感覚障害とは?手足のしびれ・指先の感覚がなくなる「脳の障害」
みなさん、感覚障害という言葉をご存知でしょうか?
脳梗塞や脳出血、事故などにより、半身の運動障害が発生するのと同じように、半身の感覚が麻痺したり、手足がしびれたり、触覚、痛覚、温度感覚などが鈍くなる感覚障害が現れることがあります。
とはいっても、感覚障害と言われても漠然としていてイマイチ理解に苦しむという方も多いのではないでしょうか?そこで、感覚障害とは、”どういった障害”なのか、その”発見方法”や”種類”、”介護のポイント”についてこの記事で確認していただければと思います。
感覚障害ってどんな障害?
感覚障害とは一体どういった障害なのでしょうか?
普段、私たちは、「手」「口」「耳」「目」といった全身の感覚器官から様々な刺激を得ています。例えば「温度」「におい」「見えるもの」「音」「触れた感触」といった刺激です。この感覚器官で得た刺激をもとにして、私たちは感覚として認識するのです。
しかし、この感覚器官で得た刺激が、そのままその場で感覚として認識されるというわけではありません。感覚器官で感じた刺激が末梢神経を介して、脳の中枢神経に送られ、中枢神経で刺激を感覚として認識し処理することで、初めて感覚が成り立つのです。
少し難しいですね。例えるなら、次のような流れです。
- 感覚器官は『キーボード』
- 末梢神経は『ケーブル』
- 中枢神経は『コンピュータ』
- 『感覚器官=キーボード』で、刺激を受け取る
- 『末梢神経=ケーブル』は、感覚器官から受けっとった刺激を中枢神経まで送る
- 『中枢神経=コンピューター』は、末梢神経から送られた情報を処理し、感覚として認識する
このような流れで私たちは感覚を認識するのです。
神経系 | 中枢神経 | 脳と脊髄からなる感覚器官から届いた刺激を感覚として認識したり、命令を出す神経。脳と脊髄からなる | 脳 | 感覚の知覚、判断、命令 |
---|---|---|---|---|
脊髄 | 脳と末梢神経の中継役 | |||
末梢神経 | 中枢神経から伸び体中に張り巡っている神経。感覚器官からの刺激を中枢神経に伝える神経 | 感覚神経 | 感覚器官と中枢神経の中継役 | |
運動神経 | 中枢神経からの命令を筋肉に伝える |
しかし、脳卒中などによりコンピュータである脳が破壊されることで感覚が上手く認識できなくなるのです。これにより、感覚が麻痺したり、しびれたり、触覚、痛覚、温度感覚などが鈍くなってしまうといった感覚障害が現れるのです。
脳の損傷が起きた部位に応じて現れる感覚障害が違う
感覚は「嗅覚」「聴覚」「味覚」「触覚」「視覚」といった、いわゆる「五感」に分けることが出来ます。しかしだからといって、脳卒中などの脳の障害が起こった場合「五感」すべてに障害が現れるというわけではありません。
五感を担当する脳の部位は異なる
なぜなら、脳は、全体として「五感」すべてを司っているのではなく、脳の部位ごとに「五感」を担当する機能が異なっているからです。したがって、脳のどこの部位が損傷したかに応じて感覚障害の現れ方にも違いが出ます。
それでは、脳のどの部位を損傷した場合、「五感」のうち、どの感覚障害が現れるのか見ていきましょう。
- 「視覚障害」は、後頭葉の損傷
- 「味覚・聴覚・嗅覚障害」は、側頭葉の損傷
- 「触覚」は、頭頂葉の体性感覚野の損傷
感覚障害は脳の損傷部位と逆側に起こる
通常、「感覚障害」は脳の障害が起きた部位の反対側に現れます。
脳からの指令は神経を通じて全身に伝達されます。その神経は、脳から脊髄へと通じる途中の首のあたりで交差しています。その為、損傷した脳の反対側に感覚障害が現れるのです。
- 右脳が損傷した場合、左半身の感覚障害
- 左脳が損傷した場合、右半身の感覚障害
感覚障害と運動障害との関係性
また、私たちの「感覚」を司る神経は、「運動」を司る神経とほぼ同じ経路で走行しています。その為、感覚障害が現れると同時に、麻痺や痙縮などの運動障害も現れるケースがあります。
しかし、脳出血や脳梗塞の部位によっては、運動障害による麻痺は伴わず、しびれや感覚の鈍さといった感覚障害だけが後遺症として残るケースがあります。特に視床出血では後遺症として半身の強いしびれや痛みといった視床痛という感覚障害が残るケースがあります。
感覚障害の調べ方
感覚障害は、大脳や脳神経、脊髄などにどのような障害が発生しているのか神経学的検査により調べられます。例えば、感覚障害があるかどうか調べる際には、以下のような神経学的検査が実施されます。
- 筆先の様な物で皮膚に触れる
- 暖かいものや冷たいものを触れさせる
- 眼球を見る
- 音を聞かせる
- においが分かるかどうか調べる
”触れた感触を感じるかどうか”、”冷たいもので触れるなどしても温度の変化を感じとれるか”といったことを軸に、神経学的に検査して感覚障害を発見します。
感覚障害の回復には個人差がある
感覚障害は、損傷を受けた感覚器に繰り返し刺激を与えているうちに感覚機能が刺激され回復することがあります。例えば運動機能のリハビリを続けていると麻痺が回復するにつれて、皮膚の感覚まで戻ってくるケースがあります。しかし、感覚障害からの回復には個人差が大きく回復できないケースもあります。
感覚障害の方を介護する上で気を付けること
感覚障害があると、手足にしびれを感じたり、物に触れても感覚が鈍くなったり、熱いものや冷たいものに対する反応が鈍くなります。やけどや、怪我を負っても痛みを感じにくくなります。寝たきりの状態では、血行不良による褥瘡(床ずれ)が出来ても本人では気づかないこともあります。
したがって、感覚障害を持っている方を介護する場合、周囲の介護者の方が日ごろから褥瘡やケガをしていないか身体チェックをしてあげる必要があります。
また、視野障害が起こると物が二重に見えたり、視力が低下することがあります。歩行中に障害物にぶつかったり、見えない側からくる人や車に気づかないこともありますので、介護者の方はくれぐれもご注意下さい。
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