若年性アルツハイマー病とは

みなさんアルツハイマーという病気をご存知でしょうか?

「あの、物忘れとかする病気だよね!高齢者の認知症と関係しているんじゃなかったけ?」とハッキリしたことが分からないという人も多いのではないでしょうか。

確かに、アルツハイマー病は「記憶」や「判断」といったことが正常に出来なくなる病気です。そして、そのことから「物忘れ」や「徘徊」といった症状が現れることもあります。しかし、アルツハイマー病は、高齢者だけに限らず、若い人でも発症することがあります。若ければ10代から発症することもあります。

そして、アルツハイマー病の中でも、64歳以下で発症するものを若年性アルツハイマー病(AD)または、若年性アルツハイマー型認知症といいます。一方、65歳以上で発症するものをアルツハイマー型老齢認知症(SDAT)と呼びます。

それでは、若年性アルツハイマー病とはどういった病気なのか確認していきましょう。

若年性アルツハイマーとアルツハイマー型老齢認知症の違いについては、下で説明しています。

若年性アルツハイマー病の原因

若年性アルツハイマー病の原因は、「アミロイドβ」というタンパク質の異常蓄積です。アミロイドβが脳内に異常に溜まることで、脳の神経細胞が破壊され脳が萎縮し、その部位が担っていた「記憶」や「判断」といった機能が失われます。

このアミロイドβは、溜まり始めてから約20年という長い歳月をかけて徐々に脳の神経ネットワークを破壊していきます。そして、独り暮らしが困難なレベルにまで社会的生活能力が低下した状態を若年性アルツハイマー病と呼ぶのです。

アミロイドβが溜まり始める年齢は、両親からの遺伝やライフスタイルの影響を受けていますので、個人差が見られます。したがって、発症時期の違いはあれ「若年性アルツハイマー病」も、高齢になって発症する「アルツハイマー型老齢認知症」も同じアミロイドβが原因なのです。

若年性アルツハイマー病の進行と症状

先の説明通り、若年性アルツハイマー病の原因は、アミロイドβの蓄積により脳神経細胞がダメージを受けることです。したがって、脳の神経細胞が破壊された場所に応じて、様々な障害が発生します。若年性アルツハイマー病の症状は、物忘れなどの「記憶障害」、簡単な計算が出来ない「計算障害」「見当識障害」「失認」「失行」など多岐にわたります。当然、若年性アルツハイマー型認知症が進行すればするほど様々な症状が現れます。

しかし、「若年性アルツハイマー病には様々な症状が現れる」とは言っても、どのような症状が出てくるのかは、「初期」「中期」「後期」といった進行具合に応じて一定の特徴があります。

それでは、一体どのような症状が現れるのか進行度別に確認していきましょう。

若年性アルツハイマーの経過と症状

初期(軽度)の若年性アルツハイマー

若年性アルツハイマー病の初期段階では、記憶に関係する海馬付近からアミロイドβが溜まり始めます。したがって、若年性アルツハイマー病の初期から、記憶障害に代表される物忘れが現れます。物忘れとは、「同じことを何度も繰り返し尋ねたり、同じものを買ってきたり」と最近の出来事を忘れてしまう症状です。また、この時期には「時間が分からなくなる」といった時間に対する見当識障害も現れます。 たとえ物忘れのような軽い知能の低下であっても、若年性アルツハイマー病を発症する若い世代にとっては仕事等に大きなストレスを抱える原因となってしまい、抑うつ状態になる方も少なくありません。

記憶障害

中期(中等度)の若年性アルツハイマー

若年性アルツハイマー病の中期になってくると、記憶障害がさらに目立つようになります。ここ1~2日レベルの出来事だけでなく1時間前の出来事を覚えていないこともあります。記憶障害が原因となり、妄想も現れ物を盗まれたと勘違いするもの盗られ妄想などが周辺症状として現れます。 さらに、道に迷ったり人を取り違えたりする場所や人に対する見当識障害も現れてきます。こうなると、徘徊や睡眠障害などがみられるようになります。これらの症状は夜間といった暗い時間に悪化しやすい傾向があるため、夕暮れ症候群ともいわれています。

若年性アルツハイマ―病の場合では、この時期に失語や失行、失認といった記憶障害とは異なる障害が起こりやすい傾向があります。いずれも仕事をする上で重要な能力ですので、仕事に大きな支障を来し退職しなければいけなくなるケースも多々あります。

見当識障害徘徊

後期(重度)の若年性アルツハイマー

若年性アルツハイマー病も後期になってくると記憶障害はさらに進み最近の出来事だけでなく、何十年も前の出来事=長期記憶まで失われてきます。つまり、記憶全体がスッポリと抜け落ちてしまうのです。 この段階では、食事や排泄などの手順もわからなくなり理解力、判断力も著しく低下します。鏡に映る自分を自分だと認識できず話しかけたりする鏡微候も現れることがあります。

脳の記憶する部位だけでなく、運動を司る脳の部位等にもアルツハイマー病が侵食し、最悪、寝たきりになったり、胃ろうを付けたりなど全面的な介護が必要となるケースも多く見られます。

若年性アルツハイマー病(AD)とアルツハイマー型老齢認知症(SDAT)の違い

一般的に「若年性アルツハイマー病」といった場合、64歳以下の若年層が発症する進行性の認知症のことを指します。 これに対し、アルツハイマー型老齢認知症は、高齢になってから発症する病気です。先ほど、「若年性アルツハイマー病(AD)」も「アルツハイマー型老齢認知症(SDAT)」も、同じアミロイドβの蓄積により、脳の萎縮や脳細胞の死滅が原因であると説明しました。

しかし、この2つの病気にはいくつかの違いがあります。 その違いについて見てまいりましょう。

若年性アルツハイマー病の方が重症化しやすい

この二つの病気の違いを分析すると、「若年性アルツハイマー病」「アルツハイマー型老齢認知症」ともに、記憶をつかさどる海馬は同じくらいのダメージを受けていることが分かっています。

しかし、その一方で、「若年性アルツハイマー病」の場合は、大脳皮質の連合野という様々な情報をコントロールする部位が、激しくダメージを受けているケースが多いのが特徴です。

  • 「アルツハイマー型認知症」は、主に海馬を中心とした記憶障害が顕著に悪くなっていく
  • 「若年性アルツハイマー病」は、海馬だけでなく、「運動機能」や「言語機能」、「対人機能」といった役割を担う部位にまで広範囲にダメージが及んでいます

したがって、若年性アルツハイマー病では、初期の段階から言語機能や対人関係に大きな障害が目立ってしまうという特徴があります。他にも、若年性アルツハイマー病は、高齢者のそれと比べて次の様な特徴があります。

若年性アルツハイマー病の特徴
高齢者に比べてアルツハイマー病の症状がハッキリと現れやすい
若年性アルツハイマー病の方が進行が速い
若い分介護に抵抗することが多い、うつになり易い

若年性アルツハイマー病の治療

「それじゃあ・・・若年性アルツハイマー病を治せばよいのでは?」とお考えの方もおられると思います。しかし、残念ながら今現在、若年性アルツハイマー病を根本的に治す治療薬は存在しません。

だからといってそのまま指をくわえていてはいけません。若年性アルツハイマー病は、発症から8~15年程度の余命があると言われています(個人差がございます)。また、治療によりその進行を遅くすることも可能です。

若い人ほどその間の時間を有効活用できるはずです。 治療の開始は早ければ早いほど高いレベルの認知機能や生活機能を維持することができます。したがって、若年性アルツハイマー病を早期の段階で発見し、一刻も早く治療を行うことが非常に重要になってきます。

それでは、どのようにしたら若年性アルツハイマー病を早期発見できるのか見ていきましょう。

若年性アルツハイマー病を早期発見するポイント

若年性アルツハイマー病を早期発見する為にも、上の『若年性アルツハイマー病の進行と症状』を参考にアルツハイマー病の初期症状にはどういったものがあるのか知っておく必要があります。

実はアルツハイマー病には、その前段階にあたる軽度認知障害(MCI)というものがございます。若年性アルツハイマー病の進行を食い止めるためにも、その前段階である軽度認知障害(MCI)や初期のアルツハイマー病の段階で早期発見することが重要です。

その為には、「若年性アルツハイマー病の疑いがあるのかどうか」チェックするために、認知症テストを受けてみるのもよいでしょう。

簡単自宅で認知症テスト|長谷川式認知症スケールMCI(軽度認知障害)を早期発見し、アルツハイマー病を予防

薬とライフスタイルの2本柱が治療の鍵

もし、若年性アルツハイマ―病と診断された場合は、出来るだけその進行を遅くすることが大切です。先ほど「若年性アルツハイマー病の根本的な治療薬はない」と説明しましたが、進行を遅くする治療薬は開発されています。

また、食事や運動などの生活習慣の改善や社会参加や知的活動によって若年性アルツハイマー病の進行を抑えるまたは、症状を和らげることは可能です。その方法について、解説していきます。

アリセプトでの治療がアルツハイマー病には効果的

若年性アルツハイマー病を根本的に治す薬は、現在ございません。しかし、進行を遅らせる薬はいくつか開発されています。

その数ある薬の中でも、広く用いられているのが「アリセプト」という薬です。アリセプトを服用することで、記憶障害や見当識障害が和らいだり、病気の進行を遅くすることが可能です。

アリセプトの若年性アルツハイマ―病への作用効果や使用法については、リンク先で詳しく説明しています。

アリセプト(ドネペジル)はどんな薬?効果や副作用を学ぼう

食習慣|食事から予防

食習慣を改善することで、若年性アルツハイマー病を治療することが可能です。

  • バランスのよい食事を心掛けることが大切
  • 赤ワインや緑茶などのポリフェノールを摂取する
  • DHAやEPAが多く含まれる食材を摂取する

食の改善で若年性アルツハイマー病予防!効果的な食べ物を大公開

運動習慣や睡眠の改善が大切

定期的な運動や良質な睡眠は若年性アルツハイマー病の予防や治療に効果的です。

  • 有酸素運動が効果的
  • 良質な睡眠を適度な時間確保する

若年性アルツハイマー病の予防・治療は3つの習慣から

社会参加や知的活動が重要

孤独も若年性アルツハイマー病の進行を促進する原因です。その為にも、社会参加やコミュニケーションが若年性アルツハイマー病を予防治療するためには必要です。

社会参加や活性化リハビリで若年性アルツハイマーを治療せよ

日頃からの介護予防

多くの場合、30代から50代の「働き盛り」の年代で発症します。また、この世代は仕事だけでなく、子育てや金銭面でも悩みは多いはずです。その為、高齢者がアルツハイマー病になるよりもダメージは甚大です。

若年性アルツハイマー病の影響で仕事や日常生活が上手くいかずにストレスを抱えたり、若年性アルツハイマー病の影響で休職や失業で経済的なダメ―ジも抱えてしまうことも多く、うつ状態になってしまうケースもあります。

少しでも若年性アルツハイマー病になるリスクを減らすために、若い時期から介護予防をすることが大切です。

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