顔み知りの二人の男

二人の男の表情は共に、不安と恐怖で引きつり蒼ざめていた。その表情とは裏腹に、眼だけが血走っていた。

この男達を、私は知っていた。

院内は暗かったとはいえ、見間違える訳がない、この二人は私のよく知る人物なのだから。

この絶望の表情を浮かべた二人男は、紛れもなく私の父と弟であった。私は、過ぎ行く二人に急いで声を掛けた。

「お父さん!!お母さんは大丈夫?病室はどこ?」

二人の男は、私の問いかけが聞こえたのか立ち止まり、こちらを振り返った。

やはりその男たちは、私のよく知る父と弟であったが、二人の表情は、今までに見たことがないものであった。

「明か!!お母さんは緊急手術をすることになったんや。今し方、担架に乗って運ばれていったんがお母さんや」

一瞬、私は父の言葉が読み込めなかった。だが、すぐに父の話していることが理解できた。それと同時に、全身の血の気が引き一気に恐怖に支配された。

「もしかして・・・さっき通った丸刈りで顔が腫れあがったのが・・・おかあさん?」

私の問いかけに対し、父はただ首をコクリと縦に振った。父の横に立ちすくむ龍也の目には、涙が溢れかえっていた。

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