サービス付き高齢者向け住宅とは|サ高住を学ぼう

サービス付き高齢者向け住宅

近年、注目を浴びている「サービス付き高齢者向け住宅」という高齢者住宅を知っていますか?次のようなお悩みを抱えている方に、是非お勧めしたいのがこの「サービス付き高齢者向け住宅」です。

70歳の父は、半年前に母を亡くしてからは1人で生活を送っています。今まで家事は全て母に任せていたので、父は慣れない食事の用意や洗濯といった家事に悪戦苦闘しています。そんな中、父は食事の用意をしてくれる高齢者住宅への引っ越しを考えています。父は元気で介護の心配もありません。どこか父にあった高齢者住宅はないでしょうか・・・

ここでは、「サービス付き高齢者向け住宅とは?」といった基本から、「月々の利用料金の目安」、「介護付き有料老人ホームとの違い」に至るまで詳しく解説していきますので、是非一緒にサ高住について学びましょう。

<目次>

  1. サービス付き高齢者向け住宅とは
    1. サ高住の入居条件
    2. サ高住は「生活支援サービス」が付いたバリアフリー住宅
    3. 介護サービスは含まれず別途契約が必要
    4. 入居者の権利が強いサ高住
  2. サービス付き高齢者向け住宅の利用料金
    1. 入居時にかかる費用
    2. 月々にかかる費用
    3. 経営者必見~補助金や税制優遇について
  3. サ高住VS有料老人ホーム
    1. 介護サービスの違い
    2. 費用の違い

1.サービス付き高齢者向け住宅とは

サ高住

超高齢化社会を迎える日本では、お年寄りが安心して過ごせる「住まい」の確保は急務です。

今まで日本には、介護が必要な人向けの「特別養護老人ホーム」や「介護付き有料老人ホーム」などの施設はありました。しかし、比較的元気な高齢者が安心して暮らせる住まいが少ないことが問題視されていました。また、国の懐事情を考えるとこれ以上特別養護老人ホームなどの介護保険施設は増えないでしょう。

そこで、2011年高齢者の「住まい」の問題を解決すべく、国土交通省と厚生労働省がタッグを組み新しく始めた賃貸住宅制度が「サービス付き高齢者向け住宅」なのです。

サービス付き高齢者向け住宅とは、1人暮らしの高齢者や高齢夫婦が住み慣れた地域で安心して生活できるように、バリアフリー化されたマンションに「見守りサービス(安否確認)」と「生活相談サービス」をプラスした賃貸住宅のことです。

一般的な賃貸住宅よりも高齢者が住みやすく借りやすいのが特徴で、略して「サ高住」と呼ばれています。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、それまでにあった高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)、高齢者専用賃貸住宅(高専賃)、高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)を「改正高齢者住まい法」により一本化した制度です。サ高住を運営するには、都道府県で認可・登録されることが必要です。

1.サ高住の入居条件

入居基準

主なサービス付き高齢者向け住宅の対象は「自立または軽度の要介護状態」の人です。

サービス付き高齢者向け住宅では、以下のような入居基準があります。

  1. 60歳以上の高齢者です。または要介護・要支援の認定を受けている人が対象
  2. ①の配偶者
  3. 親族で要介護要支援認定を受けている人
  4. 特別の理由によって1の人と同居することを都道府県知事によって認められた人

ですので、「要介護3~5などの中重度の方」や「認知症の方」は、サ高住に入居できないといったことは入居基準に含まれていません。

とは言うものの、どちらかというとサービス付き高齢者向け住宅は「自立あるいは軽介護度」の人を対象としているところが多く、認知症の方や介護度が重い方の利用に制限を設けているところもあるので確認が必要です。

参考リンク>>サ高住の認知症の受け入れ対応について

2.サ高住は「生活支援サービス」が付いたバリアフリー住宅

バリアフリー

それではサービス付き高齢者向け住宅とは、どのような施設なのか詳しくみていきましょう。

高齢者が安心して暮らしていくためには、「ハード(建物)」をバリアフリーに対応するだけではなく、食事の用意や見守りなどの「ソフト面(生活支援サービス)」からのサポートも欠かせません。

その為、サービス付き高齢者向け住宅では、ハードとソフトの両方を充実させるための基準が国により定められています。この基準をクリアできれば、サービス付き高齢者向け住宅とした登録することができるのです。

サービス付き高齢者向け住宅の登録基準
ハード(建物・住宅基準) 手すりやスロープの設置、段差の解消(5㎜以下)、廊下幅の確保などの規定をクリアしたバリアフリー住宅であること(原則手すり、スロープ、廊下など3点以上のバリアフリー)
原則、各戸に台所、水洗便所、収納設備、洗面設備及び浴室が設置されていること
居室の床面積は25㎡以上(リビングや食堂、台所、水洗便所などが共有なら18㎡)
ソフト(生活支援サービス基準) ケアの専門家が居住者のお部屋を訪ねる「安否確認(見守り)」と日常の暮らしや介護などに関して専門家が対応する「生活相談」が必須
社会福祉法人や医療法人の職員、または医療や介護の専門職員が最低でも日中の間常駐する
夜間など職員が常駐していない無い場合は、緊急通報システムや見守りセンサーで対応

それでは、さらに詳しくサービス付き高齢者向け住宅の「ソフト(生活支援サービス)」について見ていきましょう。

安否確認(見守りサービス)

どのサービス付き高齢者向け住宅にも「見守りセンサー」や「緊急通報装置」を使った安否確認サービスがあります。

例えば、キッチンやトイレ、洗面所など日中必ず使用する場所にセンサーを設置し、24時間高齢者を見守ります。例えば、10時間以上その場所を通らなければセンサーが反応し、サ高住のフロントや管理事務所に知らせが届くシステムです。そして、フロントは知らせをもとに住民の部屋に電話を掛けます。それでも応答が無ければ、職員が居室を訪問します。

また、サ高住には建物のあちこちに「緊急通報装置」が設置されていて、そのボタンを押すことで誰かに助けを求められます。緊急通報装置は、ベッドの周辺の他、洗面所、トイレ、リビングなどに取り付けられていますが、倒れた時に張って言って手が届く高さになっていることが特徴です。

さらに、介護福祉士や看護師などのケアの専門家が朝食前や就寝前など定期的に居室を訪ねて、健康チェックを兼ねて顔色などを見て回ることもあります。

こうした、24時間対応の見守りサービスにより高齢者の異変を見逃さず、脳梗塞や脳出血といった急な病気に対応でき、ひいては孤独死の予防にも役立つのです。

生活相談

サ高住の「生活相談サービス」では、日中何か困ったことや不安があれば、いつでもフロントに相談でき安心です。暮らしや介護についての専門家が対応するので、判断能力に自信がなくなった高齢者にとって心強い存在であり、特殊詐欺の防波堤の役割も担っています。

その他生活支援サービス

多くのサービス付き高齢者向け住宅では、栄養バランスに配慮した食事の用意や洗濯、掃除、買い物代行、病院への送迎などの生活支援サービスを提供しています。

なんと、およそ90%以上のサービス付き高齢者向け住宅に「食事サービス」が付いているというデータもあります。

なので、冒頭のお父さんのように家事が苦手な人にとっては、食事作りや洗濯といった家事から解放されるだけでなく、毎回出来立ての暖かい食事を提供されることはサ高住に入居することの大きなメリットです。また、体力的に衰えてきた高齢者や認知症で免許を返還した人にとっては掃除や洗濯、送迎などのサービスは嬉しいものです。

こうしたサービスは利用者が自由に選択できるようになっているのもサービス付き高齢者向け住宅の特徴です。ただし、安否確認と生活相談以外のこれらのサービスは各サ高住によって違うので、予め確認しておいて下さい。

3.介護サービスは含まれず別途契約が必要

サ高住介護サービス別途契約

サービス付き高齢者向け住宅に入居する際の一番の留意点は「介護が必要になった時どうなるか」です。

悪までも、サ高住は「賃貸住宅」であり、「介護施設」ではないので介護サービスは含まれません。

したがって、介護が必要になれば、個別に「訪問介護」や「デイサービス」、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」などの介護サービスを提供している事業所と契約しなければなりません。

ただ、サービス付き高齢者向け住宅の中には、テナントとして介護サービス事業所が入っていたり、提携している事業所がいたりするところも多いです。また、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けているサ高住では、介護サービスに掛かる費用を抑えることが出来ます。

サ高住が提携している介護サービス事業所と、必ず契約しなければならないわけではありません。入居する前から利用している事業所があれば継続することが可能です(ただし、特定施設入居者生活介護が利用できない場合あり)。

認知症の人への対応

サービス付き高齢者向け住宅に入居している人でも訪問介護などの介護サービスは利用できます。しかし、悪までも契約した時間しかサービスを受けることはできません。それ以外の時間は、自分で何とかするか、ヘルパーの次の訪問まで我慢して待つかです。

しかし、認知症の人はどうでしょうか?「夜間の徘徊」「大声で叫び暴れまわる」「トイレでない所での排泄」など、迷惑行為を起こすことがありますが、その場合は、身元保証人と協議して、グループホームや介護付き有料老人ホーム、特別養護老人ホームなどの他の施設へ移ることもあります。

住所地特例

2015年の介護保険制度改正により食事の提供等介護を提供して有料老人ホームに該当する「サービス付き高齢者向け住宅」も住所地特例の対象となりました。よその自治体から転居してきた場合、以前の自治体が介護給付を負担します。

4.入居者の権利が強いサ高住

サ高住契約

サービス付き高齢者向け住宅は「賃貸借契約(借家権)」です。

この「賃貸借契約(借家権)」は、「利用権」よりも強い権利で、借りる側(入居者)の権利が強いのが特徴です。月額費用さえ支払っていれば、長期入院などによる理由で一方的に契約を解除したり、家主といえども許可なく入室したりする事はできません。

契約要件をまとめた下のリストからも分かる通り、サ高住は「入居者に有利」な条件になっています。

  • 書面による契約、居住部分が明示されていること
  • 長期入院を理由に一方的に解約できないなど、居住の安定が図られた契約であること
  • 敷金、家賃、サービス対価以外のみで、礼金、権利金やその他費用は徴収しないこと
  • 前払い金の返還ルールなど保全措置が図られていること

ただし、サ高住によっては先ほどの認知症ケースのように「他に入居者に迷惑をかけるような行為をすると退去もある」などの契約要件を設けているところもあります。また、一般的な不動産契約と同様に保証人が求められることが多いです。

【ひとくちメモ】

サ高住の賃貸借契約は「建物賃貸借契約」と「終身建物賃貸借契約」があります。「終身建物賃貸借契約」は、入居者が生存している間は住み続ける権利がありますが、死亡すると自動的に契約が終了します。ただし、夫婦で入居している場合、配偶者が生存している限り、配偶者が引き続き住み続けることが出来ます。

2.サービス付き高齢者向け住宅の利用料金

サービス付き高齢者向け住宅にかかる費用

サービス付き高齢者向け住宅は、1人暮らしのお年寄りや高齢の夫婦のみの世帯が、住み慣れた地域で暮らせるように、安心で安全な住まいの提供を促進することを目的にしています。

このため、従来型の介護付き有料老人ホームなどに比べると、入居に伴う入居金や月々の家賃などは割安になっています。サ高住の費用は厚生年金の受給額が一つの目安になり、割安な料金で入居することが可能です。また、賃貸住宅特有の礼金、更新料は掛からず「入りやすく、出やすい」のがポイントです。

入居時にかかる費用

サービス付き高齢者向け住宅は、一般の賃貸マンションと同様の「賃貸借契約」が中心です。マンションタイプの賃貸住宅の為、一般的に「敷金」として家賃の2ヶ月分程度に当たる数十万円で入居できます。

サ高住の入居時の費用は、おおよそ15~30万円ほどです。

ただし、入居時に家賃やサービスの対価として前払金が数百万円~数千万円必要なところもあります。

月々にかかる費用

サービス付き高齢者向け住宅の月々の費用は、一般的な厚生年金による年金暮らしをしている単身の高齢者や夫婦であれば、年金の範囲内で毎月の生活が維持できる程度となっています。

サ高住の月額料金は、「家賃」と「生活支援サービス費」の2つが基本となっています。

「家賃」は、地域や居室・共用スペースのグレードにより数万円から数十万円程度まで幅がありますが、一般的に5~10万円ほどです。加えて、安否確認や生活相談、緊急時通報、食事代、ゴミ出しなどの「生活支援サービス費」が2~3万円ほどです。さらに、施設の共有スペースに関する共益非、水道光熱費などが加わります。

これらを合計すると、サービス付き高齢者向け住宅の月額費用は、およそ10~25万円ほどです。

もちろん介護が必要になれば、「介護サービス費」もかかります。したがって、サービス付き高齢者向け住宅を選ぶ際は、入居費用や月々の費用だけでなく、介護サービス費用なども含めた料金を総合的に判断することが大切です。

サ高住の月々の利用費用=入居時の費用(敷金など)+月額利用料+介護保険(自己負担分1~2割)+そのほかの費用(介護保険対象外)

経営者必見~補助金や税制優遇について

ここからは、サービス付き高齢者向け住宅の経営をお考えの方への内容です。普通の方は読み飛ばして下さい。

国は、お年寄りが住み慣れた地域で安心して暮らせる「地域包括ケアシステム」を確立することを目標に掲げています。ですので、国はサ高齢者住の普及のために、補助金や税制の優遇策、融資(金利優遇)などを設けていて急増中です。

2015年1月現在、全国で5,239棟、16万9,338 戸と急増しています。地域としては、特に大阪、北海道、埼玉、東京エリアで多くなっています。

例えば次のような優遇措置があります。

補助金 建設費の1/10、改修費1/3(国費上限100万円/戸)を補助。東京都などのように、都道府県からの助成金がプラスされているエリアもある
税制優遇 所得税、法人税、固定資産税、不動産取得税を優遇
融資 住宅金融支援機構から優遇金利

これらのメリットを利用し、地主がサ高住を建てて、民間企業や社会福祉法人、医療法人などが一括借り上げし運営している所がほとんどです。ただし、「バリアフリー設計や生活支援サービスの提供、契約内容と入居前の重要事項の説明、情報開示」などの基準が守れているかどうか行政の指導監督を受けなければいけません。

3.サ高住VS有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームとサ高住の違い

ここからは「サービス高齢者向け住宅」と「介護付き有料老人ホーム」の比較を通して、あなたに最適なお住まいを探しましょう。

介護サービスの違い

有料老人ホームの中でも、食事や入浴、トイレなどの24時間対応の介護サービスが付いているのが「介護付き老人ホーム」です。また、重度の人でも、最後まで安心して生活できるような設備やサービスが提供されます。

一方、サ高住では、介護サービスはサービスに含まれておらず、別途契約が必要になってきます。また、一般的に自立~軽度の介護状態の人を対象としているので、寝たきりの人などは理想通りのサービスを受けられないことも多いです。サービス付き高齢者向け住宅に入居しても、介護が必要になったり、認知症になったりすると、居宅介護サービス費の支給限度額を超えてしまうこともあり、特別養護老人ホームなどに住み替える方が安く、安心もあります。

ですので、介護サービスの面では介護付き有料老人ホームに軍配が上がります。ただし、近年は、夜間看護の充実を図り、中介護程度の人まで積極的に受け入れ、看取りまで行うサービス付き高齢者向け住宅も出てきています。また、介護が必要になれば、優先的に系列の介護付き有料老人ホームに転居できるサ高住もあります。

費用の違い

一般的に、有料老人ホームに入居する為には、かなり高額な費用が掛かります。一方、サービス付き高齢者向け住宅のほとんどは、入居時に敷金が家賃の2ヶ月程度かかる他は毎月の家賃などで10万円~25万円程度です。

ですので、費用面ではサービス付き高齢者向け住宅に軍配が上がります。ただし、最近では入居一時金がゼロの介護付き有料老人ホームがあったり、入居時に高額な費用が掛かるサービス付き高齢者向け住宅もあったりと、どちらが高いか安いかは「施設設備」や「サービス」によって変わってきます。

ですので、あなたの求めるサービスと経済状況を総合的に判断して、サービス付き高齢者向け住宅か有料老人ホームかを選びましょう。

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