要介護5の母と共に|真夜中の悲劇Part2

oosaka

「トゥルルルルル・・・トゥルルルルル」

母が電話機の前についた。

「あ、龍也からだ」

受話器を取る前に、ナンバーディスプレーを確認したのだろう、母がそう呟いた。

龍也とは、私の3つ下の弟である。

龍也は地元の高校を卒業後、美容師を目指し大阪の専門学校の学生になった。

しかし、地元から大阪の専門学校まで通学するのは大変ということで、入学と同時に、大阪のおばあちゃんの家で龍也とおばあちゃんと二人で暮すことになった。

おじいちゃんが数年前に亡くなって以来、母はおばあちゃんがひとりで大阪に暮らし続けることをすごく心配し、月に2度ほど片道二時間かけお祖母ちゃんの家に通っていた。

またそれだけではなく、母はおばあちゃんと同居するために家を何百万もかけてリフォームしたほどだ。

しかし、おばあちゃんは、住み慣れた町、おじいちゃんとの思い出の家を出ることを何年も拒み続けていた。

なので、母は龍也がおばあちゃんと一緒に住んでくれることになり安心していた。

おばあちゃんは、龍也のお弁当を毎日用意してくれた。料理が一人分増えたなど、家事負担は増してしまっただろうが、孫との暮らしを楽しそうに送っていた。
そして、孫との生活を通して、おばあちゃんは段々とおじいちゃんが亡くなる以前の元気さを取り戻していった。

龍也もおばあちゃんとの生活を楽しそうに送っていた。

そんな、龍也からの電話だ。

「もしもし。龍也?」母は受話器を取り耳に当てた。

そして、数秒後母は小さな声で何か呟いた。

「どうした?龍也からか?」と父は母に尋ねた。

そうすると、母は父の方を振り返った。

振り返った母の顔は血の気が引き青白く、小刻みに唇を震わせていた。そして、今まで聞いたことがないような声で叫んだ

「お母さんが、お母さんの意識がない、呼吸をしていない」

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