経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養)の正しい知識

もし、口から食事を摂れなくなったら、生きていくために必要な栄養をどのようにして摂取しますか?

このような状況に陥った時に、キーワードとなるの言葉が“経管栄養”です。

経管栄養とは、嚥下障害などで口から栄養が取れない時に、鼻腔にチューブを通したり、腹部にろう孔(穴)を開けそこにチューブを通したりすることで、直接胃に栄養を送り込む栄養補給法のことです。

実は、みなさんが耳にしたことがある“胃ろう”“腸ろう”“経鼻経管栄養”これら全て“経管栄養”の仲間なのです。

この記事では、口から食べられなくなった人にとって関係の深い経管栄養について、分かりやすく解説していきますので是非ご覧下さい。

1.経管栄養とは?

経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養)は、嚥下障害などが原因で自力で上手く食べられない人の栄養摂取をサポートする方法です。

私たち人間は、何かを食べたり飲んだりすることで、それを栄養素に分解し、体内に消化・吸収することで生きています。

何ら問題なく安全に口から食べられる人は、自力で生命を維持するのに必要な栄養を摂取することができます。

しかし、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)、パーキンソン病、認知症、筋委縮性側索硬化症(ALS)、意識障害、口腔や食道のガン、老衰などで、口から食事を摂取することが難しいいわゆる「嚥下障害」がある人は、そう上手くは行きません。

飲食物を、口から取り入れて飲み込むことを「嚥下」と言います。この飲み込みが何らかの理由で、上手くいかなくなることを「嚥下障害」と言います。

経管栄養のメリット

経管栄養のメリット

口から安全かつ適切にものを飲み込めないと、以下のような弊害が起こります。

  • 栄養不足や水分不足が起こりやすい。
  • 誤嚥が起こりやすい。誤嚥による肺炎(誤嚥性肺炎)のリスクが高まる。
  • 食べ物が喉につまって、窒息しやすい。
  • 免疫力が低下して感染症を招きやすい。

つまり、栄養やエネルギーが不足して、痩せたり、褥瘡が出来たり、脱水症になったりしてしまうのです。最悪、栄養失調で死んでしまうこともあります。

なんと、経管栄養を用いることでこれら弊害を克服することが出来るのです。

  • 口から嚥下することが困難でも、栄養を摂取できる。
  • 誤嚥性肺炎が起こりにくい。
  • 消化管の運動や消化液の分泌等の機能が促進される
  • 腸管に備わる免疫システムが維持され、全身の免疫力の改善に繋がる。

ただし、胃ろうや腸ろう、経鼻経管栄養にしたらといって、誤嚥が無くなり“誤嚥性肺炎”のリスクがゼロになるワケではありません。

参考リンク>>胃ろうや腸ろう、経鼻経管栄養でも誤嚥性肺炎は起こる

栄養補給方法の種類|経管栄養と経静脈栄養

栄養補給の方法

口からの食事摂取が困難になった場合は、人工的な栄養補給を考えます。人工的な栄養補給法は、大きく「経管栄養」と「経静脈栄養」の2つに分れます。

経管栄養(経腸栄養)

胃や腸に管(チューブ、カテーテル)を通し、胃に栄養剤を直接入れる自然かつ生理的な方法。胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養に分かれる。

経静脈栄養と比較して管理が簡単で介護負担が軽い、生命維持に必要な栄養を補給できる。チューブが挿入されることへの不快感 誤嚥性肺炎のリスクがある。

胃瘻 お腹の皮膚から胃壁へとカテーテルで繋ぎ栄養剤を注入する。
腸瘻 胃ろうから小腸、お腹から小腸へとカテーテルを繋ぎ栄養剤を注入する。
経鼻経管栄養 鼻から胃へカテーテルを通し栄養剤を注入する。
経静脈栄養

血管に点滴や輸血をする方法。末梢静脈栄養と中心静脈栄養に分れる。

腸の機能が衰えていても水分や栄養分の補給が出来る。経管栄養と比較して管理が複雑で介護負担が大きかったり、生命保持に必要なほどの栄養補給にならなかったりする。

末梢静脈栄養 いわゆる点滴のこと。手足の末梢静脈に点滴注射で入れる。
中心静脈栄養 鎖骨下などの中心静脈にカテーテルを埋め込みそこから栄養剤を入れる。 

消化管の機能が正常である場合には、一般に胃や腸にチューブ(カテーテル)を通す“経管栄養”が行われます。また、ご家庭で在宅介護を行う場合、比較的管理が簡単で介護負担が軽く、十分な栄養を補給しやすい“経管栄養“が選択されることが多いです。

胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養の違い

胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養

出典:介護職員等によるたんの吸引等(特定の者対象)の研修カリキュラム

それでは、胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養のそれぞれの特徴について確認しましょう。

  胃ろう・腸ろう 経鼻経管栄養
手術 内視鏡手術で腹部に瘻孔(穴)を開ける 鼻から胃へとチューブを通す、瘻孔は開けないので、外科的手術は無い
特徴 嚥下を妨げないので、安全かつ安定した栄養管理ができます。また、咽頭や口頭にチューブが通らないので、口から食べること、口腔ケア、嚥下リハビリも可能。口から食べることを促していくために有効な手段でもある。服で隠れるので目立ちにくいです。 外科的手術はありません。ただし、鼻から食道、胃へとチューブを通すので、咽頭や喉頭の動きが悪くなり、感覚障害を生むほか、嚥下を難しくします。また、違和感や不快感から患者本人がチューブを抜いてしまう可能性が高い(医師または看護師が挿入し直さなければいけない)。見た目が目立つ。
期間による選択 長期的(2ヶ月以上)な嚥下障害がある場合 短期的(1~2ヶ月程度)な嚥下障害がある場合

つまり、胃ろうや腸ろうは、手術によりお腹に穴を開けなければいけませんが、快適性や利便性の面では経鼻経管栄養よりも扱いやすくなっています。

また、胃ろうを造った後でもすべての食事を胃ろうに頼るわけではなく、必要に応じて口から食事を摂ることも出来ます。口からの嚥下に問題が無くなったら、胃ろうを無くすことも可能です。その場合お腹のろう孔は自然にふさがっていきます。

参考リンク>>胃ろう(PEG)の基礎知識

2.日頃の看護ケアを徹底しよう!

ここからは胃ろうや腸ろう、経鼻経管栄養の看護ケアについて学んでいきましょう。

お風呂にも入れる!清潔に保とう

お風呂と胃ろう

胃ろうや腸ろうの人でも、お風呂に入っても大丈夫です。入浴やシャワーの際に、胃ろう・腸ろうをカバーする必要はありません。

ただし、胃ろう・腸ろう周囲の汚れは、毎日洗ったり、拭いたりして清潔に保つよう心がけましょう。なお、消毒の必要はありません。逆に皮膚を傷めます。胃ろう・腸ろうから粘液の漏れがある場合は、挿入部の周囲をガーゼやティッシュペーパーを巻いて対応することもあります(定期的に交換し清潔を保ってください)。

経管栄養の人こそ口腔ケアが重要!

口腔ケア

胃ろうや腸ろう、経鼻経管栄養の人の口の中は汚れていないと思っていませんか。実は逆です。

  1. 口の中で咀嚼(食べ物を噛むこと)しないため、唾液の分泌が減って自浄作用が低下し、細菌が繁殖しやすい。
  2. 嚥下をしないため、嚥下機能が低下し、唾液や胃食道逆流による誤嚥を起こしやすくなります。
  3. ①と②が合わさると、肺炎の起炎菌を含んだ不衛生な唾液や胃の内容物が肺に誤って入り、誤嚥性肺炎の原因となる。

したがって、日頃の口腔ケアにより口の中を清潔にすること、口の機能を低下させないことが重要なのです。

胃ろうや経鼻経管栄養の人の口腔ケアも、通常のものと同じですが経管栄養の人の場合は、嚥下機能が低下しているので、特に誤嚥のリスクが伴うので細心の注意が必要です。

  1. 歯ブラシは水分を十分に切って使います。
  2. 口の中に唾液や水が溜まりそうになったら、早めに吸引するか拭き取ります。
  3. 終了時に必ずスポンジブラシかガーゼなどで口の中の水分をぬぐいます。

3.経管栄養と栄養剤

経管栄養に使われる栄養剤は多種多様です。本人の状態に合わせて栄養剤を選択します。

半消化態栄養剤と消化態栄養剤

利用者の腸の機能を考慮し、たんぱく質の分解の程度によって、半消化態栄養剤、消化態栄養剤、成分栄養剤に分かれます。

  特徴 商品名
半消化態栄養剤 タンパク質が分解されていない形で含まれていて、胃で消化してから腸で吸収される。主に胃ろうに使われます。 エンシュアH、ラコールなど
消化態栄養剤、成分栄養剤 タンパク質が、アミノ酸やそれに近い形に分解されて含まれている。胃で消化する必要がない。主に腸ろうに使われる。 ツインラインNF、エレンタールなど

液体栄養剤と半固形栄養剤

栄養剤,ラコール

出典:NPO法人 PEGドクターズネットワーク

また、栄養剤の形状は、液体、半固形などがあります。

  液体栄養剤(医療品) 半固形栄養剤(食品)
医療保険の適用 医療保険適用なので、経済的な負担が軽い 医療保険適用外なので、経済的負担が重い。
注入時間 注入時間が長い(1回1~2時間) 注入時間が短い。(1回5~15分)
トラブル 誤嚥性肺炎、下痢、嘔吐、スキントラブルが、半固形栄養剤より起こりやすい 誤嚥性肺炎、下痢、嘔吐、スキントラブルが、液体栄養剤より起こりにくい。通常の食べ物に近く、胃の運動や働きが発揮される。
商品名 エンシュア,ラコールなど F2ショットEJ、PGソフト、ハイネゼリーなど

なお、栄養剤に掛かる費用は、液体栄養剤の場合、200キロカロリーでおおよそ1本200円前後です。1日1800キロカロリーが必要な場合、1日あたり(1回×3本×3回)1800円くらいです。

マメ知識|液体栄養剤を半固形化する方法

固形より液体状の栄養剤の方が医療保険もきくので安価です。一方で、胃の内容物の逆流や嘔吐、注入時間などの問題が発生しやすくなっています。そこで、ここでご紹介するマメ知識が液体栄養剤を半固形化する方法です。

その方法は簡単で、液体栄養剤に寒天を溶かし、半固形化すればいいのです。

この方法を使うと、時間の短縮になるだけでなく誤嚥性肺炎などのリスクも下げることが出来ます。ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか?

栄養剤によっては、この方法が適さない場合がありますので医師、薬剤師に相談し、安全性を確かめた上で自己責任で行って下さい。

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