身近な盗人

おばあちゃんは自らの布団の上で、微笑みを浮かべ気持ち良さそうに眠っていた。閉じた眼で真っ直ぐ天井を見つめ眠る姿は、とても美しくあると共に、この世におばあちゃんがもう存在しないことを悟らせた。

「幸せそうに寝ているね。今まで色々迷惑かけてごめんね、ありがとう」

龍也は、おばあちゃんの胸に覆い被さりながら言葉を投げかけ続けた。

「龍也、ろうそくを絶やさないようにしっかり見張ってるんだよ」

父は、龍也にこう声をかけると、私に目くらばせをしてその場を離れた。近年、おばあちゃんの側にいたのは龍也だ。そんな龍也に周りを気にすることなく二人きりで過ごさせるよう父は配慮したのだろう。

「おばあちゃん、どうかお母さんを守ってあげてね」私は心の中で懇願し静かに隣の居間へと向かった。

居間では、テレビを見てくつろぐおじちゃんがいた。

「今日はお疲れ様。一人で色々準備してくれてありがとう。悪かったな」

「いやいや、今日は兄さんの方こそ大変でしたね。こっちは、何とかいとこの兄さんの力も借りたんで、すんなり行きましたよ」

「そんで、結局お母さんの貯金通帳は見つかったんかいな」

「ああ、あれですか。おかあはんは寝室の押入れの奥に通帳を隠してましたんや。あの人らしいですわ。わても驚いたんですけど、かなりぎょうさん入ってましてな。びっくりしましたんや」伯父は神妙そうにこう語ったが、目はニヤつき笑っているのを私は見逃さなかった。

「おじちゃん、他に色々出てきんかった?そうや、あの僕が預けてた財布どうしたん」

「知らんな?何も入ってなかったけどな・・・・」

「いやそんなはずないで。いくらか入ってたはずやで」

「ホンマや!!疑うなら見てみ」伯父はすごい剣幕でまくし立て、食器棚からおばあちゃんの財布を取り出し、私を威嚇するように財布をテーブルの上に投げつけた。

私は財布を拾い上げると、その中身を確認した。予想通り、財布には先ほどまであったはずのお札が綺麗さっぱりなくなっており、ただ釣り銭だけが残されていた。

またか・・・・こいつこんな時まで・・・

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