要介護認定から介護保険利用までの流れ

要介護認定

認知症や脳卒中、パーキンソン病などで介護が必要となった時、まず始めにすべきことそれが「介護保険の申請」です。

介護保険の申請は、役場の担当窓口で行います。しかし、申請手続きを終えたからといって直ぐにデイサービスや特別養護老人ホームといった介護保険サービスを利用できるわけではありません。

「要介護認定」なるものを受ける必要があります。

要介護認定とは「本当に介護保険を必要とする状態か、要介護度のレベルはどれくらいか」を審査・判定してもらう手続きのことです。

そして、要介護認定で「介護や支援が必要な状態」と判断されて、始めて介護保険を利用することができるのです。

この記事では、「要介護認定の申請から介護保険サービスを利用するまでの流れ」について分かりやすく解説していきますので、ぜひお役立て下さい。

1.要介護認定の申請の流れ

要介護認定者数の推移

高齢化が進む日本では、介護を必要とする人の数は急増しています。

日本全国の要介護(要支援)認定者数は、なんと6,183,346人にも上ります(平成28年度1月現在 厚生労働省調べ)。

つまり、これだけで多くの方が要介護認定を受け、デイサービスや訪問へルパーといった介護保険サービスを利用しているのです。

しかし、中には「どのようにして介護保険を利用すれば良いのか知らない人」もいるでしょう。そういった方の為に、要介護認定の申請手続きの流れを説明していきます。

申請窓口

要介護認定の申請の流れ

介護保険は、事前に要介護認定を受けることで利用できる制度です。

要介護認定の申請は、市区町村の役所・役場または、地域包括支援センターの担当窓口で受け付けています。

原則、申請手続きは利用者である本人やその家族が行います。しかし、「窓口まで行けない」「身寄りが居ない」といった別段の理由がある場合は、親族や成年後見人、ケアマネージャー、地域包括支援センターの相談員、民生委員などが代理申請することも可能です。

介護保険の利用対象者

年齢別(第1・2号被保険者)で利用条件が異なる

care

介護保険は国で定められた法律です。「年齢が40歳以上のすべての人が加入し、介護保険料を支払うこと」が義務づけられています。

介護保険料とは

したがって、介護保険を利用できる対象年齢は40歳以上の方です。

しかし、保険料を支払っている全員が介護保険制度を利用できるわけではありません。主な対象者は、65歳以上の「第1号被保険者」の方です。

ここで第1号被保険者と第2号被保険者の違いを確認しておきましょう。両者の違いは簡単でズバリ年齢によって分けられます。

第1号被保険者
65歳以上
第2号被保険者
40~64歳

第2号被保険者でも特定疾患がある人は利用できる

特定疾患

しかし、「第2号被保険者」の人でも、ある一定の条件を満たすことで介護保険を利用することが出来ます。その条件とは「特定疾患」として定められた16病名が原因で介護やサポートが必要になった場合です。

第2号被保険者の特定疾患(16病名)
末期がん 関節リウマチ 初老期における認知症(若年性認知症) 脳血管疾患(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)
筋委縮性側索硬化症(ALS) パーキンソン病関連疾患 閉塞性動脈硬化症 慢性閉塞性肺疾患
後縦靭帯骨化症 脊髄小脳変性症 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
骨折を伴う骨粗鬆症 脊柱管狭窄症 早老症 多系統萎縮症

ですので、若くして、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血により後遺症が残ったり、認知症(若年性アルツハイマー病)などで日常的なサポートが必要になったりした場合は対象者となります。

申請に必要な書類

要支援・要介護認定申請書

以下のリストは、要介護認定を申請するために必要なものです。

申請時に必要な書類
介護保険証または健康保険証 「第1号被保険者(65歳以上)」は介護保険証、「第2号被保険者(40~64歳)」は医療用の「健康保険証」を提出する。第2号被保険者は、要介護認定を受けてから介護保険証が発行される。
申請書(要支援・要介護認定申請書など) 氏名、生年月日、住所、電話番号の他、被保険者番号や主治医や医療機関の情報も記入します。申請書は市区町村の担当窓口や地域包括支援センターの窓口で入手します。ホームページなどからダウンロードできる場合もあります。
印かん 必ずではありませんが地域によっては認め印が必要な場合があります。

介護保険証を失くしてしまった場合は、市区町村の担当部署で再交付が受けられます。

申請書には、現在の健康状態を知っている主治医の氏名などを記入する欄があります。ここに記入する主治医は、今後介護を行っていく上であなたの大切なパートナーとなります。贔屓ひいきにしているお医者さんがいる場合は、一度連絡を取っておくと良いでしょう。主治医が居なければ、市区町村が紹介してくれます。

2.認定調査(訪問調査)とは

認定調査

無事、要介護認定の申請が受理されれば、次は「認定調査(訪問調査)」を受けることになります。

認定調査とは、市区町村の職員や委託を受けた「訪問調査員」が、本人が暮らしている自宅や施設、入院先の病院を訪れて利用者の身体や動作、認知機能、社会性、精神状態、つまり「介護サービスを必要としている状態かどうか」を実際に確かめることです。

調査の内容は「認定調査票」にまとめられ、要介護認定において重要な資料となります。

調査の場には立会人として介護する家族、1人暮らしなら近所の人や民生委員、施設の職員などが出来る限り同席し、本人の普段の様子を伝えます。

認定調査にかかる時間は30分~1時間程度です。

要介護認定の調査項目

認定調査の項目

要介護認定の調査は、公正な判断が出来るよう全国共通の基準に従い本人とその家族が、訪問調査員の質問に答える形式で進められます。また、実際に本人に身体を動かしてもらい、身体能力や日常生活動作能力(ADL)をチェックすることもあります。

認定調査では次の5つ基本調査項目(全74項目)をチェックします。

  1. 身体機能・起居動作
  2. 生活機能
  3. 認知機能
  4. 精神行動障害
  5. 社会生活への適応

認定調査項目,項目数74

具体的には「麻痺や拘縮の有無」「移動や着替えが出来るか」「日頃の生活パターン」「自分の意思をどれくらい伝えられるか」「物忘れをするか」「病気の履歴」「生活環境」などの項目をチェックします。

訪問調査員は、これら調査項目を全て読み上げるわけではありません。利用者の動作や受け答えなどを観察し、その場でわかることは質問せずに認定調査票に記入していきます。

また基本調査項目以外にも、調査員はより正確な情報を得るため重要と感じた事を「特記事項(意見書の提出依頼は身体状況や介護状況が分かる日記やメモなど)」として認定調査票に記入します。

訪問調査員に正確に情報を伝えるためのコツ

日常の様子をメモに残しておこう

メモ

認定調査の目的は、普段の様子を正確に伝え要介護認定に活かすことです。

したがって「ただ調査員の質問に答えればいい」というものではないわけです。質問事項以外にも、普段の生活の中で困っている事、気になることがあれば積極的に伝えることが大切です。次々に質問されても構え過ぎず普段通りに落ち着いて質問に答えましょう。

しかし、その日の調子によって普段の様子を正確に伝えられないことがあります。例えば「見知らぬ相手を目の前にすると認知症の症状が出ず、実際より要介護度が軽く判断されてしまった」というケースが考えられます。

そういった場合に備え、予め本人の普段の様子をメモなどに残しておきましょう。

嘘や隠し事はダメ

なお 「要介護度が上がると使えるサービスが増えるから得!」といって、嘘や隠し事をして要介護度を上げようとする人がいますが絶対にやめて下さい!

嘘がバレた場合、次回の認定が厳しくなったり、それまでの費用が全額自己負担になったり、介護保険が打ち切られたりすることもあります。

3.主治医の意見書とは

主治医の意見書

認定調査と同時に必要となるのが「主治医の意見書」です。

主治医の意見書とは、主治医が本人の心身状態や生活機能について医学的な立場から意見をまとめた資料のことです。

市区町村が、申請書類に記入された医師に「主治医の意見書」を依頼します。かかりつけの病院がある場合は、介護保険を申請する前に主治医に受診し「介護保険を申請する」「介護保険の主治医をお願いしたい」といった旨を伝えておくとスムーズに手続きが進みます。

もし、主治医がいない場合は市区町村が指定した医師の診察を受けます。

4.要介護認定の審査は2段階

認定審査

「認定調査」と「医師の意見書」をもとに“介護が必要な状態かどうか、要介護度(要介護1~5・要支援1・2)のレベルはどれくらいか、介護サービスの必要度”を審査します。

要介護認定の審査は、一次判定と二次判定の2段階に分かれます。早速、それぞれの仕組みを確認していきましょう。

【一次判定】コンピューターが審査する

一次判定は、コンピューターによる審査です。

訪問調査員が作成した「認定調査票」の基本調査をもとに、コンピューターが「要介護認定等基準時間」という介護の手間を数値化したデータを算出し審査判定します。つまり、大まかに介護保険サービスの必要度を割り出します。

【二次判定】介護認定審査会が審査する

二次判定では、コンピューターでは判断しきれない部分を「介護認定審査会」という人の目で審査します。

介護認定審査会とは、市区町村が任命した保険・医療・福祉の学識者(医師・歯科医師・看護師・薬剤師・保険師・ケアマネージャー・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・訪問調査員など)から構成される5名ほどの組織です。

委員には守秘義務があるほか、審査を受ける人の氏名は委員にも非公開になっています。委員の任期や審議の開催・決定などは介護保険法で定められています。

この介護認定審査会が、一次判定の結果と認定調査票の特記事項、主治医の意見書、状態の維持・改善の可能性などを考慮して総合的に審査します。

二次判定の審査の手順は以下のようになります。

  1. 特定疾病の確認(第2号被保険者の場合)
  2. 一次判定の修正と確定(特記事項との矛盾を正す)
  3. 介護の手間を審査判定(特に手間がかかる場合に一次判定を修正)
  4. 有効期間の設定(原則期間の短縮・延長を検討。3~12ヶ月)
  5. 審査会からの意見の検討(状態の軽減・悪化防止のアドバイス)

5.要介護認定の再審査と有効期間

支給限度額

全ての審査が終わると、介護認定審査会の審査をもとに、市区町村が要介護認定を行います。

要介護認定では「要介護度」の区分を基準にして、その人の介護状態のレベルを決定します。そして、最終的に「要介護度」が明記された「認定通知書」が申請者の自宅に郵送されます。

要介護1~5、要支援1・2について介護保険で受けられるサービス一覧

「認定結果に不満がある時」や「大きく状態が変化した時」は再審査

要介護認定を受けると、介護保険サービスを1割の自己負担で利用することが出来ます。

しかし、要介護度に応じて受けられるサービスや介護給付の支給限度額は異なります(基本的に要介護度が重いほどサービスが多く利用できます)。

したがって、もし「要介護度が思ったより低い」など不満がある場合は再審査を申し立てましょう。

再審査の申し立ては、市区町村の窓口や各都道府県に設置されている「介護保険審査会」に行いましょう。再審査の申し立ての有効期間は認定通知書を受け取ってから60日以内ですので注意しましょう。

また、介護度が認定されてからでも、心身の具合が悪化するなど状態が大きく変わった場合は、いつでも再審査の申請が出来ます。

要介護認定の有効期間

要介護認定には有効期間があり、更新の手続きは必要です。有効期限が切れると介護サービスの費用が全額自己負担になってしまいますので注意して下さい。

有効期間は次の通りです。

  • 新規の場合は6ヶ月
  • 更新の場合は原則1年間(2年間もある)

※有効期間は認定通知書が届いた日からではなく、申請した日からとなるので注意しましょう。

なお、要介護認定の更新手続きは、有効期間満了の60日前から出来ます。

6.認定を受けたらケアプランを作成しよう

認定後にケアマネジャーにケアプランを依頼する

要介護認定を受けたら、次は介護サービスを利用する為に必要なケアプランの作成に入ります。ケアプランを作成し介護サービス事業所と契約することで、始めてデイサービスやショートステイなどのサービスを受けることが出来ます。

ケアプランは自分で作ることも出来ますが、一般的にはケアマネージャーに依頼して作成してもらいます。詳しい流れは下のリンクを参考にして下さい。

ケアマネージャーとはケアプランとは

みなしサービス|要介護認定の結果が出る前でもサービスを利用できる

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要介護認定を申請してから認定結果の通知を受けるまで、およそ30日と長い時間がかかります。

通常は要介護認定の結果を受けてからサービスが開始されます。しかし、介護が必要になる状況では認定結果を待つ余裕もなく、緊急を要することも少なくありません。そういった場合は、認定結果を受ける前でも、前倒しでサービスを利用できる「みなしサービス」の手続きを行います。

みなしサービスの希望者は市区町村の担当当窓口や地域包括支援センター、ケアマネージャーに申し出ます。その場合は仮の「暫定ケアプラン」が作成され、市区町村の介護保険担当窓口に届け出た日から1割の利用者負担でサービスが利用できます。

ただし、みなしサービスの利用額が、後に認定された要介護度の利用限度額を上回っていえれば、その分は全て自己負担になります。もし認定の結果が非該当(自立)なら、費用の全額が自己負担になってしまいます。

暫定ケアプランの届け出をせずにサービスを利用したい時は、一旦全額を自費で支払い、認定結果が出たあと領収書を添付して市区町村に支給申請を提出すれば保険給付分(9割)が払い戻されます。

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