認知症の予防・改善法

認知症は、脳の委縮と脳神経細胞の死滅などの病変が原因で発症します。

しかし、なぜか認知症の病変があっても、病気を発症しない人達がいます。それは一体どういうことなのでしょうか?この謎にはきっと、認知症を予防・改善するためのヒントが隠されているはずです!!

認知症の中で、最も多いのがアルツハイマー型認知症です。なんと65歳以上の1~3%が発症していると言われています。アルツハイマー病の人の脳内には、「老人斑」という脳の萎縮原因である病変が確認できます。この「老人斑」の出現から、20~30年という長い年月をかけて病気を発症するのです。

しかし、必ずしも「脳の病変の多さ」と「認知症の発病や症状の酷さ」がイコールというわけではありません。なんと、多くの病変があるにも関わらず、発病しない人や症状の進行が遅い人がいます。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか?その謎を解き明かすヒントを「認知症に打ち勝った3人の女性」から学んでいきたいと思います。

1.認知症に勝った3人の女性

きんさんぎんさんのケース

記録的ご長寿で人気を博した双子の姉妹「きんさんぎんさん」を覚えているでしょうか?

実は、姉のきんさんはメディアに取り上げられるまで「1から10まで数えることができない」ほどの認知症を患っていただけでなく、歩くこともできなかったそうです。しかし、メディアに取り上げられるようになってからは、症状が改善し、歩行も出来るようになりました。

また、妹のぎんさんが108歳で亡くなった際の病理解剖で、驚くべき事実が発見されました。なんと、ぎんさんの脳には、アルツハイマ―型認知症の病変が多く確認できたのです。 105歳の時にぎんさんは認知症を発症しましたが、症状はほとんど見られなかったそうです。

修道女シスター・メアリーのケース

認知症予防でよく引用される例に、米ミネソタ大学の予防医学研究グループが678名の修道女に対し実施した「ナン・スタディー(修道女研究)」という研究がございます。この研究は、修道女一人ひとりの「脳の状態」とその人の「人生」や「運動能力」、「認知能力」との関係性を、様々な角度から調査・分析した大変大掛かりなプロジェクトでした。

修道女の中の1人にシスター・メアリーという女性がいました。メアリーは、101歳で亡くなる直前まで知能テストで高得点を獲得し続け、修道院での生活・日課や他人とのコミュニケーションも問題がなかったそうです。また、正常な「運動能力」や「認知能力」を保っており、認知症の症状はなかったそうです。

しかし、彼女の死後の病理解剖では、他の人よりも脳の委縮が非常にすすんでおり、老人斑も多く存在しアルツハイマー病の病変が多数存在していたことは疑いようもなかったそうです。

2.規則正しい生活を送ることが最大の予防・改善法

しかし、なぜ3人の女性には認知症の病変が存在していたのにもかかわらず、発病しなかったり、症状が改善したりしたのでしょうか?まずは、その謎を紐解くために、彼女たちの人生を振り返っていきましょう。

食事で予防改善

彼女たち3人の共通点として、規則正しい食習慣が挙げられます。きっと彼女達が食べていた物に病気を予防・改善させるヒントが隠されているはずです。

1.認知症予防には、お魚と緑茶

ぎんさんは、脳の神経細胞を維持する成分DHAや血液をサラサラにする成分EPAを多く含む「魚(特に青魚)」をほぼ毎日食べていました。また、抗酸化作用のあるカテキンを多く含む「緑茶」を毎日5杯以上飲んでいたそうです。

オランダの調査では、魚を食べる人は、食べない人に比べて認知症の発症率が3倍も低いという結果が出ています。また、「緑茶」を週に1~6回飲む人は認知機能が低下するリスクが約2分の1に減少するという研究報告もあります。

どちらも、近年のアルツハイマー病の予防研究の分野で注目されている食べ物です。また、「魚」と「緑茶」は、動脈硬化や血栓を予防する働きもあり、脳血管性認知症の予防にも効果があります。

2.バランスの良い食事が認知症を防ぐ

そして、夕食時にはいつもぎんさんは家族全員と一緒でした。大人数で食卓を囲むことで、自然と様々な食材を使うようになり、バランスの良い食生活に繋がったようです。

実は、認知症の症状が進行している人は痩せている人が多い傾向があります。痩せている人は、朝昼晩まとめた食事や偏食により栄養バランスが悪い傾向があることが原因だと考えられています。

しかし、炭水化物やお肉などの血糖値を高める食べ物を多く摂り過ぎると、食生活が乱れている人が発症しやすい2型糖尿病になってしまいます。2型糖尿病を発症している人は脳の縮小が見られ記憶力が減少してしまったり、脳血管障害のリスクが高まります。

したがって、病気を予防改善するには、悪までもバランスの良い食事を摂る必要なのです。

このような食習慣を続けてきたぎんさんの脳には、脳梗塞などの跡がなく、動脈も若々しく驚くほどきれいだったそうです。下のリンクで詳しく予防・改善効果がある食べ物について説明しております。

食習慣の改善で認知症予防!効果的な食べ物を大公開

運動で予防・改善

認知症の予防・改善には適度な運動が効果的です。

きんさんは90代後半から下半身を中心とした筋力トレーニングに取り組み歩けるようになっただけでなく、認知症の症状も劇的に改善されました。また、妹のぎんさんの毎日の日課は30分以上の散歩でした。

姉妹のように高齢でも、運動(特に早歩きなどの有酸素運動)を継続的に行うことで脳の記憶領域(海馬)が拡げ、認知症を予防・改善させる効果あることが分かっています。また、ウォーキングや筋トレといった運動は、血行を改善し脳への血流を増加させ脳を活性化させる効果もあります。

認知症予防としては、ウォーキングやラジオ体操などが最適です。歩けるのなら2日に1回30分か、毎日10分×3回程度の散歩をおススメします。また、運動中に簡単な計算をすると予防・改善効果がUPします。

メアリーは、これといって運動はしていませんでした。しかし、修道女としての毎日の日課だけでなく奉仕・福祉活動などにも熱心に取り組んでいました。

アメリカの研究では、メアリーのように運動ではなく、料理や掃除といった家事などで日常的に良く動くことだけでも、アルツハイマー病を発症するリスクが低下することが分かっています。

したがって、必ずしも激しい運動が良いのではなく、中程度のその人にあった適度な運動を習慣付けることが認知症を予防・改善させるには大切なのです。

簡単にできる認知症予防の体操

質の良い睡眠で予防・改善

睡眠も認知症の予防・改善に不可欠な要素です。

食事や運動をすることも認知症を予防・改善させる為には必要なことです。しかし、それらの活動を体調不良を起こさすに行うには睡眠をしっかりとることが必要です。また、それだけでなく睡眠不足などの生活リズムの乱れは記憶力の低下を引き起こす原因にもなります。

睡眠時間が極端に多い人や少ない人は高齢になった時に記憶障害が生じやすいことが多くの研究からも分かっております。

特に、認知症の人は、睡眠や便秘などで「生活のリズム」が乱れると症状が悪化することがありますのでご注意下さい。

便秘の予防法と改善のポイント

3.頭を使うことで病気を予防・改善できる?

知的活動

本や勉強などの知的活動を行うと脳の神経細胞が増加します。

メアリーは19歳から84歳まで現役の数学教師でした。また引退後も修道院で福祉活動に熱心でした。 つまり、彼女の人生は、絶えず活発な知的活動を続けていたことが分かります。

生涯を通じて読書や書き物などの知的活動を続けてきた人は、そうでない人と比べて15%も記憶力の衰えが遅いことが分かっています。

脳には、「代償機能」というものがあります。「代償機能」とは、脳の一部にダメージを受けても、他の脳の部位がダメージを受けた部分の代わりを担う機能です。ダメージを受けた神経細胞とそれを補う「代償機能」が働く神経細胞の数のバランスが維持できている間は認知症を発症しないと考えられています。

その為にはメアリーのように、若いころから知的活動を続け、脳の神経細胞の数を増やしておくことが大切です。しかし、「若いうちから知的活動をしておかないと認知症の予防・改善には役立たないのでは?」とお思いの方も多いと思います。でも諦めないでください。

脳の記憶や認知機能にかかわる海馬の一部は、大人になってからでも頭を使うことで増えることが確認されています。

学習療法のやり方

社会活動やコミュニケーション

きんさんはマスコミに取り上げられる前は、「1から10まで数えられない」ほどの症状が見られました。しかし、取材などを受けている内に、リポーターの質問にハキハキと答えたり、ドラマのセリフを覚えるまでに認知症の症状が改善していきました。

古い記憶を海馬から引き出したり、新しいことを記憶したりする役割を持つのが前頭葉(脳のオデコ部分)です。前頭葉には「コミュニケーションをとる」という働きもあります。

誰かと話をしたり、一緒に音楽を楽しんだりすることで前頭葉が活性化することが分かっています。しかも、大人になってからでも新しい経験や刺激により脳が活性化することで、認知症の予防・改善の可能性が高まることが研究からも分かっています。

この事実は、知的活動だけではなく人とのコミュニケーションや社会活動によって病気が予防・改善できることを示しています。逆に、会社を定年後、いきなり認知症の症状が出てくるのもこの為です。つまり、友達と一緒に何かを作ったり、楽しい時間を過ごすなどして誰かとコミュニケーションや社会活動に積極的にすることは、認知症予防には必要不可欠なのです。

4.認知症を予防・改善させる環境づくり

お年寄りは周囲と行動のペースが違ったり、話題が合わなかったりして孤立しがちです。放っておくと、部屋を出るのが面倒になったりし、ますます孤立してしまいます。刺激が少なくなり認知症の危険度が高まります。

認知症になりやすい生活環境は危険度別に下の表のようになります。

危険度 生活環境 認知症予防のポイント
低い 外出先での交流 デイケアなどで人と溶け込めないタイプも多い。趣味などを通して交流を図れれば、孤独感が払拭する。
家に引きこもりがち お年寄りは人との交流が面倒になり家に引きこもりがちです。車いすでも積極的に外出して人との交流を持つことが大切。
部屋に引きこもりがち 食事など部屋でとるようになると孤立しやすい。食事はできるだけ家族と一緒に楽しく食べる。
高い 寝たきり 人との接触が出来なくなるため、認知症に陥りやすい。寝たきりにならない為の健康管理や事故防止の徹底。

認知症のタイプによっては予防・改善させることが難しいケースもありますが、進行を最大限食い止めることはできます。その為には、「お年寄りを孤立させない」「自分がまだ周囲に役立つ人間であることを自覚させる」ことが重要です。次の表を参考にして病気を予防・改善させる環境を整えて下さい。

平等に接する できるだけみんなと同様に接しましょう。年寄り扱いは孤独感を助長してしまいます。
仕事分担をする 「誰かのために役立っている」という自覚は生きがいにもなり、本人の存在感を高めます。
家族以外の人との交流 家族うちだけの交流ではなく、近所の友達との交流やデイケアなどでの趣味を通した交流を進めます。
アイデンティティ 認知症が見られると、自分という存在への認識が希薄になることがあり、それが孤独感を深めます。長く使っている道具や興味のある物を周りにおいて自分の存在をいつも認識できるようにしましょう。
眼鏡・補聴器 眼鏡や補聴器が合わないと、コミュニケーションがとりにくくなり、孤立感を感じやすくなります。
バリアフリー化 転倒によって骨折すると行動範囲を狭めてしまうので、段差などにスロープをつけるなどの住いの安全対策も忘れないようにしましょう。