介護保険料の仕組みを学ぼう!あなたの保険料はいくら?

介護保険では、デイサービスや特別養護老人ホームなど様々なサービスが用意されています。そして、それら介護保険サービスのほとんどが1~2割の料金を支払うだけで利用可能です。

しかし、疑問に思いませんか。

一体残りの8~9割の料金はどこから支払われているのでしょうか?

この疑問を解決するためのキーワードそれが介護保険料です。

この記事では、介護保険を運用するために必要不可欠な「介護保険料」の仕組みについて分かりやすく解説していきます。

1.介護保険の財源は「介護保険料」と「税金」の2つ

介護保険制度は、社会保障制度の1つです。

サービスを提供するためには、当然のことながら財源が必要となります。その財源は、①「介護保険料」と②「税金」の2つで成り立っています。

財源 内容 割合
介護保険料 40歳以上の人が負担する保険料 50%
税金 国や都道府県、市区町村が負担する公費 50%

つまり、介護保険を運用する為に必要な財源は、半分が40歳以上の人が支払う「介護保険料」、もう半分が国・都道府県・市区町村の「公費」から産まれているのです。

いわば、国民が「介護保険料」と「税金」を2重に支払うことで介護保険制度は成り立っていると言えるでしょう。

それでは、この記事のメインテーマである「介護保険料」について詳しくみていきましょう。

2.被保険者は①第1号(65歳以上)②第2号(40~64歳)の2タイプ

介護保険は、すべての国民の加入が義務付けられた「強制加入」の法律です。これは国籍に関係なく、日本に在留資格があり住民登録をしていれば強制適用となります。

介護保険に加入する人は「被保険者」と呼ばれ、40歳以上が対象となり保険料を納めます。この「被保険者」は年齢を基準に2タイプに分かれます。

第1号被保険者
65歳以上の国民全員
第2号被保険者
40~64歳の医療保険加入者(健康保険、船員保険、国民健康保険、国家公務員共済または地方公務員共済など)

そして、第1号・第2号被保険者に当てはまる人は、必ず介護保険料を納めなければいけません。

たとえ、「50代で介護が必要としない人」や「90歳だけど健康なので要介護認定が認められずサービスを受けられない人」、「要介護4と認定されサービスを利用している人」でも、介護保険料を支払わないことは認められません。

つまり、「介護保険サービスを受けている・受けていない」に関係なく、40歳以上の全ての人が保険料を納めなければならないのです。

第1号・第2号被保険者の負担比率は、全国の人口比率が適用され現在は約2:3です。

3.介護保険料の計算方法

では、1人1人が支払う介護保険料はどのように決まるのでしょうか?

まず、介護保険で支払う金額の計算方法は①第1号被保険者(65歳以上)か②第2号被保険者(40歳以上65歳未満)かの違いで変わってきます。

それでは、具体的にそれぞれの介護保険料がどのように計算されているのか見ていきましょう。

第1号被保険者(65歳以上)の場合|基準額に保険料率を掛けて計算

第1号被保険者(65歳以上)が支払う介護保険料は、市区町村ごとに地元の実情に応じた基準額を決め、本人の経済状況に応じた料率をかけて計算します。

市区町村の経済状況が基準額に反映される

つまり、お住まいの市区町村によって基準額が異なってくるわけです。

各市区町村で、提供している介護サービスの内容などから年間に必要となる財源の予算を決めます。その22%を第1号被保険者の負担分とし、これを第1号被保険者の総数で割って「保険料基準額」を算出します。

したがって、「介護サービスが充実していて施設数が多い」「サービスの利用者が多い」といった場合は保険料が高くなります。

なお基準額は3年ごとに見直されます。全国平均の(月額)介護保険料の基準額は、2012~14年(第5期)が4,972円、2015~17年(第6期)が5,514円となっており、年々増加しています。また、一番低い自治体は2800円、一番高い自治体は8686円と3倍以上の開きがあります。

介護保険料率は9段階にランク分けされる

被保険者の納める保険料は、本人の経済状況によって増減します。個人の保険料は、先ほどの基準額に9段階にランク分けされた「保険料率」を掛けて計算します。

この「保険料率」は、前年の収入と住民税の課税状況に応じて9段階にランク分けされます。

第1号被保険者(65歳以上)の保険料率|平成27、28、29年度版
段階 保険料率 対象者
第1段階 0.3 世帯全員が市町村民税非課税かつ老齢福祉年金受給者又は本人年金収入などが80万円以下、あるいは生活保護受給者
第2段階 0.5 世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入などが80万円超120万円以下
第3段階 0.7 世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入などが120万円超
第4段階 0.9 本人が市町村民税非課税(世帯に課税者がいる)かつ本人年金収入などが80万円以下
第5段階 1.0 本人が市町村民税非課税(世帯に課税者がいる)かつ本人年金収入などが80万円超
第6段階 1.2 市町村民税課税かつ合計所得金額120万円未満
第7段階 1.3 市町村民税課税かつ合計所得金額120万円以上190万円未満
第8段階 1.5 市町村民税課税かつ合計所得金額190万円以上290万円未満
第9段階 1.7 市町村民税課税かつ合計所得金額290万円以上

そして、支払う介護保険料は“所得の高い人は重く、所得の低い人は軽く”なります。具体的には、収入が少ない人は基準額より70%減額、収入の多い人は70%増額され、最大5倍以上の差となります。

例えば、全国平均の基準額をもとに第6段階の人の保険料を計算すると、5,514円(基準額)×1.2(第6段階)=6,616.8円となります。

このように収入により支払うべき介護保険料に違いがあるのは、より公平な費用負担を目指し将来も制度を継続できるようにする為です。

第2号被保険者(40歳以上65歳未満)の場合|加入している保険と収入で計算

第2号被保険者(40歳以上65歳未満)が支払う介護保険料は、加入している健康保険の種類と収入によって計算します。

加入している健康保険の種類と収入に応じて計算する

第2号保険料は、市区町村ではなく、国(厚生労働省)が全国の給付状況をもとに第2号被保険者の平均額から、1人当たりの負担額を設定します。次に負担額を基に「社会保険診療報酬支払基金」が医療保険者(健康保険の種類)ごとに総額を設定して通知し、まとめて徴収します。この徴収に基づいて、医療保険者が介護保険料を上乗せするのです。

具体的には、健康保険や共済組合では月ごとの給与額に応じて計算され、国民健康保険では所得や資産など市区町村のルールによって計算されます。いずれにしても所得・収入などの経済状況に配慮して決める仕組みとなっています。

会社員や公務員などの給与所得者であれば、加入している医療保険の計算方法で金額が決まり、給料から天引きされます。
一方、自営業などで国民健康保険に加入している第2号被保険者の場合は、本人の所得に応じて市区町村が定め、国民保険料に上乗せして徴収します。

4.介護保険料の徴収方法

介護保険料の徴収方法は、1人1人違います。どのように決定するのか見てきましょう。

特別徴収と普通徴収

まず、第1号被保険者の介護保険料の徴収方法は「特別徴収」と「普通徴収」の2つに大きく分かれます。

特別徴収
年金から天引きされて納付する方法
普通徴収
市区町村から送られてくる納付書、あるいは口座振替で納付する方法

徴収方法は「被保険者のタイプ」「所得」「加入している保険の種類」で違う

そして、「被保険者のタイプ」や「所得」、「加入している保険の種類」に応じて、更に細かく設定されています。

被保険者のタイプ 徴収方法
第1号被保険者(65歳以上) 年金が月額1万5,000円以上(年額18万円以上) 「特別徴収」2ヶ月に1度の年金(老齢年金、退職年金、障害年金、遺族年金など)から天引きされます。
年金が月額1万5000円未満(年額18万円未満) 「普通徴収」通常7月から翌年3月までの間で、1年分を9ヵ月に分割して納付します。
第2号被保険者(40歳以上65歳未満) 会社員・公務員 公的医療保険(国民健康保険や健康保険等)と合わせて給料から天引きされて徴収されます。
自営業者 国民健康保険料に上乗せして徴収されます。

サラリーマンの介護保険料は事業主と折半

第2号被保険者でサラリーマン(給与所得者)の介護保険料は、雇用主が半分負担し、給与から天引きして雇用主が支払います。また、サラリーマンの妻は、介護保険料を支払う義務はありません。

5.免除および減免・軽減措置

先ほど40歳以上の国民全てが介護保険に加入し、保険料を納めなければいけないと説明しました。しかし、介護保険料の支払いが免除または減免・軽減される例外もあります。

免除

例えば、生活保護の受給者で40~64歳の場合は、被保険者とならず保険料を支払わなくても大丈夫です。また、海外居住者や特定の施設や病院に入所・入院中の場合も「適用外」となります。

  • 40歳以上~65歳未満の生活保護受給者 *(1
  • 海外居住者(日本国内に住所を有さない人) *(2
  • 短期滞在の外国人(在留資格1年未満の人)
  • 適用除外施設の入所者(以下のリストを参照)

*(1 65歳以上の生活保護受給者は保険料を支払わなければなりません。ただし、生活保護の「生活扶助」から支払われます。
*(2 本人が海外勤務する場合でも40歳から64歳の家族が日本に居住する場合、免除されません。

適用除外施設の入所者 
障害者自立支援法上の生活介護及び入所施設支援を受けている指定障害者支援施設の入所者
身体障害者福祉法に基づく措置により障碍者自立支援法上の障害者支援施設に入所している身体障害者
重症心身障害児施設の入所者
肢体不自由児施設支援を行う医療機関の入院者
ハンセン病療養所の入所者
国立重度知的障害者総合施設のぞみの園が設置する施設の入所者
生活保護法上の救護施設の入所者
労災特別介護施設の入所者
知的障害福祉法に基づく措置により障害者自立支援法上の障害者施設に入所している知的障害者
 障害者自立支援状の生活介護および入所施設支援を受けて指定障害者施設に入所している知的障害者・精神障害者
障害者自立支援法上の指定障害者福祉サービス事業者である病院(療養介護を行うものに限る)に入院している者

40~65歳未満でも医療保険に加入していない生活保護の受給者は、第2号被保険者にはなれません。第1号被保険者には、医療保険の加入者という条件が無いからです。しかし、65歳を超えれば第1号被保険者になれます。

減免・軽減制度

また、免除以外にも「特別な事情」により介護保険料の支払いが困難な場合、いくつかの「減免・軽減制度」があります。

ただし「減免・軽減制度」は、保険料の軽減であって全面的に支払いが免除されるわけでありません。また、市区町村ごとに条件が違います。

特殊な例になりますが、災害で住宅や家財、財産に多大な損害を受けた時、また一家の大黒柱が長期入院するなど収入が減少した時、生活が困窮している時に「減免・軽減」となる場合があります。

いずれにしても、本人が申請しなければならないので、対象になるかどうか市区町村の介護保険窓口に相談してみましょう。

6.滞納した場合のペナルティー

介護保険料を滞納すると納付期限後20日以内に「督促状とくそくじょう」が発行されます。しかし、それ以降も滞納が続くと以下のペナルティーが科せられます。

  • 1年以上滞納すると 一旦、介護サービス利用料を全額自己負担しなければならない。申請すれば後から自己負担分を引いた8~9割の額が返還される「償還払い」になります。
  • 1年6ヶ月以上滞納すると 介護サービス利用料の全額を自己負担しなければならない。申請して返還される金額の一部または全額が差し止められ、差し止められた返還分から滞納している保険料が差し引かれる
  • 2年以上滞納すると 介護サービス料の自己負担が3割に引き上げられる。居住費(滞在費)の減額、食費の減額、高額介護サービスが受けられなくなる場合もある。

1年以上滞納すると、介護サービス利用料を一旦全額負担しなければならないことがあります。その後、申請すると更に1年半以上になると戻ってくる金額の一部もしくは全額が差し止めとなり、2年以上になると、通常1割負担の負担額が3割に増えてしまったりします。

このように介護保険料を滞納してしますと、経済的にかなり厳しい制裁を受けることになります。したがって、滞納はしないようにしましょう。

しかし、経済的事情で介護保険料が納められないこともあります。そういった場合は、まず市区町村の担当窓口に相談しましょう。減免や徴収猶予の措置を受けることが出来ます。