脳梗塞の前兆TIAを見逃すな!

みなさん、脳梗塞には、その前兆(TIA)となる初期症状が現れることがあることをご存知でしょうか?

この脳梗塞の前兆(TIA)に気づけるかどうかで、あなたやご家族の今後の生活が大きく左右されると言っても過言ではありません。脳梗塞は、後遺症が残ったり、最悪生命にも関わる恐ろしい病気です。しかし、微かな異常も見逃さす早期に対処することで、大事に至らないようにすることもできます。

ですが、事前に”脳梗塞の前兆(TIA)とは、どういった症状なのか”ということを知っておかなければ対策の打ちようがないはずです。そこで、この記事では、初期の段階で脳梗塞を発見するために”脳梗塞の前兆(TIA)とは、どういった症状なのか”ということを分かりやすく解説していきます。

1.脳梗塞の前兆の発作TIAとは?

脳梗塞の前兆として、初期症状の発作が現れるケースは多く見られます。この発作のことをTIA(一過性脳虚血発作)と呼びます。

TIAでは、一時的に脳梗塞のような症状が現れ、そして24時間以内に消えてしまいます。24時間以内といっても、実際には、短い場合でほんの数分、長くて30分程度で症状が消えてしまうケースがほとんどです。しかし、この脳梗塞の前兆発作であるTIAを見逃さず適切な処置をとることが、脳梗塞で倒れる寸前の最後の予防壁となります。

TIAが起きても、何の後遺症も残らないことが多いため、治ってしまうと「気のせいだ」「疲れただけだ」とそのまま放置するケースが多いのも現状です。

しかし、実はこれが本格的な脳梗塞の前ぶれであるケースが非常に多く、なんと、TIAを起こした人の3分の1は、その後本格的な脳梗塞の発作を起こし、もう3分の1はTIAを繰り返すという報告もあります。医学的にも、一度TIAを起こすと1週間から1ヶ月以内に、本格的な脳梗塞の発作を起こす危険性が高まることが確認されています。最近の研究では、特に24時間以内に本格的な脳梗塞の発症が起こるケースが多いことが明らかになっています。

したがって、TIAを「脳梗塞の危険が迫っていることを告げる警笛」として真摯に受け止めましょう。

2.こんな症状が見られたら、脳梗塞のTIAの可能性

脳梗塞の前兆症状であるTIAが起きると、次のような症状が現れます。

運動障害

身体の左右どちらかが急に力が入らなくなったり、動かせなくなります。運動障害は、TIAで最もよく見られる症状です。例えば、食事中に急に茶碗や箸をポロリと落として気づくケースもあります。前頭葉付近に脳梗塞が出来ている可能性があります。

感覚障害

身体の左右どちらかがしびれたり、力が入らなくなったり、感覚が鈍くなったりします。同じ側の手や口のまわりがビリビリとしたような感覚になることもあります。頭頂葉付近に脳梗塞が出来ている可能性があります。

言語障害

舌がもつれて呂律ろれつが回らなくなったり、上手く喋れなかったり、言葉がスムーズに出てこない等の症状が見られます。自分の話している内容や、相手の話している内容が分からならなくなるケースもあります。前頭葉付近に脳梗塞が出来ている可能性があります。

バランス感覚障害

身体のバランスが悪くなってふらついたり、足元がもつれたりして、上手く歩けなくなります。ぐるぐると回転するようなめまいを感じたり、床がぐらぐら揺れるように感じることもあります。

視覚障害

物が2重に見えたり、両目ともに視野の片側半分の一部や全体が見えなくなったりします。後頭葉付近に脳梗塞が出来ている可能性があります。

3.脳梗塞の初期症状!脳血管が一時的に詰まるメカニズム

TIAが起こる仕組み

TIAが起きる仕組みを確認していきましょう。

脳梗塞には、太い脳血管の動脈硬化が原因となるアテローム血栓性脳梗塞、脳の細い血管に生じるラクナ梗塞、心臓病が原因となって起きる心原性脳塞栓症などの種類があります。この中でも、発作の前触れとしてTIAが頻繁に起こるのが、アテローム血栓性脳梗塞です。

脳に血液を送っている動脈には、内頚動脈ないけいどうみゃく椎骨動脈ついこつどうみゃくがありますが、これらの動脈が硬化するとTIAが起きやすくなります。特に多いのは、内頚動脈の動脈硬化によるTIAです。

頸動脈というのは、首の左右にある動脈のことです。頸動脈にアテロームという塊が出来ると、次第に血管の内径が狭くなり血液の流れが悪くなり、動脈硬化を起こします。そして、何らかの原因で、このアテロームを覆う膜がはがれることがあります。すると補修の為に血小板が集まってきて血栓(血の塊)を作ります。この血栓が血流に乗って脳に運ばれ、脳の血管を詰まらせてしまうのです。

その結果、血流が途絶えることで、脳梗塞の前兆症状であるTIAが現れてきます。

TIAが収まる秘密

ところで、「なぜ血栓が詰まった動脈は数分から数十分で開通し元の状態に戻ってしまうのでしょうか?」

それは、血小板で作られた血栓は、溶けやすい性質をもっている為です。また、出来たての血栓はもろく直ぐに溶けてしまうことも理由の1つです。詰まっていた血栓が短時間で溶けて無くなれば、すぐに血流は回復し何事もなかったかのようにTIAの症状も消えてしまいます。

4.脳梗塞の前兆が消えたからといって放置せずに、必ず専門医に受診しよう

TIAの発作はやがてすぐに失くなります。しかし、恐ろしいのは症状が消えても、脳の中で何にかが起きている可能性を否定できないという点です。かなり大きな脳梗塞が起きていても、脳の大事な場所からわずかにズレていると、一時的な症状しか現れない場合もありますし、小さな脳梗塞が複数個所できている場合もあります。

したがって、TIAの症状があり、脳梗塞の前兆を感じ取ったなら、できる限り早く脳の専門医に診てもらうことが何よりも大切です。脳梗塞になってしまうと片麻痺などの後遺症が出ます。そうなると、つらいリハビリ生活が待っています。また、片麻痺が残り、半身不随や寝たきりになってしまったり、最悪亡くなってしまうケースも少なくありません。

TIAの症状が消えたからといって、決してそのまま放置しないでください。

5.TIAの治療は薬物療法が中心

検査の結果、TIAであることが分かれば、早急に治療を行わなければなりません。短時間の内に本格的な脳梗塞の発作を起こす危険性があるからです。

治療は薬物療法が主体となります。血栓を作る主体となる血小板の働きを抑えるために、アスピリンなどの抗血小板薬が用いられます。頸動脈の動脈硬化が進行している場合は、血管のアテロームや血栓を取り除く手術や血管を広げるステントという綱目状の筒を挿入することがあります。

まとめ:脳梗塞の前兆であるTIAを知り、すぐに病院に行こう

TIAの症状が見られたら、すぐに病院へと直行してください。あなたの想像以上に脳梗塞で倒れてしまった後のリハビリや後遺症はつらいものです。あなたやあなたの家族の為にも、脳梗塞の前兆であるTIAを「神様の最後のお告げ」というくらいの気持ちで深刻に受け止め、適切な対応を心掛けることが大切です。

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