ショートステイ(短期入所)の基礎知識

「ショートステイ」という言葉を聞いたことはありますか?

「在宅で認知症の母を看ているけど、疲れた・・しんどい・・」「急な出張が入った・・・2、3日だれか父を世話してくれないかな・・・」といったお悩みをお持ちの方に、是非オススメしたいサービスそれがショートステイです。

ここでは、「ショートステイとは何?」といった基本的な悩みから「サービス内容」「受け入れ施設」「利用料金」といったことに至るまで至れりつくせり解説していきますので、是非ご覧下さい。

<目次>

  1. ショートステイとは
  2. ショートステイは福祉系と医療系の2タイプ
    1. 短期入所生活介護
    2. 短期入所療養介護
    3. 短期入所生活介護と短期入所療養介護の違い
  3. ショートステイの問題点と対策法
    1. 受け入れ施設不足、予約が取れない?
    2. ショートステイが認知症を促進する?
  4. ショートステイの利用料金

1.ショートステイとは

ショートステイとは、普段在宅で介護を受けている人が、一時的に施設に入所・宿泊することが出来る介護保険サービスです。「ショート」と略ししたり、短期間だけ施設に入所することから「短期入所」とも呼ばれたりします。

ショートステイでは、1泊2日から最長で連続30日まで宿泊でき、食事や入浴、排泄など日常生活の世話やレクリエーションが受けられます。要介護認定1~5の人が受けられるサービスです。

※要支援1・2の場合は、短期入所生活介護は「介護予防短期入所生活介護」、短期入所療養介護は「介護予防短期療養介護」の対象となります。提供されるサービス内容は、短期入所生活介護とほぼ同じです

ショートステイを利用する目的は、何といっても在宅介護をしている家族の負担を軽減し、休養・ストレスの解消と言えます。介護者が日常の介護から一時的に開放される時間を作れるいわゆる「レスパイトケア」が、ショートステイの最大の魅力です。その他にも、利用者の体調が悪化して在宅介護が困難になった場合や、家族が急病や冠婚葬祭、仕事などで一時的に介護が困難になるなどの緊急時の利用もOKです。

いつ終わるかわからない在宅介護を上手く継続するためには、ショートステイは欠かせないサービスです。無理なく良い介護を続けるには、介護者の心もリフレッシュする必要があります。ですので、「他人に介護を任せるのは申し訳ない・・」など考えずに、月に1回ぐらいは思い切ってショートステイを活用してみて下さい。

ただし、ショートステイを利用するにはケアプランが必要なので、通常はケアマネージャーに頼んで予約しましょう。

ケアマネージャーとは

2.ショートステイは福祉系と医療系の2種類

ショートステイは、そのサービスの内容によって、「短期入所生活介護」と「短期入所療養介護」の2種類に分かれます。それでは、早速両ショートステイの違いについて確認していきましょう

短期入所生活介護

日常生活のお世話(食事や入浴、排泄など)やレクリエーション、機能訓練などの介護サービスが受けられます。比較的自立できているお年寄り向きです。

受け入れてくれる施設は「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」や「有料老人ホーム」、「短期入所の専門施設」などの福祉系施設が実施しているショートステイです。介護職員を中心に、一定数の看護職員や機能訓練指導員も配置されています。

またショートステイを実施している施設形態は、ショートステイを専門に行う「単独型」、特別養護老人ホームや有料老人ホーム等の入所施設に併設されている「併設型」、入所施設に空いているベッドを利用する「空床利用型」の3つがあります。

短期入所療養介護

日常生活のお世話だけでなく、看護ケアやリハビリテーションなどの医療サービスが受けられます。その為、身体機能やADLの低下予防と家族のレスパイトケアを両立できるのが特徴と言えるでしょう。持病がある為に夜間など医療的管理下ないと心配な人やリハビリが必要な人向きです。

受け入れてくれる施設は「介護老人保健施設」や「介護療養型医療施設」などの医療系施設が実施しているショートステイです。介護職員だけでなく、看護師や医師、理学療法士や作業療法士などが在籍しています。

短期入所療養介護では、短期入所生活介護のサービスに加え、短期入所生活介護よりも医師や看護師が常駐し、リハビリの専門家も手厚く配置されているので、医療依存度が高く、より手厚い介護やリハビリテーションを必要とする人にピッタリのサービスです。

短期入所生活介護と短期入所療養介護の違い

つまり、両ショートステイの違いは、「福祉的サービス(短期入所生活介護)」なのか「医療・看護系サービス(短期入所療養介護)」なのかという点です。短期入所生活介護はデイサービスの宿泊バージョンでレクリエーションなどが充実しています。一方、短期入所療養介護はデイケアや病院の宿泊バージョン的な位置づけでリハビリや医療的なケアが充実しています。

利用料金は、医療的なケアやリハビリなどが充実している「短期療養介護」の方が高めに設定されています。したがって、利用者の身体機能や利用目的に応じて2つのショートステイを使い別けましょう。ただし、両ショートステイとも、利用可能日数は連続30日までと変わりはありません。

2つのショートステイ比較
  短期入所生活介護 短期入所療養介護
施設の種類 福祉系 医療系
主な施設 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、有料老人ホームなど 介護老人保健施設、介護療養型医療施設など
主なサービス 日常生活のお世話+レクリエーション 日常生活のお世話+リハビリ+医療・看護ケア
主な対象者 比較的自立している人。デイサービスに通っている人 医療看護的な処置が必要な人。デイケアに通っている人

3.ショートステイの問題点と対策法

ショートステイの使い方は、在宅介護の成否を分けるほど重要です。ショートステイを利用して、ゴールの見えない在宅介護を上手に乗り切る為には大切なサービスです。しかし、ショートステイにはいくつかの問題点があります。

施設不足、予約が取れない?

いざ、ショートステイを利用しようとしても直ぐに空いている施設が無いという問題が起こってきています。

最近では1~3ヵ月さき出なければ予約が取れないショートステイが少なくありません。これは、介護人口が増える中、社会的にショートステイのニーズが高まっているのに対し、施設や職員など不足から生まれる供給不足が原因です。加えて、月に何日と決めて定期的に利用する家族が増えたり、ショートステイを連続利用する、いわゆるロングショート利用者が現れたことが原因です。

ショートステイは、利用できる期間は連続30日までと定められていますが、途中で自費利用日を挟めばいつまでも利用することが可能です。

対策としては、予めケアマネージャーに相談して計画的にショートステイの日程を組んで予約しておきましょう。また、急病や冠婚葬祭、出張など緊急を要する場合は、施設によっては受け入れの緊急枠を用意しているところもあります。その場合も、調整が必要な場合があるのでいざという時に備えて目星が付いている施設を利用しておくとスムーズに受け入れてもらいやすくなります。

ショートステイが認知症を促進する?

急な生活環境の変化は認知症を促進することがあります。

ショートステイの利用者は、いきなり住み慣れた家から施設に預けられるわけですから、大なり小なりストレスが掛かり疲れて帰ってきます。また見捨てられたと不安にさせてしまうこともあります。このストレスや不安は、認知症を促進する引き金になることがあります。また、ショートステイの施設によっては、昼間のレクリエーションやリハビリなどがしっかりと実施されず、一日の大半を生活感がなく何の刺激もない部屋で過ごさす施設もあります。刺激が無い環境もまた、認知症の進行を進める原因になります。

対策としては、予めショートステイ施設の下見をして安心して預けられるところか確認しておきましょう。本人に、利用日数やなぜショートステイに行くのかをしっかりと説明して安心してもらうことも大切です。

4.ショートステイの利用料金

ショートステイの利用料金は、1日単位で設定されています。要介護度はもちろん、宿泊する施設の形態や部屋タイプによって、非常に細かく設定されています。

ショートステイを利用した場合の利用料金は、

  • 利用者の要介護度
  • 施設の種類(福祉系よりも医療系が高額)
  • 居室のタイプ(多床型、従来型個室、ユニット型個室の順に高額)

によって決まります。加えて、「自己負担(滞在費や食費、日常生活費など)」や「加算(個別機能訓練加算、30日超過加算、送迎など)」があります。さらに短期入所療養介護では、同じ施設でも看護師の人員配置を始めとする様々な条件で細かく分かれていて非常に複雑です。

利用限度額の超過には注意が必要

ショートステイは連続利用が出来るといっても、介護度が高くない人は、利用限度額を超過してしまうこともあるので注意が必要です。

また、デイサービスなどとは違い、施設から自宅までの送迎費用については、短期入所生活介護と同様に基本料金には含まれず、別途加算されます。原則、滞在費や食費、理美容などの日常生活費は全額自己負担(低所得者などは負担軽減制度有り)になります。1ヶ月に連続30日まで利用することができますが、使いすぎると介護保険の利用限度額に達してしまうので、ケアマネージャーとよく相談し他のサービスとのバランスを考えながら、利用者やその家族の状況に応じて活用するといいでしょう。

半月から20日ほどの利用を考えている場合は、月をまたいで利用した方が賢明です。介護保険は月ごとの計算なので、超過する可能性が低くなります。