認知症・若年性アルツハイマー病の予防・治療は3つの習慣から
認知症や若年性アルツハイマー病の発症に、私たちのライフスタイルつまり生活習慣が大きく関係していることをご存知でしょうか?
みなさんもご存知の通り、生活習慣が乱れていると「高血圧症」「糖尿病」「脂質異常症」などの生活習慣病を引き起こします。そして、これら生活習慣病は、なんと認知症や若年性アルツハイマー病といった病気の発症リスクを高めてしまうのです。次のデータを見て下さい。
- 高血圧があると、脳血管性認知症の発症率が、老年期は約5倍、中年期は約6倍~10倍高くなる。そして、若いころから高血圧が続くとより血管がダメージを受けることで認知症の発症率が高まる。
- 糖尿病があると、脳血管性認知症の発症率が約2倍、アルツハイマー型認知症や若年性アルツハイマー病の発症率も約2倍高くなる。
このデータからも分かる通り、血圧と血糖値を治療・管理することで認知症・若年性アルツハイマー病のリスクを抑えることが出来るのです。その為には、生活習慣自体の見直しが重要になってきます。
生活習慣病が認知症の原因の1つ
最近の研究で、高血圧症や糖尿病、脂質異常症は、脳血管性認知症だけでなく、アルツハイマー型認知症や若年性アルツハイマー病の発病とも大きく関係していることが分かってきました。理由は次のようになります。
- 高血圧は、脳のサイズを小さくし、認知機能の衰えを促進させる
- 高血糖は、脳のサイズを小さくし、特に記憶を司る海馬の面積が小さくし、記憶力を減退させる
メタボリックシンドロームと認知症の関係
肥満も認知症や若年性アルツハイマー病を促進させる原因です。米国の研究では、中年期のBMIが30以上の肥満群はアルツハイマー病のリスクが3.1倍に、脳血管性認知症のリスクが5.0倍と著しく上昇したという報告があります。
特に、これら生活習慣病と内臓脂肪型肥満をあわせ持つ、いわゆるメタボリックシンドロームの人は、相乗的に影響し合い認知症の進行を早めることが分かっています。
中年期の肥満、高血圧症、脂質異常症と老年期の認知症(主にアルツハイマー型認知症)の発症リスクとの関係性を調べたスウェーデンの研究があります。結果は次のようになりました。
- 肥満(BMI30以上)で2.1倍
- 高血圧症で2.0倍
- 脂質異常症で1.9倍
いかがですか?認知症には生活習慣の悪化が深く関係しています。さらに、肥満+高血圧症+脂質異常症の3つをあわせ持つメタボリックシンドロームは、認知症の発症率が6.2倍に上昇したと報告されました。 したがって、メタボリックシンドロームの予防・改善は認知症や若年性アルツハイマー病の予防にも大変有効です。
メタボリックシンドロームは『メタボとは?|メタボリックシンドロームの診断基準』で BMIは『肥満は病気のもと!無理のないダイエット方法で成功せよ』で詳しく解説しております。
3つの生活習慣を見直し、認知症・若年性アルツハイマー病を予防
認知症や若年性アルツハイマー病の予防・改善には、「運動」「睡眠」「食事」といった3つの生活習慣と密接に関係しています。したがって、生活習慣を見直し改善することは、認知症や若年性アルツハイマー病の予防・改善には必要不可欠です。
1.定期的な運動で認知症・若年性アルツハイマー病予防
運動を始めとする身体活動は認知症の発症と深く関係しています。運動習慣のあるグループはそうでないグループと比較して認知症の割合が少ないという調査があります。また、アルツハイマー型認知症では、健康な人と比べて発症前に運動することが少なかったというデータもあります。
運動をすることにより、次のような効果が現れます。
- 脳の血流が良くなることで、脳が活性化し脳の記憶領域が拡がり、認知症や若年性アルツハイマー病の進行を抑制させる可能性がある。
- 運動により活性酸素を取り除く酵素が分泌されることで、脳の老化を遅くし認知症や若年性アルツハイマー病の発生・進行を阻害させます。
特に、ウォーキングや水泳などの有酸素運動を定期的に続けることが、認知症や若年性アルツハイマー病には効果的だということが分かっています。定期的に有酸素運動を行うことで、海馬の体積が約2%も増大し、記憶力も向上したという研究報告があります。
そうはいっても、毎日続けるのが難しい人もおられると思います。たとえ、運動をする時間を確保しにくい人でも、掃除や料理といった家事などの日常動作だけでも効果があることが分かっていますので、1日15分でもよいので積極的に体を動かしましょう。
そして何よりも楽しく体を動かすことが記憶の神経細胞の保持に有効で記憶を良くします。
2.良質な睡眠で認知症・若年性アルツハイマー病予防
休養や睡眠は、脳の休息のために必要です。睡眠不足などの生活リズムの乱れは、体調不良や頭の回転力の低下を引き起こします。
また、脳の発達・進化は夜間の睡眠時に起こります。夜間の睡眠時に、脳神経細胞のメンテナンスが行われ記憶が定着するのです。したがって、夜間にしっかりと良質な睡眠を取ることが認知症やアルツハイマー病の予防・治療に欠かせません。。
昼寝は認知症や若年性アルツハイマー病に効果的という研究報告があります。しかし、60分以上の長時間の昼寝は夜間の良質な睡眠を妨げてしまい、逆効果になってしまいますので、昼寝は60分以内の短時間のものに留めて置きましょう。
また、睡眠時間が極端に多い人や少ない人、不規則な睡眠時間の人は、高齢になってから記憶障害が起こりやすいことが分かっています。したがって、一日7時間を目安に良質な睡眠を取ることを心掛けましょう。その為には、明るいうちに活発的に体を動かし、生活リズムを整えておくことが大切です。
特に、認知症や若年性アルツハイマー病により脳にダメージがあると、酸素や栄養が行届きにくいこともあり良質な睡眠は脳の疲労回復に欠かせません。さらに、認知症や若年性アルツハイマー病の人は、睡眠や排泄などの生活リズムが乱れると徘徊などの周辺症状が悪化することがあります。
介護者は次を参考に良質な睡眠がとれる環境づくりに努めて下さい。
- 昼寝は60分以内
- 夜間の睡眠前にその日の出来事を整理し記憶の定着を促進させる
- 6~8時間の深い睡眠を心掛ける
- テレビやスマートフォンはブルーライトの影響で寝付が悪くなるので、就眠2時間前の使用は禁止
- 深酒は眠りを浅くして深い眠り(レム睡眠)を阻害するので回避する
- 就寝時には部屋が暗くなるようカーテンなどで調整する
- 騒音を減らし静かな部屋づくりをする
食事で認知症・若年性アルツハイマー病予防
認知症を予防・改善するためには、食習慣の見直しも欠かせません。認知症や若年性アルツハイマー病に効果的な食事については『食習慣の改善で認知症予防!効果的な食べ物を大公開』で詳しく解説しておりますので、是非合わせてご覧ください。
また、大量のアルコールの摂取は脳を委縮させ、アルコール関連の認知症や脳血管性認知症、さらにアルツハイマー型認知症に繋がることがありますのでご注意下さい。
まとめ
生活習慣病といった基礎疾患を一つ一つ減らすことで、認知症や若年性アルツハイマー病の予防・治療に効果があることが数々の研究からも分かっています。つまり、これらに留意して運動・睡眠・食事といった生活習慣を今一度見直していただければと思います。
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