脳出血ってどんな病気?原因・症状を大解剖
みなさんは脳出血に対して、次のような疑問をお持ちではないでしょうか。
脳出血ってどんな病気?何が原因で発症するの?被殻出血ってどこ?どのような症状が出るの?難しい医学用語で説明されても、今ひとつ頭に入って来ないと思います。この記事では、みなさんの脳出血に関する疑問や悩みを解決していきたいと思います。
脳出血は生死にかかわる病気です。たとえ、一命は取り留めたとしても、重度の後遺症が残ってしまうことも少なくありません。後遺症は、あなたの生活を一気に一変させます。
- 仕事をやめざるおえない
- 手足が不自由になり、今まで出来ていたことが出来なくなる
- 寝たきりになり介護が必要になる
脳出血の後遺症は、本人はもとより家族にとっても、つらく苦しいものです。ですので、皆様にはここで、脳出血の原因や症状を確認していただき、介護予防に努めて頂ければと思います。
1.脳出血とはこんな病気
まず、脳出血の定義について確認してまいりましょう。
脳出血とは、脳内の細い動脈(血管)が切れることによって発生する出血のことです。”脳内出血”とも呼ばれます。また、出血した血液は脳内にかたまり(血腫)を作ることから”脳内血腫”とも呼ばれます。
2.脳出血の最大の原因は高血圧
1.高血圧
脳の血管が破れる原因として最も多いのが高血圧です。高血圧が脳出血の原因の8割以上を占めています。
長年に渡り高血圧を放置していると、太い動脈から枝分かれして脳の中に入っていく細い動脈(穿通枝動脈)に動脈硬化が起きます。
高血圧が続き、血管に強い圧力がかかり続けることで血管内膜(血管の内側)が侵され、血管壁がもろくなったり、壊死が起きます。これを血管壊死と言います。このような状態がおこると、脳出血を発症するリスクが高まります。そして、高い圧力が血管にかかり続けることで、細い血管に小さな動脈瘤(血管が風船のようにプックリ膨れる)が出来ます。その動脈瘤が破裂することで脳出血を発症します。
2.高血圧以外の原因
高血圧以外の原因で脳出血が起きることもあります。
高齢になると脳血管の内側にアミロイドと呼ばれる異常なたんぱく質が沈着し、血管がもろくなって破れ脳出血を起こすことがあります。この病気を「アミロイド血管症(アミロイドアンギオパシー)」と言います。
その他にも、”抗血小板療法”や”抗凝固療法”などによって出血しやすく状態になっている人も、脳出血を起こすリスクが高まります。なお、抗血小板療法と抗凝固療法はともに、脳の血管に血栓が詰まることで発病する脳梗塞の治療法です。
3.脳出血の初期症状
脳出血の初期症状としては、脳出血の発症部位や大きさにより、現れる症状は異なりますが、次のような症状は共通して現れることが多いです。
- 頭痛
- 嘔吐
- 意識障害
- マヒ
この脳出血の共通症状以外にも、出血した脳の部位に応じ現れる症状に違いが出てきます。
4.出血部位で症状が異なる
脳出血が起きやすい部位は、高血圧が原因となって起きる場合は、脳の深部です。高血圧が原因ではない場合は、比較的脳の表面で脳出血が起こることが多いという傾向があります。
脳出血は、脳の出血した部位に応じて5つのタイプに分けられ、それぞれ出てくる症状に傾向があります。 脳出血の発症が多い「出血部位」順に、その「症状」を確認していきましょう。
被殻出血
脳出血の中で一番多いのが被殻出血です。脳出血全体の半分弱を占めています。出血が被殻だけであれば症状は比較的軽く済みますが、基底核部(運動神経細胞が多く集まっている部分)にまで出血が及ぶと、片麻痺や感覚障害が発生します。しかし、死亡率は高くありません。発症時の症状として多いのが、頭痛や意識障害です。
視床出血
出血が視床だけの場合はしびれを感じる程度ですが、基底核部にまで出血が及ぶと麻痺が起こります。また脳室が近いため、脳室内出血を起こすこともあり、そうなると死亡率が高まる危険な脳出血です。脳室内出血を起こし、一命はとりとめたとしても、意識障害や重度のしびれや痛み、片麻痺などの後遺症が残るケースがほとんどです。脳出血全体の30~40%を占めています。
皮質下出血
大脳皮質(脳の表面のシワシワの部分)のすぐ下で出血が起きます。出血部位によって症状は異なりますが、痙攣が現れることがあります。他の脳出血に比べて、比較的症状が軽い場合が多いのが特徴です。脳出血全体の5~10%を占めています。
脳幹出血(橋出血)
神経が多く集中している脳幹に出血が起きると、人間活動を行っていく上で致命傷になるケースが多くなります。脳幹出血の症状としては、意識障害、呼吸障害、眼球運動障害(両目が一方に偏ったりする症状)、四肢麻痺などが起こります。脳出血の発作を起こして、数分の内に昏睡状態になり、数時間で死亡するケースもあります、脳出血全体の5%程度です。
小脳出血
めまい、嘔吐、激しい頭痛、起立障害、歩行障害、意識障害などの症状が現れ、ふらふらして真っ直ぐに歩けなくなります。片麻痺は発生しません。
5.脳出血が重症化すると脳ヘルニアになり最悪死んでしまうことも・・・
脳出血では、出血を起こした部位だけでダメージがとどまるとは限りません。脳出血は、以下のような流れで悪化していく可能性があります。
- 血腫(血のかたまり)により周囲の脳が圧迫され、脳の機能が低下する。
- さらに、脳浮腫(脳に血液が溜まり脳の容積が増加する)で脳がむくむ。
- 頭蓋内圧亢進(脳浮腫によって脳が圧迫される)によって脳が圧迫されることで、脳のダメージがさらに深まる。
- 頭蓋内圧亢進の症状が進行すると、脳ヘルニア(圧が低い方に脳が移動する症状)を起こすこともあり、死に至る危険性が高まる。
6.脳出血の特徴と発症しやすい時間帯
脳出血の大きな特徴は、症状が一気に現れることです。出血すると周囲の血管も圧迫されて破裂し、連鎖反応が起きて一気に脳内に出血が広がるという説もあります。ほとんどの場合、出血が起きると数分の内に次のような症状が見られます。
- 頭痛
- 手足のしびれ
- 吐き気・嘔吐
- 意識障害
脳出血は、数分で止まることが多いのですが、数時間以内に再出血するケースもよくあります。脳出血が続く場合は、次第に症状が悪化していき、重度の後遺症が残ってしまうリスクが高まります。したがって、脳出血の症状や疑いがある場合は早急に救急車を手配して下さい。
脳出血の発作が起きるのは、血圧の変動と関係しているので、安静にしている時よりも仕事中や外出中、食事、排便、入浴時などの日中の活動時です。また、寒暖の変化の影響を受けやすいのも特徴です。
統計による、最も脳出血の危険性が高い「季節」と「時間帯」「年齢」は次のようになります。
- 脳出血を発症しやすい季節(真夏と真冬)
- 脳出血を発症しやすい時間帯(朝の7時頃と夕方の5時頃)
- 男性では50~60代での発症が多い
- 女性では閉経後の発症が多い
戸外に出た時、入浴中、排便時、興奮時等に起こりやすくなります。脳出血を起こしたと思われる場合は、症状の軽い重いにかかわらず、直ぐに救急車を手配し早期治療することが一番です。