ICU(集中治療室)

opeway

「ICU 集中治療室」と書かれた無機質な扉は、外部との接触を避けるよう固く閉ざされており、横の壁にただ1枚の注意書きが貼られているだけだった。

私たちは注意書きの指示に従い、扉の横に用意されたインターホンを押すと、直ぐに女性の声が聞こえた。

「はい、集中治療室です。面会希望でしょうか」

「はい、五十嵐の家族のものです」

「え・・・と、五十嵐さんですね、かしこまりました。直ぐに参りますので、そちらでしばらくお待ちください」

2、3分待つと集中治療室の中から、女性看護師が現れた。どうも先ほどインターホン越しに会話した相手のようだ。看護師はなれたように面会時の注意事項を述べ、マスクの着用方法や手の洗い方を実践を交えて説明してくれた。看護師の説明はとてもスムーズだったが、今の私にとってはそれすらもヒドくもどかしく感じた。

ようやく看護師の説明が終わると、集中治療室の中に案内された。室内には多くのベッドがあり、どれも規則正しく横並びに配置されていた。

看護師は、ちょうど部屋の中心に位置するベッドに近づき、身を屈めて話しかけた。

「恵理子さん、ご家族さんが面会に来てくれましたよ」

私たちも看護師の後を追い、手術の成功を祝うようにベッドの中を覗き込んだ。

しかし、そこには目も覆いたくなるような姿をした母がいた。

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