ケアプランの基本!作成手順と読み方のコツ

ケアプラン

母が認知症と診断され、市役所に相談に行くと「介護保険サービスを利用するにはケアプランが必要」と言われた。

しかし、「ケアプランとは何なのか?どうやって作成するのか?誰に相談すれば良いのか?」全く見当がつかない・・・

最近、急にこのような相談を頂くことが増えてきました。

おそらく、急に介護生活を送ることになったあなたも「ケアプラン」とは何なのか皆目見当もつかず、途方に暮れているのではないだろうか?また、既に介護をしている方の中には、今のケアプランで受けているサービスに不便さを感じてここに辿り着いたのではないだろか?

お任せ下さい。ここでは、そういった方のために「ケアプランについての基礎知識」をご紹介します。

  • ケアプランの意味と内容
  • ケアマナージャーとプランの関係性
  • ケアプランの作成手順と読み方のコツ

など、あなたのケアプランに対する疑問や問題点を洗いざらい解決していきます。また、介護者だけではなく、ケアマネージャーにとっても役立つ情報が満載です。介護を無理なく続けるためにもケアプランは必ず必要なものなので、是非しっかりとご覧ください。

ケアプランとは

介護サービス計画書

デイサービスや訪問介護などの介護保険サービスを利用するにあたり、ケアプランは非常に重要な書類です。しかし、ケアプランに関して調べてみても様々な情報があるので、何を信じたら良いのか分からないと悩んでいる方は多いと思います。また、介護を始めたての人にとっては少し難解な書類に感じ人任せにしているひとも少なくないでしょう。

そこで、まずは「ケアプランとは何なのか」見ていきましょう。

ケアプランとは、介護保険を使ったサービスを利用するための計画書のことです。利用者やその家族の希望に沿ったサービスを適切に利用できるよう、必要なサービスの種類や内容を決め、時間配分や限度額などを考慮しながら組み立てます。

簡単に言えば、ケアプランとはデイサービスや訪問介護などの介護保険サービスを受けるための「設計図」のことです。したがって、たとえ介護保険を使う資格(要支援1・2および要介護1~5)があったとしても、ケアプランがないことには介護保険サービスを利用することは出来ません。

ケアプランを作成するメリットは次の通りです。

  • 介護保険サービスを利用できる
  • 1~2割の自己負担でサービスを利用できる
  • サービス利用費は、自己負担分だけ支払う「現物給付」が認められている

また、ケアプランは利用者やその家族で作成することも可能ですが、一般的にはケアマネージャーという介護保険サービスの専門家に依頼するのが普通です。その理由は簡単で、ケアプランを作成するには、介護サービス事業者との交渉・調整、書き方の様式、点数計算など専門的な知識が必要となるからです。

現物給付とは、利用者は介護保険サービスを提供する事業者・施設に自己負担の1~2割分だけ支払い、後は、市区町村が8~9割を支払う制度。⇔償還払い(利用者が費用を全額前払いし、後で市区町村から費用の8~9割を返還してもらう制度)

要介護認定に応じて3種類に分かれる

そして、ケアプランは、介護を受ける人の立場によって大きく3種類に分けられます。

対象 ケアプランのタイプ 作成者
要介護(在宅介護) 居宅サービス計画 居宅介護支援事業者に所属するケアマネージャーと一緒に作成(利用者やその家族だけでの作成も可能)
要介護(施設入所者) 施設サービス計画 介護施設に所属するケアマネージャーが作成
要支援 介護予防サービス計画 地域包括支援センターから委託されたケアマネージャーが作

つまり、要介護認定の結果に応じて、ケアプランの名称や作成の代行を担当するケアマナージャーの所属組織が変化します。

参考リンク>>要介護認定から介護保険利用までの流れ

ケアプランは第1表~第3表で構成されている

それでは、実際にケアプランはどのように構成されているのかその中身を見ていきましょう。主に、ケアプランは次の3種類の書面で構成されています。

第1表
要介護認定の結果、利用者・家族の生活の意向、総合的な援助の方針を記載
第2表
生活上の課題(要望)、長期目標・短期目標、サービスの具体的な内容と担当者、利用期間や頻度を記載
第3表
サービス内容・担当者の週単位のタイムスケジュールを記載

ケアプランの読み方と良いプランの例

第1表

第2表

第1表 利用者やその家族の意向がどのように反映されているのかが一目で確認することが出来ます。
第2表 介護保険によって解決すべき生活上の問題点が整理され、長期目標・短期目標がまとめられています。そして、目標を達成するために利用する具体的なサービスや事業者名などが明記されています。
第3表 利用するサービスが時系列のタイムスケジュールが書き込まれており、訪問時間などの予定を確認するのに役立ちます。

上に載せているのは、ケアプラン(居宅サービス計画書)の第1表と第2表です。この中で、第1表の「総合的な援助の方針」と第2表の「長期目標」「短期目標がしっかりと丁寧に書けていることがいいケアプランの条件です。

理想を言えば、第2表の「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」の項目は、数か月ごとに内容が変わり、本人が出来るようになったことがいくつも増えていくことが理想です。例え、認知症などの病気が進行し、できる項目が少なくなっていたとしても、この欄に書けることを真剣に考え、「○○ができるようになった」と自分のことのように喜んでくれるケアマネージャーが理想的です。

そもそも、介護保険は、高齢者の「尊厳の保持」と「自立支援」を理念として誕生しました。したがって、介護保険の利用者が「その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことが出来るよう必要なサービスを行うものである」、と介護保険法の第一条の条文にも書いています。

この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。

介護保険法-第一章-総則-第一条

したがって、ケアプランには、「利用者の日常生活においても尊厳をどう保持し、自立度をどう高めるか」が具体的に書かれていることが重要なのです。ですが中には、長期目標に具体性が欠けていたり、空欄が目立つケアプランが作成されることもあり、そのようなプランを作成するケアマネージャーにも問題があります。

また、無理なく介護サービスを利用する為には、デイサービスや訪問介護などの介護保険サービスを「必要な時」に「必要なサービス」を「できるだけ限度額に収まる範囲」でケアプランを作成することが大切です。

その為には、ケアプランの作成をケアマナージャーに丸投げするのではなく、利用者やその家族自身も書かれている内容にきっちりと目を通し、意見があればドンドン遠慮なく伝えるようでなければいけません。

ケアプランの作成手順と運用

ここからは、実際にどのような流れでケアプランが作成されるのか2つのシチュエーションに分けて見ていきましょう。

  • ケアマネージャーに作成を依頼した場合
  • 自分でケアプランを作成する場合

ケアマネージャーに依頼する場合

consultation

ケアプランの作成をケアマネージャーに依頼する場合は、まずケアマネージャーを選ぶことから始めます。介護保険の最大の特徴は、利用者1人1人にケアマネージャーが付くというマンツーマン方式です。ケアプランを作成する費用は、介護保険から全額支給され、利用者負担はありません。

在宅介護の場合は、地域にある居宅介護支援事業所を決めてそこに所属するケアマネージャーに作成してもらいます。

しかし、ケアマナージャーの力量や人柄は人によって違います。なので、できる限り自分達に合ったケアマネージャーと契約を結ぶことが、介護を安心安全に進める為には大切です。

>>『良い居宅介護支援事業者やケアマネージャーの選び方のコツ』を参考にケアマネを選びましょう。

そして、ケアマネージャーと契約を結び、市区町村に「居託サービス計画作成依頼(変更)届出書」を提出します。これは、ケアプランの作成を依頼して合意したことを明らかにするもので、これによって介護保険の現物給付の扱いとなります。

作成の流れと運用方法

ケアマネージャーは、利用者とその家族の要望に沿ったケアプランを実現するため「アセスメント」⇒「ケアプランの実施」⇒「モニタリング」を繰り替えしながらケアプランを作成します。

また、ケアプランは、次のような3つの項目を満たすように作成されなければいけません。

  • 介護をする家族の負担が軽くなるか
  • 介護サービスの組み合わせで利用者の心身の状態が改善するか
  • サービス利用の為のお金はかかりすぎないか、できる限り限度額に収まるか
◇1.アセスメント

まず、ケアプランを立てるに合ったってケアマネージャーが必ず行うのがアセスメントです。アセスメントでは、お年寄りの置かれた現状などについての情報収集を行い、それを分析することで、ケアプランに盛り込むべき生活課題を明らかにしてケアプランの原案を作成していきます。

本人の現状 本人と家族の意向 ここに至る背景
運動・移動の状況はどうか 本人はどのような生活をしていきたいか これまでの病歴
日常生活・家庭生活の様子はどうか 家族は、本人にどうあって欲しいか これまでの職歴
社会参加や対人関係はどうか   これまでの生活歴
健康管理はどうなっているのか    
その他に困っていることはないか    

更に利用者と相談を重ね、実際に介護保険サービスに関わるサービス事業者や主治医を含めたメンバーで「サービス担当者会議」を開き、運用や目標等を検討しながら原案に修正を加えながら、ケアプランを完成させます。このケアプランは、市区町村に提出するのが決まりです。

アセスメントの質は、ケアマネージャーの力量によって大きく左右されます。厚生労働省が収集すべき項目を設定している為、「どうやって聞き出すか?注意すべきポイント」などをまとめたアセスメントツールが多く存在します。

しかし、それだけに頼るケアマネージャーはケアプランの目標を機械的に定めガチなので、利用者や家族は、何をして欲しいのかをここでしっかり伝えることが大切です。

また、介護者は、ケアプランの作成をケアマネージャーに依頼しても、利用者と家族の意思・決定の主体であることを忘れないでください。なによりも、「自分たちがプランを作っている」という心構えが必要です。

【ケアマネージャーに伝えるべき事】

  • 利用者と本人の身体状態や気持ち
  • 介護の中で重点を置きたいこと
  • サービスに期待したい事
  • 介護に携わる家族の状況や態勢
  • 本人や家族が望む生活スタイル
  • 介護に使える金額
◇2.モニタリング

ケアプランが決定し、サービスが開始されることを「ケアプランの実施」と言います。実施後は、原則として月1回、ケアマネージャーが定期的に利用者を訪問して状況を確認します。これを「モニタリング」と呼びます。モニタリングで利用者やその家族の生活状況に変化があれば、随時ケアプランの変更・調整を行います。

◇3.再アセスメント

ケアプランは、利用者の状況が変化した時のほか、要介護認定の有効期間ごとに見直され、これを「再アセスメント」と呼びます。毎月1回利用実績を記入した 書類と翌月のケアプランを提出します。

自分でケアプラン作成する場合

ケアプランは、ケアマネージャーに依頼して代行作成してもらうのが普通ですが、利用者や家族が自分達で作成することも可能です。介護者自身もケアプランの内容や作り方を知っておけば、きっと介護の役に立つはずです。

自分達で作成したケアプランは「セルフケアプラン(自己作成ケアプラン)」と呼ばれています。

セルフケアプランの作成の流れ

自己作成

自分でケアプランを作成する場合は、市区町村などの窓口に相談して必要な書類を負う意思、利用したいサービスや回数、事業者を決め、支給限度額に注意を払いながら書類を制作します。

記入した書類を市区町村に提出し、確認印をもらうと正式な書類が交付され、正式書類をもとに事業者と契約を結びます。事業者には予め予約を入れておくことが必要です。

◇1.書類の準備

市区町村の介護保険課の窓口にケアプランを自己作成することを届け出し、下の必要な書類をもらう

サービス利用票 1ヶ月のサービス利用予定表
サービス利用票別表 介護サービス事業者ごと、サービス種別ごと、費用総額、保険給付額、自己負担額を計算して書き込む

事業者リストがあれば便利です。またサービス利用票やサービス利用票別表は市区町村によっては、ダウンロードできます。

◇2.書類の作成

セルフケアプランを支援する団体のサイトや自己作成の手引きを参考に、ケアプランを作成する。※支給限度基準額に注意しながら、サービス内容やサービス提供者を選択する。

◇3.予約

計画にそって、利用したい介護サービス事業者に連絡を取り、面談及び打ち合わせのアポイントメントを入れる

◇4.提出

記入した書類を市区町村に提出し、確認印をもらう。ここで 正式書類が交付される。

◇5.契約

正式書類(サービス提供票とサービス提供票とサービス提供票別表)をサービス提供事業者に送り、正式契約を結ぶ。

◇6.サービス開始

毎月一回、利用実績を記入した「利用実績表」と「翌月のケアプラン」を市区町村へ提供する。

自分でケアプランを作成した場合、ケアプランを市区町村へ提出して受理されないと、現物給付ではなく「償還払い方式」になり、領収書を市区町村に持参して支払った額を払い戻してもらう形になります。

確かに自分達でケアプランを作成するコトは大変なことですが、介護保険サービスを利用者やその家族が自ら選択するという本質を考えると、大変意義があることです。家族が主体的に利用計画を立てることで、利用者や家族の現状を再認識し、「不必要なサービスを減らす」「より自立的なプランを組める」といったメリットがあります。

地域の地域包括支援センターや全国マイケアプランネットワークなどセルフケアプランの作成を支援している組織も存在しますので是非参考にして下さい。

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