介護療養型医療施設(療養病床)のキホン
みなさん「介護療養型医療施設」って知っていますか?
「段々と認知症が悪化して、痰の吸引や胃ろうを使った食事をしなければいけなくなった・・・在宅介護はもう難しい・・」このようなお悩みをお持ちの方の選択肢の1つとして考えられるのが「介護療養型医療施設」です。
しかし、イマイチどういった施設なのか?わからないという人も多いでしょう。
そこで、そういったお悩みをお持ちの方の為に「介護療養型医療施設とは何なのか?」「料金や費用がどれくらいかかるのか?」というお悩みを徹底的に分かりやすく解説していきます。ぜひ一緒に介護療養型医療施設について学んでいきましょう。
<目次>
- 介護療養型医療施設とは
- 医療サービスが充実している
- 対象|医療依存度が高い人が多い
- 介護療養病床は廃止される
- 介護療養型医療施設の利用料金
- 施設サービス費
- その他加算項目
- 療養病所の料金計算シミュレーション
1.介護療養型医療施設とは
「介護療養型医療施設」とは、長期的な療養が必要なお年寄りが、介護保険でも入院生活が出来るように設けられた施設です。通称、「介護療養病床」や「療養病床」とも呼ばれています。
1.医療サービスが充実している
介護療養型医療施設では、介護サービスはもちろんのこと特に、医療や看護に重点を置いたサービスが展開されています。
その為、多くの療養病床は、病院や診療所に併設・隣接する形で設置され多くの医師や看護師が常駐しています。いわば、介護保険で入れる病院であり、医療・介護の両面から入院生活をサポートしてくれます。
具体的な療養病床のサービスとしては、食事の用意や寝床、入浴介助、排泄介助、嚥下介助だけでなく、医療行為である「経管栄養(⁼胃ろう等)」、「痰の吸引」などのサービスが医師による医学的な管理のもと提供されます。ちなみに療養病床は、ショートステイに利用されることもあります。
2つの療養病床|豆知識
実は、療養病床と呼ばれるものは2つ存在します。
医療療養病床 | 医療保険で利用できる病床 |
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介護療養病床 | 介護保険で利用できる病床 |
1つの病院の中に、医療保険のベッドと介護保険のベッドが混在していて、医師の判断で使い分けることが出来ます。介護保険のベッドは利用限度額があるので、高額な医療費がかかる場合は、医療保険のベッドに移す。医療保険のベッドは長期連用で報酬が減るので、慢性化した方は介護保険ベッドに移されるなどの使い別けがされてきました。
2.対象|医療依存度が高い人が多い
「介護療養型医療施設」は、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設と並ぶいわゆる介護保険3施設の1つです。介護療養型医療施設の最大の特徴は、この3施設の中でも医療や看護が一番充実していることだと言えるでしょう。
したがって、脳卒中の後遺症や認知症、パーキンソン病などこれ以上治らない慢性疾患の人の中でも、常に医学的な管理が必要であり、なおかつ自宅で病状のコントロールが難しい医療依存度が高い人を対象とするものです。
療養病床の在所者の大半は、要介護4・5と介護度が高いお年寄りが占めており、なんと全体の80%以上にも上ります。
ですので、大体の治療は介護療養型医療施設内で行えます。しかし、もし専門的な治療が必要な場合は、施設の医師の紹介で急性期病院などへ転院して治療を受けることになります。
なお、利用対象となるのは、急性期、回復期の治療が終わり維時期に入った要介護1~5の人です。要支援1・2の人は利用することは出来ません。
3.介護療養病床は廃止される
現在の日本は、少子高齢化が社会問題となっています。少子高齢化に伴い、医療保険や介護保険にかかるお金が年々増加し、国の財政を圧迫しています。
そこで、国の財政状況を改善するためにメスを入れられることになったのが「療養病床」です。
政府は、2011年までに介護療養病床を廃止し、医療療養病床も15万床に削減することを決定しました。
しかし、急速な転換は施設にとって困難であると同時に、利用者が療養病床から移る受け皿が十分に整備されておらず、介護難民などの問題が発生することが予想され、転換は厚生労働省の想定通りには進みませんでした。そこで現在は、廃止時期が7年間延長され、2018年3月31日までに廃止することが決定されました。
そして、2012年度以降は、介護療養病床の新設が認められないようになりました。廃止後の施設を利用して、介護老人保健施設(介護療養型老人保健施設)などに変化することが期待されています。
2.介護療養型医療施設の利用料金
みなさん介護療養型医療施設の利用料金がどのようにして決まっているか知っていますか?ここからは、介護療養型医療施設の利用料金について分かりやすく説明していきます。
1.施設サービス費
介護療養型医療施設の利用料金は、施設サービス費として1日単位で設定されています。その費用の1~2割を基本料として自己負担する仕組みです。介護療養型医療施設の施設サービス費は次の3つを基準に細分化されています。
- 施設の種類
- 居室のタイプ(従来型個室、多床室、ユニット型個室、ユニット型準個室)
- 要介護度(要介護度1~5)
施設の種類が細分化されている
中でも、介護療養型医療施設では「施設の種類」が非常に細かく設定されています。「施設形態」「看護・介護職員の配置状況」などの条件に応じて、細かく細分化されています。
まずは「施設形態」の違いにより3つに分かれます。
- 病院にある病床
- 診療所にある病床
- 認知症に対応できる病床(老人性認知症疾患療養病棟)
そこから、さらに「看護・介護職員の配置状況」によって細かく分けられます。
例えば、病院の介護療養型医療施設の場合であれば、利用者1人に対する看護・介護職員の人員の配置状況により
- 利用者:看護職員=6:1、利用者:介護職員=4:1
- 利用者:看護職員=6:1、利用者:介護職員=5:1
- 利用者:看護職員=6:1、利用者:介護職員=6:1
いくつかに分けられ、さらに療養機能強化型A、療養機能強化型B、その他の3つに分けられます。
また、介護療養型医療施設は医療の必要性が高い人を対象としている分、他の介護保険施設と比べて料金は高めです。自己負担分が所得に応じた上限額を超えた場合には、高額介護サービス費として介護保険より給付されます。なお、食費や居住費といったホテルコスト、あるいは理美容費、日用品費などは保険の対象外であり、全額自己負担になります。
2.その他加算項目
介護療養型医療施設においても加算料金の設定があります。施設の利用に当たっては、基本料金である施設サービス費の他、諸条件により加算料金が設定されています。加算とは、施設が一定の基準を満たせば、利用料を上乗せできる決まりです。
特定診療費 | リハビリが実施された場合(リハビリの内容別に定められている:理学療法(Ⅰ・Ⅱ)作業療法、言語聴覚療法、摂食機能療法、認知症老人入院精神療法、精神科作業療法) |
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経口維持加算 | 口から食事を食べることを手助けする場合 |
口腔衛生管理体制加算 | 歯科医師や歯科衛生士による口の中のケアを行った場合 |
療養食加算 | 栄養士による療養食が出る場合 |
認知症行動・心理症状緊急対応加算 | 認知症の症状が進み、在宅介護が困難になった人を受け入れた場合 |
介護保険で給付されるのは、あくまで先ほど確認した「施設サービス費」と「その他加算」など介護サービスにかかる費用です。したがって、食費や居住費(部屋代、水道光熱費など)、日常生活費(理美容費、日用品費)などのいわゆる「ホテルコスト」は含まれず、これらは原則全額自己負担となります。
下の「介護療養医療施設の介護報酬&料金表」をご覧ください(2016年4月時点)。
<画像をクリックするとPDFでダウンロードできます>
3.療養病床の料金計算シミュレーション
それでは実際に、介護療養型医療施設の月額料金をシミュレーション計算してみましょう。
- 利用者は要介護4
- 病院に併設した療養病床
- 認知症対応の病床ではない
- 居室タイプは、従来型個室
- 職員の配置比率は看護職員1:利用者6、介護職員1:利用者4
- 機能強化型ではない
- その他加算項目は無い
以下のサービスを利用した場合、次のように料金計算できます。(1単位=10円、個人負担=1割負担の場合)
【計算式】
施設サービス費+居住費+食費+日常生活費
- 施設サービス費用:1,062単位×30日(利用回数)=31,860単位
- 31,860単位×10円×10%=31,860円
- 居住費:1,640円/日×30日=49,200円
- 食費:1,380円/日×30日=41,400円
31,860円(施設サービス費)+49,200円(居住費)+41,400円(食費)=122,460円
介護療養型医療施設の自己負担費用=122,460円+日常生活費(娯楽費、オムツ代、理美容費など)
まず、上の表の「施設の種類」「居室のタイプ」「要介護度」をもとに単位数を割り出します。そして、利用日数を掛けます。その後、1単位あたり約10円を掛け、さらに介護保険の自己負担分1割=0.1を掛けます。
そして、自己負担分の居住費と食費、日常生活費を足し合わせ介護老人保健施設1ヵ月あたりの自己負担費用を出し計算完了です。
※なお、その他加算項目がある場合は、必要に応じて足して下さい。
まとめ
- 介護保険を利用して入所できる施設
- 介護保険3施設の中で最も医療が充実している
- 病院や診療所、老人性認知症疾患療養病棟に併設されている
- 医療の必要性から、介護保険3施設の中では、一番利用料が高い
- 2018年までの廃止が決定している
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