認知症の初期症状「7つのサイン」を見抜き早期発見
「忘れ物が多いなあ」
「財布をどこに置いたのかな?」
「やる気が出ない、不安だな・・・」
「料理を焦がしてしまう」
もしかすると、このような「小さな異変」は、認知症の始まりを告げる初期症状、つまり「サイン」かもしれません。
認知症は、かつて「痴呆病」とも呼ばれ、発症したら最後、対策や治療のしようが無い病気と考えられてきました。確かに、種類にもよりますが完治させることが難しい病気です。
しかし、しっかりと治療を行うことで進行を遅らせることも、症状を改善させることもできる病気だということが分かってきました。その為には、何よりも病気を早期発見し、適切な治療を始めることが大切です。
この記事では、「認知症の初期症状」つまり「サイン」をいち早く捉える為の知識をご紹介していますので、是非参考にして下さい。
認知症の初期症状に気付かない理由
認知症は進行性の病気です。
したがって、できる限り初期の段階で病気を発見することは、治療においてとても重要なことです。しかし、認知症の初期症状が現れているにもかかわらず、そのサインを見逃してしまい、気づいたころに重症化しているケースが多く存在します。
折角の病気のサインを見逃してしまう主な理由は、この2つです。
- 初期症状に気付いたのに、重大なコトとして受け止めず見逃す
- 病気についての知識が乏しい
初期症状に気付いたのに、重大なコトとして受け止めず見逃す
認知症は、突然発症する病気ではなく、長い年月をかけて少しずつ進行する病気です。その為、家族や本人が「何かおかしい」と小さな異変を感じても「一時的なもの大丈夫」と重大に受け止めず、初期症状のサインを見逃しがちです。
病気についての知識が乏しい
そもそも、認知症という病気やその症状を知らない人は、自分や家族に起こっている異変には気づきにくいものです。
ますは、初期症状には、どの様なものがあるのか知ることから始めましょう。
初期症状?これが認知症の7つのサイン
認知症の症状は、大きく分けて「中核症状」「周辺症状」の2つに分かれます。
中核症状
認知症は、脳の萎縮などが原因で脳細胞がダメージを受けることで、認知機能に障害が現れる病気です。
認知機能とは、外部からの情報を「記憶」したり、「判断」したり、「認識」する能力のことです。
この認知機能の障害で現れる症状のことを中核症状(認知機能障害)と言います。中核症状は、認知症の本質的な症状であり6つに分けることができます。
- 記憶障害
- 見当識障害
- 判断力障害
- 性格の変化
- 高次機能障害(失語・失認・失行)
- 実行機能障害
周辺症状(BPSD)
もう一度上の図を見て下さい。この図からも分かる通り「周辺症状」は、「中核症状」に伴って起こる症状を指します。「徘徊」「幻覚」「うつ症状」といった症状が現れます。
中核症状と周辺症状の違い
中核症状は、脳の障害そのものが原因とするものですので、認知機能の低下した方であれば誰にでも現れる症状です。一方、周辺症状は、必ずしも全員に起こるものではなく、中核症状の状態、本人の性格、生活環境に左右されて現れます。
中核・周辺症状について、更に詳しく知りたい方は次の記事も合わせてご覧ください。
認知症の初期症状
実際に「中核症状」は、初期症状として次のような形で現れます。
- 同じことを何度も言う
- 忘れ物や探し物が多くなる
- 約束の日時や場所を間違える
- 落ち着きがなくなり、怒りっぽく、頑固になる
- 単純な仕事や計算に時間がかかる
- 料理を焦がすなど失敗することが増える
- 洋服に気を遣わず、同じ服ばかり着たり、だらしない恰好や季節外れの格好が増える
以上が、「中核症状」で引き起こされる初期症状です。2項目以上当てはまる方は、認知症や前段階であるMCI(軽度認知障害)の可能性があります。
一番に気が付きやすい初期症状「記憶障害」
この7つの初期症状の中で、一番気づきやすいのは「記憶障害」に当たる1番上の2つです。直前の出来事や言動を直ぐに忘れるので、同じことを何度も繰り返したり、忘れ物や探し物が増えたりなどの「記憶障害」が現れます。
次に気づきやすいのは、「判断力障害」と「実行機能障害」です。物事を計画的に実行することが困難になります。今までできていた料理や複雑な仕事が出来なくなります。
また、今までの性格と違う行動や言動が増える「性格の変化」も、サインの1つです。急に趣味に興味を失ったり、笑いのツボが変化したりします。
種類別現れやすい初期症状
また、一言で認知症といってもいくつか種類があり、その種類に応じて初期症状として現れやすい症状があります。
先ほど確認した具体的な初期症状は、主に「アルツハイマー型認知症」で現れやすいものであり、中核症状がメインでした。他の「レビー小体型認知症」や「脳血管性認知症」「前頭側頭型認知症」といった認知症の初期症状としては、現れにくいものもあります。また、初期症状として周辺症状の方が目立つ場合もございます。
したがって、ここからは、「アルツハイマー型」「レビー小体型」「脳血管性」「前頭側頭型」それぞれ種類別に現れやすい初期症状のサインを確認していきましょう。
アルツハイマー型認知症の初期症状
アルツハイマー型認知症は、認知症患者の半数以上を占めます。その初期症状として現れやすいのは、次の3つです。
- 記憶障害(もの忘れやもの盗られ妄想)
- 失語(言葉が出てこなかったり、言葉の意味が分からなくなる)
- 実行機能性障害(料理などの複雑な作業が出来なくなる)
特に、アルツハイマー型では、「実際に経験した先の出来事自体を忘れる」記憶障害が初期症状として顕著に現れます(若年性アルツハイマー病でも「記憶障害」が初期症状として現れます)。
「記憶障害」を周りにしられたくない気持ちから、作り話をしたり、不安からうつ状態になったり、外に出たがらなくなります。
レビー小体型認知症の初期症状
レビー小体型認知症は、患者の約20%以上を占めます。その初期症状として現れやすいのは、次の3つです。
- 幻視
- パーキンソン症状(小俣歩行や手の震え)
- うつ症状
「幻視」や「パーキンソン症状」「うつ症状」が初期症状として現れます。特に、「幻視」はレビー小体型と気づくための初期症状の決め手となることが多いです。
レビー小体型の初期症状は気付きにくい
しかし、レビー小体型認知症は、認知症の初期症状として一番発見しやすい「記憶障害」が現れにくく、代わりに「うつ病」や「パーキンソン病」といった別の病気に似た症状が現れるのが特徴です。
その為、本来は、「レビー小体型認知症」にもかかわらず、「何年もうつ病として治療を受けていた」等といった見逃しや誤診がよくあります。
誤診や見逃しは、病気の発見を遅らせるばかりか、誤った治療により症状の悪化を招いてしまいます。
誤診や見逃しがないよう「レビー小体型認知症を見逃すな|早期発見の為の6つのポイント」で更に詳しく早期発見の為のポイントをまとめています。
脳血管性認知症の初期症状
脳血管性認知症は、脳梗塞などの脳血管障害により引き起こされる病気です。その初期症状として現れやすいのは、次の3つです。
- 軽い記憶障害(まだらボケ)
- 脳卒中などの後遺症
脳血管性認知症は、脳梗塞などの脳血管障害が起こる度に進行していく病気です。その為、脳のダメージを受けた場所によって「運動障害」「構音障害」「感情失禁」といった様々な症状が現れます。
また、初期症状としての「記憶障害」は軽いです。そして、記憶障害や見当識障害といった中核症状(認知機能)全般が障害されるアルツハイマー型と比べ、脳血管性認知症では、まだらボケが多いのも特徴です。
まだらボケの特徴
- 記憶障害は、あるが見当識や判断力は保たれている等、認知機能が全般的でなく障害されている認知機能と障害されていない認知機能がある
- 認知機能に変動があり、良い時と悪い時がある
前頭側頭型認知症の初期症状
前頭側頭型認知症(ピック病)は、その名の通り脳の前頭葉が委縮していく病気です。その為、初期症状として現れやすいのは、前頭葉がコントロールする機能障害が現れます。
- 失語
- 脱抑制(理性が利かなくなり、自己中心になる)
- 反社会的行動(万引きや暴力)
前頭側頭型認知症(ピック病)では、「記憶」はしっかりとしています。その代わりに、言葉が分からなくなる「失語」が現れます。また、他の認知症では見られない万引きなどの反社会的行動も前頭側頭型認知症に気づくための初期症状の1つです。
まとめ
認知症の治療において、初期症状を見逃さず、適切な治療を早期に始めることは何よりも大切なことです。
この記事でご紹介した通り、認知症の初期症状は、「記憶障害」だけではなく、種類によって様々です。したがって、「今までと何か違う異変」を感じたら放置するのではなく、すぐに医師に診てもらいましょう。
また、初期症状に気づいたけれど「本人に診察を促したら、プライドを気づ付けないかな」と心配の方は、以下をご覧ください。