居宅療養管理指導がわかる!

  • 認知症の父は、自分で上手く歯が磨けていないこともあり虫歯にならないか心配。でも、1人で歯医者さんまで行けるだろうか?
  • パーキンソン病の母を在宅介護しているが、薬が多くて何が何だか分からない!専門家から薬の服用・管理の仕方を教えて欲しい!

このようなお悩みをお持ちの方に、是非オススメしたいのが「居宅療養管理指導」という介護保健サービスです。

ここでは、「居宅療養管理指導とは」といった基本定義から、「往診」や「訪問診療」との違い、サービス利用に掛かる費用や料金算定の方法といったことに至るまで懇切丁寧に説明していきますので、是非参考にして下さい。

<目次>

  1. 居宅療養管理指導とは
    1. 医師などの専門職が訪問してくれ、療養上の指導やアドバイスが受けられる
    2. 居宅療養管理指導の対象者
    3. 往診や訪問診療との違い
  2. 居宅療養管理指導に掛かる費用
    1. 介護保険の支給限度額が埋まっていても1~2割負担でOK
    2. 居宅療養管理指導料は、訪問スタッフの職種で異なる
    3. 指導料算定シミュレーション

1.居宅療養管理指導とは

認知症やパーキンソン病、脳卒中の後遺症の人が安心安全に過ごすためには、医師や薬剤師といったその道のプロからの定期的な指導やアドバイスは必要不可欠です。しかし、そういった方ほど自ら専門家のもとを訪ねることは困難になってきます。そこでオススメしたいのが「居宅療養管理指導」という介護保険サービスです。

1.医師などの専門職が訪問してくれ、療養上の指導やアドバイスが受けられる

居宅療養管理指導とは、認知症やパーキンソン病など自ら病院へ通院することが難しい人を対象に、医師や歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士、看護師、保健師などが患者の元を定期的に訪問して、療養上の指導やアドバイスを行うサービスです。

サービスの目的は、介護が必要な状態になっても、残された能力に応じて、可能な限り自立した居宅での生活が出来るように生活の質を向上させるところにあります。また、利用者やその家族は、居宅療養管理指導を利用することで専門家の指導を受け安心安全に過ごせるだけでなく、通院の手間もなくなるので介護生活がグーンと楽になります。

居宅療養管理指導を行う職種は様々です。それぞれの専門分野について指導やアドバイスを受けることが出来ます。

それでは、具体的に個々の職種別でどのようなサービスが受けられるのか確認していきましょう。

担当スタッフ サービス内容
医師や歯科医師 療養生活の質を向上させる為の管理指導を行います。例えば、在宅サービスを利用する上での注意点や介護の方法などについての指導助言を行います。
薬剤師 薬の服薬管理・指導の仕方や薬の副作用の説明など薬学的な管理指導を行います。
管理栄養士 利用者の状態に合わせた献立作りや調理法についてのアドバイス指導、栄養ケア計画の策定などを行います。
歯科衛生士 口の中の清潔が保たれるように、口腔内清掃(口腔ケア)、入れ歯の清掃、摂食・嚥下に関する指導やアドバイスを行います。
保健師・看護師 医師が必要と判断した場合、療養上の指導をしたり利用者や家族の相談を受けます。

最近では、口腔内を清潔に保っておくことの重要性が広く知られるようになりました。虫歯が少なく、残歯数が多い人ほど認知症などの病気を発症するリスクが減少することは、広く知られています(参考⇒健康は歯から!歯周病・虫歯予防が認知症やアルツハイマーに効果的)。

医師や歯科医を対象に「日々実践している健康法は?」「おすすめの健康法は?」といったアンケ―トを実施したら、必ず上位に食い込んでくるのが「口内の定期健診や口腔清掃」です。したがって、歯科医師による居宅療養管理指導の利用が増える傾向にあります。入れ歯での食事の指導を始め、口腔の清掃などの様々なサポートが、誤嚥性肺炎の予防などに活かされています。

さらに、低栄養の高齢者も増えてきており、管理栄養士による指導も次第に重視されるようになりました。病院の管理栄養士に依頼するのが一般的です。

なお、指導に当たった専門職は、ケアマネージャーへ情報提供することが必須とされており、情報提供が行われない場合には料金が減算されます。

【関連ワードをチェック】

口腔ケア
歯科医師や歯科衛生士などに居宅療養管理指導を依頼することで、口の中の清潔が保たれるよう、口腔ケアについての指導やアドバイスを受けることが出来る。
服薬管理
複数の医療機関に掛かっているお年寄りは、沢山の薬が処方されていることも多く、薬の重複や飲み忘れなどに注意が必要です。薬局や病院に所属している薬剤師に居宅療養管理指導を依頼し、複雑な薬の管理をお願いすることが出来れば、処方された薬を正しく服用が出来、副作用の観点からも安心です。
栄養管理
糖尿病や高血圧症などの病気により特別食を必要とする場合などには、管理栄養士に居宅療養管理指導を依頼することが出来ます。利用者の状態に合わせた献立作りや調理方などについて、指導を受けることが出来ます。

2.居宅療養管理指導の対象者

居宅療養管理指導の対象は、要介護1~5でかつ自ら病院に通院することが困難な方で、医師や歯科医師の診察によりサービスの必要性を認められた場合に限られます。なお、要支援1・2の場合には、「介護予防居宅療養管理指導」の対象となります。サービス内容は居宅療養管理指導とほぼ同じです。

また、自宅療養している方だけでなく特別養護老人ホームなどの施設に入居している方も利用することが可能です。

3.往診や訪問診療との違い

居宅療養管理指導を利用するにあたり、1つ押えておいて欲しいことがあります。それは医師による医療行為の有無です。薬剤師や管理栄養士、歯科衛生士、看護師が行う居宅療養管理指導の場合は、管理や指導のほかに必要に応じて医療的ケアを行うこともあります。一方で、医師や歯科医師が実施する居宅管理指導は、あくまでも「療養生活の質を向上させる為の管理・指導」に留まり、実際の医療行為は含まれません。

そうは言っても「○○さんのところは歯医者さんが家に訪問して、虫歯の治療をしていったじゃない」という方もおられると思います。実はそのサービスは、医療保険サービスの「往診」や「訪問診療」であり、介護保険サービスの「居宅療養管理指導」とは異なります。

それでは一体、3つのサービスの違いは何なのでしょうか簡単に整理しておきましょう。

往診
急な病変などの緊急時に患者さんの求めで、臨時的に患者さんの居る自宅や施設に伺い診察すること。対象は、医療保険又は自費で往診が必要な方。
訪問診療
自宅や施設で療養している患者さんで通院することが困難な人に対して、計画的に医師が患者さんの居る自宅や施設に伺い診療すること。対象は、療養が必要でかつ通院が困難な方に限られます。月に3回まで利用できます(ただし、急性期、悪性狩猟末期患者や難病患者は制限なし)。
居宅療養管理指導
定期的に医師が患者さんのもとを伺い管理・指導・アドバイスすること。対象は要介護・要支援の認定を受けている方。

例えば、歯科医師が実施する「居宅療養管理指導」の場合は口の中をキレイにする為の口腔内清掃(口腔ケア)、入れ歯の清掃、摂食・嚥下機能に関する実地指導・管理に留まりますが、「訪問歯科診療」の場合は、検査、投薬、虫歯や歯周病の治療、入れ歯の作成やメンテナンス、嚥下障害を改善するリハビリに至るまでサービスの一環として実施されます。なお、口腔ケアの場合は、医療保険の適用とはなりません。

医療行為が行われた場合は、「往診」や「訪問診療」となり医療保険の適用になります。

2.居宅療養管理指導に掛かる費用

1.介護保険の支給限度額が埋まっていても1~2割負担でOK

居宅療養管理指導では他の介護保険サービスと同じく、基本的に介護報酬単価の1~2割を自己負担します。

ですが、このサービスは他サービスとは少し違うところが1点あります。それは居宅療養管理指導では介護保険の支給限度額の対象には含まれないという点です。したがって、仮に他のサービスで介護保険の限度額いっぱいで利用枠が残っていなくても1~2割の負担で利用できます。

また、医師による居宅療養管理指導を月に1回、薬剤師による居宅療養管理指導を月に2回といった具合に、決められた利用回数の範囲内であれば介護保険が適用され、必要に応じて組み合わせながら利用することが可能です。

なお、居宅療養管理指導はケアプランに組み込んで利用することが推奨されています。ケアプランの原案を検討するサービス担当者会議に医師を呼び、このサービスを使うと、家族や複数の介護スタッフが療養上の指示を共有しやすくなります。したがって、利用者の療養生活の質の向上、そして利用者と家族の安心の為にも、まずは主治医やケアマネージャーに相談し、ケアプランの中に上手に取り入れていきましょう。

2.居宅療養管理指導料は、訪問スタッフの職種で異なる

居宅療養管理指導料は、訪問1回ごとの設定です。しかし、どの職種も一律料金かというとそうではありません。居宅療養管理指導料は、サービスを提供する訪問スタッフの職種によって異なります。また、訪問時の交通費も利用者側の自己負担となります。利用回数については、

  • 医師による指導は月2回まで
  • 歯科衛生士による指導は月4回まで

など職種によってそれぞれに異なる利用限度回数が定められています。介護予防居宅療養管理指導の場合でも、料金設定や利用限度回数は、居宅療養管理指導と変わりません。ただし、病院・診療所の医師が、同じ建物にある高齢者受託の住民に 居宅療養管理指導をするなど、事業者と利用者の住まいが同一建物の場合、料金は減算されます。

【最新版】平成27年度 居宅療養管理指導の介護報酬兼料金表(要介護及び要支援)
スタッフ 単位 利用限度回数
同一建物居住者以外 同一建物居住者
医師(Ⅰ) 503単位

452単位

2回

医師(Ⅱ)

292単位 262単位 2回
歯科医師 503単位 452単位 2回
薬剤師(医療機関に所属) 553単位 387単位 2回
薬剤師(薬局に所属) 503単位 352単位 4回
管理栄養士 533単位 452単位 2回
歯科衛生士 352単位 302単位 4回

看護師・保健師

402単位 362単位 居宅サービス開始より半年に2回

医師による指導料は、利用者が受けている医療保険の内容によって異なる。

3.指導料算定シミュレーション

それでは実際に、居宅療養管理指導に掛かる月額料金をシミュレーション計算してみましょう。

  • 利用者は要介護度3
  • それぞれの専門職はすべて利用者の自宅とはなれた場所からの訪問
  • 薬局の薬剤師が月1回
  • 歯科衛生士が月2回
  • 管理栄養士が月1回

以上のサービスを利用した場合、次のように料金計算できます。(1単位=10円、個人負担=1割負担の場合)

【計算式】

  • 【1ヶ月分の単位数】 503 単位(薬局の薬剤師)+352単位(歯科衛生士)×2+533単位(管理栄養士)=1,740単位
  • 【1ヶ月にかかる介護サービス費(保険適用前)】 1,740単位×10円=17,400円
  • 【1ヶ月にかかる介護サービス費(自己負担1割)】 17,400円×10%=1,740円

居宅療養管理指導の自己負担費用(1ヶ月分)=1,740円+各専門職が訪問する際の交通費