高額療養費制度|高額な医療費を抑える方法

高額療養費,高額医療

親が脳梗塞で倒れ入院することになりました。本日晴れてめでたく退院の日を迎えることになりました。しかし、窓口で入院代を支払おうとしたら、何十万円にもおよぶ高額の医療費を請求されました。払えません・・・・

このケースのように、突然の思いがけない出費に頭が真っ白になっている人は少なくないでしょう。そういった方々に、是非ご紹介したいのが「高額療養費制度」です。

高額療養費制度とは、病院や薬局でその月に支払った費用が一定額を超えた場合に、その超えた額を支給してもらえる制度です。

つまり、高額療養費制度を利用することで、治療や薬にかかる高額な医療費を抑えることが可能なのです。

この記事ではそんな画期的な制度である「高額療養費」について、誰でも分るように丁寧に説明していきますので是非ご覧下さい。

<目次>

  1. 高額療養費制度とは
    1. 自己負担限度額は年齢や収入で異なる
    2. 高額療養費の対象となる医療費
    3. 医療費は合算できる
    4. 平成27年度改定版 高額療養費
  2. 高額療養費の計算方法
    1. 70歳未満で年収370~770万円の方の場合
    2. 同世帯に70歳未満と70歳以上の家族がいる場合
  3. 高額療養費の申請方法
    1. 申請先と申請方法
    2. 2年前まで遡って申請できる
    3. 2つの払い戻し方法

1.高額療養費制度とは

医療費

月々にかかる医療費は、長期入院や手術、特殊な治療・画像検査等を行うと数百万円にも膨れ上がることがあります。もちろん病院の窓口で健康保険証を見せることで保険が適用され、通常3割の自己負担で済みます。しかし、たとえ医療保険を使っても何十万円もの高額な費用を支払わなければいけません。

このように医療費の患者負担が高額になった時は困りますよね。この高額な医療費の自己負担額を大きく軽減する措置が「高額療養費制度」なのです。

「高額療養費制度」を利用することで、医療費を一定の額にとどめ、それ以上の医療費は支払わずに済むか、一旦支払って後から請求し払い戻すことが可能なのです。

自己負担限度額は年齢や収入で異なる

医療費の自己負担を一定額に止めることができる「自己負担限度額」は、その人の年齢や収入によって異なります。年齢が高い人や所得が低い人は自己負担限度額が低く設定されていて、医療費の自己負担が少なくなります。

平成27年の高額療養費制度改正で、70歳未満の方の所得区分が細分化され、より1人1人の負担能力に応じた自己負担限度額が細かく設定されました。

高額療養費の対象となる医療費

高額療養費制度の対象となる医療費は、保険適用される診療に対し、患者が支払った自己負担額が対象となります。

したがって、入院費や外来の診察費ともに高額療養費制度の対象となります。しかし、入院時の「食費」や「特別なサービスの自費負担分」、「差額ベッド代」や「先進医療の技術費」などは高額療養費の対象外となります。

差額ベッド代
差額ベッド代とは、落ち着いた空間やプライバシーの保護、防犯などを目的に個室(特別療養環境室)を選択した時に発生する個室料金のことです。通常「大部屋」に入る分には特別な料金はかかりません。また、救急、術後などで病状が重篤なため安静を必要とする患者または常時監視を要し、適時適切な看護や介助を必要とする患者、免疫力が低下し、感染症のリスクが高い患者、集中治療の実施、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の患者などは、個室に入っても差額ベッド代は請求されません。他に大部屋に空きがないなどの病院側の都合により「個室」に入れられた場合も差額ベッド代は請求されません。
先進医療費と技術料
難病などは常に新しい治療法が開発されています。その中でも一定の実績を積重ね厚生労働省から確立した治療法と認められたものを先進医療と呼びます。先進医療と認められた方法は、通所の治療と共通する部分(診療費、検査費、投薬費、入院費など)は健康保険の対象となり、高額療養費制度の対象にもなります。ただし、先進医療の技術料については全額自己負担になり高額療養費の対象にもなりません。この技術料は、医療の種類や病院によって異なります。

医療費は合算できる

高額療養費制度では、その月に掛かった医療費をもとに計算します。

したがって、1回の窓口負担では自己負担限度額に達しなくても、同一病院での別の受診や違う病院でかかった医療費を合算することが出来ます。この他にも「世帯合算」や「多数回該当」といった仕組みにより医療費の自己負担額を合算することが可能です。

ただし、高額療養費制度では1ヶ月ごとにかかった医療費をもとに計算しますので、4月と5月のように月をまたいで合算することは出来ません。また、70歳未満の場合は、レセプト(診療報酬明細書)一枚当たりの自己負担額が2万1千円以上である必要があります。

  • レセプトは1ヶ月単位で医療機関ごとに作られる
  • 同一病院でも医科と歯科、入院と外来とではが分れる
  • 病院と薬局のレセプトは自動的に合算される

したがって、「他の病院のレセプトを足す」「同一病院でも医科と歯科、入院と外来のレセプトを足す」ことで、2万1千円以上にすることは出来ません。

世帯合算

世帯合算とは、同じ世帯でそれぞれが窓口で支払った医療費の自己負担額を合算できる方法です。その合算額が一定額を超えた時は、超えた分を高額療養費として支給してもらえます。

例えば、旦那さん1人分の医療費では高額療養費の上限に達しなかったとしても、奥さんの医療費を合算し上限額を達した場合は「高額療養費」が支給されます。

【高額療養費の自己負担上限額】35万円

  • 夫の医療費自己負担:30万円←夫だけでは高額療養費の対象外
  • 妻の医療費自己負担:20万円

夫と妻の医療費の自己負担額を合算することで、高額療養費の対象となり15万円が返還されます。

ただし、ここで注意が必要なのは「医療保険における「世帯」は一般的なイメージの世帯とは少し違いがある」ということです。世帯合算では、同一の医療保険に加入する家族を単位として行われます。

その為、会社で働く方やその家族などが加入する健康保険であれば、被保険者とその被扶養者の自己負担額は、例え住所が異なっていても合算できます。一方、共働きの夫婦が別々の健康保険に加入していれば、住所が同じでも高額療養費の合算の対象となりません。

また、健康保険の被保険者(例:45歳のサラリーマン)と後期高齢者医療制度の被保険者(例:78歳の高齢者)が同居している場合、それぞれの医療費は合算の対象となりません。

多数回該当

多数回該当とは、直近の1年間に、既に3ヵ月以上高額療養費の対象となっている場合は、4ヵ月目から自己負担の上限額がさらに引き下がる制度です。

ただし、一般や低所得者の区分については、多数回該当の適用はありません。

平成27年度改定版 高額療養費

 70歳未満 所得区分(年収) 月単位の自己負担上限額(円) 多数回該当
約1,160万円以上 252,600+(医療費—842,000)×1% 140,100
約770~1,160万円 167,400+(医療費—558,000)×1% 93,000
約370~770万円 80,100+(医療費—267,000)×1% 44,400
約370万円未満 57,600 44,400
住民税非課税 35,400 24,600 
70歳以上 所得区分(年収) 月単位の自己負担上限額(円) 
入院  外来 
現役並み所得者(約370万円以上) 80,100+(医療費—267,000)×1%(多数回該当:44,400) 44,400
一般(約370万円未満) 44,400 12,000
低所得者(住民税非課税:年金収入以外あり) 24,600 8,000
低所得者(住民税非課税:年金収入のみ) 15,000
  • 70歳以上は、外来だけか、入院と外来かで上限額が分かれます。外来だけの場合は、個人単位で上限額が適用され、入院と外来の両方がある場合は、世帯の上限額としてみます。ただし、70歳以上でも現役並みに所得がある人は現役世代並みの上限額になっています。
  • 70歳未満は、高額療養費の自己負担限度額に達していない場合でも、同じ月に世帯内で自己負担額2万1,000円以上となった分が2件以上あれば合算することができます。

2.高額療養費の計算方法

高額療養費計算方法

まずは、上の表(最新版 高額療養費制度の自己負担限度額)をもとに簡単な計算をしてみましょう。

70歳未満で年収370~770万円の方の場合

  • 医療費が150万円で、45万円の自己負担(3割)
  • 70歳未満で年収370~770万円

【計算式】

  • 自己負担上限額=80,100円+(医療費—267,000円)×1%
  • 92,430円=80,100円+(1,500,000円—267,000円)×1%
  • 高額療養費=自己負担-自己負担上限額
  • 357,570円=450,000円-92,430円

35万7,570円が高額療養費として支給されます。

同世帯に70歳未満と70歳以上の家族がいる場合

同じ世帯に70歳未満と70歳以上の方が居る場合は、少し計算がややこしくなります。以下の様な手順で、高額療養費の計算をします。

  1. まず、70歳以上の方の外来の自己負担額を合算した額に、70歳以上の方の外来における負担の上限額をそれぞれあてはめ差額を支給する。
  2. 70歳以上の方の入院分の自己負担額と1によってもなお残る自己負担額とを合計下額に、70歳以上の方の世帯における負担の上限額をあてはめ、差額を支給。
  3. 70歳未満の方の自己負担額と2によってもなお残る自己負担額を合計した、世帯全体の自己負担額に、世帯全体における負担の上限額をあてはめ、差額を支給する。

3.高額療養費の申請方法

申請

高額療養費の「申請先」や「払い戻しの方法」などの申請方法について確認していきましょう。

申請先と申請方法

先ほどの計算で、高額療養費の対象となる方は申請を行います。

あなたが加入している公的医療保険に「高額療養費の支給申請書」の提出または郵送することで高額療養費の支給が受けられます。その際、病院などの領収書の添付を求められる場合もあります。なお、どの医療保険に加入しているかは、お手持ちの保険書(被保険者証)の表面でご確認下さい。

主な公的医療保険

  • 健康保険組合
  • 協会けんぽ
  • 市町村国保
  • 後期高齢者医療制度・共済組合

2年前まで遡って申請できる

高額療養費の支給を受ける権利の消滅時効は、診療を受けた月の翌月の初日から2年です。したがって、この2年間の消滅時効にかかっていない高額療養費であれば、過去にさかのぼって支給申請することが出来ます。

2つの払い戻し方法

高額療養費の対象となる医療費の払い戻し方法は2つあります。

現金給付 一旦病院の窓口で2割、3割等の自己負担割合分を支払い、後から加入している公的健康保険に上限額を超えた分を請求して、差額分の現金の払い戻しを受けます。
現物給付 現物給付入院の際に、病院窓口での支払いが自己負担限度額までで済む方法です。

①の現金給付の場合は、一旦先に医療費の自己負担分を全額支払った後、高額療養費の申請を行います。この方法の場合、何十万もの医療費を支払わなければいけないため、まとまった現金を用意しなければなりません。また、実際に払い戻される現金を受け取れるのは3~4ヵ月後になるので注意が必要です。

ですので、②の現物給付の方法をオススメします。窓口での医療費の支払いを限度額までにとどめ、一度に用意するお金が少なくて済みます。ただし、この高額医療費の現物給付を受けるには、70歳未満の方は気を付けなければいけないポイントがあります。

70歳以上の人は、自動的に窓口での医療費の支払いが自動的に高額療養費の上限額に止められます(低所得者の区分の方は認定証が必要です)。一方、70歳未満の人は、予め加入している公的医療保険から「限度額適用認定申請証」を取り寄せて、病院に提示する手続きが必要です。この手続きをせずに入院で高額の医療費がかかった場合は、一旦全額自己負担分を支払わなければいけません。

この高額療養費制度があることは、しっかりと頭に入れておきましょう。また介護サービスについて「高額介護サービス費」という制度もあります。

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