病院からの帰路

タクシーに乗り込み、運転手に行き先を告げた。ほどなくして、タクシーはゆっくりと走り出すと、正面入り口のロータリーを半周し公道に出た。

いつしか青空は灰色に染まり、しとしとと小雨が降っていた。フロントガラスに付いた雨粒は、尾を引くように僅かばかりの雨跡を残し流れ消え、その残された雨跡も人知れず姿を消していくのであった。

車内では、各々が窓の外を見たり、下を向きふさぎ込み物思いにふけるなどして、誰ひとり口を開こうとはせず、どんよりとした空気が立ち込めていた。

運転手さんはそんな重苦しい空気に耐えかねたのか、我々に質問を振ってみたり、天候や気温、東日本大震災の話をしてみたり、時には観光名所を案内したり等して、何とか車内を盛り上げようと努めた。だがしかし、どの話に対してもそれぞれが持ち回りで軽い相槌を打つ、あるいは聞き流すだけであったので、運転手も諦め会話の糸口を掴むことなくおばあちゃんの家までただ車を走らせた。

霞みゆく意識の中で、私は変わり果てた母の姿、今後の闘病生活、数時間後に始まるおばあちゃんのお通夜、お葬式など、まったくもって想像し難い事象について幾度も思いを駆け巡らせた・・・

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