パーキンソン病のリハビリ治療は体操と歩行の2本柱
日々、世界中でパーキンソン病についての治療研究が実施されています。
しかし、今の医学では、パーキンソン病を完全に治したり進行を食い止めたりすることが出来ないのが現状です。したがって、「いかに病気の進行を遅らせ、症状を和らげるか」がパーキンソン病治療の鍵となります。
パーキンソン病の治療は、薬物治療と非薬物治療の2本柱で進められます。
ここでは、運動や体操、リハビリといった非薬物治療の視点から、パーキンソン病の治療法について解説していきたいと思います。
パーキンソン病の治療にはリハビリが欠かせない理由
パーキンソン病は、「筋固縮」「振戦」「寡動」「姿勢反射障害」といった4大運動症状が特徴の病気です。
その為、パーキンソン病の患者さんは、運動やリハビリを敬遠しがちになってしまいます。しかし、それではいけません!なぜなら、元々の運動症状に加えて運動不足による筋力低下が重なることで、加速度的に運動機能の障害が進行してしまうからです。例えば、運動不足により次のような負のスパイラルに陥いることがあります。
- 歩けるにも関わらず、パーキンソン病の歩行障害から出歩くのが怖くて家に閉じこもってしまう。
- 当然、こうした生活は運動不足を招き、筋力が低下していきます。
- すると、運動だけでなく家事もしなくなり、一日の大半をベッドで過ごすようになります。
- こうした生活を続けていると、廃用症候群を招き、終いには本当に歩けなくなってしまう
そこで、パーキンソン病の治療として重要になのがリハビリテーションなのです。
パーキンソン病のリハビリは早期に始め、継続することが大切
パーキンソン病のリハビリは、できる限り早い段階で始めかつ毎日継続することが理想です。なぜなら、早期に継続的にリハビリを実施することで、体力や心肺機能の維持向上だけでなく、筋肉の固縮を改善したり、腕や足などの筋力、関節の可動域を保つことが出来る為です。
しかし、そうは言っても「パーキンソン病のリハビリはどう取り組めば良いの?」「リハビリ病院や訪問リハビリなどを利用しなくてはいけないの?」といった疑問があると思います。
こうした疑問をお持ちの方に対して、パーキンソン病のリハビリ治療の方法をご紹介しております。是非、日常的に身体を動かす習慣をつけパーキンソン病の治療に努めましょう。
パーキンソン病のリハビリ治療のススメ
これから、ご紹介するパーキンソン病のリハビリは、自宅でも気軽に取り組める「パーキンソン病のリハビリ体操」です。リハビリ体操は、身体がスムーズに動くようになったり、姿勢がよくなったり、転倒しにくくなったりとパーキンソン病の治療にうってつけです。
自宅で出来る『パーキンソン病のリハビリ体操』のポイント
まず、パーキンソン病のリハビリ体操に取り組むにあたり、以下のポイントを押さえておくことでより効果が高まります。
- どこを鍛えているのか意識しながら「ゆっくり」「大きく」動く。
- パーキンソン病では、腕を曲げる力よりも伸ばす力の方が弱くなります。したがって、伸ばす(伸展)を意識する。
- 回数にはこだわらず、少しずつでも良いので毎日継続する。
- 動作に不安がある場合は、人や鏡でチェックする。
パーキンソン体操のやり方
それでは、実際に身体のパーツ別に、パーキンソン病のリハビリ体操のやり方を説明していきます。
1.口周りのリハビリ体操
口周りの筋肉を体操することは、嚥下機能を維持し誤嚥予防に役立ちます。
- アイウエオと大きな声でハッキリと発声しましょう。
- 「口を大きく開けて、ゆっくり閉じる」を繰り返しましょう。
- 「頬に息を溜めてふくらませる」を繰り返しましょう。
- 口を閉じた状態で、舌を口の中で回しましょう。時計回り反時計回りそれぞれ10回づつ2秒で1周のペースでゆっくりと回しましょう。
- 口を開けた状態で、舌左右に振りましょう。左右それぞれ10回づつ2秒で1周のペースでゆっくりと行いましょう。
2.首のリハビリ体操
- 頭を左右に振りましょう。
- 頭を左右に倒しましょう。
3.肩と腕のリハビリ体操
- グーパー体操です。「両腕を肩の高さまで上げて真っ直ぐに伸ばし、手を握る開く動作」を繰り返しましょう。
- キラキラ体操です。「手を顔の高さにあげます。そして、人に指輪を見せるように手の甲を前に向け、次に掌を前に向ける動作」を繰り返しましょう。
- お祈りの時のように両手の掌を合わせて、手首から左右に倒しましょう。
- 両手を交差させた状態で腕を上下に動かしましょう。
4.足腰のリハビリ体操
- 手を振り「1・2・1・2」と声を出しながら足踏みしましょう。
- 仰向けに寝転び、両足を持ち上げて自転車をこぐように回しましょう。
- 仰向けになり、両足を曲げ、臀部を持ち上げましょう。
5.背筋を伸ばし姿勢を整えるリハビリ体操
- 壁に向かって立ち、両手を上げた状態で壁について背筋を伸ばしましょう。
- 立った姿勢のまま、上半身をゆっくりと倒して行きましょう。
パーキンソン病のリハビリ体操は、日々継続が一番ですのであせらずにじっくり取り組みましょう。
『歩く』ことも大切なパーキンソン病のリハビリ
パーキンソン病では、次のような歩行障害がよく現れます。
- すくみ足
- 最初の一歩が踏み出せない
- 小刻み歩行
- チョコチョコと小刻みに歩く
運動症状にこうした歩行障害が加わることで、転倒をより招きやすくなってしまいます。したがって、パーキンソン病のリハビリ治療にとって歩くことはとても重要です。
なるべく、普段からウォーキングや歩き癖をつけて、足の筋肉を低下させないようにすることが大切です。しかし、どのくらい歩けば良いのでしょうか?また、病気の進行や老化で歩く距離が変わってくるのでは?と思っている人も多いと思います。
パーキンソン病の方が1日に歩きたい距離と時間
ここでは、パーキンソン病の重症度を5段階に分けるヤールの重症度分類をもとに、パーキンソン病の方が1日に歩くべき距離の目安をご紹介します。この距離はあくまでも目安ですので、各人の状態と相談して無理なく継続的に取り組んでいただければと思います。
Ⅰ~Ⅱ度 | 一日30分程度のウォーキングを週3回 |
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Ⅲ度 | 毎日100M以上の歩行 |
Ⅳ度 | 毎日50M以上の歩行 |
Ⅴ度 | 取り敢えず歩くことが大切、歩行が出来ない場合は日中座っている時間を増やし、寝たきりにならないようにする |
歩く時は、背筋を伸ばし胸を張ることを意識しながら歩きましょう。歩くことが難しい場合は、介護者に付き添いを頼む、杖や歩行器などを使うなどして、転倒を防ぎましょう。
家事などで日常的に身体を動かすこともリハビリ
パーキンソン症状に対して、体操やリハビリは必要ですが、「無理やりやらされている」という気持ちでは持続させることが難しくおざなりになってしまいます。日常生活の中でも、運動を取り入れることを考慮しましょう。
例えば、お庭の庭いじりや、部屋の掃除、お風呂洗いといった何気ないことでも良いので出来る限り自分から積極的に身体を動かしましょう。
マッサージや鍼も、パーキンソン症状を間接的に予防する良い方法です。筋肉の固縮をやわらげたり、精神面で安心感が得られたりといった効果があると思われます。自宅で暮らしている場合には、医療保険による訪問マッサージや訪問リハビリを利用するのも1つの方法です。
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