てんかんと生活(学校、仕事、運転、結婚、妊娠等)における注意点

癲癇と生活

てんかんがあるというだけで、日常生活が制限されることはほとんどありません。

学校に行くことも、仕事に就くことも、結婚も、妊娠もすることが出来ます。また、法律で定められた基準を満たす場合は、運転免許を取得することも可能です。

しかし、近年 “てんかん発作による運転中の死傷事故”のニュースが多く報じられているのもご存知だと思います。このような事故の影響で、てんかんという病気に対して誤解や偏見を抱いている方も少なくないでしょう。

この記事では、このような悲しい事故や誤解、偏見を生まない為の「てんかん患者の生活上の注意点」についてご紹介していきます。是非、てんかんの為に、幼稚園・保育園、小学校への入学、仕事選び、運転免許等の資格取得、結婚、妊娠、子育てに悩んでいる方はご一読ください。

1.てんかんがあるだけでその人の価値は変わらない

始めに、知っておいてほしいことがあります。

それは、てんかんがあるという理由だけで、その人の価値は何ら変わらないということです。

医師から「てんかん」であることを宣告されたら、誰でも深く落ち込むことでしょう。「もう、人生終わりだ・・・」などと考えてしまう方も少なくありません。

しかし、それだけで自分で自分の可能性を閉ざしてはいけません。

てんかんで有名な著名人

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てんかんはありふれた病気です。100人いれば1人はてんかん患者だと言われています。

歴史上てんかんを持ちながらも活躍している人は沢山います。

例えば、ゴッホ、ドストエフスキー、ソクラテス、ナポレオン、ジャンヌ・ダルク、フローレンス・ジョイナーといった偉人達もてんかんであったと言われています。
また、最近では『ロードオブザリング』に出演した俳優のヒューゴ・ウィーヴィング、ミュージシャンのプリンス、ラッパーのリルウェインといった有名人も自身がてんかんを持っている又は持っていたことを告白しています。

以上のように、てんかんでも芸術、音楽、文学、スポーツ、政治、芸能などジャンルを問わず活躍することは可能なのです。

ですので、本人やその家族は「てんかんだから、私はダメ、子供はダメ」という風に、“てんかん=ダメな人間“と決めつけてはいけません。このような誤解や偏見を生まないためにも、てんかんという病気について深く理解することが大切です。

てんかん

てんかんと上手く付き合っていくポイント

てんかんは、薬や手術などの治療を行うことで、発作症状をコントロールすることも可能です。

ですが、適切な治療を受けたとしても、完全に発作が無くならないケースもあります。そいった場合は、「発作と上手く付き合いながら普通に生活すること」が必要になります。

てんかん発作の対処法&発作に備えた事前対応

生活上、注意したいことはありますが、行動を制限し過ぎないようにしましょう。どうせ付き合わざる負えない相手であれば、よりストレスの少ない付き合いかたを考えておくのが得策です。周りの人が過剰に心配する必要はありません。逆に過剰な心配が本人の負担となることもあります。

2.発育や教育(幼稚園・保育園、学校)とてんかん

子供には豊かな経験をさせる

学校生活と癲癇

てんかんを持っていても、幼稚園や保育園、学校に通うことは出来ます。子供がてんかんを持っているからといって、何でもかんでも行動を制限してはいけません。良かれと思ってやっていることが、知らず知らずのうちに、子供が自身で生きていく為の能力を育む機会を奪い取っている可能性があります。

しかし、何も対策をせずにいると、事故や周囲の誤解を生んでしまうかもしれません。ですので、親御さんは安全安心な環境を整えた上で、子供に豊かな経験を積ませ心身の成長を促しましょう。

タイミングをみて子供に告知する

てんかんがある子供を持つ親御さんは、「まだ子供だから・・黙っておこう」などと、本人に病気のことをキチンと話さないのは問題です。また、子供に病気のことを訊ねられても、「ショックを受けるだろうから・・」とあやふやな回答で誤魔化すのも問題です。

子供は大きくなるに従い、自身の異変や、発作に対する周囲の反応に戸惑いストレスを抱えこむものです。また、薬を飲むことを重要なことと受け止めず疎かにすることもあります。

したがって、「物心がついてきたな」と感じたら、医師と告知のタイミングをよく相談した上で、子供に病気についてはなし“本人が自分のこと”として受け止められるようにしましょう。もしも、子供に上手く説明する自信がない親御さんは、主治医に付き添ってもらい説明すると良いでしょう。

上手な周囲への告知の仕方

幼稚園・保育園、学校の先生に予め相談しておく

発達の遅れなどが無い限り、時々発作はあっても通常学級へ就園・就学できます。ただし、幼稚園・保育園、学校に通わせる際は、予め担当の先生に子供がてんかんを持っていることを伝え相談しておきましょう。

先生の中には、てんかんという病気について、知識が少ない方もおられるので、まずは「てんかん」という病気について、正しく理解してもらうことが必要です。その上で、子供自身の発作のタイプや発作時の対応、通院の頻度、日常的にお願いごと(服薬管理、プールやお泊り等の活動時の対応)などの必要事項を伝えておきます。

その子の発作時の様子を撮影したビデオ等を見てもらい、症状を知らせるとともに対処法を教えるとより伝わりやすくなります。

もしも、てんかん発作が頻繁に起こるなど危険性が高い場合や、学校生活や学習能力に問題がある場合は「特別支援学級」や「特別支援学校」を選択する方がよいケースもあります。

3.仕事とてんかん

仕事と癲癇

てんかんがあっても仕事を持ち、働いている人は沢山います。また、先ほどの著名人達のように、幅広い業種で活躍することも出来ます。

てんかんでも幅広い仕事に就ける

2000年前後の法改正で、免許や資格の取得・更新を制限する「障害者欠格条項」が見直され、ほとんどの免許や資格は症状や能力によって交付や取り消しが行われる「相対的欠格事項(⇔絶対的欠格事項)」になりました。

絶対的欠格事項
特定の障害があった場合、絶対的に資格を与えないとするもの
相対的欠格事項
特定の障害があった場合、その人の症状に応じて相対的に資格を与えないとするもの

ですので「てんかん」と診断された為に取れない免許や資格はほとんどなくなりました。しかし、その症状に応じて、例外的に一部職種に就くことや、資格を習得することが制限される場合があります。

相対的欠格事由により、一部で資格取得が制限されることもある

てんかんが完治していれば、資格や職業が制限されることはありません。しかし、発作の症状がある場合には、厳しい制限が設けられている資格もあります。

  • 運転を伴う仕事(トラックやバスの運転手、飛行機のパイロットなど)
  • 銃に関する仕事(猟銃を扱う仕事など)

このように、自動車や飛行機の運行業務や銃や刀剣類の所持など、自分だけでなく他人にも被害が及ぶ可能性がある免許資格には、厳しい制限が設けられています。制限については、個々の資格ごとに違い、患者さん個々のてんかん発作の頻度や症状、合併障害(身体障害、知的障害、精神障害など)の程度にもよります。

てんかん患者の運転免許の取得・更新制限について

また、資格の取得を必要としない仕事でも、高所で作業する仕事や、取り扱いに注意が必要な機械や工具、薬品などを扱う仕事も、頻繁に発作が現れる人は避けておいた方が無難でしょう。

なお、こうした仕事をしている人が、就職後や免許取得後に、てんかんを発病したり、発作が再発したりした場合には、自分や家族、他者を守るためにも、正直に申告することが必要です。

故意に黙っていたり、虚偽申告をしたりした場合、法律で罰せられることがあります。

職場に告知しといた方が良い場合もある

大人になるまでにてんかんが完治する人は多くいます。また、逆に年をとってからてんかんを発病する人もいます。子供の時にてんかんを発症し、大人になるまでに完治している場合には、てんかんであったことを伝える必要はないでしょう。しかし、次のようなケースでは職場や就職活動先に告知しておいたほうが良い場合もあります。

  • 治療を受けていても、発作が十分にコントロールできておらず、職場でも発作を起こす可能性が高い場合
  • 治療により、発作がしばらくは出ていないが、通院や服薬を継続している場合

仕事において、病歴を履歴書などを告白することは不利に扱われることも心配ですが、もしも、周囲に何も告げないまま発作を起こすと大騒ぎになり、職場に居づらくなることがあります。職務内容によっては、告げずに採用がきまった後で「告知義務違反」を理由に採用取り消しになる例もあるようです。また、告知することで、周囲の理解を得られれば通院の時間も取りやすくなる等のメリットもあります。

したがって、不安がある人は、主治医に「職場や就職先に告知すべきかどうか」相談しておきましょう。

障害者手帳を取得し、障害者雇用枠に応募する

てんかんの症状が重い場合、障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)を取得することが可能です。この障害者手帳を使い、障害者雇用枠で応募するのもひとつの方法です。

障害者雇用枠とは、各企業にたいして、雇用する労働者の2%に相当する障害者を雇用することが義務付けられているものです。

4.運転とてんかん

運転と癲癇

てんかんがある人でも、自動車やバイクの運転免許を取得することは可能です。しかし、未然に事故を防ぐために一部に制限が設けられています。

以前は「てんかん」と診断された場合は、自動車やバイクの運転免許の取得が出来ませんでしたが、2002年の法改正により、てんかんの症状によっては自動車運転免許の取得が可能になりました。

癲癇でも運転免許は取得・更新可能

てんかんがある人は、運転免許の取得・更新の際は、てんかん(あるいは発作)があることを申告します。すると主治医の診断書を求められますので、自身の病状が該当するかどうか主治医とよく相談し、診断書を書いてもらいます。

そして、公安委員会が主治医の診断書などを参考に最終判断は行います。分からない事があれば公安委員会に訊ねてみましょう。

てんかん患者の運転免許取得・更新条件まとめ

てんかん患者さんでも、以下のいずれかの条件を満たしている場合は、運転免許を取得・更新することができます。

  1. 発作が過去5年以内に起こったことがなく、医師が「今後、発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合
  2. 発作が過去2年以内に起こったことがなく、医師が「今後、X年程度であれば、発作 が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合
  3. 医師が、1年間の経過観察の後「発作が意識障害及び運動障害を伴わない単純部分発 作に限られ、今後、症状の悪化のおそれがない」旨の診断を行った場合
  4. 医師が、2年間の経過観察の後「発作が睡眠中に限って起こり、今後、症状の悪化の おそれがない」旨の診断を行った場合

ただし、主治医が判断するまでは、自動車運転免許は保留または停止となります。

「医師は、その診察を受けた者が一定の病気等のいずれかに該当すると認めた場合において、その者が免許を受けた者等であることを知ったときは、当該診察の結果を公安委員会に届け出ることができることとする(平成25年度改正道路交通法)

故意に申告しなかったり、虚偽申告することは犯罪

近年、ニュースやワイドショーで「てんかん発作による交通事故、死傷事故」が報じられ社会問題となっています。こういった事故が、てんかんという病気について誤解を生むきっかけになっていることも多いです。

こうした事故の大半は、本人がてんかんの発作があることを認識していたにもかかわらず、申告しなかったり、虚偽申告したりして不正に免許を取得・更新しているケースが多くあります。

当然、このようなケースは“犯罪”となりますので、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の罪などで罰せられます。

ただ、このような事故は、自分が罰せられるだけで終われば良いのですが、他人を傷つけるたり、他のてんかん患者にも多大なる迷惑がかるので、治療状況を偽って免許を取得するようなことは、決してしてはいけません。

また、自動車運転免許を、身分証明に活用するために取っておくことを希望する方も多いですが、規則に則って免許を取得することが社会の一員としての責任であることを認識しましょう。運転免許を返納することで受けられる制度もあるので、上手く活用していきましょう。

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5.結婚とてんかん

結婚と癲癇

当然ですが、てんかんを持っていたとしても、結婚は可能です。

しかし、 “自分がてんかんでえあること”を秘密にしていた場合、いざ発作が起こった時にトラブルの元になります。もし、故意に病気を隠し、婚姻後に病気が発覚した場合、離婚原因になる可能性もあります。

なので、未然にトラブルを防ぐためにも、結婚を真剣に考えている相手には、婚約前に持病についてしっかりと伝え話し合っておいた方が無難でしょう。

6.妊娠・育児とてんかん

妊娠出産と癲癇

てんかんを持つ女性の多くは妊娠、出産、子育てを問題なく行えます。

ただし、抗てんかん薬の種類によっては、副作用として、胎児に催奇形性のリスクが少なからずあることは良く知られています。なので、妊娠を考えている方は、主治医に薬の選択・調整の相談をしましょう。

また、育児や子育ては、疲労や睡眠不足の原因になることがあります。疲労や睡眠不足は、てんかんの誘因になるので、旦那さんや家族のサポートを受け協力体制を築くのも病気と上手く付き合っていく為には必要不可欠です。

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