軽度の認知症?軽度認知障害(MCI)を解明せよ

みなさん認知症には前段階があることをご存知でしょうか?

しっかりとこの認知症の前段階を見逃さず、その間に適切な処置を施すことで、病気を予防することができるのです。

この記事では、「認知症の前段階」とはどういったものなのか解説しているので、是非みなさんの病気の予防・治療に活かして頂ければと思います。

1.認知症の発症の前には、長い潜伏期間がある

軽度認知障害とは

軽度認知障害(MCI=Mild Cognitive Impairment)とは、認知症の前段階のことを指します。軽度認知障害というのは、その名の通り軽度の認知症です。つまり、物忘れなどの認知障害があっても、日常生活に支障をきたさないレベルの状態のことを軽度認知障害と言います。

アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症は、その症状が現れ実際に日常生活に支障を来すようになるまでには長い潜伏期間があります。病気の始まりの多くは、脳内の小さな異変です。その小さな異変が、なんと約30年という長い月日をかけて少しずつ少しずつ育つことで病気を発症するのです。

軽度認知障害は、健康な状態と認知症との境目、いわばグレーゾーンの段階です。したがって、軽度認知障害の段階や健康な状態で、適切な対応をすれば発症するまでの期間を延ばしたり・予防したりすることも可能なのです。

2.認知症の始まりは何十年も前にもさかのぼる

例えば、80歳でアルツハイマー型認知症を発症した人の場合、何十年も前から脳内で病気の種が育っています。アルツハイマー病の原因(種)であるアミロイドβが、溜まり始まるのは50歳ごろからです。それから、10年後の60歳の時に、アミロイドβが原因で老人斑が形成されます。
そして、さらに約10年の期間を経て、軽度認知障害の症状が見られるようになります。
そして、さらに・・・さらに・・・3~10年の期間を経て、アルツハイマー病という花を咲かせます。

なんと認知症を発症するまでに、これ程までに長い歳月が掛かるのです。したがって、なるべく早く病気の兆候である軽度認知障害の芽を見つけ迅速な処置をし、その芽を育まないようにすることが一番の認知症予防・治療と言えるでしょう。

3.軽度認知障害の人が認知症を発症する割合

実は、アルツハイマー病に代表される記憶障害型の軽度認知障害が、認知症に移行する確率はそう高くはありません。

軽度認知障害の方が認知症になる割合

軽度認知障害から認知症へと移行する割合は、年間で約10%と言われています。(2004,Maddalena Bruscoli and Simon Lovestone)

ある研究報告では、3年以内に軽度認知障害(記憶障害型)の人が認知症になる割合は約33.3%、また軽度認知障害(記憶障害型以外=言語障害、注意障害、視空間認知障害)の人が認知症になる割合は約10%と、軽度認知障害を抱えつつも健康に過ごしている高齢者の方が多いということが分っています。(2008,Palmer KP)

軽度認知障害は安心できない状態

しかし、だからといって安心してはいけません。健康な高齢者の移行率が年間に1%~2%という数と比較するとかなり高い数字であり、5年後には、約50%の方が軽度認知障害から認知症へと移行するのです。

また、先の研究報告の数字は、軽度認知障害(記憶障害または記憶障害以外のみ)の人の移行率です。なんと、複合タイプの軽度認知障害(記憶障害と記憶障害以外の障害を合併)している人の移行率は77%以上にも上り、かなり高い数字と言えるでしょう。(2008,Palmer KP)

また、年齢を重ねれば重ねるほど発症率は高まりますので、高齢化が進んでいる日本社会では、ますます患者数が増えていくことが予想されます。なんと、認知症の患者数が2012年約462万人であったのに対して、 2025年には約700万人に増加することが予想されています。(厚生労働省)

軽度認知障害の時から介護予防

したがって、できる限り何もない段階や軽度認知障害の段階で、アルツハイマー病や脳血管障害などの病気予防に努めることが、一番の認知症予防・治療になるのです。

軽度認知障害は、アルツハイマー型だけでなく、脳血管障害や精神疾患などの他の原因による、言語障害、注意障害、視空間認知障害などの認知機能に軽微な障害がある状態です。つまり軽度認知障害は、アルツハイマー病を始めとするいくつかの病気がハッキリと症状を現すまでの前段階であり、病気を予防する為の最後のチャンスとして認識することが大切です。

MCI(軽度認知障害)を早期発見し、認知症を予防する方法