夢の国~回想 Part-3
楽しく愉快なアトラクションのBGMや親子連れの声に私たち家族は包まれていた。それら明るい雰囲気とは対照的に、母は暗く重い雰囲気で語り出した。
「あなたたちに知っておいて欲しいことがあるの、お父さんはてんかんという病気なの」
まだ小学生の私には“てんかん”という病気が一体どのようなものなのか皆目見当もつかなかった。それ見越したように母は、少し間をおき話を続けた。
「てんかんという病気は、突然発作を起こして意識を失ってしまう病気なの。普段は薬で発作が出ないようにコントロールしているんだけど、時々今のように発作を起こしてしまうことがあるの。数分したら元に戻るんだけど、その間は意識が朦朧としていて記憶もなくなるのよ」
私は、母の説明を聞いてもイマイチ意味が理解できなかったが、先ほどの父の普段とは違う姿を目の当たりにし、父はただ事ではない病気を患っていることが分かった。
「お医者さんの話では、あなたたちには遺伝しないみたいだから心配はいらないわ。だけど、もしお父さんが今みたいな発作を起こした時はあなたたちが安全な場所にお父さんを連れて行って、守ってあげてほしいの」
母の真剣なお願いに、私と龍也は頭をコクリと倒し答えた。
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その後聞いた話では、父は20代のころに会社の職場で初めててんかんの発作を起こしたそうだ。その当時は、10分ほど奇声をあげながら身体を踊るようにバタつかせた後、意識を失い倒れたそうだ。
そして、今でも時々小さな発作を起こしているので、父は運転を医師から禁じられている。
なので、おばあちゃんの家に向かうこの日も母がハンドルを握っていた。
しかし、この時は誰も予想だにしていなかった・・・
この日を境に父だけでなく母も車のハンドルを握れなくなってしまうとは・・
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