太陽の光

opeway

薄緑のスクラブを着た男は、キャップを脱ぎ自分が母の手術を担当した主治医だと名乗った。男、いや先生が着ている衣服の首元は水分で濃く変色し、額にはおびただしい程の汗の玉が浮かび上がっており、それら全てが6時間にも及ぶ大手術を物語っていた。

「恵理子は大丈夫ですか?手術はどうだったんでしょうか?」父は恐る恐る先生に尋ねた。

「手術は成功です。何とか恵理子さんの一命は取り留めました。今はICUで治療を受けています、もう少ししたら顔を見に行ってあげて下さい。」先生は右手で額の汗を拭いながら、笑みを浮かべてこう言った。

その瞬間、私は頭から足先まで全身のあらゆる部位を覆いつくしていた緊張と不安がスーっと取れ、代わりに溢れんばかりの喜びが体の奥底から込み上げてくるのを感じた。

私は満面の笑みで先生に尋ねた。「じゃあ、先生!!元の状態にまで回復するんですね」

先生は一瞬困惑した表情を浮かべたものの「今は、何とも言えないね。術後の様態もまだ安定してないから、取りあえずお母さんの意識が回復しないことには・・・・ICUで面会してもらった後に、今後のこと詳しく説明するね」と再び笑みを浮かべながら語りかけた。そして、父の方を向き準備が整い次第呼びに来るという旨を言い残し待合室を後にした。

私達は先生の後ろ姿に礼を言い、手術の成功にただただ歓喜するとともに、各々が元の元気な母との再会に思いを馳せた。

いつしか外は美しく輝く太陽の光で包まれていた。

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