければと思います。

褥瘡じょくそうとは?

褥瘡とは

褥瘡とは、身体の一部が圧迫され続けることで、十分にその部分に血液や栄養が通わなくなり、細胞が壊死ししてしまう症状です。また、ベッド上を移動させる際などに生じる摩擦の影響で、皮膚がスレてしまい発生することもあります。安静にしすぎると起こる廃用症候群の症状の1つで「床ずれ」とも呼ばれています。

短時間の圧迫の場合は、皮膚が赤くなる程度の症状です。一時的に皮膚が炎症を起こし赤くなる程度で、30分程経過すればアカミは引き、細胞は息を吹き返し元の状態に戻るのですぐに炎症は治ります。

しかし、圧迫が長時間に及んだ場合は、その部分の皮膚は完全に懐死してしまい、圧迫を中止してから何時間か経過しても、皮膚のアカミが取れなくなります。さらに、褥瘡が重症化すると傷や水ほうそうができます。そして、その部分に細菌がつけば繁殖して化膿し、死に至る可能性もあります。

参考リンク>>廃用症候群

褥瘡が発生する時間

褥瘡時間

同じ姿勢が続くと皮膚が壊死を起こして床ずれが出来ます。一旦、褥瘡が出来ると完治が難しく介護を困難にします。

褥瘡が発生する時間は個人差がございます。ベッドで寝ている時だけでなく、車椅子に乗っている時でも床ずれは発生します。一般的には、次のような時間を目安としてください(個人差があります)。

  • 寝ている状態で約2時間
  • イス座った状態で約30分間

原因

褥瘡(床ずれ)ができやすい人の特徴

褥瘡原因寝たきり

「さて、どの様な人が褥瘡になりやすいのでしょうか?」その特徴について見てまいりましょう。

「健康」な方は、圧迫が続けば痛みや不快感で、無意識の内に寝返りやその部分を動かすので、褥瘡には滅多になりません。

一方、片麻痺や脊髄損傷、認知症、パーキンソン病などが原因で「寝たきり」の方は、褥瘡が出来やすい傾向にあります。それは、自力での寝返りができない「運動障害」や圧迫による痛みや不快感を知覚できない「感覚障害」などが原因で、長時間同じ体勢でいることが多く、同じ部分が圧迫されやすいためです。

また、高齢者も褥瘡が出来やすいとされています。高齢者は、老化により皮下脂肪や筋肉量の低下や血管自体が脆くなっているなどの理由で、少しの圧迫や摩擦、スレに対しての抵抗力が弱まっている為、褥瘡が出来やすくなっています。

他にも、汗や尿・便などで皮膚がヨゴレていたり、オムツの蒸れで皮膚がふやけている人も、褥瘡が出来やすくなっています。褥瘡の出来やすい人の特徴をまとめましたので、当てはまる方は注意して下さい。

  • マヒや拘縮があり、自分で寝返りが出来ない人
  • マヒや脊髄損傷、老化により知覚が鈍くなっている人
  • 栄養状態が悪い人
  • むくみがある人
  • 衰弱がひどい人
  • 痩せている人
  • 糖尿病の人
  • 認知症の人
  • 高齢者で筋肉・皮下脂肪が減少している人
  • 汗や尿、便を付着させたままでいる人

床ずれを起こしやすい環境

先程説明した通り、褥瘡は長時間の圧迫により、血液の流れが低下することが原因で発生します。 しかし、褥瘡の原因は圧迫だけではありません。 栄養不足や皮膚の汚れなどの様々な原因が重なって、褥瘡の発生を促進させるケースがあります。

圧迫 肩やお尻周りの骨が出っ張った部分は他の身体のパーツよりも強く圧力がかかってしまいます。自分で寝返りができない人は、どうしても長時間同じ姿勢のままなので、骨が出っ張った部分に圧力が集中し、その部分の血液の流れが悪くなることで褥瘡なってしまいます。
摩擦やズレ 身体の位置をずらす時に引きずったり、座っている時にずり落ちたりすることによって起きる皮膚に対する摩擦やズレも原因になります。皮膚の表面と、皮膚の内部が互い違いにずれてしまい、筋肉から皮膚に向かう血管が引き伸ばされて細くなるため、皮膚への血行が悪くなり、褥瘡になってしまいます。
皮膚の汚れや傷 皮膚に汗や尿、便などの汚れがついた不潔な状態のままでいると、かぶれたり、ただれたりします。また、傷にばい菌が付着し化膿してしまいます。また、皮膚に汗や尿、便などは湿気を帯びている為、ふやけやすくなり、カビや皮膚めくれが発生しやすくなってしまいます。
栄養不足 栄養状態が悪いと、皮膚がむくみ傷つきやすくなります。また、抵抗力や回復力が低下します。
シーツのしわ・オムツの圧迫など 圧迫が均一でないため、長時間同じ部分にだけ負担がかかってしまいます。圧迫だけではなく、摩擦の原因にもなります。

褥瘡を防ぐ介護予防のポイント

出来始めの褥瘡は、皮膚が少し赤くなる程度です、この段階なら治療によりしばらくすれば治ります。しかし、そのまま放っておくと症状が悪化する危険性があります。褥瘡は一度悪化してしまうと治すのが困難になります。

褥瘡への対応は、まずできるだけ作らないようにしっかりと褥瘡を予防することが大切です。よく「予防に勝る治療はない」といいますが、褥瘡ほどこの言葉の重みを持つ病気はありません。寝返りが出来ない場合は、訪問看護などの指導を求めましょう。

1.褥瘡が出来やすい場所を学ぼう

褥瘡位置

褥瘡は肩・骨盤・肘といった骨が出っ張っている場所に発生しやすいです。①仰臥位(仰向け)②側臥位(横向け)③腹臥位(うつ伏せ)でそれぞれ床ずれが発生しやすい場所が違います。

体勢別床ずれのできやすい部位
仰臥位(仰向け) 後頭部や肩甲骨、肘関節、仙骨、かかと
側臥位(横向け) 耳介や測胸部、腸骨部、大転子部、膝関節、踵骨部
腹臥位(うつ伏せ) 頬、耳介、肩関節、乳房、陰部、膝関節、つま先

介護者さんは褥瘡ができやすい場所を予め頭に入れておき、定期的に要介護者の身体に褥瘡ができていないかどうかをチェックすることが大切です。

2.定期的な体位変換をしよう

褥瘡を予防する一番の方法は同じ部分を長時間、圧迫しない事です。その為には車椅子などを利用してできるだけ寝たきりの生活にならないようにしましょう。

マヒなどで自力で寝返りができない人の場合、寝返りを2~3時間置きにさせましょう。上の図の「褥瘡が出来やすい場所」を長時間圧迫しないよう、「枕」や「クッション」を使って体位変換させます。定期的にリクライニングベッドで体圧がかかる場所を変えたり、体圧を分散させるマットレスを使用することも褥瘡予防には効果的です。

また、寝ている時だけでなく座っている時も、同じ姿勢でいるのを避けるようにして下さい。

参考リンク>>「介護ベッドの選び方と使い方」と「介護用マットレスを選ぶコツ

3.皮膚のスレを防ごう

身体をずらして移動させると、シーツや衣類との摩擦で褥瘡を起こすことがあるので、なるべく抱えた状態で移動させましょう。また、シーツや寝間着のシワや縫い目が皮膚に直接当たらないようにしましょう。小さなことですが、引っ掛かりや圧力が集中してしまい、褥瘡になりやすくなってしまいますのでご注意ください。

4.体は清潔にしよう

また、褥瘡は腰や大腿部といった排泄物で汚染されやすい場所にできるので、感染の防止のために身体を清潔にしておくことも大切です。また、湿り気が残らないようにしっかりと乾燥させてください。

5.栄養状態に気を付けよう

また、栄養状態がよくない人も褥瘡になりやすくなっておりますので栄養に気を配った食事を心掛けましょう。栄養バランスのとれた食事をしっかりととることは、褥瘡への抵抗力、回復力をつけるために重要です。

参考リンク>>高齢者の栄養不足を予防・改善するバランスのいい食事を作る3つのポイント

床ずれの治療方法

1.定期的に褥瘡チェックをしよう

床ずれの治療ポイント

もしも、褥瘡が出来てしまった場合、早期に発見し治療することが大切です。褥瘡を早期発見する為にも、上の図の「褥瘡ができやすい場所」を頭に入れておき、定期的に褥瘡ができていないかどうかチェックすることが大切です。

自分1人でチェックすることが難しいのなら、ヘルパーさんや訪問看護師にも頼んで排泄介助の際などチェックしてもらうのも良いでしょう。

参考リンク>訪問介護訪問看護

2.褥瘡が出来た時の注意点!!

褥瘡チェック定期的看護師

アカミが取れないときは褥瘡の始まりです。皮膚がスレたり、破けたりしないようにクッションなどを使って除圧を続けてください。もし、水ほうそうができていたら破らないように保護し圧迫を避けましょう。その部分に尿や便などの汚れが付着しないよう注意して下さい。水ほうそうが破れてしまった場合、体内にばい菌が入ってしまう原因となります。

褥瘡が出来たら症状に合わせ、出来るだけ早く治療をすることが大切です。潰瘍になると治りにくくなり、感染で体力を奪われることが多いからです。

症状別の治療対応
赤くなっている 温めたタオルで血行を促し、乾燥させます。圧迫したり、長時間湿らせたままにしておくのは厳禁です。汗や尿などの水気を拭き取る時は、こすらずに押えるようにします。優しくらせんを描くようにマッサージし、血行を促進します(逆効果になる場合もあるので注意が必要)。
水泡がある 水泡が破れると感染を起こすので破らないよう注意します。圧迫しないようにし、清潔に保ちましょう。
潰瘍がある 下手に触るとさらに悪化します。早急に、医師や訪問看護師による治療やケアが必要です。

もしも、除圧を続けてもなかなかアカミが取れない場合は、かかりつけ医や訪問看護師にすぐに相談しましょう。市販の塗り薬などを自己判断で使用してしまうとかえって症状が悪化してしまう危険性があるのでご注意下さい。

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