言語障害(失語症・構音障害)の方とのコミュニケーションのコツ3選

言語障害接し方介護

失語症しつごしょう構音障害こうおんしょうがいといった障害は、言葉がスムーズに出てこなかったり、意味不明な言葉を発しったりする言語の障害です。

上手く会話ができない相手をついつい、バカにしたり、急がしたりしてしまうことがあります。しかし、そのような接し方をしてしまうと症状の悪化を招くかもしれません。

最悪の事態を招かない為にも、この記事で”言語障害(失語症・構音障害)の方との接し方・介護のコツ”を学んでいただき、言語障害をお持ちの方とのコミュニケーションに役立てていただければと思います。

言語障害があってもプライドや感情に障害はない

スパイラル

言語障害では、言葉が理解できない、上手く発音ができないといった障害が現れます。しかし、その多くは感情や知的レベルは保たれている為、本人は”言いたい事が上手く伝わらない”、”言われたことを上手く理解できない”ことに、もどかしさや不甲斐なさを感じています。

また、脳卒中(脳梗塞や脳出血)の後遺症で言語障害が現れると、同時に身体が思い通りに動かなくなる”運動障害”や”嚥下障害”を伴うことがあります。そうなると、以前は普通に出来たことが出来なくなることも多く、不甲斐ない自分に対し、不安やストレスを感じていることも少なくありません。

何気ない一言が言語障害を悪化させる

そこへ、「何度言っても分からないの?」「しっかりと喋って!」などと、無神経な言葉を投げかけたとしたらどうなるでしょうか?間違いなく相手を深く傷つけることになるでしょう。

こうなると、ますますストレスがのしかかり、その重圧から人との関わりを避けるようになります。それと同時に、言葉数も減っていくので、日常生活におけるリハビリの機会を失い、さらに言語障害が悪化してしまう、という負のスパイラルに陥ります。最悪、孤独やストレスから、うつ病などの精神障害や認知症を招くこともあります。

したがって、このような負のスパイラルを生まない為にも、言語障害(失語症や構音障害)の方との正しい接し方・介護のコツを心得ておくことが重要なのです。

言語障害(失語症や構音障害)の方との正しいコミュニケーションの取り方のコツ

コミュニケーション

言語障害とは、言葉の理解や表出が上手くできなくなる障害です。言語障害の原因は、脳卒中の後遺症や認知症、パーキンソン病、精神障害など様々ですが、共通して言えることは”相手を尊重し焦らずにゆっくりとコミュニケーションを取るよう心掛けること”です。

ここでは、「話しかける」と「話を聞く」「その他」といった3つのシチュエーションを想定して、言語障害(構音障害や失語症)の方との接し方のポイントを確認していきたいと思います。

なお、言語障害のタイプ別の症状や原因については下のリンク先で詳しく解説しています。

言語障害とは?構音障害と失語症の症状と原因

話しかける|シチュエーション-1

voice

言語障害(失語症や構音障害)の方に話しかける時のポイントです。基本はゆっくり、ハッキリと話しかけるようにしましょう。

言語障害の方に話しかける時のポイント
話し始めることを伝える 相手の発する言葉を理解しにくい傾向のある方には、話しを始める前に「○○さん、これから○○の話をしますよ」等と言って注意を引いてから話しましょう。

短い文で簡潔にゆっくり、ハッキリ話す

長文や早口言葉は聞き取れない事が多いので、ゆっくりと話しかけましょう。聞き取りづらそうな場合は、口を大きく開けて表情豊かにハッキリと話すよう心掛けましょう。
具体的に話す 伝えたい事をはっきりと具体的に話します。抽象的な表現は、分かりづらい上に文章も長くなる傾向があり、理解しづらくなるためです。
話題は本人が関心あるものを優先 興味のない話題では、会話への集中力が途切れがちになります。集中して聞ける話をしましょう。
本人が使い慣れた言葉や簡単な言葉を用いる 本人が慣れ親しんだ方言や年代に合わせた言葉を使う方が理解しやすい場合があります。
必要に応じ、ジェスチャーや文字、絵、実物などを使う 聴覚だけでなく、視覚や感覚、嗅覚などに訴えかける方法でコミュニケーションを取りましょう。
一回で理解できない時は、再度繰り返したり、表現を変える 本人が理解できていないようなら、何度かゆっくりと繰り返します。表現を変えてみることで理解できる場合もあります。
話題を唐突に変更しない 失語症では、理解に時間を要することがあるので、反応が無くても急に話題を変えないようにしましょう。
大事なことはメモに書いて渡す 言葉は理解できても、認知症などにより記憶障害がある場合は、話の内容をメモに残しいつでも思い出せるようにしましょう。

話を聞く|シチュエーション-2

listen

言語障害(失語症や構音障害)の方の話を聞く時のポイントです。基本は、急がしたり、面倒くさそうな顔をしないことです。

言語障害の方の話を聞く時のポイント
 急かさずに、本人がゆっくりと話せる雰囲気を作る  言語障害の方の場合、会話はなかなかスムーズにいきません。しかし、聞き手であるあなたが露骨にイライラしたり、焦らしたりしてはいけません。本人がゆっくりと会話できる雰囲気づくりを心掛けましょう。
 誤りをいちいち指摘したり、笑ったりしない  言語障害の方の発音や間違いを指摘したり、バカにしたりしてはいけません。会話への意欲低下を招きリハビリはおろか、症状を悪化させてしまうこともあります。
 「YES」「NO」で答えられる質問にする  言語の理解に問題が無い場合は、本人が答えやすいように質問しましょう。2択だと回答しやすくなります。
 相手の表情やその場の雰囲気を感じ取り、話の理解に努める  何を言いたいのか予測して理解に努めましょう。しかし、本人が話しているにも関わらず、話を先取りしたり早合点したりしてはいけません。
 話し言葉にこだわらず、ジェスチャーや文字、絵などを効果的に使ってもらう  口だけでなく他の手段でコミュニケーションが取れるよう工夫しましょう。
 上手く話せたら喜ぶ・褒める  上手く話せていることを伝え、実感してもらうことで、本人の意欲向上に結びつきます。
 話すことを強要しない

 話すことがリハビリになるといっても、本人が話したくない時に無理やり会話しようとしてはいけません。

その他|シチュエーション-3

仕事と癲癇

言語障害の方と「話す時」「聞く時」以外の時にも気を付けるべきポイントがいくつかあります。

言語障害の方との接し方
遅くても代弁し過ぎない 話しかけられて、本人が自分自身の力で答えようとしているにも関わらず、先回りして代弁してしまうことがあります。何か伝えるときは、自分自身の言葉で伝えたいと思うことは当然のことです。それにもかかわらず先取りされたら傷ついてしまいます。
励まし過ぎに注意する 上手く話せた時など、褒められると誰でもうれしいものです。しかし、ほめ過ぎたり、励まし過ぎると「プレッシャー」を感じてしまい、かえってリハビリなどの意欲を削いでしまうことがあるので注意が必要です。
他人との比較をしない 失語症はそのタイプや症状の重さなど人それぞれです。したがって、他人と比べたり、きっと治るなど無責任な言葉を発してはいけません。
文字理解が困難な場合 失語症の中には、言葉の理解や表出だけでなく、書くことも困難な方がいます。その為、会話の手段として、筆談や文字盤が使えない場合があります。そのような場合は、ジェスチャーや絵カードを使ってやり取りをしましょう。
文字を認識できないタイプの失語症 仮名は無理でも漢字ならわかるという場合があります。文章にするより単語を並べただけの方が分かる場合もあります。その人の症状に合わせたコミュニケーション方法を探りましょう。
全失語の人の場合 話すことだけでなく、聞く、書く、読む能力全てが困難な症状を全失語と言います。全失語の方はコミュニケーションが非常に取りにくいので、一方的に話しかけたら混乱したり、疲れてしまうことがあるので特に注意が必要です。

まとめ

言語障害(失語症や構音障害)の方と話す際は、次のようなことを事前に理解しておくことで、スムーズにコミュニケーションを取ることができます。

  • 言語障害のタイプ(失語症か構音障害か)
  • 言語障害の症状と重症度(失語症なら運動性失語か感覚性失語か)(運動性失語の場合、どの症状が特に現れているのか)

こういった情報を、家族やヘルパーといった介護者間で情報を共有することが介護を円滑に行う上で非常に大切になってきます。

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