要介護5の母と共に|真夜中の悲劇Part4
心配性のおばあちゃんは、いつも龍也が帰ってくるまで起きている。
そのことを知っている龍也は、なるべくおばあちゃんの負担にならないように、友達と夜遅く遊んでから家に帰るといったことは殆どしなかった。
しかし、週に2日ほど龍也は専門学校での授業を終えてからすぐに家に帰らず、そのままバイト先に向かい3~4時間仕事をしてから12時頃に家に帰る日がある。
龍也のバイトがある日は、おばあちゃんは決まって達也の帰りを待ち、孫の顔を拝んでから寝るというのが習慣だったそうだ。
ちょうど今日はそのバイトの日で、達也はいつも通り専門学校の授業を終えてから、バイト先に向かい仕事をしてから、家路に着き、ちょうど12時におばあちゃんの家の前に着いたそうだ。
しかし、この日は龍也の帰りを待つ玄関の照明やいつもおばあちゃんが待っている部屋の明かりがついていなかった。
達也は「おばあちゃん寝ちゃったのかなと?」という思いとともに、少し薄気味悪さを感じていた。というのも、ちょうど数分前に母から「おばあちゃんが電話に出ないけど、お風呂かな?」というメールを貰ったからだ。
龍也は、玄関の前に立ち、鞄から鍵を取り出して玄関扉の鍵を回した。
「・・・・・」
いつもの「カッチャッ」という鍵の開いた音が聞こえない。
「回す方向を間違えたのかな?」と思い逆の方向に鍵を回した
「カッチャッ」
今度はしっかり音が鳴った。
龍也は鍵の開く音を確認してから、玄関扉のドアノブを回したが、扉は開かない。
一瞬、龍也は「なんでだろう・・・鍵壊れちゃったのかな?」と考えた。しかし、その直後もう一つの考えが龍也の頭に浮かび全身に悪寒が走った。
龍也は「開かないでくれ」と願いながら、再び鍵を反対側に回した
「カッチャッ」
鍵の開く音が静かに鳴った。
龍也は鍵の開く音を確認してから、再度玄関扉のドアノブを回しドアを押した。
すると、玄関扉は「キィー」と静かに音を立てながら開いた。
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