杖の種類&素敵なステッキ(杖)を選ぶコツ
街中では、カラフルな杖や面白い形の杖を持っているお年寄りを多く見かけます。
しかし、実際に自分の身体に合った杖を使っている人はほんの一握りです。なぜなら、「自分に合う杖をどう選ぶのか」という杖選びのコツやポイントに関する情報が少ないからに他なりません。
その為、直感やデザイン、カタログ等の限られた情報だけを頼りにしてしまう為、杖選びに失敗してしまうのです。また、店員に勧められるがまま、自分に合わない高い杖を購入させられている人も見かけます。
本人に合わない杖を、使い続けるとどうなるでしょうか?当然、身体に無理な負担がかかり、折角の杖の効果が半減してしまいます。
そこで、この記事で”杖の効果”や”杖の名称・種類”など、杖選びの際に必要な情報を頭に入れて頂ければと思います。
1.杖(ステッキ)の必要性とその効果
歩行安定化で転倒防止
皆さん転ばぬ先の杖という諺を知っていますか?
転ばぬ先の杖とは、「予め準備や用心していれば、失敗することがないという」たとえです。
正に、杖はこの諺のように「杖を突いて歩き用心することで、転倒を防ぐ効果」があります。「老化は足から」と言う通り、誰しも年を取ると足腰が弱くなり足元がおぼつかなくなり、ちょっとした段差で転んでしまうこともしばしばです。
お年寄りは若者に比べて、骨がもろくちょっとしたことで骨にひびが入ったり、捻挫を起こしたりしがちです。また、骨折などの重度のケガをしてしまうと治りも遅く、そのまま寝たきりや廃用症候群になってしまうこともあります。
なので、お年寄りの転倒は厳禁です。その為には「杖」が必要になることは言うまでもありません。杖の効果は次のようなものがあります。
- 杖は歩行補助具であり、歩行や階段の昇降に確実性や安心感を与え、転倒や事故から身を守る。
- 心理的にも杖を持つことで、「私は足が弱いんだ」という意識づけがされ慎重に歩くようになる。
つまり、杖を持つことは、単に歩行などの運動機能をサポートするだけでなく、精神的にも一歩一歩を大切にするよう意識づけする効果が期待できます。
年を取って足腰を痛めてしまう方の多くは、自分が若かった時と現在とのギャップが埋められずに、無理をしてしまう人です。なので、杖を持つことで”走る”、”階段を駆け下りる”といった無理な動作は間違ってもしなくなります。
リハビリ補助とADLの維持向上
脳卒中を起こし片麻痺の後遺症が残った人にとってリハビリが欠かせません。失った手足の機能を回復に導くには、残されている機能をフル活用すると同時に、リハビリで患肢の回復に努めることが大切です。また、日常生活の中でも、自分でできることを増やしADL(日常生活動作能力)を高めることが重要です。
このようなリハビリによる身体機能の回復やADLの維持向上を図る上で、不自由な身体を助ける杖は重要なアイテムです。
本人の症状・状態に合わせた杖を選び使用することで、リハビリの効果がさらに高まります。また、杖を使うことで歩行がスムーズになり行動範囲が広がりADLが向上します。ADLが改善すると、周囲の人の負担を軽減することに繋がるだけでなく、本人も自信が付き努力しようとする意欲が湧いてきます。
しかし、病院や介護施設では、転倒を恐れて歩行力の弱った利用者を車椅子に乗せ自力での移動を禁じる傾向があります。ですが、これではリハビリの効果が減少しADLの改善に繋がりません。例え、家具や壁につかまった伝い歩きであっても、本人が主体的に身体を動かし、行きたいところへ行き生活空間を広げるのであれば、それが一番です。杖はその為の大切な道具なのです。
足腰の負担軽減
杖は、患肢(痛む側の足)に掛かる負担を軽減し、痛みを和らげる効果があります。杖を突くと、体重の負担がステッキにも分散され、その結果、患肢で体重を支えられる時間も長くなり、大股で颯爽と歩けるようになります。
歩行姿勢の改善
パーキンソン病やレビー小体型認知症の患者さんは、背中を丸めうつむき加減に突進したような歩き方になります。また、年を取ると、うつむき加減になり、歩く歩調も「こせこせ」して何かぎこちなくなります。これはバランスの悪い足で支えている時間を無意識の内に出来るだけ短くしようとする比較的安全な歩き方というわけです。
当然ですが、このように無理な姿勢で歩くことは身体に良くありません。できる限り良い姿勢で歩くことが大切です。
杖は、歩行姿勢の改善にも役立ちます。背筋は真っ直ぐ、顔も正面を向いて、歩く歩調もやや大股でゆったり歩けるようになります。これは、杖を突くことで、常に杖を含めた2本以上の支えがある為、患肢で支える時間を長くしても安心して歩ける為です。
おしゃれでファッショナブル
日本人は、よく杖を持つことを恥ずかしがりますが、海外では真逆です。イタリアやフランスといった国では、足腰が悪い人もそうで無い人もファッションとしておしゃれな杖を持ち、街を闊歩している姿をよく見かけます。
日本でも、今ではおしゃれな杖が多く販売されています。是非、あなたに合ったおしゃれな杖を持って、街を歩いてみませんか?普段から自慢の杖を使い込むことが、いざという時に役立つのです。
また、歩行補助具には杖以外にも、車椅子やシルバーカーも含まれますが、杖はその中でも最も手軽で持ち運びも簡単利便性の高さも魅力の1つです。
2.杖(ステッキ)の部位の名称と種類
支柱 | 杖全体 |
---|---|
グリップ(柄) | 握りの部分 |
石突き | 杖の先に付けるゴム |
杖の種類は非常に豊富です。その中から、「自分に合う杖をどう選ぶのか」迷うひとも多いはずです。
ここでは、杖の種類別にその特徴を理解しましょう。合わせてamazon通販で人気が高い杖をご紹介します。画像をタップして購入先に移動できます。
※「杖とステッキは同じなの?」という質問をよくいただきます。似たものと感じますが厳密には違います。
杖は主に足腰が弱くなった人やパーキンソン病などの病気を原因に歩行障害がある人が「歩行補助具」として使う介護福祉用具です。一方、ステッキはファッションとして持ったリ、登山やウォーキングなどで歩行のサポートをする健常者用の用具です。
1.一本杖(T字杖、L字杖)
皆さんが杖と聞いて一番に思い浮かべるのが、この「T字杖、L字杖」です。支柱と握りがT字やL字の形をしていることからこう呼ばれています。
最も機能的で歩行の自立度が高い人向けの杖です。
T字杖はL字杖よりも握りやすく、より安全性が高くなっています。病院のリハビリで使う人の大半はT字杖で、右手用左手用があり、医療用のおすすめ品と言われています。L字杖はグリップに鳥や花などの装飾が施されたものが多く、ちょっぴりオシャレな雰囲気がします。長さの調節や折りたためるタイプもあります。
折りたたみ式ステッキ
折りたたみ式の杖やステッキは、ボタン1つで4つに折れ、また押すと一本に戻る仕組みです。本来、この種の杖は旅行者、出張者、山登りなどのレジャー向けのもので、慢性病などで継続的に使う場合は避けた方が良いと言われています。
しかし、最近ではそういった方々でも使いやすい折りたたみ式ステッキも販売されています。また何よりもコンパクトで持ち運びがしやすいので人気の理由です。
2.ロフストランドクラッチ杖
ロフストランドクラッチ杖は、松葉杖に代わる性能を持ちますが、肘付と腕輪を合成したもので、腕力が弱く、一本杖や松葉杖では体重を支え辛く、不安定になり易い人の為に作られた杖です。上のカフとよばれる輪に前腕を通し、支柱から前方に飛び出したニギリを持ちます。握りと肘の関節の2カ所で支えるので、握力や腕の力が弱い人に適しています。
3.多点杖(3点杖・4点杖)
多点杖は、一本杖では重心が定まらない人の為に作られた杖です。石突が3点または4点に分かれたているので、一本杖よりも安定性に優れています。主として、下肢の筋力低下やマヒや失調のために立位バランスの取れにくい方が使用します。歩行器は必要ないがT字杖では不安定という人に最適です。手をはなしても倒れないという利点もあります。
4.松葉杖
松葉杖は、読んで字のごとく、松葉のように二股のV字型の形をしています。握力の代わりに腕力で患者の体重を支えます。腋当ての下方にある水平の握りを持って、患肢に直接体重を掛けない為の杖です。リハビリで使われることが多いですが、外傷などで救急用具としても用いられます。高さも角度もワンタッチで調整可能なものや軽くて丈夫な松葉杖もあります。
5.白杖
白杖は目の不自由な視覚障害者の方が使う杖です。視覚障害者の交通安全のために白杖がヨーロッパから全世界に広がり、日本でも昭和40年代から定着しました。盲人用の杖は白杖が基本ですが、最近は市区町村単位で色が選定され、中には、白半分、赤半分の市町村もあります。いずれも夜光塗料で夜は車のヘッドライトなどの光に反射してドライバーに気付いてもらいやすいよう安全対策が施されています。
3.杖(ステッキ)の選び方
杖を選ぶ時は、自分の症状や身長に合ったものを選ぶことが大切です。
症状や歩行自立度に合った杖の形状を選ぶ
杖選びのコツは、本人の症状や歩行の自立度にあったものを選ぶことです。
杖には様々な種類があり、身体の状態や身長に合わせて使い分けていきます。杖の選び方や使い方は専門家のアドバイスを受けましょう。一般的によく使われているT字型杖ですが、歩行が困難な場合は、多点杖を利用すると杖が安定して歩きやすくなります。
腕に力のあり比較的歩行が安定している人 | T字型杖 |
---|---|
握力や腕の力が弱く歩行がやや不安定な人 | ロフストランドクラッチ |
歩行がかなり不安定な人 | 多点型杖 |
例えば、脳卒中(脳梗塞や脳出血)で倒れて入院ししばらくベッドで寝ていた人は、まず車椅子に乗ります。そして、車椅子への移乗できるようになれば、平行棒をつかった歩行訓練を始めます。平行棒を使い少しずつ歩けるようになると、平行棒を離れて歩行器を使い、次に多点杖、それからT字杖を使い歩行訓練を行います。もし、多点杖では歩けてもT字杖まで行けない場合、ロフストランドクラッチ杖をT字杖の前段階に入れます。
ですので、リハビリにおけるT字杖は、杖なしで歩ける状態の一歩手前で使う杖です。なので、これまで杖なしで歩いていた人が老化などで歩行能力が落ちた時、一番初めに手にする杖もT字杖になります。
この様に本人の症状や自立度に合わせた形状の杖を選ぶことが大切です。
杖の長さ
杖を選ぶ時、杖の形状とともに重要なのが長さです。
杖の規制品の標準寸法は、88㎝に出来ています。これを使い人の背丈に合わせて調節し身体に合った長さにするのです。およそ、身長の1/2が目安です。
しかし、杖の寸法の調整については、握った時の手首の高さが腰骨の高さに調節する方法が最も合理的です。
握りの部分を持って杖先を一歩前(15㎝程前)に置いたときに肘が30度くらい曲がるのが最適な長さです。この長さになるように杖の支柱を切ってもらって調節しましょう。ただ、腰が曲がった人は30度以上になってもやや高めの杖を選ぶと歩きやすくなります。
- 必ず靴を履いた状態で、杖を一歩前(杖の先端はつま先から外側に15㎝くらい)につき、軽く肘が曲がる(30度くらい)の長さ
- 握りが大腿の上の端に出ている骨のあたり(腕を下に伸ばしたときに、杖の握りが手のくるぶしと同じ高さ)になる長さの杖を選ぶ
杖の長さの調節は自分でするのではなく専門家に頼むのがふつうです。理学療法士や福祉用具専門販売員に「杖を合わせて」と頼めば、他で買ったものでも快く合わせてもらえます。サイズが合わない杖を使用すると、転倒の原因になったり、身体に負担がかかったりするので、必ず専門家に選んでもらいましょう。
杖を選ぶ時は、長さ、握り(グリップ)、重さ、先ゴムの感覚など実際に試して身体に合ったものを選びましょう。
杖の購入とレンタル
最近は、どこのデパートやスーパー、ホームセンター、ネット通販などでも杖を購入できます。ですので、杖はその気になればどこでもいつでも買えますが、問題は値段ではなく品質と安全性です。杖の品質と安全性を確認するためには、SGマークという印があるかどうかを見て下さい。
SGマークとは「安全な製品(Safe Goodsの略)」という意味で、国が安全な製品として認めた製品です。
SGマークの付いた製品は、人身事故に対する対人賠償責任保険が付いています。杖を購入するなら多少高くなってもSGマークつきのものを購入することをオススメします。
また、杖は福祉用具として介護保険が適用され「特定福祉用具貸与」という制度を利用することでレンタルも可能です。福祉用具のレンタルを行う業者には「福祉用具専門相談員」という福祉用具の選定相談や調整のエキスパートがいますので、杖選びの相談をしてみるのもいいでしょう。
手入れの方法
杖の一般的な手入れは、錆びさせない、傷をつけないことを目的とします。特に、木製杖の場合は、湿気、直射日光、温度変化を避け、雨でぬれた時など、渇いた布で拭き取り、時にはワックスを掛けて十分手入れしてください。
先ゴムは、すり減ると危険です。使っていて先端のゴムが摩耗に気付いたらゴムを細目に取り換えて下さい(毎日使う人は3ヵ月に1度が目安)。
また先ゴムは、材質や硬度によりことなりますので、必ずあなたの杖にあった専用品を覚えておくと便利です。杖の購入時に1、2個予備を付けてもらいストックしておきましょう。また、適合する先ゴムをマジックか何かで記録しておくと忘れてもサイズが分かるので便利です。
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