要介護5の母と共に|真夜中の悲劇Part6

「窓が開いている・・・誰かが入ったのか?」 

「しかも、おばあちゃんが倒れている、どうなっているんだ。何とかしなければ・・・」

おばあちゃんは息がないばかりか、心臓も動いてはおらず身体は凍てつく氷のように冷たかった。 一方、龍也の呼吸は速く乱れており、心臓の鼓動はおばあちゃんのそれとは逆だった。しかし、龍也の身体もおばあちゃんと同じく冷たく小刻みに震えていた。

龍也は、今までの人生で感じたことのない恐怖を感じていた。その場にたった1人でいることが怖く、何とかしてこの場から逃げ出したかった。しかし、そういう訳にはいかないことは十二分に分かっていた。なんとか自分を奮い立たせ、急いで携帯電話を手に取った。

「この恐怖から直ぐにでもどうにかして逃れたい」 「まだ、おばあちゃんは助かるかもしれない」という入り乱れる2つの強い思いを胸に抱きながら、慎重にかつ素早く119と携帯のボタンを押した。

「・・・・」

「トゥルルルルル・・・・トゥルルルルル・・ガチャ・・119番消防本部です火事ですか?救急ですか?」

「救急をお願いします。」

「場所はどこですか?」

「枚方市○○町27-21の○○です。」

「どうされましたか?」

「おばあちゃんが倒れています。呼吸はありません。」

「あなたの名前と今かけている携帯電話の番号を教えてください」

「藤木龍也です。電話番号は090-○○23-59-○○です」

「わかりました。救急車が出動しますのでお待ちください」

電話を切るころには、龍也の心臓の鼓動は正常に戻り、身体の震えは既になくなっていた。何とか救急車を呼べた。次は実家に電話してお母さんに来てもらわないと・・・龍也は、再び携帯電話のボタンを押し、電話したのである

母は唇を震わせながら、私たち二人に龍也との電話の内容を話してくれた。

「早く支度をして、大阪に向かおう」父はやさしく母の肩に手をやりながらこう言った。

「そうね。龍也も1人怖いだろうし」と母は小さな声を振り絞り立ち上がった。

そして、私たちは父の言葉に従い急いで荷支度を始めた。着替えや財布といった貴重品をバッグに詰め込み、最悪の場合も想定して礼服やスーツをバッグに入れておいた。

バッグを車のトランクに乗せ、母の運転で我が家を後にした。

この時は思いもしなかったあんなことになるなんて・・・

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