介護老人保健施設とは?老健について学ぼう

介護老人保健施設,老健

みなさん「介護老人保健施設」って知っていますか?

いざ、介護保険サービスを利用しようとすると、似たような名前が沢山出てきて、頭の中はゴチャゴチャ・・・・どうしたらいいの?という悲鳴があちらこちらで聞こえてきます。

ここでは、そういった方の為に「介護老人保健施設とは何なのか?」「料金や費用がどれくらいかかるのか?」というお悩みを徹底的に分かりやすく解決していきますので、ぜひ一緒に老健について学んでいきましょう。

<目次>

  1. 介護老人保健施設とは
    1. 老健はリハビリが充実している
    2. 老健のサービス対象と入所期間
    3. 医師は常駐しているが意外と医療に弱い?
    4. 介護療養型老人保健施設|医療に強い老健
  2. 介護老人保健施設の利用料金
    1. 老健の施設サービス費
    2. その他加算
    3. ホテルコスト
    4. 老健の費用計算シミュレーション

1.介護老人保健施設とは

介護老人保健施設とは、病院と家庭との橋渡しを目的とした施設です。介護保険を利用して入所できる施設サービスの1つです。

医療保険による入院期間が短くなったのを受けて、老健では病院を退院する人が直ぐに在宅での生活が難しい場合に、医療や介護ケア、リハビリなどのサービスを提供してくれます。略して「老健」や「老人保健施設」と呼ばれることもあります。

老健は施設サービスですので、利用者は生活の場を施設に移し在宅復帰に向けて必要なサービスを受けます。

具体的な老健のサービスとしては、食事や寝床、入浴介助、排泄介助、嚥下介助、リハビリテーションなどの様々なサービスが医師による医学的な管理のもと提供されます。ちなみに老健は、ショートステイなどの短期入所に利用されることもあります。

元々、介護老人保健施設は、1986年に老人保健法改正により「老人保健施設」という名称で誕生した施設です。その後、2000年に介護保険制度が始まると、老人保健法に基づく「老人保健施設」は、新たに介護保険法に基づく「介護老人保健施設」として生まれ変わりました。

1.老健はリハビリが充実している

老人保健施設のリハビリ設備

数ある介護老人保健施設のサービスの中でも、特に自宅での生活を可能にする為のリハビリテーションには重点が置かれており、老健には理学療法士や作業療法士といったリハビリテーションの専門家が手厚く配置されています。

利用者本人へのリハビリはもちろんのこと、家族も在宅介護を上手に行っていくアドバイスや住宅のバリアフリー化についてアドバイスを受けることが出来ます。

2.老健のサービス対象と入所期間

介護老人保健施設は、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、介護療養型医療施設と並ぶいわゆる介護保険3施設の1つです。この中でも、介護老人保健施設は在宅への復帰することを前提とした一時的な通過施設という位置づけです。

したがって、介護老人保健施設の対象は、治療はひと段落し病状が比較的安定しているが、医療や介護ケアやリハビリが必要な人だけで、「よりリハビリによる身体機能の維持向上が必要」「在宅のバリアフリー環境を整える時間が必要」などの理由がある人です。

なお、介護老人介護保険施設は要介護1~5の人を対象とする施設であり、要支援1・2の人は利用できません。

また、老健に入所できる期間は原則として3ヵ月と短めに定められ縛りがあります。

これは、特別養護老人ホームのような「住まい」としての特色が強く、入所期間の制限が無く最後まで看てくれる施設とは異なる点です。

>>参考リンク:特別養護老人ホームとは

ただし、入所期間については、3ヵ月を超えてもある程度延長してくれるケースがあります。3ヵ月ごとに本人の身体機能などをモニタリング(=観察)し、6ヶ月ごとに立てられるケアプランで老健に居る必要性が認められれば、延長出来るようになりました。

2010年の調査では、介護老人保健施設の入所者の平均在所日数は、約11ヶ月というデータがあります。介護老人保健施設は、介護保険3施設の中でも、退所後に家庭に戻る割合が高いです。しかし一方で、実際に「家庭に戻る」ことが出来た人は約23.8%に留まり、約48.9%の人は病院などの医療機関に戻っているという当初の老健の目的とは外れる残念なデータも出てきました(厚生労働省:介護サービス施設・事業所調査.2010)。

3.医師は常駐しているが意外と医療に弱い?

老健の医者

介護老人保健施設には、医師が常駐しており、病状が急に悪化した場合などは必要に応じて医師による診察、治療が受けられるのも特徴の1つです。介護保険では月に1回を上限に、医師による診療が認められています。

しかし、意外と老健は医療に弱いです。理由は次のようなことがあげられます。

  • 必ず常勤の医師は1名配備されているが、土日や夜間はいない老健がある。
  • 月に2回以上の診療については医療保険扱いとなる。
  • 介護保険で出来る医療は限られていて、病気になると他の医療機関を受診することになる。この医療費は、本人が自己負担分の1~3割、残りの7~9割は受診した老健へ請求が来る。
  • 介護保険と医療保険を同時に使えない為、ケガなどで病院の入院が決定すると退所扱いになる。

したがって、病状が不安定で常に医師の診療が必要であり、高額な医療費がかかると分かっている人は、入所を断られる可能性があります。

4.介護療養型老人保健施設|医療に強い老健

そこで登場したのが、「介護療養型老人保健施設」です。通称、「新型老健」とも呼ばれています。2008年に療養病棟の削減が決まった後、介護難民の受け皿として「介護療養型老人保健施設」は誕生しました。

この「新型老健」では、「従来型の老健」よりも看護師の数が多く、さらに24時間体制で配置されています。その為、痰の吸引や胃瘻などを使った経管栄養などの医療行為が必要な人でも対象となり、看取りまで行えます。ただし、その分利用料金は従来型よりも割高になっています。

2.介護老人保健施設の利用料金

老陣保健施設の利用料金

みなさん介護老人保健施設の利用料金がどのようにして決まっているか知っていますか?ここからは、介護老人保健施設の利用料金について分かりやすく説明していきます。

1.老健の施設サービス費

介護老人保健施設の種類

介護老人保健施設の利用料金は、施設サービス費として1日単位で設定されています。その費用の1~2割を基本料金として自己負担する仕組みです。

老健の施設サービス費は、「施設の種類」「居室のタイプ」「要介護度」の3つの基準により細分化されています。

1.施設の種類

老健の施設の種類は、医療や看護体制が充実しているかにより、3種類に分類されます。

介護老人保健施設Ⅰ 従来からの老健
介護老人保健施設Ⅱ 介護療養型医療施設から転換した「介護療養型老人保健施設」で、夜間に看護職員を配置している老健
介護老人保健施設Ⅲ 介護療養型老人保健施設で、夜間に看護職員が緊急対応できる「看護オンコール体制」がある老健

また、老健の中でも、在宅復帰を目指し理学療法士や作業療法士などを適切に配置し、在宅復帰の割合など一定の条件を満たした「在宅強化型」の施設が存在します。

2・居室のタイプ

介護老人保健施設は生活の場となるので、様々な部屋が容易されています。病院のような「多床室」や「従来型個室」のほか、10人前後で台所・食堂・浴室などの共有スペースが容易された「ユニット型個室・ユニット型準個室」があります。どのタイプの部屋なのかによって「居住費」が変化します。

2.その他加算

介護老人保健施設の利用に当たっては、基本料金である施設サービス費の他、諸条件により加算料金が設定されています。加算とは、施設が一定の基準を満たせば、利用料を上乗せできる決まりです。

老健には、非常に多くの加算項目が定められています。ここ数年の制度改正で、「在宅復帰を支援する」という介護老人保健施設の本来の目的を強化するために様々な加算項目が設けられました。

在宅復帰・在宅療養支援機能加算 在宅への復帰率が一定以上に達している施設を利用した場合
短期集中リハビリテーション加算 老健に入所して間もない期間に集中的なリハビリテーションが実施された場合
夜勤職員配置加算 夜勤に職員を多く配置した場合
ターミナルケア加算 看取りの対応が行われた場合
認知症専門ケア加算 認知症に対するケアが実施された場合
経口移行加算 口から食べ物を食べられるように、経口移行計画を作成し計画に基づいた支援が実施された場合

ここに書ききれない加算項目も沢山あり、何かサービスを受ける度に費用が高くなってしまう状態です。思わぬ出費をしない為にも、予め入所先候補の老健にどれくらいの加算料金がかかるのか見積もってもらいましょう。

3.ホテルコストは全額自己負担

介護保険で給付されるのは、あくまで先ほど確認した「施設サービス費」と「その他加算」など介護サービスにかかる費用です。したがって、食費や居住費(部屋代、水道光熱費など)、日常生活費(理美容費、日用品費)などのいわゆる「ホテルコスト」は含まれず、これらは原則全額自己負担となります。

下の「介護老人保健施設の介護報酬&料金表」をご覧ください。上の3つの項目を参考に、実際にどれくらいの費用が掛かるのか計算してみて下さい。分かりづらい人は、下の老健の費用計算シミュレーションで単位数などを交えて分かりやすく解説しています(2016年4月時点)。

平成27年度介護老人保健施介護設報酬&サービス単位料金表

画像をクリックするとPDFファイルをダウンロードできます

老健の食費や居住費については、国により基準額が定められています。

介護保険の自己負担分には所得に応じた上限が設けられており、超過分については「高額介護サービス費」の対象となります。

4.老健の費用計算シミュレーション

老健料金シミレーション

それでは実際に、介護老人保健施設の月額料金をシミュレーション計算してみましょう。

  • 利用者は要介護5
  • 老健の施設の種類は、介護老人保健施設Ⅰ
  • 居室タイプは、従来型個室の従来型
  • その他加算項目は無い

以下のサービスを利用した場合、次のように料金計算できます。(1単位=10円、個人負担=1割負担の場合)

【計算式】

施設サービス費+居住費+食費+日常生活費

  • 施設サービス費用:904単位×30日(利用回数)=27,120単位
  • 27,120単位×10円×10%=27,120円
  • 居住費:1,640円/日×30日=49,200円
  • 食費:1,380円/日×30日=41,400円

27,120円(施設サービス費)+49,200円(居住費)+41,400円(食費)=117,720円

介護老人保健施設の自己負担費用=117,720円+日常生活費(娯楽費、オムツ代、理美容費など)

まず、上の表の「施設の種類」「居室のタイプ」「要介護度」をもとに単位数を割り出します。そして、介護老人保健施設の利用日数を掛けます。その後、1単位あたり約10円を掛け、さらに介護保険の自己負担分1割=0.1を掛けます。

そして、自己負担分の居住費と食費、日常生活費を足し合わせ介護老人保健施設1ヵ月あたりの自己負担費用を出し計算完了です。

※なお、その他加算項目がある場合は、必要に応じて足して下さい。

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