メマリーとは?薬の効果と副作用が分かる

メマリー(一般名:メマンチン塩酸塩)という薬を知っていますか?

メマリーは認知症の治療で使われる薬の1つです。メマリーは、アリセプトやレミニールといった他の認知症の薬とはまったく異なる発想から開発された薬です。

メマリーは、ドイツで開発・誕生した薬です。その後2002年にヨーロッパ、2003年にアメリカ合衆国で承認され、ようやく2011年に日本でも認可されるに至りました(日本では、第一三共株式会社が販売しています)。

日本でメマリーが使用されるようになってから数年しか経過していません。その為、ネットや本を見てもメマリーに関する情報は、まだまだ少ないのが現状です。その為、メマリーを服用している人の中には、ただ医師に勧められるがまま、その効果や副作用を知らずに飲んでいる方も多いのではないでしょうか?

しかし、それではいけません。当然、メマリーも薬の1種ですので、服用方法や副作用に注意すべきことがあります。本人や介護者も「メマリー」という認知症の治療薬についての最低限の知識は頭に入れておくべきです。

ここでは、「メマリーの作用メカニズム」や「メマリーの効果や副作用」について分かりやすく解説していきますので、是非参考にしてみて下さい。

「メマリー」は製品名です。一般名は「メマンチン塩酸塩」と言います。ここからは、「メマリー」で統一します。

メマリーの作用と認知症への効果

アルツハイマー型認知症の治療で使用される薬には、メマリー以外にもアリセプトやレミニール、イクセロンパッチといった薬があります。しかし、メマリーは数ある認知症薬の中でも、唯一他の薬剤とは違う作用メカニズム(作用機序)を持つ薬です。それでは、メマリーが身体の中でどのように作用するのかそのメカニズムを探っていきましょう。

作用メカニズムが他とは一味違う

メマリー以外のアリセプトやレミニールといった薬は、病気により減少した「アセチルコリン」という脳内神経伝達物質の分解を防ぐことで、認知症の症状を和らげる治療薬です。

しかし、メマリーはそれらの薬とは全く違う作用メカニズムを持っています。メマリーがどういった作用機序を持っているのか少し難しい説明になりますが、せっかくなのでチェックしていきましょう。

なお、アリセプトやレミニールの作用メカニズムや効果、副作用についてはそれぞれ下のリンクを参考にして下さい。

アリセプトの作用機序と効果、副作用レミニールの作用機序と効果、副作用

グルタミン酸を阻害し、認知機能の低下を防ぐ効果がある

アルツハイマー病の原因にはいくつか仮説がありますが、その中の1つ「グルタミン酸仮説」は、メマリーと関係が深い説です。それでは、「グルタミン酸仮説」とは、どのような説なのか確認していきましょう。

グルタミン酸仮説

アルツハイマー型認知症の特徴的な症状は、もの忘れなどの記憶障害です。私たちの記憶や学習などの情報は、グルタミン酸やアセチルコリンといった物質を神経細胞と神経細胞の間でやり取りしています。神経細胞の中でも、NMDA受容体という細胞がグルタミン酸をキャッチする役割を担っています。

健康な人の場合、これらの機能がスムーズに活動し、記憶や学習といった活動には問題は生じません。

しかし、アルツハイマー型認知症の人の脳では、病変により神経に異常が生じ、グルタミン酸が過剰に放出されます。それに伴い、NMDA受容体が必要以上に活性化してしまいます。すると、カルシウムイオンが過剰に流入し、脳内の神経細胞がダメージを受け「シナプティックノイズ」という電気ノイズが発生します。

本来伝達したかった情報に、無駄なノイズが混ざってしまうので、上手く情報が伝わらなくなり記憶障害などの認知症の症状が現れるという説が「グルタミン酸仮説」です。

難しい話になりましたが、お解りいただけたでしょうか?それでは、このグルタミン酸仮説とメマリーの作用メカニズムがどう関係するのか簡単に確認していきましょう。

メマリーの効果

グルタミン酸仮説では、アルツハイマー型認知症により過剰に放出されるグルタミン酸が悪さをしている犯人だと考えられています。

メマリーには、NMDA受容体へのグルタミン酸の働きを邪魔し、神経細胞を保護する作用効果があります。メマリーの作用により、NMDA受容体がグルタミン酸から保護されるのですから、受容体が過剰に活性化することも無くなります。それと同時に、シナプッティックノイズも発生しなくなり記憶障害などの認知症の症状も改善するというわけです。

しかし、ここで「少しおかしいな?」と思う人も少なくないはずです。「メマリーがNMDA受容体に蓋をしてしまったら、記憶や学習にかかわる情報まで渡されないのでは?」とお考えだと思います。

しかし、それは心配ありません。

なぜなら、メマリーには「膜電位依存性」といって、記憶や学習に関わる情報が送られて来れば直ぐにNMDA受容体から離れて、情報信号だけを適切に取り込むことが出来るからです。メマリーのこうした働きにより、グルタミン酸だけをカットして必要な記憶や学習に関する情報だけを伝達するのです。

唯一、他の認知症薬との併用が可能な薬

ただ、メマリーは、アルツハイマー型認知症の進行を遅らせることを目的とした薬であり、アルツハイマー病そのものを根本的にやっつける治療薬ではないことを心得て置いて下さい。とはいえ、メマリーは、アリセプトやレミニールなどの他の認知症薬とは違う作用メカニズムを持っているので、認知症治療の選択肢が以前より広がったと言えます。

例えば、アリセプトの効き目が芳しくない場合には、メマリーに切り替えたり、メマリーを追加投与しアリセプトと併用したりすることが可能なのです。

既に海外では、メマリーと他の薬を併用した治療が多く実施されています。

アメリカの実験では、ドネペジル塩酸(=アリセプト)を飲んでいる中等度以上のアルツハイマー型認知症の患者にメマリーを追加投与したところ、記憶障害や実行機能性障害といった認知症の中核症状に改善効果が認められました。また、「興奮・攻撃性」「食行動異常」といった周辺症状において改善効果が見られました。

この結果によると、メマリーとアリセプトやレミニールといったアセチルコリンエステラーゼ阻害薬との併用には一定の効果が期待できると言えるでしょう。

メマリーの服用・使用方法

メマリーは、重度のアルツハイマー型認知症患者においても、改善効果が期待できる薬です。しかし、使用の際に注意してほしい点が1点あります。

メマリーを処方・服用していいのは中等度~重度のアルツハイマー病の患者に限られているという点です。したがって、軽度のアルツハイマー病の患者は、適用外です。

メマリーの服用は1日一回5㎎から開始し、その後1週間に5㎎ずつ追加投与し、最終的には維持量の20㎎まで増量します。ただし、腎排泄型の薬なので高度腎機能障害のある人の維持量は10㎎ぐらいにとどめておきましょう。

メマリーの副作用

メマリーは「アリセプトやレミニールと併用できる」「重度のアルツハイマー病の方でも治療効果が期待できる」といったメリットがある薬です。

しかし、ちょっと待ってください!重度のアルツハイマー病の方でも治療効果が期待できるということは、逆に作用が強く副作用が現れやすい薬でもあるということです。

メマリーの副作用としては、めまい、便秘、体重減少、頭痛、血圧上昇、転倒が現れることがあり、また、稀に(1%未満)、幻覚や妄想、痙攣、傾眠、不眠、徘徊、尿失禁、嘔吐、下痢、貧血、倦怠感といった症状が現れることがあります。

アリセプトほどの興奮作用はないが、メマリーには以下のような特徴があります。

  • 幻覚や妄想が副作用として現れる
  • 副作用の現れ方が複雑かつ強い

メマリーは、アリセプトやレミニールといった他の認知症治療薬よりも副作用が強いので、一般的には第一選択薬としては使用されません。まずは、アリセプトやレミニールを服用して様子を見ることが多いです。

副作用①|めまい

メマリーの副作用として、最も多いのがめまいで約5%の人で確認できました。めまいを起こし転倒して骨折などのケガをすることも考えられます。高齢者のケガは治りにくくそのまま寝たきりになってしまうこともありますので、介護者は十分に注意しましょう。

副作用②|幻覚や妄想

本来、メマリーには暴力や暴言、興奮などを改善する効果がある薬です。しかし、メマリーの作用によってドーパミンとグルタミン酸の脳内バランスが崩れると興奮や覚醒を起こすことがあります。幻覚や妄想が現れることもあるので注意が必要です。

副作用③|便秘

メマリーの副作用として便秘症状が約3%存在します。認知症の方は、「いつ排便があったか」覚えていない方も多いです。便秘が続くと腸閉塞を起こすこともあります。したがって、メマリーを服用する場合は、介護者が排便管理をしっかりと行うことが大切です。また、下痢などの軟便が副作用として現れるアリセプトとメマリーを併用することでバランスが取れ便秘が解消することがあります。

もし、メマリーを服用中に、重大な副作用が現れた場合は、直ぐに医師に相談しましょう。

<参考資料>

医薬品情報 第一三共 「Medical Library」

薬の飲み忘れ・飲み過ぎを防止せよ『認知症や高齢者必見』【正しい薬の飲み方】食前・食後・食間の違い&服薬管理法