小規模多機能型居宅介護の全容を学ぼう

小規模多機能型居宅介護

  • アルツハイマー型認知症の母が「たとえ何もわからなくなったとしても、最後は自分の住み慣れた土地で死にたい」と希望している
  • 訪問介護にデイサービス、それにショートステイと色々な事業所と毎回契約するのが面倒・・・

このようなお悩みをお持ちの方にオススメしたいのが「小規模多機能型居宅介護」です。

これまで、自宅での在宅介護や療養が難しいと考えられてきた重度の認知症や脳卒中の後遺症、パーキンソン病の人でも、住み慣れた地域で余生を過ごしてもらう為のサービスです。

しかし、その実態がイマイチ分からないという方も多いでしょう。そういった方の為に「小規模多機能型居宅介護とは」といった基本定義から、そのメリット・デメリット、サービスに掛かる料金計算の方法といったことに至るまで懇切丁寧に説明していきます。

<目次>

  1. 小規模多機能型居宅介護とは
    1. 窓口1つ!ワンストップで色々なサービスが受けられる
      1. 対象と人員基準
      2. メリットとデメリット
    2. サテライト型小規模多機能型居宅介護が登場
  2. 小規模多機能型居宅介護に掛かる費用
    1. 料金計算の流れ
    2. 定額制ならではの問題点

小規模多機能型居宅介護とは

2006年から新しく始まった「地域密着型サービス」は、お年寄りが中重度の要介護状態になっても、住み慣れた地域での生活を継続できる社会を実現する為に作られたものです。これからご紹介する「小規模多機能型居宅介護」は、この「地域密着サービス」の中の重要施策の1つに位置付けられるものです。

窓口1つ!ワンストップで色々なサービスが受けられる

小規模多機能型居宅介護とは

小規模多機能型居宅介護とは、「通い(デイサービスなど)」を中心に、「訪問(ホームヘルパー)」と「泊り(ショートステイ)」といった各々の介護サービスを1つの小規模事業所にまとめて、利用者が1つの事業所に契約・登録するだけで各々のサービスが全て受けられる仕組みです。

出典:厚生労働省

地域住民と交流しながら、自宅での生活継続の支援を目的としています。これは、家庭的な環境で過ごせる宅老所をモデルにしたサービスです。地域との交流があるので、住み慣れた場所で安心して暮らし続けていくために、使い勝手のいいサービスと言えるでしょう。

つまり、今までは「デイサービスならデイサービスの事業所、訪問介護なら訪問介護の事業所」という具合に複数の事業所と個別に契約していたのが、1つの事業所との契約だけで全てのサービスがワンストップで受けられるようになるのです。

小規模多機能型居宅介護では、3つのサービスのうち、通所(デイサービスやデイケア)を中心に、訪問介護とショートステイを組み合わせて提供されるのが一般的です。

ケアプランも小規模多機能型居宅介護の事業所に所属しているケアマネージャーに作成してもらいます。利用料は月の定額制で、他事業者の通所、訪問、宿泊のサービスは受けられなくなりますが、訪問看護、福祉用具の貸与、居宅療養管理指導は受けられます。

対象と人員基準

小規模多機能型居宅介護の対象は、要介護1~5の人です。ただし、小規模多機能型居宅介護は、市区町村によっては実施していない所がありますので、地域によっては受けられない人もいます。

要支援1・2の場合は、「介護予防小規模多機能型居宅介護」として、小規模多機能型居宅介護とほぼ同じサービスが提供されます。

小規模多機能型居宅介護では、利用定員が定められています。1事業者あたり29人以下の登録制になり、1日に利用できる通所サービスの定員は18人以下、ショートステイにおいては9人以下です。小規模多機能型居宅介護は、少人数制ですので手厚いケアが受けられます。

このサービスが向いているのは、独居や老々介護の認知症高齢者です。遠距離の子供なら、親元にこのサービスがあるかどうか探す価値があります。定員29名以下と少人数なので、登録利用者は、事業者から常に気を掛けてもらえるからです。

メリットとデメリット

メリットとデメリット介護

この小規模多機能型居宅介護最大の特徴は、1カ所で「通い(デイサービスやデイケア)」を中心に、「訪問(ホームヘルパー)」と「泊り(ショートステイ)」を組み合わせた複合的なサービスが受けられることです。これは大きなメリットです。

介護が必要な人やその家族の状況は、日々変化していき、それに応じた臨機応変なケアが欠かせません。目まぐるしく変化する状況に臨機応変に対応するためには、利用者の心身状態や家族の状況、意向を事業所は常に把握していなければいけません。しかし、多くの事業所がバラバラでサービスを提供していた場合は、なかなか情報が上手く伝わらず、ケアが的確かつスムーズに実施されにくいものです。

そこで、小規模多機能型居宅介護により、複数のサービスを1つの事業所にまとめることで介護をスムーズかつ的確に行うことが出来ます。小規模多機能型居宅介護には様々なメリットがあります。しかし、「小規模多機能型居宅介護はメリットばかりか」と言われるとそうではありません。介護サービスを1つの事業所にまとめてしまうことで問題が発生することも確かです。

メリット 色々な事業所と契約をしなくて済む
小人数制なので家庭的な雰囲気の中で手厚いサービスが受けられる
通い、訪問、泊りすべてのサービスが1カ所の事業所で介護スタッフも同じことが多いので、利用者の心身状態や家庭事情などを把握してもらいやすい
いつも顔なじみのスタッフに対応してもらうことができ、スタッフとも親しくなれるので不安が和ぐ。特に、馴染みの人や場所でケアをしなければ心の安定が保てない、認知症の人でも安心して利用できる
デイサービスやショートステイ、訪問介護といったサービスを臨機応変に選び組み合わせる
デメリット 今まで利用していた介護保険のサービス(居宅介護支援、通所介護、通所リハビリテーション、訪問看護、夜間対応型訪問介護、訪問入浴介護、ショートステイ)を利用するできなくなる
「デイサービスは良いけど、ショートステイの施設が気に入らない」などサービスの一部に不満があっても、そこだけの変更は不可能
馴染みのケアマネージャーとの関係が切れる
ショートステイなどの泊りのサービスが多くなると自費負担額が大きくなる

こうした点が、既に介護保険サービスを利用している人にとって使いにくい一面となっていると言われている問題点です。

サテライト型小規模多機能型居宅介護が登場

サテライト型

2012年から、今までの小規模多機能型居宅介護に加えて、サテライト型事業所(サテライト型小規模多機能型居宅介護)の設置も可能になりました。サテライト(衛星)とは、事業所の本体とは別に設けた小規模の事業所のことで、いわば本体の支店みたいなものです。そして、この本体と支店を持った事業所のことをサテライト型事業所(サテライト型小規模多機能型居宅介護)と呼びます。

通常型 本体のみ
サテライト型 本体+サテライト(×2つまで)

ここでは、前の章で出てきた小規模多機能型居宅介護を通常型とします。

サテライト型事業所でも、本体と同じく「通い(デイサービス)」や「泊り(ショートステイ)」や「訪問(訪問介護)」のサービスを提供できます。したがって、このサテライト型小規模多機能型居宅介護の最大のメリットは、本体とサテライトが連携し、お互いの足りないところを相互補完し合いながらスムーズに複合的なサービスを運営・提供できることです。

例えば、

  • 本体のショートステイのベッドが満床の時には、サテライトにあるショートステイのベッドを使う
  • サテライト型事業所の利用者に本体の介護スタッフが訪問介護サービスを提供する
  • 本体からの適切な支援が受けられるならば、看護職員や夜勤職員等一部スタッフの人員配置基準が緩和される

といった具合に、本体とサテライトが協力しながら、相互に泊りや訪問サービスを柔軟に提供しやすくなります。

サテライト型事業所では、最大で2カ所までサテライトを設置することができます。そして、本体からおおむね車で20分以内に移動できる距離に設置するように定められています。

通常型とサテライト型事業所比較表

通常型の小規模多機能型居宅介護
登録定員 登録定員の1/2~29人以下
通いの定員 登録定員の1/3~18人以下/日
泊りの定員 9人以下/日
サテライト型小規模多機能型居宅介護
  本体 サテライト
登録定員 25人以下 18人以下
通いの定員 登録定員の1/2~15人以下/日 登録定員の1/2~12人まで
泊りの定員 登録定員の1/3~9人以下/日 登録定員の1/3~6人まで

小規模多機能型居宅介護に掛かる費用

小規模多機能型居宅介護料金

小規模多機能型居宅介護の介護サービス費は、利用するサービスの種類や回数に関わらず、1ヵ月ごとの定額制です。また、通常型とサテライト型小規模多機能居宅介護の料金面での違いはありません。

ただ、事業者との契約にもよりますが、食費、オムツ代、滞在費(部屋代、水道光熱費)、日常生活費(教養娯楽非、理美容費、洗濯代など)は、基本的に全額自己負担になります。

小規模多機能型居宅介護の利用料金は、サービスを提供する事業所が、利用者の住んでいる建物と同じか、違うかで料金が異なっています。事業所と利用者が同じ建物の場合の方が、料金が安くなります

小規模多機能型居宅介護のサービスを受ける場合、必要に応じていくつか加算料金が発生する場合があります。

平成27年度 小規模多機能型居宅介護費
要介護度 通常利用
同一建物居住者以外 同一建物居住者
1 10,320単位 9,298単位
2 15,167単位 13,665単位
3 22,062単位 19,878単位
4 24,350単位 21,939単位
5 26,849単位 24,191単位
初期加算
事業所に登録した日から30日以内の期間について、1月に付き30単位の加算になります。
認知症加算
認知症の症状と要介護度により料金が異なり、症状については医師の判定の結果もしくは、訪問調査員の認定が必要となります。

料金計算の流れ

それでは実際に、小規模多機能型居宅介護に掛かる介護サービス費用を月額料金をシミュレーション計算してみましょう。

  • 利用者は要介護5
  • 利用者の居住する建物と事業所の施設は別もの
  • 週3回の訪問介護
  • 週5回のデイサービス
  • 2泊3日の月1回のショートステイ

以上のサービスを利用した場合、次のように料金計算できます。(1単位=10円、個人負担=1割負担の場合)

【計算式】

  • 【1ヶ月分の単位数】 26,849単位
  • 【1ヶ月にかかる介護サービス費(保険適用前)】 26,849単位×10円=268,490円
  • 【1ヶ月にかかる介護サービス費(自己負担1割)】 268,490円×10%=26,849円

小規模多機能型居室介護の自己負担費用(1ヶ月分)=26,849円+食費やショートステイ滞在費(部屋代、光熱費)、おむつ代、日常生活費(娯楽費、理美容費)など

定額制ならではの問題点

小規模多機能型居宅介護では、ショートステイの滞在費や食費などの介護サービス費以外は全額自己負担です。特に、気を付けなければならないのが「滞在費」です。滞在費の料金に基準はありませんが、1日2000~3000円程度の施設が多いようです。

なので、ショートステイを多用すると滞在費が加算され場合によっては、予想していたよりもお金がかかってしまったなどの問題が生じることがありますう。したがって、予め「どれくらいの費用が掛かるのか」事業所に問い合わせて確認しておきましょう。もし分からない場合は、ケアマネージャーに相談しましょう。

また、小規模多機能型居宅介護は、1ヶ月単位の定額制のため 、高額になる心配がない反面、場合によっては料金に見合うだけのサービスに感じられないといった不満が生じるかもしれません。個別のサービスを組み合わせたプログラムを組んだ時の利用料金と比較し、検討するのも良い方法です。

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