介護福祉士(ケアワーカー)について学ぼう

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介護福祉士は、少子高齢化が進む日本において、最も必要とされている資格・職業の1つです。

今後、少子高齢化が進んでいく日本で、介護や医療のニーズは確実に高まっていきます。そして、そのニーズに応える専門家として必要とされている存在が「介護福祉士」なのです。

介護福祉士とは、認知症や脳卒中のマヒ、パーキンソン病などで介護が必要となった人の生活(食事やトイレ、入浴など)をサポートするプロフェッショナルであり、国家資格の1つです。介護士やケアワーカーと呼ばれることもあります。

これからの日本社会で大変重要な役割を担う「介護福祉士」の仕事内容や給料などについて解説していきます。また、介護福祉士になるための受験資格や試験内容(筆記・実技)、合格率なども取り上げていきますので、ご家族や現役の介護福祉士の方だけでなく、介護福祉士を目指そうと考えている方もぜひ参考にして下さい。

1.介護福祉士とは?

介護福祉士は「実際の介護現場で業務にあたる介護のプロフェッショナル」です。しかし、時代の流れとともにその役割は変化してきました。

介護福祉士の定義は時代とともに変化してきた

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1987年の「社会福祉士法及び介護福祉士法」によって、介護福祉士は名称独占の国家資格として誕生しました。その後、時代の流れとともに介護福祉士に期待される役割も変化していき、その定義も何度か見直されています。

平成28年、最新の介護福祉士の定義を、少し難しいですが確認してみましょう(後で分かりやすく説明します)。

「介護福祉士」とは、第四十二条第一項の登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、心身上又は精神上の障害があることによりに日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であって、医師の指示の下に行なわれるもの(厚生労働省令で定めるものに限る。))を行ない、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行なうことを業とする者。

社会福祉士及び介護福祉士法第2条より

つまり、介護福祉士は、介護の専門的知識と技術を使い、要介護者の身体能力と精神状態に応じたケアを行うだけでなく、必要に応じて胃ろう等の医行為も行う介護福祉の専門家であり、その仕事内容は多岐に渡ります。

「社会福祉士及び介護福祉士法」は、社会福祉士及び介護福祉士の資格を定め、その業務の適正をはかり、もって社会福祉の増進に寄与することを目的とする法律です。

身体介護だけでなく医行為なども担う

身体介護

1987年の介護福祉士誕生時は、「専門的知識・技術をもって、入浴、排泄、食事その他の介護などを行う事を生業とする者」という定義からも分かる通り、身体介護を主な役割として期待されていました。

しかし、現在はその部分が「専門的知識・技術をもって、心身の状況に応じた介護等を行う事を生業とする者」へと変更され、従来の身体介護にとどまらず、心理的・社会的支援を重視した多様でかつ柔軟な新しいケアが求められています。

制度改正と介護福祉士に期待され役割の変遷
1987年 身体介護 入浴・排泄・食事などの身体介助を行う
2007年 心身状況に応じた介護 身体介助だけでなく、利用者の持てる力を引き出す柔軟な介護方法の組み立て
2011年 医行為の追加 医師の指示のもとなど一定条件を満たすことで喀痰吸引や胃ろう等の一部医行為の実施が可能となる

医行為(痰の吸引・経管栄養)も行える

胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養

出典:介護職員等によるたんの吸引等(特定の者対象)の研修カリキュラム

2011年から、医師の指示のもとに診療の補助として、「喀痰の吸引」と「経管栄養」の2種類の医行為が介護福祉士に解禁されました。2015年度以降の介護福祉士資格取得者から、これら医療行為に関する研修が養成プログラムに組み込まれます。

介護福祉士が行える医行為
喀痰の吸引 口腔内の吸引 鼻腔内の吸引 気管カニューレ内の吸引
経管栄養 胃ろう 腸ろう 経鼻経管栄養

ただし、それ以前に介護福祉士の資格を取得した人が医行為を行えるようになるには、一定の研修(50時間に及ぶ講義、シミュレーター演習、実地研修)を修了し、都道府県から「認定特例行為業務従事者認定証」を受け取ることが必要です。

また、医行為を行える資格を取得したとしても、勤務する施設が「登録喀痰吸引等事業者」や「登録特定行為事業者」として都道府県知事の登録を受けていないと、実際に医療行為を行うことは出来ません。実際に業務内容に医療行為が入るかどうかは、勤務する施設に左右されます。

経管栄養の基礎知識

2.介護福祉士の就職先は?勤務形態は?

活躍の場はどんなところ?

介護福祉士の活躍の場

介護福祉士の活躍する場は、主に次の4つです。

介護福祉士の就職先
入所施設で働く 介護老人保健施設、介護老人福祉施設、介護療養型医療施設、有料老人ホームなどで入居者の介護を行う
通所サービスで働く デイサービス、デイケア、宅老所などに通っているお年寄りの送迎や介護を行う
訪問サービスで働く 訪問介護事業所で管理者、サービス提供責任者、ホームヘルパーになって在宅の利用者の介護を行う
団体や機関で働く 社会福祉協議会、社会福祉事業団、地域包括視線センターなどのスタッフとなって介護の仕事を行う

勤務形態は就職した仕事場で大きく変わる

介護福祉士の勤務形態は、「先の4つのリストの内どこで働くのか」「就職先の勤務条件」によって変わってきます。

例えば、入所サービスと通所サービスとでは、勤務時間に大きな違いがあります。

特別養護老人ホームなどの「入所サービス」の入居者は365日24時間施設にいる訳ですから、介護に当たる介護福祉士も24時間365日交代制で働き夜勤も付きものです。一方、デイサービスなどの「通所サービス」の利用者は半日(5~9時間くらい)の間施設にいる訳ですから、介護福祉士の勤務も19時頃までには終わり、夜勤が発生しない施設がほとんどです。

特別養護老人ホームなどでは、夜勤は月4回程度、1ヶ月の休日は8~9日、年間休日は105~120日ほどです。変則勤務をローテーションのシフト制で担当するのが一般的です。

したがって、勤務先を選ぶ場合、「交代制の勤務シフトに夜勤がある職場」か「ない職場」かしっかりとチェックしておきましょう。

3.介護福祉士になるには?

介護福祉士になるには、国家資格を取得する必要があります。

資格を取るには3つのルートがある

介護福祉士になるには

2016年現在、介護福祉士の資格を取得する方法として3つのルートがあります。

養成施設ルート
厚生労働省が指定した「介護福祉士養成施設(大学・短期大学・専門学校など)」において、所定のカリキュラムで必要な知識や技術を学び、卒業と同時に資格を取得
実務経験ルート
一定の実務経験を重ねて、国家試験に合格する
福祉系高校ルート
福祉系の高校で一定のカリキュラムを受けた後、国家試験に合格する

介護福祉士になるには、国家試験の合格が必要になる

介護福祉士の資格取得のプロセス

出典:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

しかし、この3つのルートは「2022年度からは、すべての者は一定の教育プロセスを経た後に、国家試験を受験するよう一本化される」ことが制度改正により決定しました。つまり、介護福祉士養成施設に通えば、無試験で資格を取得出来るルートが廃止され、いずれのルートを選んでも、国家試験を受験し合格することが義務化されるのです。

  • 実務経験ルートの「実務者研修」は2016年度国家試験から義務化実施。
  • 養成施設ルートは、2017年から国家試験受験資格を付与。

ただし、2017~2021年度の「介護福祉養成施設ルート」の卒業者は、暫定的に卒業後5年間介護福祉士の資格を付与され、その間以下の2つの条件のいずれかを満たせば、引き続き介護福祉士の資格を保持できます(条件を満たさない場合は資格を剥奪)。

  1. 5年以内に介護福祉士の国家試験に合格すること
  2. 卒業後5年間、連続実務に従事すること
  介護福祉士の資格取得までのプロセス こんな人にオススメ
養成施設ルート 厚生労働省が指定する介護福祉士養成施設(大学、短期大学、専門学校等)において、所定カリキュラム介護福祉士になるルートです。 養成施設のカリキュラムは約1850時間と長く、介護に必要な技術や知識、医行為について深く学べます。養成施設ルートで介護福祉を学んだ人は、実際の介護現場でも「リーダー」として中心的な役割を担うことが多いです。
実務経験ルート 実務経験3年(540日)以上が介護福祉士国家試験の受験資格となっています。2016年度に実施される国家試験からは、それに加えて、6ヶ月以上(450時間)の「実務研修」の受講が義務付けられることになりました。通信教育での実施も可能です。また、保有している資格ごとに免除科目が設けられています。 働きながら資格の取得が目指せます。デイサービスの介護職員がキャリアアップの為に働きながら、介護福祉士の資格習得を目指すといったことも可能です。
福祉系高校ルート 介護福祉士の国家資格を受験するには実務経験が3年以上必要です。しかし、実務経験に準じるものとして、高校や高校の専攻科などで定める科目や単位を納めて卒業すれば介護福祉士の受験資格が得られます。実技試験は免除されます。2009年以降の福祉系高校入学者は、介護福祉士養成施設と同様の新カリキュラム(1855時間)で学んだ場合、卒業時に国家試験受験資格が得られます。 福祉系高校ルートの魅力は、高校卒業資格を得ながら、介護福祉士を目指せることです。

4.試験内容と合格ライン

試験,合格ライン

介護福祉士の試験は、年1回行われます(厚生労働大臣により指定された「社会福祉進行・試験センター」が実施、合格発表、登録などを行っています)。

試験は「第一次試験(筆記試験)」と「第二次試験(実技試験)」に分かれます。例年、筆記試験は1月下旬。実技試験は3月上旬に実施されています。

第一次筆記試験に合格した人だけが、第二次実技試験を受験することが出来ます。

国家試験に合格して資格を取得し、厚生労働省に備えられている「介護福祉登録簿」に登録した者のみが介護福祉士となり、厚生労働大臣から「介護福祉登録書」が交付されます。

第一次試験(筆記試験)

第一次試験は、介護福祉士として最低限の基本知識を問う筆記試験です。試験問題は、以下の12科目から出題されます。

介護福祉士の試験科目
人間と社会 人間の尊厳と自立、人間関係とコミュニケーション、社会の理解
介護 介護の基本、コミュニケーション技術、生活支援技術、介護過程
こころとからだのしくみ 発達と老化の理解、認知症の理解、障害の理解、こことろからだのしくみ、総合問題 

介護福祉士の国家試験では、午前に68問を110分、午後に52問を100分でテストします。一問一点の120点満点中60パーセント程度が合格点ラインです。また、試験科目全てにおいて得点が必要なので、0点の科目がある場合は不合格になります。

過去問題は、公益財団法人 社会福祉振興・試験センター(介護福祉士国家試験 過去の試験問題)からダウンロードできます。

第二次試験は「実技試験」か「介護技術講習会」

2005年の試験から国家試験の申込者が申し込み時に、「実技試験」「介護技術講習会(講習会を修了すると実技試験の免除が受けられる」かのいずれかを選べるようになりました。

つまり、介護技術講習会を選んだ場合は、第一次の筆記試験に合格し、介護技術講習会の修了認定を受けると介護福祉士に資格登録することができるのです。第二次試験(実技試験)を選んだ場合は、筆記試験合格後に実技試験を受けて、資格登録となります。

なお、今後の介護福祉国家試験は筆記試験のみになる予定です。「実務経験ルート」で必要な介護福祉実務研修が2016年から義務化されることから、2017年度から介護福祉実技試験は廃止されます。

合格率や合格者数はどれくらい?

介護福祉士の合格者数の推移

出典:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

介護福祉士国家試験の受験者数は、15万人前後で推移していて、そのうち9~10万人程度の合格者がでています。

介護福祉士国家資格の受験者数は第27回(2015年)で受験者数153,808人、合格者数93,760人、合格率61.0%です。ここ数年(2012 ~2015)の介護福祉士国家試験の合格率は60~65%程度です。

平成27年度時点で、介護福祉士の登録者数は1,408,533人になります。介護ニーズの高まりとともにその数は伸びています。

5.介護福祉士の求人の探し方

介護福祉士の国家資格を取得したら働き口を探しましょう。「自分がどのような職場で働きたいのか、給料はどのくらいもらいたいのか」などの希望条件と求人情報を照らし合わせて、あなたの希望に合う就職先を見つけましょう。

介護福祉士の求人情報は、インターネットを使って民間やハロワークの求人票を見て探しましょう。他にも、福祉ワーク就職フェアや福祉業界セミナー、合同採用試験、相談会・面接会などに参加してみるのも良いでしょう。また、「福祉人材センター・福祉人材バンク」に登録するのもオススメです。ここには全国最大規模の福祉の仕事の求人情報が集まっています。公共性の立場から全国ネットワークを持つ社会福祉協議会が運営しており、利用料は無料です。

次の記事で、当サイトがオススメする介護求人サイトをピックアップしてみたので合わせてご覧下さい。

介護求人サイト7選!正社員・パートへの転職・就職に大活躍

6.給料や年収はいくら?

皆さんが気になるポイントの1つが“介護福祉士の給料”だと思います。他の介護・医療スタッフである「看護師」や「無資格の介護職員」とどれだけ給料に差があるのか見ていきましょう。

資格別(介護福祉士、看護師、無資格者)の平均賃金

給料,年収

介護福祉士の収入は、地域や職場、勤務条件、勤続年数、平均年齢などによって異なりますが、おおよその月額の平均賃金は分かります。下のデータ(第1回社会保障審議会福祉部会福祉人材獲得専門委員会資料)を見て下さい。

  • 無資格者196,432円
  • 介護職員初任者研修212,120円
  • 介護福祉士236,596円
  • 看護師・准看護師286,138円

ちなみに、介護福祉士の年収は、250万〜400万、看護師の年収は400~600万円くらいが一般的です。

介護福祉士の初任給は16万円前後です。

上記の給料はあくまでも平均額なので、施設によって介護福祉士資格を取得した場合の資格手当は2000円~1万円、夜勤手当も5000~1万円と施設によって異なります。

3Kとされる仕事なのに給料が低い、キャリアアップで給与を上げろ

年齢別介護福祉士の年収

出典:Career Garden(キャリアガーデン)

このデータからも分かる通り、国家資格である介護福祉士は、資格のない職員よりも給料は高いものの、看護師よりもはるかに低い金額です。給料の手取りが20万円を切ることもあります。

また、介護福祉士の職場は「汚い」「きつい」「危険」のいわゆる「3K」の職場とも言われています。その割に、仕事内容に給料が見合わず離職する人も多く、介護福祉士の賃金は低いか?と問われれば残念ながら低いと言えます。

したがって、給料を上げる方法としては、キャリアアップが欠かせません。平の介護福祉士から施設のリーダーや管理者になったり、「ケアマネージャー」の資格を取得したり、自らデイサービスを立ち上げるなどしてキャリアを重ねることで、給与を上げていくことが大切です。

ケアマネージャー

ただし、超高齢化の進む日本では、介護福祉士のニーズは非常に高く、安定した求人や給料の維持・向上を期待できます。

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