てんかん(癲癇)はどんな病気

てんかん,癲癇

「てんかん(癲癇)ってどんな病気?」と聞かれたら、あなたはどう答えますか。

“全身を痙攣けいれんさせる病気”、“急に意識を失い倒れる病気”、“口から泡を吹く病気”といった答えが多く返ってくるのはないでしょうか。確かに、いずれも正しい答えですが、これらはてんかんという病気の一部を説明したに過ぎません。

なぜなら、てんかんの原因や症状は様々であり、また人によって違うからです。それ故、世間ではてんかんについての理解が進んでおらず、あらぬ誤解を生んでしまうこともあります。

このページでは、てんかんの原因や症状、治療法など病気を理解する為に必要な情報を分かりやすく説明していきます。是非、てんかんについて正しく学び理解を深めましょう。

1.てんかん(癲癇)とは

子供から大人まで、さらには犬や猫も発病する

oudan

てんかんは珍しい病気ではありません。100人いればそのうち1人は、てんかんを患っていると言われています。

そして、てんかんは、性別や人種を問わず、子供から大人まで、脳が動いている限り、誰でも発病する可能性を秘めている病気です。また、人間以外の犬や猫などの高等生物も発病する病気です。

てんかんの有病率ゆうびょうりつ(病気を持っている人の割合)は、0.8~1%とされており、日本には約100万人のてんかん患者が存在する計算になります。

てんかんの定義

てんかんの定義

一体、てんかんとはどのような病気なのでしょうか?てんかんという病気を一言で説明すると次のようになります。

てんかん(癲癇、英語=Epilepsy)とは、発作ほっさを繰り返す慢性的まんせいてきな脳の病気

しかし、これだけでは“てんかんがどのような病気なのか”理解するのは難しいと思います。そこで、「世界保健機構(WHO)」や「国際抗てんかん連盟(ILAE)」、「日本てんかん学会」といった主要な組織が発表している“てんかんの定義”からその全貌を解明していきたいと思います。

様々な組織が発表している“てんかんの定義“には、病気の「原因」と「症状」において次のような共通点が存在します。

原因 慢性的な脳の障害による、脳の異常な興奮が原因。つまり、長い間てんかん発作を引き起こす原因となる脳の障害がある状態。
症状 反復的なてんかん発作を起こす。つまり、治療をしない限り、何度も発作症状が現れる。

以上の共通点からも分かる様に、てんかんとは、長く脳にてんかん発作を起こす原因が存在し、それが脳を異常に興奮させることで、発作症状を繰り返す病気のことを指しているのです。

2.てんかんの原因

“てんかんの原因は、慢性的な脳の障害による、脳の異常な興奮である“ということは先ほど説明しました。では一体、「脳の異常な興奮」とはどのような状態なのでしょうか?脳のメカニズムからその謎をひも解いていきましょう。

てんかんの原因は、神経細胞の異常な電気活動による脳のショート

てんかんの原因

私達の脳は、100億以上の神経細胞しんけいさいぼう(ニューロン)が集まってできています。

実は、私たちが普段行なっている“目で見る、耳で聴く、手足を動かす、食べる、記憶する“といった活動が実現できるのは、この神経細胞の働きのおかげなのです。こうした私たちの活動全般は、神経細胞がネットワークを組み互いに情報交換し合うことで、成り立っています。

この情報交換は、神経細胞から発せられる弱い“電気信号”をもとに行われています。そうです、まるでコンピューターのように私達の脳内では電気が流れているのです。通常は、必要な機能に関わる神経細胞だけにスイッチが入り電気が伝わります。ところが時として、周りのいくつもの神経細胞がいっせいに強い電気を出すことがあります。これが「脳の異常な興奮」です。

脳が異常に興奮し強い電気が流れると、まるでコンピューターがショートするみたいに脳が正常に動かなくなります。その結果、痙攣や意識障害といったてんかん発作の症状が現れるのです。

そして、この異常な電気活動を引き起こす原因こそが「慢性的な脳の障害」というわけです。では、てんかんの原因となる「慢性的な脳の障害」とは何なのか、その正体を探っていきましょう。

原因から”症候性てんかん”と”特発性てんかん”の2種類に分類

てんかんの原因

てんかんという病気は、てんかん発作を繰り返す脳の病気の総称です。つまり、てんかんを引き起こす原因は1つではなく、複数存在するのです。

したがって、頭部のケガや脳卒中、脳腫瘍、認知症のいずれであっても、更には明らかな原因が分からなかったとしても、「慢性的な脳の障害」が原因で発作を繰り返す場合は、てんかんと呼ぶことになります。ですが、同じ病気でも原因が違えば、治療法も変わってきます。当然、全てを同じてんかんとして扱っては、患者さん一人一人に合わせた適切な治療は行えません。したがって、てんかんという病気をいくつかの種類に分ける必要があります。

てんかんは発病の原因から「①症候性しょうこうせいてんかん」と「②特発性とくはつせいてんかん」の2種類に分けられます。

症候性(続発性)てんかん 脳内に明らかな病変が確認できるタイプ。脳卒中や脳腫瘍、認知症、先天性脳奇形などの脳の病気が発病の原因となる。
特発性(原発性)てんかん 脳内に明らかな病変が確認できないタイプ。遺伝や体質が発病の原因となる。

それでは、”症候性てんかん”と”特発性てんかん”についてさらに詳しく掘り下げていきましょう。

①症候性てんかんとは

脳の病変(脳卒中や認知症など)が原因のタイプ

mri,ct

症候性てんかんとは、脳内の器質的な病変(病気による変化を特定できるもの)が原因で発病するタイプです。MRIなどの画像検査で捉えられる病変もありますが、分からないほど小さな病変の場合もあります。

症候性てんかんでは、病変により脳の働きが妨げられ、その病変や周辺にてんかん発作を生み出す異常な電気活動が出現します。例えば、脳卒中や脳炎の後遺症などの病変により、てんかん発作が現れます。

なお、本質的には症候性てんかんと見なされるものの、現在の検査法では明らかな病変を確認できないものを「潜因性てんかん」と呼びます。

症候性てんかんの原因となる脳の病変

症候性てんかんの原因となる病気とてんかんの発病率との関係性

病変があっても発病しないこともある

ですが、病変が脳に存在するからといって、必ずしもてんかんの原因となるわけではありません。例え、大きなダメージを脳が受けていたとしても、発作が起こらない人もいます。なぜなら、脳内には発作を起こしやすい部位と起こしにくい部位が存在するためです。

治療により発作が無くなっても、脳の障害自体は残る

症候性てんかんでは、脳卒中などの病変から二次的にてんかん発作が起こります。その為、てんかん発作以外にも、その病変によりもたらされる脳機能障害(記憶障害や運動障害、知的障害、言語障害など)を持っていることが多く、治療により発作を減らせても、脳の障害自体は残ります。

②特発性てんかんとは

遺伝や体質が原因のタイプ

遺伝

特発性(原発性)てんかんは、遺伝素因やてんかんになりやすい体質といった機能的な要因(病変を特的できないもの)が原因のてんかんです。その為、画像検査では脳の病変を捉えることはできません。

特発性てんかんは、遺伝や体質を原因とするので小児での発病が多いという特徴があります。また、親から遺伝素因を受け継いだとしても、必ずてんかんを発病するわけではありません。強い遺伝性をもつてんかんは稀です。

特発性てんかんは小児での発症が多い

特発性てんかんは、ほとんど小児で発症し、大人になって発症することは稀です。

特発性てんかんは、発作が初めて現れた年齢や特徴的な発作症状から、いくつかの種類(症候群)に分けられます。なお、それぞれの発作症状についてはリンク先を参考にしてください。

中心・側頭部に棘波きょくはを持つ良性小児てんかん 3~13歳で発症します。口元や、喉、顔面に痙攣と感覚異常を主とする発作が現れます。ほとんどは思春期までに発作が消えます。
小児欠神てんかん 3~13歳に発症します。突然、意識を失う欠神発作が1日に何度も現れます。欠神けっしん発作が出なくなった後に強直間代発作を起こすこともあります。
若年欠神てんかん 10~17歳に発症します。欠神発作の頻度は日に数回程度で、小児欠神てんかんに比べ少ないとされています。強直間代きょうちょくかんたい発作ミオクロニー発作を伴うこともあります。
若年ミオクロニーてんかん  12~18歳に発症します。ミオクロニー発作が特徴症状として現れ、時には強直間代発作も伴います。

てんかん発作の症状

良性のてんかんは治療薬がよく効き、大人になるまでに完治するものある

特発性てんかんでは、薬がよく効き発作は止まりやすい「良性てんかん」が多いです。経過が良好であれば、治療薬を減量・中止することも出来ます。また、年齢を重ねるとともに、てんかん発作が起こりにくくなっていく傾向があり、15歳ごろまでに薬を飲まなくても自然と、発作が抑制または消失すると言われています。したがって、大人になるまでには完治するケースも少なくありません。

小児と高齢者での発病が多い

小児と高齢者

先ほど、てんかんは誰でも発病する可能性がある病気だと説明しました。しかし、どの年代でも発病率が同じというわけではありません。てんかんの発病は“子供”と“高齢者”が多い傾向があります。その理由は、てんかんの原因となる”脳の障害の現れやすさ”と関係があります。

小児

てんかんは子供に多い病気です。なんと、てんかん患者の50%以上が思春期(15歳前後)までに発病し、そのうち約70%が3歳以前に発病しています。これは、生まれつきの脳の障害や、乳幼児期や学童期の中枢神経系の急速な発達に関係していると考えられています。

高齢者

その後、発病率は減少しますが、60歳ごろから再び増加します。そして、高齢になるに従いてんかんになる割合が増加します。これは、お年寄りが発病しやすい、脳卒中(脳梗塞、脳出血等)や神経変性疾患(認知症やパーキンソン病など)、脳腫瘍、頭部外傷といった病気が関係しています。特に、脳卒中と認知症(アルツハイマー病など)が原因となりてんかんを発病することが多いです。高齢化社会を突き進む日本では、高齢者のてんかん患者数の増加が予想されます。

脳卒中とは認知症とは

年代によって発病しやすいてんかんの種類は違う

したがって、子供と大人では発病しやすいてんかんの種類は違います。

小児では体質や遺伝が原因とする”特発性てんかん”が多いのに対し、高齢者では脳卒中や認知症といった脳の病変を原因とする”症候性てんかん”が多くなります。

小児と高齢者では、特発性てんかんと症候性てんかんの発病率が逆転します。

  • 小児のてんかん患者さんの場合、特発性てんかんが約60%、症候性てんかんが約40%
  • 60歳以上のてんかん患者さんの場合、特発性てんかんが約15%、症候性てんかんが約75%

3.てんかんの発作症状

てんかんという病気の最大の特徴は、てんかん発作という症状が現れることです。つまり“てんかん”とはてんかん発作をもたらす病気を指すのに対して、“てんかん発作”とは症状自体のことを指します。

では一体、てんかん発作とはどのような症状なのでしょうか。

てんかん発作とは

てんかんの発作症状

てんかん発作とは「繰り返し、ほぼ同一の症状を持って出現する脳起源の発作」のことです。少し難しいので、この定義を3つの特徴にわけて整理してみましょう。

  • 発作が繰り返し起こる
  • 毎回ほぼ同じ発作症状が現れる
  • 慢性的な脳の障害が原因で起こる

”発作”はてんかん以外でも現れる

発作とは、急に病気の症状が現れ、しばらくするとその症状が消えるものを指します。したがって、発作と名前がつくものはてんかん発作以外にも、心臓発作、失神発作あるいはヒステリー発作などがあり、各々原因が違います。

これら発作と呼ばれるものの多くは”急性症候性発作”という一時的な発作です。

急性症候性発作の場合は、適切な治療を行うことで症状は治まり、その多くは繰り返し現れません。一方、てんかん発作の場合は、繰り返し症状が現れます。

したがって、この2つは明確に区別する必要があります。なぜなら、てんかん発作でない別の発作に対し、てんかんの治療を行っても治療効果が期待できないどころか、さらに事態を悪化させる危険性がある為です。したがって、てんかん発作では、具体的にどのような症状が現れるのか知っておく必要があります。

なお、病変にもよりますが後に、てんかんの原因に発展するケースは10%以下と言われています。

急性症候性発作の原因

痙攣と意識障害はてんかん発作の代表的な症状

てんかんの代表的な症状は、痙攣と意識障害です。なお、ここで出てくる発作や症状はリンク先で詳しく説明しています。

痙攣けいれん
痙攣とは、筋肉が自分の意思とは関係なく強く収縮する症状です。例えば、手足がガクガク震えたり、強ばったり、顔の筋肉がピックっと突っ張ったりといった運動症状のことを痙攣と呼びます。てんかんの痙攣症状として代表的なのはミオクロニー発作、間代発作、強直発作、強直間代発作です。
意識障害
意識障害とは、周りで起こっている出来事がしっかりと理解出来なくなる状態です。多くのてんかんでは意識の中枢で異常な電気活動が起こり、意識障害が現れます。また、意識障害と共に痙攣や自動症といった症状が一緒に現れることがあります。

てんかん発作の種類別症状

全身の痙攣だけが、てんかん発作の症状ではない

しかし、痙攣や意識障害以外にも、さまざまな症状がてんかん発作として現れます。てんかん発作の症状は、意識を失い全身を痙攣させる様な大きな発作から、一見てんかんとは関係なさそうなめまいやイライラ等の精神症状まで、非常に多彩です。なので、全ての患者さんが意識を失い全身を痙攣させるような大きな発作を持つわけではありません。中には、痙攣の症状を持たず、ただ意識障害や感覚障害、精神障害だけが現れる方もいます。

てんかん発作として様々な症状が現れるのには理由があり、てんかんの原因となる脳障害がある場所と深い関わりがあります。

発作症状は多彩だが、人によって決まっている

発作症状と大脳の関係図

先ほど脳は、私たちの活動全般をコントロールしていると言いましたが、実は、上の絵のように、脳の各部位(前頭葉、側頭葉など)に役割があり、それぞれの活動をコントロールしています。つまり、手足を動かす、目で見る、音を聴く、触れた物の感触や痛みを感じる、思い出すといった様々な働きを、脳の各部位が分担しているわけです。

その為、“異常な電気活動を起こす脳の部位”いわゆる“焦点”に応じ、さまざまな発作症状が現れるのです。

  • 「運動」をコントロールする”前頭葉”に焦点があると、ガクガクと震える、手足や顔が突っ張る
  • 「視覚」をコントロールする”後頭葉”に焦点があると、モノが見えなくなる、歪んで見える
  • 「意識」をコントロールする”側頭葉”に焦点があると、意識がくもる、記憶がなくなる

なお、人によって焦点の位置は決まっているので、その方に現れるてんかん発作の症状は、毎回ほぼ同じです。裏を返せば発作の症状から焦点の位置を推定することができます。例えば、手足や顔がつっぱる、震えるといった運動症状が出れば運動をコントロールする脳の部位に、焦点がある可能性が高いです。

異常放電の現れ方で“部分発作”と“全般発作”の2種類に分類

部分発作と全般発作

てんかんの原因と同じように、てんかん発作の症状もいくつかの種類に分けられます。まず、脳の異常放電がどこから・どのように始まるかでてんかん発作は「①部分発作」と「②全般発作」の2種類に分けられます。

部分発作 脳の一部に焦点があり、異常放電が起こる場所が決まっているタイプの発作。
全般発作 脳全体がいっせいに異常放電を起こすタイプの発作。

それでは、部分発作と全般発作では、具体的にどのような症状が現れるのか紹介していきます。

①部分発作

部分発作,運動,感覚,自律神経,精神

部分発作とは、脳の一部に発作を引き起こす焦点があり、そこから異常な興奮が起こるタイプです。始まりは脳の片側(片側の大脳半球)だけが興奮するため、身体に現れる症状や脳波は左右非対称です。

部分発作では、焦点がどこにあるかで現れる症状は変わります。手足の痙攣などの運動発作や意識減損発作だけでなく、感覚発作、めまい発作、自律神経発作なども、部分発作の症状です。

単純部分発作と複雑部分発作に分かれる

部分発作は意識障害の有無により「①単純部分発作」と「②複雑部分発作」の2タイプに分かれます。

単純部分発作 発作中も意識がハッキリしている部分発作。意識が保たれているので、発作の始まりから終わりまで、症状を自覚・記憶しています。焦点のある部位に応じて、運動発作や感覚発作(視覚・聴覚発作めまい発作など)、自律神経発作、精神発作が出現します。
複雑部分発作 発作中に意識がなくなる部分発作。”始まりは単純部分発作からで途中で意識障害が合わさるタイプ”と”始めから意識障害が現れるタイプ”があります。前者では意識障害の前兆として感覚異常等を自覚することもあります。”意識に関係する側頭葉や前頭葉に焦点がある場合”や”異常放電が広範囲に及んだ場合”に現れます。また、意識障害に伴い自動症が現れることがあります。

自動症とは、本人は意識しないで、知らないうちに動作・行動してしまう症状です。例えば、目的も無く、口をモグモグ動かす、舌なめずり、飲み込み動作を繰り返す、服をまさぐる、歩き出す、言葉を発する、笑うといった症状が現れます。意識障害がみられる複雑部分発作と欠神発作でみられる症状です。

部分発作の症状は大きく4種類

部分発作の症状は「①運動発作」、「②感覚発作」、「③自律神経発作」、「④精神発作」の4つに大きく分類されます。

運動発作(運動徴候を呈するもの)
運動発作とは、身体の一部に異常な運動症状が現れる発作症状です。手足や顔がつっぱる、手足がガクガクと震える、力が入り曲がるといった痙攣症状が現れます。また痙攣以外にも、頭と眼球がグーッ弓を引くように横を向く(向反発作)、身体全体が片側に捻じれる(姿勢発作)、発声が上手くできなくなるといった症状が現れることもあります。
感覚発作(体性感覚あるいは特殊感覚症状を呈するもの)

感覚発作は、体性感覚発作と特殊感覚発作に分かれます。

体性感覚発作
体性感覚発作とは、身体の一部にピリピリした痺れや痛みなどの感覚異常が生じる発作症状です。感覚異常は身体の一部から始まり、数秒から数十秒程度の短時間のうちに身体の広い範囲に広がっていくこともあります。
特殊感覚発作
特殊感覚発作とは、目(視覚)や耳(聴覚)、鼻(嗅覚)、口(味覚)などの感覚に異常が現れる発作症状です。目の前のものが歪んで見える、幻覚が見える、視野が狭くなる、色や人物が見える(視覚症状)、耳が聞こえなくなる、音や音楽などの幻聴が聴こえる(聴覚症状)、変なにおいを感じる(嗅覚症状)、変な味を感じる(味覚症状)といった症状が現れる発作です。他にも、めまいを起こす眩暈発作があります。
自律神経発作(自律神経症状あるいは徴候を呈するもの)
自律神経発作とは、顔が青白くなる(蒼白)、赤くなる(紅潮)、鳥肌が立つ、瞳孔が開く、唾液が出る、腹痛、発熱、寒気、発汗、吐き気、尿失禁といった自律神経系の発作症状です。
精神発作(精神症状〔高次大脳機能の障害〕を呈するもの)
精神発作とは、何の理由もなく突然、不安や恐怖、怒り、むなしさ等の精神症状が沸き起こってくる発作症状です。また、以前経験したことのように懐かしさを感じる(既視感=デジャブ)逆に真新しく感じる(未知感=ジャメブ)等の記憶系の症状も精神発作の1つです。精神発作の多くは複雑部分発作(精神運動発作)の際にみられます。
自律神経系の症状は、全般発作でみられる欠神発作や部分発作、強直間代発作等でも見られます。これは発作を引き起こす電気活動が、自律神経の働きを調整する場所にまで及び影響を与えることで起こる二次的な症状で自律神経発作とは区別します。自律神経発作という場合には、最初から自律神経系を調整する場所(大脳辺緑系など)に、直接発作を引き起こす異常な電気活動が起こり、自律神経症状が現れます

大きな発作の前兆症状

これら4つの部分発作の症状は、複雑部分発作や次に説明する大きな発作(二次性全般化発作)の前兆として現れることがあり、意識が失われる前兆として、感覚の異常や不安感、恐怖感を自身で感じることがあります。

二次性全般化発作

二次性全般化発作

部分発作では、まず脳の一部に興奮が現れ、それが次々と広がり脳全体に巻き込み全般化することがあります。このような発作を二次性全般化発作と呼びます。

二次性先般発作では、全般発作と似たような全身の痙攣症状が現れることがありますが、この2つは区別して考えなければいけません。なぜなら、この違いにより病気の治療法や予後が異なってくるためです。

  • 二次性全般化発作の場合は、発作が全身に及んだとしても身体の左右で痙攣の起こり方が違うとか、脳波でも左半球と右半球の波の出方に違いがあるなど非対称性を示す。
  • 全般発作の場合は、最初から症状や脳波がほぼ左右対称性を示す。

②全般発作

全般発作,ミオクロニー,強直間代,欠伸

全般発作とは、脳全体でいっせい異常放電が起こるタイプです。始まりから脳全体(両側大脳半球)が一気に興奮する為、現れる症状や脳波はほとんど左右対称です。全般発作では、全身が強く強ばったり、痙攣を起こしたりする大きな発作が現れます。多くの場合、最初から意識が失われます。

全般発作は、症状の現れ方の違いにより「①けいれん性」「②非けいれん性」の2種類に分けられます。

けいれん性 痙攣症状が現れるもの(意識障害を伴うものと伴わないも有り) 強直間代発作や強直発作、間代発作、ミオクロニー発作など
非けいれん性  意識障害が主体で、痙攣症状が無いあるいは軽いもの  欠神発作

全般発作で出現する発作

全般発作では、ミオクロニー発作、強直発作、間代発作、強直間代発作、脱力発作、欠神発作といった症状が現れます。

ミオクロニー発作

ミオクロニー発作とは、筋肉が一瞬ピクッと収縮する非律動的な痙攣発作です。その間、意識が一瞬飛ぶこともあります。症状の強さは、大小があり、ピクッとして手に持っていた箸を投げ落としてしまう程度のものから、全身が大きく投げ出され倒れるほど大きなものまで様々です。

ミオクロニー発作は、手や足、顔など色々な場所に現れ、毎回同じ場所に現れるとは限りません。また両手足にほぼ対称に症状は現れますが、いつもそうとは限りません。間代発作とは違い何度も律動的(リズミカル)に発作を繰り返すことは少なく、発作の持続時間も1秒以下と短いです。発作の頻度は、時々しか起こらないこともあれば、一日中頻繁に起こることもあります。特に、光刺激に誘発されて出現することが多いです。

間代発作
間代発作とは、筋肉がガクガクと収縮と弛緩を何度も繰り返す律動的(リズミカル)な痙攣症状です。全身の筋肉がガクガクとリズミカルに痙攣し、しばらくその状態が続きます。ミオクロニー発作に似た痙攣症状が何度繰り返し起こります。ビクツキの間隔は1秒前後で、発作の持続時間は数10秒ほどですが、長い時には1分以上続くこともあります。
強直発作
強直発作とは、比較的長い時間筋肉の収縮が続く痙攣症状です。強く手足を曲げるあるいは突っ張らせる、目を見開き眼球が上を向く、呼吸が浅くなる、口を固く食いしばる、といった症状が現れます。発作の持続時間は数秒から数10秒程度です。
強直間代発作

強直間代発作とは、強直発作と間代発作を合わせ持つ痙攣症状です(大発作とも呼ばれます)。まず、強直発作から始まり、次第に間代発作へと移っていきます。最初から意識を失うことがほとんどです。具体的には、突然、意識を失い眼を見開き、手足を強く曲げる又は伸ばした格好で、全身の筋肉に力が入る痙攣(強直発作)が、およそ数10秒続きます。この時に叫び声をあげることもあります(初期叫声)。次いでガクガクと一定のリズムで手足の曲げ伸ばしを繰り返す痙攣(間代発作)に移行していき、このような状態が数10秒続きます。そして、徐々に痙攣のリズムが遅くなっていき、やがて発作が治まります。

なお、呼吸は発作の始まりから止まるので、酸素が不足し顔面が蒼白くなり、唇や爪が青紫色になります(チアノーゼ)。発作が治まると呼吸が再開され、欠乏した酸素を補おうと激しい呼吸を繰り返します。この激しい呼吸により、発作中に口内に溜まっていた唾液が外に吐き出され泡を吹くことがあります。また、尿失禁や血圧の上昇といった自律神経系の症状が見られることもあります。発作後は意識が朦朧としたり、眠入ってしまうこともあります。

欠神発作

欠神発作とは、意識がなくなる発作症状です。痙攣などの運動症状が見られないことが多いです。時間は数秒から20,30秒と大変短く、意識障害以外に痙攣などのハッキリした症状が現れないので、周囲の人に気付かれないことも多いです。普通に話していたり、何かしている時に、突然意識を失い、“ボー“と動かなくなったり、急に黙り込んだりします。そして、意識が回復した途端に中断した会話や動作を始めます。

欠神発作に伴い自動症が現れることがありますが、複雑部分発作の自動症よりも軽いものが多いです。欠神発作は、学童期の子供や、就学前に現れることが多く、それも女の子に多いのです。

脱力(失立)発作
脱力発作とは、筋肉の緊張が瞬間的に低下し、力が抜けて脱力する発作症状です。その為、膝や殿部から垂直に転倒することもあります。瞬間的に筋が緊張し収縮するミオクロニー発作の逆バージョンとして考えると分かりやすいです。

なお、部分発作でも同じように手足がガクガクと震える、突っ張るあるいは曲がるといった運動症状が現れますが、明確には区別されます。

  • 部分発作の間代性けいれんは、まず片側の手足だけに現れる(左右非対称)
  • ミオクロニー発作、間代発作・強直発作といった全般発作は、両手足に症状が現れる(左右対称)

てんかん発作からの回復~発達や脳の働きへの影響は?

発作後に眠ることもある

発作からの回復,後遺症

てんかん発作からの回復の仕方は、人によって、また発作の度に多少の違いがあります。1分以上続く発作では、手足が痺れたリ(トッド麻痺)、ボーっとしたり(朦朧もうろう状態)、眠ってしまったり(終末睡眠)することもあります。

これらの症状は、細胞が発作で多くのエネルギーを消費し疲弊状態に陥り、そこから再び元の状態に回復するための過程で現れます。つまり、疲弊した細胞を回復させるために必要な時間です。ですので、眠ってしまった時は、無理やり起こすのではなく安全を確保してそのまま寝かしておいてあげましょう。

てんかん発作の多くは後遺症が残らない

life

てんかん発作は、脳の働きで起きた「一次的な不具合」の表れです。脳の発達や脳の働きにどのような影響を与えるかは、発作が続く時間の長さや、発作が起こる頻度により異なります。

ほとんどの発作は、3分以内で治まり、短期間に何度も繰り返すことはなく、治まれば自然と元の状態にまで回復していきます。その為、回復不能な後遺症が脳に残るかどうか心配する必要はありません。ただし、てんかん重積の場合は、少し事情が違います。

てんかん重積の場合は早急な治療が必要

てんかん重積

てんかん重積」とは、“長時間に及ぶ発作(5~10分以上)”や“何度も繰り返す発作”が現れている状態です。てんかん重積は、意識障害が主体の“非けいれん性てんかん重積”と、痙攣発作が主体の“痙攣性てんかん重積”があります。

てんかん重積状態のまま治療せずに放っておくと、無酸素状態となり脳細胞が障害を受けて、脳の機能の一部に後遺症が残ったり、時には生命に危険が及んだりすることもあります。特にけいれん性てんかん重積状態では注意が必要です。

てんかん発作が5分以上続く場合は、治療が必要なので下のリンクを参考に早急に対処しましょう。また、てんかん重積以外の発作でも、意識を失って転倒・転落する、溺れるといった事故に繋がる危険性があります。日常生活を安全に過ごす為にも先回りして対応しておくことが大切です。

てんかん発作の対処法

4.てんかんの国際分類

何度も言うように、てんかんという病気は、様々な原因で発病し、現れる発作症状も色々です。当然、原因や症状が異なると、治療法や予後が変わってきます。

しかし、この煩雑とした状況では一人一人に合わせた治療を進めることは困難です。そこで、さまざまな種類のてんかんを、似たもの同士でグループ化しまとめた“てんかんの国際分類”が作成されました。

病因(特発性・症候性)と発作型(局在関連・全般性)で、てんかんを4つにグループ分け

てんかんの国際分類としては、国際抗てんかん連盟が定めた分類法が広く使われています。この分類では、発作型(発作の症状)と病因をもとに、てんかんという病気を4つのグループに種類分けしています。

  病因
特発性(原発性) 症候性(続発性)
発作型 局在関連(部分、焦点性)てんかん

特発性局在関連てんかん

  • 原因は遺伝や体質
  • 部分発作(脳波は片側大脳半球)
  • 小児期(幼児期~学童期)に発症
  • ほぼ100%が寛解

症候性局在関連てんかん

  • 原因は脳の病変
  • 部分発作(脳波は片側大脳半球)
  • 全年齢で発症
  • 50~60%が寛解
全般てんかん

特発性全般てんかん

  • 原因は遺伝や体質
  • 全般発作(脳波は両側大脳半球)
  • 小児期~思春期に発症
  • 約80%が寛解

症候性全般てんかん(てんかん性脳症)

  • 原因は脳の病変
  • 全般発作(脳波は両側大脳半球)
  • 小児期(乳児期~幼児期)に発症
  • 約20%が寛解

詳しくは次のような流れで分類していきます。

  • 発作型(部分発作・全般発作)から「①局在関連てんかん」と「②全般てんかん」の2種類に分かれる
  • 病因(症候性・特発性)から「①症候性てんかん」と「②特発性てんかん」の2種類に分かれる
  • 上の2つを組み合わせて「①特発性局在関連てんかん」「②特発性全般てんかん」「③症候性全般てんかん」「④症候性局在関連てんかん」の4つのグループが出来上がります
  • さらに、発症年齢や発作型、検査結果(脳波やMRI)などから、てんかん症候群として詳しい病名を付けられることもありす

①特発性局在関連てんかん

特発性局在関連てんかんは、幼児期から学童期にかけての発症が多く、遺伝や体質が原因で発病するとされています。また、年齢に関連して発症し、各てんかん症候群で好発年齢が存在します。また、成長と共に自然と完治する良性のてんかんが多く、ほぼ100%近い割合で寛解(症状の軽減または発作の消失)が期待できます。

  • 中心・側頭部に棘波を持つ良性小児てんかん(ローランドてんかん)
  • 後頭部に発作波をもつ小児てんかん
  • 原発性読書てんかん

②特発性全般てんかん

特発性全般てんかんは、小児期~思春期にかけての発症が多く、遺伝や体質が原因で発症するとされています。また、年齢に関連して発症し、各てんかん症候群で好発年齢が存在します。多くの場合は、抗てんかん薬の治療により発作がコントロールできます。約80%が寛解状態いたります。

  • 乳児良性ミオクロニーてんかん
  • 小児欠神てんかん
  • 若年欠神てんかん
  • 若年ミオクロニーてんかん
  • 覚醒時大発作てんかん

③症候性全般てんかん(てんかん性脳症)

症候性全般てんかん(てんかん性脳症)は、乳幼児期にかけての発症が多く、生まれつきの障害(脳の先天奇形や出産期障害、先天性代謝異常症など)が原因で発病することが多いです。特に、症候性全般てんかんで多いのが、次の2つのてんかん症候群です。

  • ウェスト症候群(店頭てんかん)
  • レンノックス・ガストー症候群

いずれも脳が広範囲に傷つくことで発症するものなので、てんかん発作以外にも、知的障害や運動障害などの合併症を持っているケースが多いです。また、抗てんかん薬に反応しない難治性のものが多く、手術をすすめられることもあります。難病として指定されているてんかん症候群もあります。

④症候性局在関連てんかん

症候性局在関連てんかんは、年齢を問わず発症し、脳卒中や認知症、海馬の萎縮や硬化などあらゆる疾患が原因で発病します。病変の位置で現れる症状は変化します。薬物治療によりおよそ半数が寛解にいたります。

  • 側頭葉てんかん
  • 前頭葉てんかん
  • 頭頂葉てんかん
  • 後頭葉てんかん

なお、側頭葉てんかんで海馬の硬化を伴うものは、手術による治療が効果的な場合があります。

5.問診と検査(脳波等)を参考にどのタイプか判断する

脳波

このように、てんかんを分類することで、診断がしやすくなるだけでなく、抗てんかん薬の治療、外科手術の適応、予後(今後の見通し)や合併症の予想に役立ちます。

実際の医療現場では、医師が問診と検査(脳波など)を行い、患者さんの発作型や病因、発病年齢、脳波異常を調べ「てんかんかどうか」「てんかんならどのタイプか」を診断します。

てんかんの問診脳波検査

てんかんの専門医

しかし、てんかんは診断が難しい病気として有名です。

先ほど説明したようにてんかん発作と似たような発作を引き起こす病気は、数多く存在するためです。また、患者さん一人一人のてんかんタイプを正しく診断するのは、それ相応の知識と経験が必要です。

てんかんではないのにてんかんだと誤診され、合わない治療を続けているケースも存在します。当然、合わない治療を続けていては治る病気も治りません。したがって、医師の診断間に疑問や不満がある場合は、てんかん専門の医師がいる病院を探すと良いでしょう。

てんかん専門病院・専門医の探し方

6.てんかんの治療

抗てんかん薬

まず、てんかんの治療を進めていくには、「てんかんかどうか」「てんかんならどのタイプか」を正しく診断してもらうことが大切です。

小児期に発症するてんかんの中には、年齢を重ねると自然に治るものもあります。このような治療をしなくても自然に治っていくてんかんは約20%あると言われています。しかし、残りの患者さんでは治療が必要となります。

てんかんの治療は、抗てんかん薬による薬物治療が基本です。抗てんかん薬を使った薬物治療を受けたてんかん患者さんの多くは発作が止まります(約60%)。ですが、薬物治療が効きにくい難知性てんかんの場合(残りの20~30%)は、手術による治療が検討されることもあります。

正しい治療が行われた場合、およそ80%で発作が起きなくなります。したがって、完全にてんかん発作が抑制されるという意味での「治る」は、十分達成可能です。

抗てんかん薬による薬物治療てんかんの外科手術

7.てんかん発作への対処法と生活上の注意点

てんかん発作への対処法

発作症状への対処

てんかん治療目標は、患者さん及び家族の生活の質(QOL)全体の改善を図ることです。

てんかん発作がゼロになる越したことはありません。しかし、現時点でベストと考えられる治療を続けていても発作が十分にコントロールできない場合には、発作と上手く付き合きあい、今よりも生活の質を向上させていく方法を考える必要があります。

いつ発作が起きても良いように、発作時の対処法を学んでおきましょう。また、日頃の生活習慣を見直してんかん発作が起こりにくくするよう予防を徹底することが大切です。

てんかん発作の対処法&安全性を高める事前対応

事故を防ぐための生活上の注意点

運転事故

てんかんがあるというだけで、日常生活が制限されることはほとんどありません。

学校に行くことも、仕事に就くことも、結婚も、妊娠もすることが出来ます。また、てんかんがある人でも、自動車やバイクの運転免許を取得することは可能です。

しかし、未然に事故を防ぐために運転免許の取得、更新に一部に制限が設けられています。なお、てんかんの症状が重い場合は、障害者手帳を取得することも可能です。

てんかんと生活(学校、仕事、運転、結婚、妊娠等)における注意点

コメント

コメントを投稿する

計算の答えを半角数字で入力してください * Time limit is exhausted. Please reload CAPTCHA.