再会

先ほどすれ違った時は、一瞬でかつ暗闇だったのでよく見えなかったが、蛍光灯の下で見る母の姿は、想像以上に痛ましいものであり、長時間に及ぶ大手術をまじまじと物語っていた。

ベッドの上には、髪の毛が哀れもなく剃られ、顔面を痛ましいほどに腫らし、口元はもとより全身の至るところに管を付け寝むる母の姿があった。今、私の目の前で寝ている母は、私の知るそれとは遠くかけ離れ、他人と見間違うほどであった(不謹慎ではあるがそうであって欲しいと強く願った)。

だが、無情にもベッドの頭に掲げられたネームプレートは、それが母であると無言で告げていた。

私は涙を見せないよう気丈に努めたが、肩はガクガクと小刻みに震え、頬には一筋の涙が伝った。涙が頬をつたり床へと落ち、後はもう止めどなく溢れてきそうなものを、必死に堪え袖口でその跡を拭い去った。

私の側に立ちすくんでいた龍也は、突然ベッドに駆け寄り震える手で母の手を取り、幾度も幾度も「お母さん、大丈夫・・?お母さん、大丈夫・・・?」と必死に声をかけ続けた。そして、父はその状況をただ黙って見つめていた。

しばらくの間、集中治療室の中では、龍也の嗚咽混じりの問いかけと医療機器の「ピッピッ・・・ピッピッ・・・」という電子音だけが鳴り響いていた・・・

 

 

 

「五十嵐さん・・・」

皆が、ハッと我に返り後ろを振り返ると、そこには先ほど母の手術を担当した主治医が立っていた。

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